星の教団の陰謀
●とあるカルトのお話
√EDENの日本で急速に信徒を増やしている星に祈りを捧げる新興の教団があった。
何でも正しく星に祈る事で悩みが解決するらしい。
これには多くの実例があり、中には実際に難病が治った等と言う奇跡の様な噂もある。
しかし、同時に黒い噂もあった。
それは教団に住み込む信徒がいつの間にか行方不明になっている。
それも多数いるという噂だ。とは言えそれが大問題になるという事もない。
不自然ではあったが誰からも捜索届は出されておらず、噂は噂と思われていた。
しかし、噂は事実であった。
教団を作ったのは並行世界の一つ、√マスクド・ヒーローの悪の組織『極星天宮会』。
信徒を獲得する為の奇跡は√能力によるものだ。
√EDENの教団内部で二人の悪人が会話をしている。
「今月は二人か。身辺処理は問題ないか?」
「ああ、問題ない。しかし、今回の二人で今年だけで十人か。何に使うんだ?」
「さあな。怪人の素体にするのか儀式の生贄か。『プラグマ』の考えてることは分からん」
「全く、気味の悪い奴等だな」
「言うな。その気味の悪い奴等の言いなりなのが今の俺達だ」
「クソが。いつか――」
「おい、それ以上は言うな。此処ではオヤジの力も限定的だ。何処で聞かれているか分からん」
「チッ、分かったよ。引き渡しは何時だった?」
「三日後の予定だが、予定通りに来たことがないからな。まあ、近い内には来るだろう」
「クソが。日時くらい正確にしやがれ」
それから数日後、二人の人間が√EDENから√マスクド・ヒーローに渡る事となる。
その二人が√EDENの地を踏むことは二度となかった。
●とある冒険王国でのお話
√ドラゴンファンタジーに無数に存在する冒険王国の一つにある冒険者ギルド。
そこにある|冒険者《√能力者》にしか入れない部屋にある依頼掲示板に一風変わった依頼が貼りだされていた。
依頼掲示板は基本的に討伐依頼や素材収集依頼等が並んでいるのだが、これは違う。
正確には依頼ではないのだ。
内容は√EDENに√マスクド・ヒーローの悪の組織が作った教団がある。
その教団は何らかの適性がある人間を√マスクド・ヒーローに送っており、送られた人間の安否は不明であること。
近日中に新たに二人の人間が犠牲になる事が書かれていた。
助けるのであれば今であると。しかし、報酬などの提示はなし。
オーナーであるガイウス・サタン・カエサル(邪竜の残滓・h00935)の署名がされているので悪戯ではないことは分かる。
ガイウスが星詠みの力を持っており、その力で得た予知をこうして提示するのは知る人ぞ知ることであった。
予知を得たので伝える。
それを活かすも活かさぬも√能力者次第というのがガイウスの考えであった。
「これ報酬ないのー?」
と聞く√能力者にギルドの受付嬢はにっこりと微笑んで答える。
「報酬は経験と平和を護ったという達成感、だそうですよ」
「やりがい搾取よりも酷い!!」
等の会話を聞きながら何人かの√能力者が依頼の詳細を確認している。
√EDENに縁がある者、悪の組織の蠢動を許さない者。
動機は様々だが知った以上は放置できないと√EDENに向かうのであった。
マスターより

初めまして。淵賀と申します。
こちらでもシナリオを少しずつ出していけたらなと思っております。
シナリオの舞台は√EDEN。
√マスクド・ヒーローの悪の組織が背後にいる新興の教団となります。
第一章は教団に潜り込んで頂きます。異世界に拉致される予定の信者二人が隔離されているので、その場所を探りだしましょう。方法はお任せいたしますが、力づくは悪の組織とは関係のない信徒が大多数ですからお勧めできません。
第二章以降は幕間にて詳細をお知らせいたします。
以上です。
プレイングは各章全て受付開始のタグを入れてからとなります。
締切もタグにてお知らせいたします。
それではお付き合いいただければ幸いです。よろしくお願いします。
8
第1章 冒険 『カルト宗教の罠』

POW
正面から団体本部に突入する
SPD
こっそりと団体に潜入する
WIZ
元々その宗教の一員だった
√EDEN 普通7 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
●星に祈りを
√EDENの日本。某県某市にある『星に祈る会』の施設。
今日も老若男女で賑わっていた。
星の神様に感謝をして正しく星に祈れば悩みが解決する、そんな触れ込みであるが、星に祈る以前にカウンセラーが大勢おり、まずはお悩み相談などがなされる。それで解決すればそれで良いというスタンス。他にも運動すれば心が晴れるとか受け入れられるコミュニティ、仲間が存在すれば悩みも乗り越えられるとかで運動施設やレクリエーションも豊富だ。宿泊も可能であるお金は取られるけれど。
悩みが解決した人たちからの高額の献金が財源という話だが、ない者から取り立てる様なことはなくそれで成り立つのかと不思議がられてもいた。
「春木さん、ここ数日見ませんけどどうしたんだろう?」
「ああ、春木さんなら実家に帰るという話でしたよ。何でも急に帰らないといけない事情ができたとか」
「え、そうなんですか? SNSも既読にならないんだよね」
「……どうしたんでしょうね? 見る余裕もないのかな?」
毎日の様に顔を見せていた|信徒《友人》の姿が見えないと話す女性にスタッフは何でもない事の様にごく自然な態度で流す。この気にかけている女性も数日後にはもともと存在しなかったかのように話題に出す事もなくなる未来があった。
=========================
まずは『星に祈る会』の施設内に居る隔離された二人を見つけ出しましょう。
施設には普通に入れますし、歓迎されますが、スタッフしか入れない区域などもあります。隙を見つけて侵入して探索するのも良いかもしれません。
皆さんは興味のあるていで正面から入ってもいいですし、こっそり侵入してもいいです。大穴でもともと出入りしてて今回、まさか裏に悪の組織がいるとは!と驚いても良いですね。
自由な発想で捜索して貰えればと思います。

ハイパーエレガントキャビンをワザと操縦を誤って、正面玄関に突っ込ませる。
「わたくしとしたことが何というご迷惑を・・・・賠償したく思いますが、責任者の方は?あらあら、みなさま何やら大変そうですの。勝手で失礼ですが、当方で探させていただきますわね」
と、混乱に乗じて、堂々と内部を巡り探索。誰かに会ったら、カーテシーを決めつつご挨拶【礼儀作法】
「はじめまして。わたくしカヌレ・ド・ショコラと申しますの。責任者の方はどちらにおいででしょうか?」
責任者を探している振りをして、囚われし二人を探す。戦闘員を見つけたら、【暗殺】でコキャる。今回は吸血は我慢する。どちらにせよ、おいしそうな美男美女はいないようである

NG描写無し
最優先事項を救出対象の生存に設定。出来るだけ迅速かつ静かに事を済ませます。
【探索】
まず「EOCマント」起動。光学迷彩で20歳ほどの女の姿を取る。声も「ドッペルゲンガー」によってそれに合わせて変更。
施設に入り、春木からここの事を聞いたと言う体でスタッフに春木さんを最近見てないか「情報収集」。特に知りたいのは春木さんと関わりが深いスタッフ。怪しまれた場合話題をここの教えに興味があると切り替える。
その後√能力発動。聞き出せていればそのスタッフの足取りを再現。そうで無ければここ最近の出来事をインビジブルに尋ねる。
場所の予測がつけば「ククリナイフ」で鍵などは「切断」して怪しい地点へ向かう。

【WIZ】
日頃から星の精霊と親しくしている私は、「星に祈る会」という名前が気に入ったこともあって、件の新興宗教に潜入取材を行っていた。
取材の過程で疑いを抱いたのは、献金という不確実な財源に見合わぬ施設の充実ぶりに対してである。
税制面で優遇されている宗教法人とは言え、何かしら裏がありそうだ。
そんなことを考えていた時に誘拐事件の話を聞き付けて、自身の好奇心を抑えることのできる記者がいるだろうか?
いや、いない。
かくなる上は、階梯1の小さなミミズクの姿となって天井裏のダクトを歩いて進み、スタッフ専用区域を探索してやろう。
換気口から室内を覗き見たり音を聞けば、何か情報を掴めるかも知れない。

