⚡️現代において博士は基本的に自由
●|理由なき反抗《第三者の逆ギレ》
「ハァ〜〜…………」
深いため息と共に星詠みの大門・博士は集まった√能力者をチラッと見、また手元の資料らしき紙束へと目を落とした。わし一応星詠みなんだけど。なんだけどさ〜ほんとマジで……ハァ〜〜…………。
あの、何があったか知りませんがさっさと|予知《依頼》をよろしいでしょうか。そんな空気の中、大門は口を開き、紙をバッサバッサと扇の様に使って仰ぐ。
「あのさぁこれさぁ!! メチャ許せんよなぁ!!!?!」
主語も述語もすっぽ抜けた突然の怒りに、これはもしや老人特有の|アレ《ボケ》か? と訝しむ√能力者達へ様々な冊子状の資料がぞんざいに配られ、眺めてみればそこには……。
『√WZにおける戦闘機械都市川崎近郊の被害状況』
『『レリギオス・オーラム』の台頭』
『羽田空港に見られる大規模建造物について』
『捕虜としての√能力者の現状』
など言った不穏なタイトルが踊っていた。
「だって|機械如き《・・・・》がよお! 生意気に反乱とか……じゃがその自立思考まことに向上心高し♡ スクラップに成りて所詮己は鉄屑と鉄工所にて身の程を知れ♡」
情緒不安定に怒りながら机をバーンと叩き、資料を散乱させる大門を見て、皆思った。
あ、ろくでもないやつや。こいつ星詠みである前に生意気な機械にオラつくタイプの科学者や。だが気付いた時にはもう遅い。
「まぁ〜とりあえず説明するがのう。現在√WZで色々……あるじゃろ? なんかこうアレが……ほんで……」
もうダメだこの星詠み……ということで要約です。
現在√|ウォーゾーン《WZ》川崎地区周辺は『レリギオス・オーラム』という機械派閥に支配されている。さらにその統率官『ゼーロット』はとある野望を抱き√EDENへの進行を企てているらしい。
しかし内部に潜む裏切り者などの工作により、事態は停滞しているようだ。故に、この機に乗じて√WZへ乗り込み、反撃の狼煙をあげよう……のが今回の大まかな任務。
そして、主な作戦は下記の5つ。
作戦1「統率官『ゼーロット』の撃破」
「あいつ羽田に城を建ててやがるとかよぉ……機械の癖に生意気じゃよなぁ!?」
作戦2「オーラム派機械群の壊滅」
「なんぞたくさんおるらしいぞい。破壊のボーナスタイムか?」
作戦3「大黒ジャンクションの破壊」
「ここから√EDENに進行する計画だとか……は? 許すまじ」
作戦4「√能力者の解放」
「人間が大量に捕まっとるらしいからのう。破壊もいいけど救助も大切じゃな」
作戦5「カテドラル・グロンバインの破壊」
「なんかどえれえ合体ロボとかがいるらしいが……その姿、日の目を見ぬと知れ??」
要約が大門に邪魔をされながら、つまりまあ、やることがたくさんあるってことです。けれども──。
「二兎追うものは一兎も追えず♡ なんならよそ見運転ダメ絶対……ってことで。おぬしら、何事も経験じゃ。現地で上記の中からひとつ選び、計画を建てながら己が使命を全うせい」
つまり、丸投げ。ううん、違う違うこれは未来への投資。おぬしらの可能性は無限大で未来は一つじゃない……だのなんだの後ろで言うてはりますけどそれは無視して──√能力者達は手元の資料を確認し、視線を交わして頷きあう。
結局、信じられるものはこの場に集った仲間だけ(現地で協力を取り付けられたらそれはそれで心強いが)と言うことでじゃあ皆さん、自己紹介がてら早速作戦会議でも……。
「……ってな訳でさあ行けい!! √能力者よ!! 奴の首印を取ってこい!!!
帰ってきたら|ファミレスおごったげるぞ《勝利の宴じゃ》♡」
団結しかけた√能力者の後ろでうるせえなあこの星詠み……宴やっす!! ドリンクバーは……多分つかないなこれ。なんならライスやパンも怪しいな。
そんなことが浮かんだけれど、みんな心が大人なので胸にしまいつつ、まあじゃあ、かる〜く世界救いに行っちゃいますか──ではいざ、戦闘機械都市『川崎』へ。
マスターより