■目的:施設の把握
■手段:√ドラゴンファンタジーからの霊視観察
我輩最近気づいたことがあるほ。
我輩、√EDENで普通の人の前で喋らないほうがいいのでは?
というわけで別√から霊能力で見ることにしたほ。
霊能力の視界がどの程度まで幅が利くのか、移動しないと視界も移動しないのかやったことないからわからんほ。
√ドラゴンファンタジーでの該当地域はどんな建物かほ?
他事件での潜入では地下に悪者いたほ。この土地で地面どうにかいけるほ?
我輩が得た情報は適宜、魔法のスマホでギルドに連絡ほ。
あと√マスクド・ヒーローも覗き見るほ。
建物内で√搬送できているなら目撃情報ない理由になるほ。
その場合、向こう√の建物も黒だほ。

...まぁ、今回は当たりを引いたと言えるけど
『【MONOチェンジ】は本当に運ゲーだからね。レイ、良かったじゃん』
キャラメルの空箱だから見つかる可能性はかなり低いけどさぁ
移動方法どうにかならいのこれ?
方向転換もせずにホバー移動する空箱って怪しくない??
『仕様だから仕方ない、けど存在感はかなり薄くなっているから問題ない』
本当かなぁ
『裏口のロックを【ハッキング】で解除して侵入、物置や詰所に怪しいものがないか【情報収集】しな』
急に人が来たらどうするの?踏まれた時の対処は
『ラベンダー・ブルーの【ジャミング】で当たり判定消滅させてすり抜け回避な』

WIZ
アドリブ連携歓迎
おお、なんと。よもや星に祈る会に悪の組織が関わっていたとは。
宗教団体を隠れ蓑にするとは、何とも悲しいことですな。
人の悩みに付けこむ邪な策謀、善良な√能力者としては見過ごせません。
ひとつ加勢するといたしましょう。
といってもすることはそれほど大仰ではありません。
大学教授の面の皮を活かして、次回の講義に関する相談をと、堂々と顔を出す形ですな。
ええ、我輩もスタッフの方とお話をしたり、お悩み相談を受ける協力者的立場だったということですな。
神秘なる叡智の断片を上手く扱えば、春木さんたち隔離された二人を監禁している場所も見つけ出せるでしょう。
あとは……見知らぬ人に注意する、ですかな?
●追跡者
「春木さんにここの話を聞いていて興味を持ったんです」
「ああ、春木さんにですか」
若い女性が『星に祈る会』のスタッフに話し掛けていた。
スタッフはにこやかに応じているが、春木の名前が出た際に僅かに警戒の色を浮かべたのを女性は見逃さい。このスタッフは春木がどういう状況なのかを知っている。
そう若い女性、フォー・フルード(理由なき友好者・h01293)は判断する。
実のところフォーは女性ではない。それどころか人間ですらない。
狙撃兵型のベルセルクマシン。それが|彼《・》の正体だ。
では今の姿は何か?
『|EOC《電磁的光学迷彩》マント』により若い女性の姿を投影して装着したものだ。
『|擬態声帯喉部パーツ《ドッペルゲンガー》』により日本語で女性の声を話す事も可能としている。
流石に体に触られれば気付かれるだろうが、会話をする程度ならば怪しまれる事はない。
「一緒に来てくれるという話だったのですが急に連絡が取れなくなったんですよね」
「そうですか。確か実家に帰ると言ってましたけど、それ以降は私も連絡ありませんね」
当たり障りのない会話をしばらく続けるが、そこから少し踏み込もうとしたところで警戒が跳ね上がったのを感じ取り、フォーは話題を変える。
『星に祈る会』の教えや普段はどういう活動をしているのかなど、新人入会者が聞きそうな事を聞いた後にお礼を言って離れる。
スタッフはしばらくフォーの事を離れて観察していたが、フォーは気付かぬていで他の一般会員と世間話をこなして時間を潰した。
やがて問題なしと判断したのだろうスタッフは去って行った。
それを確認してからフォーは動き出す。
あのスタッフは行方不明になっている春木の行方を知っているだろう。
ならばあのスタッフの足取りを再現すれば春木が隔離されている場所を予測できるはず。
【|事象再現演算《バックログシミュレーション》】によりインビジブルにスタッフの過去を再現させその足取りを追っていく。
●特派員
ベニー・タルホ(冒険記者・h00392)は√ドラゴンファンタジーの新興メディア|D2D《ダンジョン・トゥデイ》の√EDEN特派員である。
そんな彼女が『星に祈る会』に関心を持ったのは予知が原因ではない。
√EDEN特派員の彼女は日々、ネタを探していたのだが、そのアンテナに『星に祈る会』が引っ掛かったのだ。
最初は事件性を察知した訳ではない。
星の精霊銃士である彼女にとって星の精霊は友人であり、星は親しみをもつ存在だ。
だから『星に祈る会』という名前を気に入るのはごく自然な事であった。
会員として潜入取材を行うベニー。
宇宙や星に関しての講義をやたら設備の充実した講義場で聴いたり、屋内運動場で汗を流したり。
いくらなんでも設備が充実し過ぎであろうと疑念を抱くのは潜入してすぐのことだった。
調べた限りでは財源は献金のみ。資産運用くらいはしているのであろう。そして、宗教法人は税制面で優遇されたはいる。
それにしても、だ。
潜入取材を続けて疑念が膨れ上がっている時に聞こえてきたのが予知の話である。
行方不明になった二人とは直接交流はなかったがこうなれば好奇心を抑えることは出来ない。
というかここで好奇心を抑えられる性格なら特派員など務まらないだろう。
二人はこの施設の何処かに隔離されているという。
「であるならば」
ベニーは普段は階梯5の姿をとっているミミズクの獣人である。
しかし、実のところ変異階梯であり、他の階梯への変身が可能なのだ。
という事で、と階梯1の小さなミミズクの姿となり天井裏のダクトに潜り込む。
ここを進んで、スタッフ以外立入禁止の区域の探索を行うつもりであった。
●空箱
『星に祈る会』の施設。その廊下の隅の方にキャラメルの空箱が落ちている。
清掃が行き届いている施設には珍しい事だ。
現時点では誰にも気づかれていない、その空箱。
もし注目している者が居れば驚きの声を上げる事になっていただろう。
何せ動いているのだ。室内であり風は皆無。
空調は効いているが空箱とはいえ動かす程の力はない。
しかし、動いている。
よくよく見れば空箱はほんの僅かではあるが宙に浮いており、その状態で滑る様に移動している。ホバー移動であった。
『【MONOチェンジ】は本当に運ゲーだからね。レイ、良かったじゃん』
「……まぁ、今回は当たりを引いたと言えるけど」
キャラメルの空箱から聞こえて来る声である。
そうキャラメルの空箱はただの空箱に非ず。レイ・イクス・ドッペルノイン(人生という名のクソゲー・h02896)が√能力【|メソッド・MONOチェンジ《オブジェクトシーカー》】で変身した姿であった。
会話の相手はレイのAnkerであり司令塔でもある九十九玲子だ。
このMONOチェンジ、変身する能力であるが運ゲーの名に相応しく何に変身するか指定できない。今回、キャラメルの空箱に変身したのは秘密裏に潜入という目的を考えれば当たりの部類だろう。
とは言え。
「キャラメルの空箱だから見つかる可能性はかなり低いけどさぁ……
移動方法どうにかならいのこれ?
方向転換もせずにホバー移動する空箱って怪しくない??」
『仕様だから仕方ない、けど存在感はかなり薄くなっているから問題ない』
もっともな疑問を呈するレイに問題ないと応じる玲子。
実際、√能力の権能で存在感はかなり薄くなっており、確実にホバー移動する姿が視界に入っているであろう会員にここまで何人か会ったが結果として誰も気づいていない。
それでもレイの心配はつきない。
「本当かなぁ……急に人が来たらどうするの? 踏まれた時の対処は?」
『ラベンダー・ブルーの【ジャミング】で当たり判定消滅させてすり抜け回避な』
「えぇ……出来るの、それ?」
『出来るかどうかじゃなくてやるんだよ!』
「えぇ……」
ちょっと情けない声を出しながらキャラメルの空箱は施設の奥へ奥へと進んでいく。
●異世界からの観察者
「ちょっと見えにくいほ」
そんな声を漏らすのはオーリン・オリーブ(占いフクロウ・h05931)。野良コキンメフクロウである。
彼は今、√ドラゴンファンタジーから【霊能波】の権能で以て√EDENの『星に祈る会』の監視をしていた。
何故、現地に赴かず|此処《異世界》から監視をしているかというと明確な理由がある。
「我輩最近気づいたことがあるほ。
我輩、√EDENで普通の人の前で喋らないほうがいいのでは?」
この事である。本人はギリシャの戦いと知恵の女神であるアテーナーの|聖獣《シンボル》であることに誇りを持っているが、√EDENの人間は喋る動物に馴染みがない。
喋る鳥はいるが会話が出来る鳥はいないのだ。普通に超常現象扱いである。
さりとて喋らなければ良いかと言われればフクロウは今回の現場である日本では珍しい部類だ。それが施設内に居れば嫌でも目立ってしまうだろう。それらを勘案しての異世界からの霊視観察であった。
とは言えなかなかに難しい。霊視は他の√を「自身の現在地と同じ場所」から観察するというもの。
例えばこちらの世界では見晴らしのいい場所でも、観察する√が屋内であれば、当然壁等があればそれを貫通して観る事はできない。壁の向こうを観ようと思えばこちらの√で壁の向こうまで移動する必要がある。
それでも移動できれば良いのだ。空き地であれば自由自在に動き、特にオーリンは当然、飛ぶことが出来るので何階であろうと観察する事が出来る。
しかし、残念ながら√EDENにおける『星に祈る会』の施設がある場所は√ドラゴンファンタジーでも施設があり、オーリンはその施設内をあっちこっち移動する必要があった。
幸いにもオーリンが飛び回っても見咎められる様な施設ではなかったのでやや苦労しながらも観察を進めていく。
「この長い通路が怪しいほ」
やがて当たりと思われる場所を見つけ出す。やたらと長い通路。
その先は途中から見通せなくなっている。オーリンはその通路が途中から√EDENではない他の√になっていると直感する。
「建物内で√搬送できているなら目撃情報ない理由になるほ」
行方不明者が多数いるにも関わらず目撃情報などはないという話。施設内から直接、√マスクド・ヒーローに繋がっているのであれば納得が出来る話だ。霊視の波数を変えて√マスクド・ヒーローを覗き見るが、予想に反してそれらしい場所ではなかった。
通路から繋がっているのが√マスクド・ヒーローだとしても座標は同じではないという事だろう。良くある話だ。
とは言えあの通路の先に行方不明者が隔離されている可能性は高い。魔法のスマホでギルドに連絡するオーリンであった。
この情報はギルドを介して現地の√能力者達に共有されるだろう。
●教授
この日も角隈・礼文(『教授』・h00226)は『星に祈る会』に顔を出していた。
そう初めてではないのだ。
√EDENの大学教授である礼文は講師として何度か『星に祈る会』で講義をした事があった。
考古学や歴史学で教鞭と執る礼文であるがオカルトに傾倒しており、魔術研究者としての顔を持つ。
割と『星に祈る会』のオカルト部分と相性が良かったのだ。
にこやかに次回の講義に関する相談をスタッフとする礼文であったが、心中は複雑だ。
「よもや星に祈る会に悪の組織が関わっていたとは。
宗教団体を隠れ蓑にするとは、何とも悲しいことですな。
人の悩みに付けこむ邪な策謀、善良な√能力者としては見過ごせません」
という考えだ。他の√能力者達と協力して隔離されている二人を救出するつもりであった。
何度か通ったのでスタッフ以外立入禁止の場所は把握している。
礼文の立場はスタッフよりであるのでその幾つかは入る事が可能だが、逆に言えば、礼文が入れる場所は監禁場所と関係ないと言えるだろう。
そうであるならば、怪しいのは……スタッフと話しながら推理している時であった。
凄まじい衝突音。遅れて悲鳴のような叫び声が聞こえて来る。
「何があったのですかな?」
「分かりません。見に行ってみましょう」
騒ぎの元である施設入口の方に向かってみれば。
「これは……馬車ですかな?」
入口を破壊する形で突っ込んでいる馬車であった。
日本でも馬車に乗れる場所がない訳ではないが、この周辺で聞いた事はない。正直意味不明であった。
しかし。
「これはチャンスですな」
周囲は混乱している。今ならばスタッフ以外立入禁止の区域に立ち入る事が可能かもしれない。
●馬車の持ち主
施設の入口に突貫した馬車。その持ち主の名前はカヌレ・ド・ショコラ(お菓子大好き吸血令嬢・h02165)。
吸血鬼の少女である。勿論、今回の件は事故ではなく故意であった。
カヌレは自ら御者を務めて『|優美にして可憐な装飾の施された馬車《ハイパーエレガントキャビン》』をワザと『星に祈る会』の施設正面玄関に突っ込ませたのだ。
なお、普段は首無し騎士が御者を務めているのだが、それだと√能力者の攻撃である事があからさま過ぎるのでカヌレ自身が御者を務めた。まあ馬車の突撃という異常事態を考えれば誤差かもしれないが。
ともあれ、突入時、幸い直撃を受けた者は居なかった様だが周囲は大混乱である。
「怪我人は!?」
「警察を呼べ!」
等の叫ぶような声が聞こえて来る中、カヌレは優雅に御者席から降り立つ。
可憐な少女であるカヌレにこの惨状を引き起こした者というイメージが重ならない様で彼女を咎める者は居ない。
「わたくしとしたことが何というご迷惑を……賠償したく思いますが、責任者の方は?」
周囲の会員にカヌレが話しかけるが、状況を把握できずに混乱している様である。
「あらあら、みなさま何やら大変そうですの。勝手で失礼ですが、当方で探させていただきますわね」
混乱に乗じて、むしろ堂々と内部に侵入していこうとする。
その彼女に声が掛かる。見れば髭を蓄えた男性だ。スタッフには見えない。
「お嬢さん、お仲間ですかな?」
「何の事かしら? わたくし、事故の事で責任者の方とお話がしたいのですけれど?」
「二人を助けに来たのでは? 多分、案内できると思いますよ」
「あらあら、それではエスコートをお願いしようかしら?」
カヌレとしては混乱に乗じての侵入までは計画通りであるがここから囚われた二人を探すのは完全に手探りだ。
そこに多分、目的を同じくする男の登場。闇雲に探すよりは良いだろう。
男、礼文と連れ立ってカヌレは施設の奥へと進んでいく。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
第2章 集団戦 『戦闘員』

POW
戦闘員連携戦闘
半径レベルm内の味方全員に【悪の組織製の通信装置】を接続する。接続された味方は、切断されるまで命中率と反応速度が1.5倍になる。
半径レベルm内の味方全員に【悪の組織製の通信装置】を接続する。接続された味方は、切断されるまで命中率と反応速度が1.5倍になる。
SPD
新規戦闘員部隊
事前に招集しておいた12体の【新たな戦闘員の部隊】(レベルは自身の半分)を指揮する。ただし帰投させるまで、自身と[新たな戦闘員の部隊]全員の反応速度が半減する。
事前に招集しておいた12体の【新たな戦闘員の部隊】(レベルは自身の半分)を指揮する。ただし帰投させるまで、自身と[新たな戦闘員の部隊]全員の反応速度が半減する。
WIZ
戦闘員特攻モード
自身の【戦闘服】を【危険な蛍光色】に輝く【特攻モード】に変形させ、攻撃回数と移動速度を4倍、受けるダメージを2倍にする。この効果は最低でも60秒続く。
自身の【戦闘服】を【危険な蛍光色】に輝く【特攻モード】に変形させ、攻撃回数と移動速度を4倍、受けるダメージを2倍にする。この効果は最低でも60秒続く。
●
『星に祈る会』の施設正面入口への馬車の衝突事故。現場は混乱を極める。
「何があった!」
「分かりません、入口に馬車が特攻して来たとか」
「馬車だぁ!? 何処のモンのカチコミだ!!」
この事故を本当の事故と思うおめでたいものは『星に祈る会』のスタッフ、その中でも悪の組織に所属している者の中には一人としていない。
√マスクド・ヒーローでは正義の味方やら他の悪の組織との抗争は日常茶飯事である。
√EDENでの活動というぬるま湯に浸ってはいたがふやけてはいない。
「玄関に戦闘員を向かわせろ」
「一般会員さんの避難を優先させろよ」
「内部に侵入者! 隔離エリアを目指している!」
「目的は『プラグマ』への|お土産《・・・》か!」
「玄関には最低限で良い。隔離エリアに集結させろ!」
悪の組織『極星天宮会』の戦闘員達が|√能力者《敵》の存在を認識して動き出す。
●
春木という女性ともう一人の犠牲者が隔離されていると思われるエリアに急ぐ√能力者達。
途中、何人かのスタッフを倒している。
そうして長い通路を越えて辿り着いた部屋の一つ。
そこには二人の女性が意識のない状態でベッドに横たわっていた。
様子を見れば睡眠と同じ状態に見えるが、声を掛けても体を揺すっても起きない。
何らかの√能力でこの状態なのだろう。
時間をかかれば原因も特定できるだろうし、こちらも√能力で相殺しても良い。
とにかくこの二人を連れて脱出する必要がある。
そう考えた時に。
「やはり、そいつ等が目的か」
「悪いが帰す訳にはいかねえ」
「玄関の修理費弁償しろよ」
悪の組織の戦闘員達が到着した。
==================================
第一章お疲れ様でした。
皆さんの活躍で囚われた二人を発見しております。
その場所に戦闘員が押しかけてきており戦闘不可避という状況です。
戦場となる部屋は大きめの部屋。高校の教室程度とお考え下さい。
第二章は戦闘員達との戦闘になります。
戦闘員の数は10人。個人の戦力値は200。10人纏めて相手にすると戦力値400です。
※戦力値に関しては描写の参考にするだけですから気にしなくて大丈夫です。
興味がある場合はマスターページをご覧ください。
それではよろしくお願いいたします。