●導入と星詠みで全てを説明していくスタイル。初めまして、あるいはこんにちは。仮釈放と申します。
今回はもう完全に『そういう』ノリですよろしくお願いします。
●特記事項
様々なお知らせの通り、詳細は特設ページを参照していただくとして。
特筆すべき大きな点は「皆さんに話し合いをしてもらい、方向性を決めていただく」ということですが……発言って勇気が入りますよね。大丈夫、安心してください。私が一番怯えています。
それはともかく、という訳で「参加したいけどなんかよく分からん」「雰囲気だけで味わっときたい」的な方向けの終始軽いノリとなっております。
上の💬で話し合いながら、方向性を決めていただくことは他と一緒ですが「この作戦で行きたいけど発言内容が浮かばないな〜」と言う時は、挨拶や好きなお惣菜とかと共に、作戦番号を言うとかくらいでもいいんじゃないでしょうか。ここにおいて発言は(規約を守れば)基本的に自由。
その代わり、終始こんなノリです。代償がデカすぎる。
●章進行・受付などについて
話し合いで作成を決める→断章掲載→第一章のプレイング送信募集、と言うのんびりとした形式を予定していますので、受付・〆切はタグにてお知らせいたします。
ちなみに作戦決定後も💬にて、プレイングなどのご相談をしていただいて結構です。どうせならいい感じに、わいわい参りましょう。大丈夫怖くないって。多分。
それでは、よろしくお願いいたします。
32
第1章 冒険 『「皆さんの戦術や過去を教えてください」』

POW
(説明が苦手なので実際にやってみせる)
SPD
ゲリラ戦術や孤軍奮闘した経験を教える。
WIZ
地形を利用して大軍を打ち破った経験、撤退と続行の判断について……様々なことを教える。
√ウォーゾーン 普通7 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
●|イカれた仲間を紹介するぜ《イカれた仲間を紹介するぜ》
√ウォーゾーン──突如出現した戦闘機械群により人類の生存が脅かされる過酷な、終わりなき闘いの世界。
圧倒的な機械の侵略により、都市は次々と生命を自動攻撃する「戦闘機械都市」に改造され、いまや最盛期の30%以下に減少した人類はそれでもなお、己が身体を、倫理を、生命まですり減らして争っていた。
あと名物の闘技場で√能力者達は別の意味での戦いに身を投じていたりもしたが。まあそれは置いといて。
そんな過酷な世界へ助力すべく、ここに星詠みの、世界の呼びかけに応じて錚々たる|勇敢なる戦士達《バーサーカー》が集結したのであった──大丈夫褒めてる。褒めてるからね? いい意味でさ。うん。
|閑話休題《それはさておき》。
人類生存地区の安全圏にたどり着いた√能力者達は、一息つくと地図と資料を拡げて作戦を練ることにする。様々な提案がなされたがまずは目的地を決めねば始まらぬ……そんな中、ふと、誰かがここからほど近い|天蓋大聖堂《カテドラル》『カテドラル・グロンバイン』に目をつけた。
現地の人間によると厳重な武装と軍勢に守備されているが、逆に言えばそれ程重要な施設。どうやら川崎で最も大きいロボット工場である……と言うことは、破壊した時のダメージは計り知れないだろう。
何より……。
〜参加者の声(抜粋)〜
「新たな風を吹かせちゃうぜ☆」
「派手に破壊したい! 爆弾なげたい!」
「なんかすごい兵器を爆破してゼーロットを泣かせましょう」
「家人が留守の間に散々荒らして帰る⋯…いいじゃないの」
「やります! やらせてください!!」
「好きなお惣菜はコロッケ」
「ファミレスはドリンクバーでお願いします」
なんて|頼もしい《頭√WZな》んだ……√能力者達!! あとなんでナチュラルに爆破で決定してるんだ√能力者達!
|今日日《きょうび》、心霊テロリストでもそこまで爆破しなくない?
……さて、もう細かいことは置いといて。
大まかな作戦は決まったが、重要なのはもうひとつ。
もしかしたら集ったメンバーの中には偶然、顔馴染みやチームメイトがいるかもしれない。以前に同じ任務を遂行した者もいるかもしれない。
しかし、だからと言ってかれらの全てを知っている訳ではないだろう。
初対面なら尚更、打ち解けることが重要である。
『己の得意とする戦法』『愛用の武器』『どの様な気質の人間か』『意気込み』『座右の銘』『ファミレスいいよね』……後半は特にいらないかもしれないが、ともかく円滑な人間関係には、相互理解やフレンドリーな空気が大切であることは頭心テロな√能力者達も頷くことだろう。
と言う訳で。
敵を知るにはまず味方から──はい、それでは自己紹介タイムです。