アドリブ歓迎 NG描写無し
(救助対象は動けず、自分には治療などの術はない。ここが戦闘基地かは定かではないが時間をかければかけるほど不利に寄る。自分と同じ様に救助に来た人物が回復技能などを持っているかも知れないが、いずれにせよ自分ができる事は足止めか殲滅。)
状況を更新、戦闘を開始します。
【戦闘】
まず即座に√能力を伴う銃弾を「カスタム拳銃」で天井に撃ち込む。これにより敵、仲間を含めた動きを予測。誤射の可能性を最小限に抑える。
基本的には「カスタム拳銃」と「サブマシンガン」で応戦。その際「弾道予測」で誤射を防ぎつつ「援護射撃」と「制圧射撃」。救助者の回復をする方がいればそちらに行かない様に牽制をする。

,問答無用で√能力で先制攻撃。
「申し訳ございませんが、わたくし、あなた方のような悪党に、お支払いするお金は持ち合わせておりませんの」
戦闘員たちを見渡し、深く絶息する。
「それにしても……まともな人材のいない組織ですの。今日のお仕事は完全にハズレくじですのね」
勝手に゙血を吸ったら怒られる。しかし、任務の相手であれば、問題はない。血が美味しそうな美男美女がいるいないかは、非常に重要なことである。
「秘密結社の幹部といえば、美形と相場が決まっておりますの。賠償してほしくば、責任者を連れてくるのですね。下っ端では話になりませんの,」
戦闘終了後に、2人を連れ出して、馬車に乗せて、脱出する
アドリブ、絡み歓迎

極星天宮会。貴方方の理念や活動方針にも興味がありますなぁ。
如何なる指針を以て、他の宗教団体の信者として潜り込み、淑女を拉致監禁するのか。
その悪事にどれほどの信念があるのですかな?
……ふむ。宗教とは名ばかりの、ただの使い走りの犯罪者であれば。関心は無くなりますな。
結構。では鎮圧を試みましょう。
といっても大したことは行いません。
事前に招集しておいた空鬼に戦ってもらうだけですからな。
物理的戦闘力ならそうそう遅れは取らないでしょう。
蛍光色に輝いて特攻してくる戦闘員は、我輩と空鬼は反応速度が落ちるので対処しきれないかもしれませんが。
召喚しておく無形の落とし子にカバーするよう指示を出しておきましょう。
●
『星に祈る会』の施設に囚われているという二人を救出する為に乗り込んだ√能力者達。
首尾よく二人が監禁されている場所を発見する事に成功した。
そこは施設の奥深く。長い通路を越えた先にあった広い部屋であった。
二人が寝かされているベッド以外には何もない部屋。
ここが『プラグマ』への引き渡し場所なのだろうと考えた√能力者もいただろう。
何はともあれ二人はまだ此処に居る自分達は間に合ったのだ。
その時に『星に祈る会』。否、それを隠れ蓑にして暗躍する『極星天宮会』の戦闘員達が到着した。
●
「極星天宮会。貴方方の理念や活動方針にも興味がありますなぁ」
戦闘員達に向けて角隈・礼文が話しかける。
「先生、アンタ、√能力者だったんだな」
大学教授であり講師として招かれた事もある礼文である。戦闘員の中には会話をした者もいた。
戦闘員にとって『極星天宮会』の名前を知られているのは意外であったが√能力者であれば知っていてもおかしくない。いや、此処に居るという事は自分達の行いが『星詠み』の予知に引っかかったのであろう、とそこまではすぐに考え至る事であった。
「ええ、そう言うことです。さて、如何なる指針を以て、他の宗教団体の信者として潜り込み、淑女を拉致監禁するのか。その悪事にどれほどの信念があるのですかな?」
純粋に興味があるという風に訊ねる礼文。戦闘員も礼文や他の√能力者の位置を確認しながら返事をする。礼文と話をしている戦闘員以外の者達がじわじわと位置取りを変えるが、それは√能力者達も同様だ。
「なに、その二人は適合者でそれを欲しがってる奴がいるってだけの話だ。信念とかそう言う話じゃないな」
実際、戦闘員にとって『プラグマ』の依頼であるというだけだ。
適合者の上納。実のところ、それはどの√の人間でも構わない。
ではなぜ√EDENに来てやっているかというと自分達の|縄張り《√マスクド・ヒーロー》の人間を犠牲にするのが嫌なので√EDENの人間で済ませようという極めて利己的な理由であった。
「……ふむ。宗教とは名ばかりの、ただの使い走りの犯罪者であれば。関心は無くなりますな」
「そうかい、それは残念だ。まあ、俺達としても先生達に興味がある訳じゃない。可哀想だが消えて貰うぜ」
「結構。では鎮圧を試みましょう」
礼文の言葉を契機に戦闘が開始される。
●
最初に動いたのはツインテールの少女、カヌレ・ド・ショコラであった。
言葉もなく宙を舞ってのダブルムーンサルト。戦闘員達に先制攻撃をしかける。
「ぐおっ!?」
「テメエッ!」
「キャア」
空中戦技。【淑女の返礼】で複数の戦闘員に一撃を入れて華麗に着地。カーテシーをしてみせる。
そして、にこりと微笑んで口を開く。
「申し訳ございませんが、わたくし、あなた方のような悪党に、お支払いするお金は持ち合わせておりませんの」
それは戦闘員達がこの部屋に辿り着いた時に発した言葉の一つへの返答である。
先程、カヌレが破壊した玄関の修理費請求。
√EDENの人間を拉致して他世界に連れ去る様な者達に弁償する必要があるだろうか。
答えはない、だ。
それにしても、と戦闘員達を見渡し、深く嘆息する。
「まともな人材のいない組織ですの。今日のお仕事は完全にハズレくじですのね」
カヌレは吸血鬼。その名前の通り血液を糧とする種族であるが、現代において勝手に吸血する事は許されない。しかし、√EDENの敵性勢力相手となれば話は別だ。吸血しても褒められる事はあっても責められる事はない。
とは言え誰でも良いという訳ではない。
出来れば美男美女が良い。何故かと言うと美男美女は不思議と血も美味しいのだ。
だから、密かに期待していたのだが……口に出した通りハズレである。
いや、戦闘員達は覆面をしているので美醜は分からない。でも雰囲気で何となく分かるのだ。
美味しくない、と。
「秘密結社の幹部といえば、美形と相場が決まっておりますの。賠償してほしくば、責任者を連れてくるのですね。下っ端では話になりませんの」
希望を込めて言ってみる。戦闘員達の返事は「何言ってんだテメエ」であった。
まあ、カヌレの心情など知る由もないので仕方ない。
●
カヌレとほぼ同時に動いていたのはフォー・フルードである。
彼は『カスタム拳銃』を取り出すと同時に天井に向けて発砲する。
威嚇射撃かそれとも誤射か。答えはそのどちらでもない。
天井に撃ち込まれた弾丸には√能力【|予測演算射撃機構《セルフ・ワーキング》】の権能が秘められていた。これにより敵、味方を含めた行動予測を高確度で行う事がフォーには可能となるのだ。
有効範囲は力量に依存するが現在のフォーならば戦場となる部屋を十分にカバーできる。
フォーの戦闘力であれば戦闘員達に積極的に攻撃を仕掛け、倒す事も可能であっただろう。
だがその場合、戦闘の余波で救助対象者、春木達に流れ弾的な被害が行く可能性が否めない。だから、彼は敵を打ち倒す事よりも春木達をより確実に助ける方法を選択した。
未来視に等しい未来予測能力で援護、牽制に徹して救助対象者達が戦闘の巻き沿いにならないように動く事にしたのだ。
「救助対象者達は自分にお任せを」
√能力者達はフォーの見るところなかなかの手練れ揃い。戦闘員達に後れを取る事はないだろう。救助対象者達の安全を考えなくていいのであれば猶更だ。
礼文が【|次元を彷徨う怪物たち《トゥエルブ・ディメンショナル・シャンブラー》】により招集した『空鬼』という黒い二足歩行の怪物達が戦闘員達と戦うのを『カスタム拳銃』と『|サブマシンガン《Iris》』を的確に使い分けながら戦闘を支援する。
それにしても、とフォーは思う。自らが援護している空鬼達。その異容は普通の人間が見れば正気を削られる様なものなので春木達の意識が無くて良かったな、と。
そんな事を考えながらも射撃の速度を上げていく。
此処は敵地だ。戦闘員達が今いる者達だけとは限らないし、時間をかければ増援の可能性もある。時間は味方ではないのだ。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

※階梯5の姿に変身して服も着ている。
被害者2人は意識不明だが外傷は無いようだ。
ホッと胸を撫で下ろす前に敵集団をどうにかする必要があるが、室内で多数の敵と戦うというのは、ダンジョンで活動する冒険者がよく遭遇する状況であり、私もこういう時向けの√能力を身に付けている。
これを使えば、昏睡状態の被害者を傷付けることなく敵にのみ電撃によるダメージを与え、さらに味方の武器や防具を帯電させることで強化できるのだ。
その後は被害者の側に陣取って、近付いてくる戦闘員をキックで追い払う。
脚に装備したレッグガードも√能力の効果によって帯電しているので、私のキックを敵が手足で受けようものなら、もうビリビリだ。

『この中で10人相手かぁ、バグが起こる確率高そう』
こっちは護衛対象がいるんだからあんまり派手な事はしたくないよ玲子
『大丈夫だって巻き添えになる様な指示は出さないから...あ、何か増えたわ、ゴメン』
『数の暴力にはこっちも数の暴力だよ、ほら【複数アカウント】』
こっちも数増やすの?!ギチギチになるじゃん!
『デコイは囮になってもらってヘイトを引き付ける、あとデコイだから耐久以上のダメージ受けたら急に消える』
デコイに気を取られている所をペネトレイターでどついたり、反撃されそうになったらラベンダー・ブルーで当たり判定消して(ジャミング)、【カウンター】入れる、でいいんだね?

隠密行動終わりほ?
なら我輩もその辺の境界からそっちいくほー。……おまたせだほ。
なんか戦闘員がきびきび動いてるほ。
みんなを我輩と第六感を今を共有するほ。【掌握する感覚】! これである程度機敏さに対応しやすいはずほ。
我輩自体はホーリーワンドで範囲通常魔法攻撃ほ。
たぶん通路のこのあたりから別の√に通じてるほね。
春木さんたちには、敵信者が√EDEN側にいることを考慮してもう少しお付き合いいただいたほうがトータル安全かもほね。
なお、春木さんともうお一人は距離を離しておきたいほ。
万一どちらか精神操作がされていると、技術ならルートブレイカーでは消せないかもほ。
最低限√能力者1人は挟みたいほね。
●
二人の犠牲者を救出に来た√能力者とそれを妨害する戦闘員達との戦闘が続いている。
個々の戦闘力は√能力者達に軍配が上がるが、数は戦闘員が上回る状況だ。
しかし、戦場となった部屋は広いとはいえ敵味方合わせて二十人近く、いや√能力による敵味方双方の招集があるのでそれ以上の人数がひしめいているので流石に手狭である。この為、元々、部屋内にいた√能力者達はともかく、戦闘員側は数人が入るのが精々で数の利を活かす事すらできていなかった。
戦況は完全に√能力者優位で進んでいる。
●
雷を纏った蹴りが戦闘員を吹き飛ばす。戦闘員は感電の為か吹き飛ばされた先で動けない様だ。蹴りを放ったのはベニー・タルホである。
小さなミミズクの姿で調査をしていた彼女だが、この部屋に来た時は階梯5の姿に戻っていた。救助するにせよ、戦うにせよそれが必要と判断したからである。
ベニーが他の√能力者達と共に最初にこの部屋に辿り着いた際に、ベッドで寝かしつけられた二人の被害者を見た時はドキリとしたものだ。だが、冷静に観察すれば意識は不明であるが外傷はない。
その事実に胸を撫で下ろした際に現れたのが戦闘員達である。
袋小路に追い詰められた形であったがベニーは冷静だった。
ベニーの故郷は√ドラゴンファンタジー。ダンジョンが溢れた世界だ。
今でこそ特派員として√EDENで過ごす時間も多いが、ダンジョンでの戦闘経験も豊富な冒険者でもある。そして、ダンジョンで活動していれば、こういう室内で多数の敵と戦うという状況は珍しい話ではない。
つまり、戦い方を知っているという事だ。
初手で【エレメンタルバレット『星旄電戟』】を使用したベニー。
星電気により戦闘員達にダメージを与えつつ自身と仲間達に雷属性による強化を施す。
先程の蹴りによる戦闘員の感電はその賜物である。
感電により行動不能となった戦闘員への追撃は味方に任せて被害者達の傍を離れない。ベニーは彼女達の安全を守る事こそを自身の役割と定めているのだ。
●
見る者に危ない印象を与える蛍光色に戦闘服を輝かした戦闘員がレイ・イクス・ドッペルノインに襲い掛かる。
戦闘員の動きは迅く鋭い。渾身の蹴りがレイの腹部に命中する。その瞬間。
「!?」
レイの姿が弾ける様に、まるで最初からいなかった幻の様に消える。
「デコイだよ!」
そんな声と同時に『|機械的造形のツヴァイハンダー《ペネトレイター》』を構えたレイの一撃が戸惑う戦闘員を襲う。特攻モードで速度を増していた戦闘員であったが、攻撃を放った間隙を突かれる形となり、まともに喰らう事となる。
吹き飛ぶ戦闘員。
特攻モードで攻撃力を増していたがそれは諸刃の剣であり、防御力が著しく減退している状態なのだ。一撃で戦闘員は戦闘不能となる。
『ナイス! でもすぐに次、右の奴!』
「わかった!」
Ankerであり司令塔である玲子の指示の下、攻撃を続けるレイ。またも絶妙に隙を晒している戦闘員に攻撃を加える。
この様に順調に戦闘員を撃破していくレイであるが、攻撃を受け消えたレイは何なのか?
種明かしをすれば最初に戦闘員の蹴りを喰らったレイは当然、レイ本人ではない。
√能力【|メソッド・複数アカウント《デコイ・イリュージョン》】により作られた囮であった。
戦闘員の数を見て『数の暴力にはこっちも数の暴力だよ』と玲子が指示したのだ。
複数作り出されたレイのデコイは客観的に見ればレイとは微妙に違うものの√能力の効果かレイそのものに見える上に本物よりもヘイトを買いやすい。
これにより戦闘員の攻撃を誘導して、その隙を突くというのが玲子の作戦だ。なお、攻撃を受けたデコイが消えたのは耐久以上のダメージを受けたら消えるという性質の為だ。この性質も隙を生み出すのに好都合と言えるだろう。
●
「おまたせだほ!」
異なる|世界《ルート》から霊視により調査をしていたオーリン・オリーブが戦場に到着する。
彼は被害者達が居るであろう場所を確認するや否や戦闘になる事を見越して急いで世界間移動をしてきたのだ。こうなる事は予見できたので予め√EDENに繋がる境界も把握していた為に迅速な移動が可能であった。
「……動きが鈍いほ?」
そして戦況を見てみれば√能力者が圧倒しているのが分かる。しかし、戦闘員の数はまだまだ多い。オーリンは知る由もないが最初に現れた十人から減っているどころか明らかに数が増えているのだ。
しかし、その動き、反応速度は目に見えて鈍い。
それは現在、戦場に残っている戦闘員の殆どが【新規戦闘員部隊】で招集された戦闘員だからであった。数だけは多いが反応速度が半減するという√能力だ。数で圧するという作戦であるのだがそれも屋内では活かしきれていない。
時間はもう少し掛かるであろうが√能力者達の勝利は揺るがない様に思えた。
とは言えオーリンが傍観する理由はない。勝利までの時間を短縮する為に動く。
√能力【掌握する感覚】の発動。オーリンが高い視座から第六感までを駆使して掌握した戦場の感覚を不可視の力により、味方と共有する。
これにより味方の動きが格段に上がる事となる。
ただでさえ動きの鈍い戦闘員達にとって敵の速度が上がるのは致命的であった。
その後、オーリン自身も『ホーリーワンド』から魔法で攻撃を始め……√能力者達により戦闘員は瞬く間に殲滅される事となる。
●
倒された戦闘員達であるが、彼等は全員、光の粒子となって消え去った。
部屋に残ったのは√能力者と犠牲者二人のみだ。
一時の平穏を得たが、此処はまだ敵地である。いまだ眠り続ける二人を連れて脱出する必要があった。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
第3章 ボス戦 『Mrテトラヘドロン』

POW
卑怯とは言わないでくれよ?
事前に招集しておいた12体の【高い戦闘力を持つプラグマ戦闘員達 】(レベルは自身の半分)を指揮する。ただし帰投させるまで、自身と[高い戦闘力を持つプラグマ戦闘員達 ]全員の反応速度が半減する。
事前に招集しておいた12体の【高い戦闘力を持つプラグマ戦闘員達 】(レベルは自身の半分)を指揮する。ただし帰投させるまで、自身と[高い戦闘力を持つプラグマ戦闘員達 ]全員の反応速度が半減する。
SPD
私の目は全てを見通す
【全てを見通す真理の目 】により、視界内の敵1体を「周辺にある最も殺傷力の高い物体」で攻撃し、ダメージと状態異常【絶望】(18日間回避率低下/効果累積)を与える。
【全てを見通す真理の目 】により、視界内の敵1体を「周辺にある最も殺傷力の高い物体」で攻撃し、ダメージと状態異常【絶望】(18日間回避率低下/効果累積)を与える。
WIZ
真理の目
敵に攻撃されてから3秒以内に【三角頭の真理の目から放つ光 】による反撃を命中させると、反撃ダメージを与えたうえで、敵から先程受けたダメージ等の効果を全回復する。
敵に攻撃されてから3秒以内に【三角頭の真理の目から放つ光 】による反撃を命中させると、反撃ダメージを与えたうえで、敵から先程受けたダメージ等の効果を全回復する。
●
『極星天宮会』の戦闘員達との戦いに勝利した√能力者達。
あとはこの施設からの脱出が成れば一先ず今回の依頼は成功と言えるだろう。
「施設から出て○○○まで連れて行けば二人の回復や後処理はしてくれるという話だほ」
今回の予知を知る事となったギルドと先程まで連絡を取り合っていた√能力者が言う。
報酬も出ない依頼であるが犠牲者の回復等、必要であればする用意はあるらしい。
それを利用するのもしないのも実際に戦って助け出した√能力者に任せるとのことだ。
ともあれまずはこの施設から出る事が先決だ。
いまだ意識のない二人を連れて施設からの脱出を急ぐ√能力者達。
●
それは広大な屋内運動場を通り過ぎようとした時であった。
「極星天宮会の戦闘員達は弱兵ではない。君達を褒めるべきなのだろうね」
そんな言葉と共に圧倒的な存在感を持つ怪人が√能力者達の前に立ち塞がる。
「その二人は『プラグマ』に必要だ。置いて逃げるのであれば追わないよ」
プラグマ幹部『Mrテトラヘドロン』。
この怪人を倒さない限り二人を助ける事はできない。
※二人の救出対象者について
未だ目を覚まさない春木さん達ですが、原因は√能力にある為に自然に目を覚ます事はありません。一応、【ルートブレイカー】又は状態異常を回復する√能力があればその効果を打ち消し、目を覚まさせる事は可能です。
とはいえ目を覚ましたとしても二人から有益な情報を得ることは出来ません。
監禁されていたという意識も異世界に拉致される寸前であったという意識もないのです。
二人の認識では普通に『星に祈る会』で活動していたはずなのにこの状況は何???という感じです。
プラグマ幹部を倒し、ギルド関係者に引き渡して貰えれば後はギルドが上手い事やってくれるとお考え下さい。
==================================
第二章もお疲れ様でした。
戦闘員との戦いは皆さんの完勝で終わっています。
第三章の状況は二人を連れて施設から脱出する最中に敵に立ち塞がられたとお考え下さい。
戦場は屋内運動場。かなり天井は高く広いので自由に戦って頂けると思います。
なお、倒さなくても誰かが足止めしている間に二人を連れて逃げるとかでも依頼は成功です。
勿論、倒してしまった方が確実ですが。
第二章エネミー 『Mrテトラヘドロン』 LV45 戦力値640
それではよろしくお願いいたします。

アドリブ、連携歓迎
(戦闘分析終了、危険度大、正面突破は非推奨)
あなたの様な存在が来る前に脱出を図りたかったのですが……任務更新、最終段階へ移行。戦闘を開始します。
【戦闘】
敵はいわゆる格上の存在。正面から当たるというよりは連携を重視したいところです。基本的に救助者の近くから狙撃銃を使い味方を【援護射撃】で手伝います。
致命傷を与えるというより、相手の行動を銃撃で制限し味方の必殺の一撃のサポートをする。又は救助者を連れた脱出を援護します。
敵が√能力によって攻撃しようとして来た場合、発動に合わせてこちらも√能力発動。
【狂気耐性】【呪詛耐性】で状態異常の絶望に耐えながら√能力による反撃を行います。

「笑止なことをおっしゃる三角頭様ですの。わたくしたちの使命はこちらのお二方をお救いすること。引き下がるのてあれば、そちらこそ、命だけは勘弁して差し上げてもよいのですの」と、一応、交渉しつつも、聞くとは思っていないので、戦力として、脱出の足として、【念動力】でハイパーエレガントキャビンを呼び寄せる。そして、そのまま、√能力を発動。奇襲する。「残念ですの。もっと美味しそうな方がお見えになると思っていましたに。こうなれば、あなた様は用なしですの。この邪教の館もろとも消えてもらいますの」
戦闘終了後、全員を乗せて、脱出。行き掛けの駄賃でハイパーエレガントキャビンの【一斉射撃】【レーザー射撃】等で施設破壊

・行動
敵の視線を観察することで狙いを想像し、精霊銃に何かが起きる寸前にそれを投げ捨てて、脱ぎ捨てた上着で視線を遮りつつ階梯3の姿に変身して鉤爪で襲い掛かる。
闇の中ではないから隠密状態にはならない。
・
犠牲者を普通の病院に連れて行っても治療できるとは限らないので、√能力者によるバックアップを得られると知って一安心だ。
と思ったら、またもや邪魔者のお出ましである。
敵が一ツ目で見ている先は……私の腰に吊るされた精霊銃?
何かしら企んでいるのだろうが、敵が銃にだけ警戒を向けてくれているのなら、むしろありがたい。
まだ見せていない私のもうひとつの武器。
階梯3の姿から繰り出す鉤爪の一撃をお見舞いしてやろう。
●Mrテトラヘドロン
最後の障壁として現れたプラグマ幹部『Mrテトラヘドロン』。
彼としてもこの状況は想定外である。
『極星天宮会』から適合者二人を受け取るだけの簡単な仕事。
その筈であったが訪れてみれば襲撃を受けており、戦闘員は壊滅状態。
被験者二人は攫われたという。
これで犯人達が逃亡済みであれば全責任を『極星天宮会』に取らせても良かったが、犯人達はまだ施設内に居るという。
こうなればテトラが座視すれば『プラグマ』への反意を高める事になるだろう。
元々『極星天宮会』を抗争で下して『プラグマ』傘下としてからそこまで月日は経っていないのだ。
テトラは予想逃走経路から最も戦闘に適した地点で待ち構える事にする。
●開戦
「置いて逃げるのであれば追わないよ」
というテトラの言葉に嘘はない。此処まで来て逃げる人間に興味はないからだ。
見れば√能力者は6名。その瞳に怯えは些かも感じられずに戦意が見て取れる。
彼等との戦いは良い|混沌《・・》を齎すかもしれないね、とテトラは機嫌をよくする。
「笑止なことをおっしゃる三角頭様ですの。わたくしたちの使命はこちらのお二方をお救いすること。引き下がるのてあれば、そちらこそ、命だけは勘弁して差し上げてもよいのですの」
そう挑発する様に答えたのはカヌレ・ド・ショコラだ。
幼い表情に見合わぬ強い意思の光を秘めた瞳でテトラを貫く。
「ふむ、それでは交渉決裂という事だね」
テトラの言葉と共に12体の『プラグマ』戦闘員達が音もなく現れる。
その動きは統率が取れており、一人一人が先程戦った戦闘員よりも力を秘めているのが感じられた。
「即断ですわね?」
「交渉の余地があるとでも?」
カヌレとしてもテトラが「はい分かりました」と引き下がるとは全く思っていない。
しかし、口振りから交渉の様なものを楽しんでくるのでは、とは思っていたのだ。
要は時間稼ぎである。その間に施設の玄関に突撃させた『|ハイパーエレガントキャビン《巨大な銀狼が引く馬車》』を念動力で呼び寄せて奇襲するつもりであった。
しかし、テトラは全く乗って来ず、流石に馬車の到着まで時間が足りない。
そんなカヌレの困った感覚を察知したのかフォー・フルードか会話に参加する。
「余地はありませんか。あなたの様な存在が来る前に脱出を図りたかったのですが……任務更新、最終段階へ移行。戦闘を開始します」
「潔いですね、ええ、開始しましょう」
テトラの意識を自身に向ける事に成功したフォー。最後の戦いが開始される。
●先制
テトラの最初の標的はフォー。そういう空気の中でテトラは視線をベニー・タルホに向ける。何気のない動作。しかし、ベニーの野生の勘が激しい警鐘を鳴らす。
テトラの視線―三角頭に描かれた眼の向かう先を視線と言って良いのならばだが―は自身が腰に吊るしている精霊銃に向けられている。
何かがヤバいという勘を信じて精霊銃を投げ捨てる。テトラの視線がそれを追う。
感覚は正しいという確信を得つつ、テトラが精霊銃に注意を払っているのは好都合と上着を脱ぎ棄てる。
精霊銃、そして投げ捨てられた上着。
それらに注意が引き寄せられた僅かな時間でベニーの姿は階梯3の姿に変じる。
そして、間髪入れずに跳躍。
「なんと!?」
「貰った!!」
【スマート・ビースト】。鋭い脚の鉤爪がテトラを襲う。
もし、テトラが戦闘員を招集していなければ、この奇襲に対応できたかもしれない。
しかし、事実として招集しており、その√能力の特性により反応速度は半減していた。
それでも並みの√能力者であれば十分に対応できていただろうがベニーは並ではない。
躱そうとして躱しきれずにテトラに鋭い一撃を与える。
「やりますね」
傷を受けたテトラだが致命傷ではない。
一歩下がったと思えば即座に踏み込んで蹴りを放つ。常人ならば軽く破壊する威力。
それを階梯3の身体能力を活かして大きく後ろに飛んで回避するベニー。
しかし、その回避地点では既に戦闘員が攻撃の構えで待ち受けている。
蹴りを回避される事を見越した連携だ。ベニーはある程度の負傷を覚悟するが。
「させません」
そのフォーの声と同時に激しい銃音が響く。
フォーの援護射撃が戦闘員達を襲い、ベニーを待ち構える陣形が僅かに乱れる。
その僅かな乱れを見逃さずに攻撃を受ける前に再び跳躍して間合いを取るベニー。
●真理の目
「ふむ」
テトラがフォーの方を見る。先程、ベニーが感じた感覚を受けて構えるフォー。
そこに思いも寄らぬ角度から放たれた魔弾がフォーを貫く。
「なっ!?」
衝撃と共にフォーに襲い来る絶望の感覚。
フォーを襲った魔弾は先程ベニーが投げ捨てた精霊銃からのものだ。
勿論、暴発などではない。テトラの√能力【私の目は全てを見通す】の権能である。
テトラはこれにより精霊銃を一時的に支配下に置き、死角からフォーを撃ったのだ。
フォーを襲う絶望もまた√能力によるもの。
常人であれば絶望に覆われ行動不能になるか下手をすれば発狂する可能性すらある。
しかし、フォーの精神は不屈であった。
それがベルセルクマシンであるが故かここまでの|起動時間《人生》で得たものなのかまでは分からない。
いずれにせよフォーは絶望を捻じ伏せて最適解をとる。
【|後の先《セカンドディール》】の発動。流れる様な動作で放たれた銃弾はテトラの腕を貫く。
同時に√能力の権能により先程の魔弾による負傷。そして、いまだ精神を蝕んでいた絶望が最初からなかったかのように消える。
「素晴らしいですね」
ベニーとフォーによる攻撃により確実にダメージを累積させつつもテトラの存在感は揺るがない。
その称賛は余裕か虚勢か。そこに激しい破壊音が近付いてくる。
●馬車!
「残念ですの。もっと美味しそうな方がお見えになると思っていましたに。こうなれば、あなた様は用なしですの。この邪教の館もろとも消えてもらいますの」
カヌレの勝ち誇った声。彼女はずっと念動力により馬車の呼び寄せを続けていた。
聞こえてくる破壊音はその到着を知らせるものだ。
屋内運動場の入口を破壊して突入して来る『|馬車《ハイパーエレガントキャビン》』。
「ハハハ、邪教の館とは。『極星天宮会』の者達が聞いたら怒りそうですね」
あるいは苦笑しつつ認めるか。カヌレによる『馬車』の奇襲。
奇襲とは言え何かが近づいてくることは破壊音から分かっており、不意を突くと言うほどではない。
しかし、その戦闘能力は想定以上だったかもしれない。
馬車を曳く巨大な銀狼が突入の勢いのままに突進して戦闘員の一人を噛み咥える。
そして、カヌレの方を見る。心なしかドヤ顔の銀狼。褒めて欲しいのかもしれない。
「良いですわよ! そのまま蹴散らしなさい!」
馬車の到着と共に銃剣『ベールヌイ』を構えて射撃を開始するカヌレ。
フォー、ベニーもこれに乗じて攻勢を強め、戦闘は激化していく。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

怪しいボス来たほね。
戦闘員は何処となくチンピラ風味があったけほ、ボスは理知的……いや、これは物差しが間違いだほね。
悪い奴は退けるほ。
Mrテトラヘドロン、眼の力を得意とするほ。なら閃光で眼を眩ませるほ。
【ウィザード・フレイム】詠唱開始ほ。
いわゆる「全能の目」を連想させる頭の被り物。その真ん中の目が真理の目ほ? そこに炎を閃光に昇華して叩き込むほ。
戦闘員をおかわりされても、範囲化させた閃光で諸共包んであげるほ。
おっと、この術使っている間は移動できないほ。
物理的なおそうじはみんなにお願いするほ。
あとついでに玄関の馬車痕は炎で修理しておくほ。ウィザードフレイムの開発者優秀だほ。

うわやだまた数増えてる、しかも強化個体じゃない
『でも反応速度は低下してるね、囲まれさえしなければ案外』
これゲームじゃなんだよ玲子、リアル死にゲーだよ!
『そうだよ、だから【逃げれば当たる】ってんだ、突っ込め。...ああもういい、私動かすから』
ウワー!勝手に動かさないで!
『今のアンタは、相手が回避する方向が分かる状態』
『攻撃タイミングを見計らって【ジャストガード】でパリイ取ってすかさずノーモーション技の【カウンター】』
『攻撃時はエイムロックで確実にタゲを取る』
『ペネトレイターは詐欺判定状態だから見た目以上に攻撃範囲が大きくなっている、テレフォンパンチと油断させておいて無を当てて【吹き飛ばし】だ』

二人を置いて行け、とは。無意味な問いかけをするものですなぁ。
そのような選択をする輩がここに来る訳がないでしょう。
Mr……よもや、ご自身を過大評価されているのではありませんかな?
あなたが姿を見せれば、我々が慌てふためき許しを請うだろうと?
いやあ、そこまで厚顔無恥なはずはない! ははっ、失敬失敬!
さて、雑談はこのくらいにして。強敵を突破する手を講じましょう。
脅威的な√能力は、その目。特にビームです。
なれば……ニャルラトホテプを招いて、真理の目の光を逸らすという願いを叶えてもらいましょう。
当たらなければ回復も起こらない訳です。味方の補助にもなりますな。
攻撃は、魔力を溜めて全力魔法を叩きつける方向で。
●Mrテトラヘドロン
√能力者達の前に立ち塞がった『Mrテトラヘドロン』であるが、彼には当然勝算があった。
1対1では実力差で勝てると考えるテトラであるが、6対1で圧倒できるとも思っていなかった。
そこまで自惚れてはいないのだ。
戦闘員達で数の不利を補っても反応速度半減の代償がある為にトータルでの戦力比は変わらないだろう。
それでも勝てると思ったのは√能力【真理の目】の権能に自信があったからだ。
真理の目から放つ光は敵にダメージを与えるだけではなく受けた直後であれば自身のダメージを完全回復させる。
これにより持久戦になれば勝てるという見立てがあった。
●混沌への願い
「しかし、二人を置いて行け、とは。無意味な問いかけをするものですなぁ。
そのような選択をする輩がここに来る訳がないでしょう」
戦いが続く中で角隈・礼文が少し考えれば分かる問いをした学生を諭す様な口調でテトラに語り掛ける。
「Mr……よもや、ご自身を過大評価されているのではありませんかな?
あなたが姿を見せれば、我々が慌てふためき許しを請うだろうと?
いやあ、そこまで厚顔無恥なはずはない! ははっ、失敬失敬!」
呵々とした笑い。明らかな挑発である。対するテトラも肩を揺らして答える。
「ハッハッハ、そうだね。確かに本当に逃げる可能性は低いとは思っていたよ。
だが、ここまで手こずるとも考えていなかった。
君達を過小評価、私自身を過大評価していたと言われれば否定はできないね」
愉快そうに言う。此処までの戦いは礼文達が優勢である。
持久戦になる事は見越していたが、此処まで劣勢になるとまでは考えていなかったテトラだ。
「しかし、勝敗は最後の瞬間まで分からない。そうだろう?」
「それは確かにそうですね」
さて、と礼文は考える。戦況は優勢である。これは確かだ。
しかし、決定打が足りていない。それはテトラの持つ【真理の目】により彼が回復するからだ。
勝利する為にはこれを封じる必要がある。
「にゃる しゅたん にゃる がしゃんな」
礼文が呪文を唱え終わった時、戦場に黒い男がいつの間にか忽然と存在していた。
人間災厄「ニャルラトホテプ」。千の化身を持つとも言われるモノの一体だ。
これに願いを叶えてもらうのが礼文の√能力【ニャルラトホテプとの接触】である。
「――真理の目の光を逸らすことを願います」
礼文が願いを口にすると黒い男は表情が判らないにも拘わらずニヤリと哂ったイメージを残して消える。
その瞬間、テトラから放たれた光が礼文を襲った。
「ほう」
しかし、光は礼文からそれて関係ない空間を穿つ。テトラは感心した様子を見せる。
「なかなかの支配力ですね。効果範囲はどの程度でしょうか? 効果時間は? 興味深い」
「さて、どうでしょうかな。それをMrが知る事は出来ないと思いますが」
テトラは考える。光は逸らされた。では無効化されたのか。そうではない。
光自体は放つ事が出来る。感覚的には標的から強制的に逸らされるというところか。
ならば目標を定めずに乱射してみてはどうか。『敵』は礼文だけではない。
●叡智の炎
オーリン・オリーブがテトラが出現した時に最初に思ったのは「怪しいボス来たほね」であった。
救助者を確保した際に戦った戦闘員は何処となくチンピラ風味があったのだ。
しかし、ボスとして現れた理知的に見える。
そこまで考えてオーリンは首を振る。「いや、これは物差しが間違いだほね」と。
チンピラ風味だろうと理知的であろうと結論は変わらないのだ。「悪い奴は退けるほ」である。
礼文同様、オーリンもまたテトラの【真理の目】こそ封じるべきモノと考えた。
回復手段を潰す事が出来れば後は他の皆の力で押し切る事ができると。
その為の手段として【ウィザード・フレイム】の詠唱を開始する。
3秒の詠唱毎に『魔法の炎』を一つ創造する√能力。
強力であるが、詠唱中の移動は封じられる為に使いどころの難しい能力である。
今回は信頼できる味方が居る為に行使に不安はない。
一つ、二つ、三つと詠唱を続けるごとに増えていく『炎』。
オーリンはこの『炎』を『閃光』にまで昇華させる。
そしてこの『閃光』をテトラの「全能の目」を連想させる頭、光が放たれる目に叩き込むことによって目潰しをして【真理の目】の発動を妨げるのだ。
礼文の【ニャルラトホテプとの接触】による命中率の著しい低下を乱射する事で補おうとしていたテトラにとってこのオーリンによる妨害は致命的なモノだった。これにより【真理の目】は完全に封じられたと言って良い。
また、【ウィザード・フレイム】の役割は目潰しだけではなかった。
オーリンの意思によって攻撃や修理など様々な属性を纏わせる事が出来る。
これにより戦闘員と乱戦を繰り広げている馬車の修理をしたり、戦闘員達に閃光を喰らわせて動きを阻んだりもして見せる。
●レイ無双
【真理の目】を礼文とオーリンが封じている間に戦闘員の数を減らしていったのはレイ・イクス・ドッペルノインであった。
彼女の動きは疾く鋭い。
戦闘員の攻撃を『|流線型の機械的造形ツヴァイハンダー《ペネトレイター》』を巧みに操り絶妙なタイミングで|受け流《パリィ》したかと思えばその動きのまま|予備動作なし《ノーモーション》でカウンターを放って吹き飛ばす。
吹き飛ばした時には既に次の敵へと向かっており、また戦闘員を一人吹き飛ばす。
その動きは流麗な舞う様なもので見た者はレイが熟練の素晴らしい戦士だと判断するだろう。
とは言えレイの戦いながらなされていた玲子との『会話』を聞いていれば違った感想を持つかもしれない。
まあ、無双しているという事実は揺るがないのだが。
「うわやだまた数増えてる、しかも強化個体じゃない!」
慌てた様子のレイ。
『でも反応速度は低下してるね、囲まれさえしなければ案外――』
レイと視覚を共有しており、戦闘員の動きを冷静に観察する玲子。
「これゲームじゃないんだよ玲子、リアル死にゲーだよ!」
『そうだよ、だから【|メソッド・逃げれば当たる《バックステップキラー》】ってんだ、突っ込め』
「ムリムリムリ!」
『……ああもういい、私動かすから』
「ウワー! 勝手に動かさないで!」
急に動きが良くなって戦闘員相手に無双しだすレイ。なお、体の支配権は玲子だ。
『今のアンタは、相手が回避する方向が分かる状態』
『攻撃タイミングを見計らって【ジャストガード】でパリイ取ってすかさずノーモーション技の【カウンター】』
『攻撃時はエイムロックで確実にタゲを取る』
『ペネトレイターは詐欺判定状態だから見た目以上に攻撃範囲が大きくなっている、テレフォンパンチと油断させておいて無を当てて【吹き飛ばし】だ』
「ううっ、分かった、分かったから」
ポンポンと矢継ぎ早に指示を出して来る玲子。
始めこそ玲子が動かしていたが、途中からレイも開き直って自分で動き始めている。
レイの活躍、そして他の√能力者達の奮戦もあって招集された戦闘員達は全滅する事となった。
●勝利
「さあ、これで最期ですぞ。お覚悟を!」
「合わせるほ!」
「残念ながらその様だ。君達は素晴らしい素材だった。次に会う時は私も準備をして臨みたいね」
戦闘員の全滅と時を同じくして練りに練り上げた礼文の全力魔法とオーリンの無数の魔法の炎がMrテトラヘドロンに炸裂する。
此処までの戦闘で満身創痍であったテトラにそれを防ぐ力は既になく跡形もなく消滅する事になるのであった。
●その後
プラグマ幹部撃破後に阻む者はなく、春木達二人を連れた√能力者達は無事『星に祈る会』施設から脱出する事に成功する。
脱出の際にオーリンの魔法の炎により、戦闘により破壊された場所や、馬車により破損した玄関を修復しておいたので今回の件が√EDENにおける大事件となるかは微妙だ。『極星天宮会』が積極的に被害届を出す事はないだろうし、物証もないのだから。
「ウィザードフレイムの開発者優秀だほ」とはオーリンの台詞である。
施設を脱した√能力者達は馬車に春木達を乗せてギルドの指定した場所へと赴く。
そこで彼女達を引き渡し、今回の一件は落着となる。
後日の事になるが春木達は無事に目を覚まし、日常に帰って行ったという。
スムーズにいったのは『心を守るために慣れ、忘れようとする力』という√EDEN特有の事情もあっただろう。
流石に二人は『星に祈る会』にはもう行っていない様だ。
『星に祈る会』も大人しくしている。少なくとも行方不明者の話などは聞こえてこない。
裏で何があったのかまでは流石に分からないが、√EDENを護る能力者達に目をつけられたのは自覚しているだろう。
『極星天宮会』そして『プラグマ』との戦いはまだ続くがそれは別の物語となる。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功