なるほど~、自己紹介はいい案ですね。ここにいらっしゃるの、友達から初めてさんまで入り乱れてますが書き出すとキリがなさすぎるので全員初対面のテイでお話しますね~。
改めましてボクはヨシマサ・リヴィングストンといいます。√WZの戦線工兵です。髪がアフロになってる?あはは、次の章で治るので気にされなくて大丈夫です~。このぐらいの爆発は戦場でいつだって浴びてますからね。
特技は~…皆さんがお見せしてくれたような爆発物を√能力で瞬時に作ることがボクの特技ですね。他にも|魚になるの《インビジブル化》が特技です。が、一章なので残念ながらここでは出来ません。これは次の章でお見せしましょう!乞うご期待!

あっ、どうも、レイです
多分√WZ出身です、覚えているのはそれくらい
『合体ロボ系ヴィラン殴りに行く系?それ系は合体したら絶対暴走するオチじゃん、肝心なもん足りないとかで』
あぁ、この天の声は|居候先の家族《Anker》の玲子、気にしないで
自分は白兵戦も遠距離戦も両方こなせる感じかな、純粋なアタッカー――
『嘘つけ、私が|クソゲー死にゲー《理不尽にも吹き飛ぶ程の経験》で学んだメソッドを駆使する走者だよお前は』
変な事言わないで!
そ、そう、走者...火力上乗せして一方的にボコったりワンパン狙いとかするかな...
『こいつ急に消えたり壁にめり込んだりゲッダンする事もあるけど、仕様だから気にしないでね』

うさてんちゃんだヨ⭐︎ヘンテコ道具(呪具)がいっぱいあるお店うさてん堂で祀られてるヨ⭐︎遊びに来てネ⭐︎
敵ちゃんとの遊びカタ?うさてんちゃんの重さや大きさを気分によって変えて棺桶とかで殴るヨ⭐︎うさてんちゃんはニンゲンちゃんがだいすきだからマネっこしてるし、減らそうとするのは許せないんだヨ⭐︎
あとはヘンテコ道具を使ったりが多いカナ⭐︎例えばピョッピョピョン♫(ド◯えもんSE)空欄絶許★プロフ帳⭐︎スカスカのままプロフ帳の持ち主に返すと、その空欄を埋めるために持ち主が書き込んだコトが本当になっちゃうヨ⭐︎ダイジョーブ⭐︎書いてもらった情報は個人情報保護の観点から目的外使用はしないコトを誓うヨ⭐︎

ウェ〜イ☆ ゼーロットくん見てる〜?
今からみんなで、ゼーロットくんの大事なロボを……メチャクチャにしちゃいま〜す!
てなワケで買っちゃった、ウェアラブルカメラ☆
大規模作戦なんてテンションあがっちゃうぜ!
リサちゃん、初めましての人とも仲良くするんだぜ〜。
なになに〜自己紹介〜?
タケちゃんは、物部・武正。イケイケ宇宙で無害なチャラ男だぜ〜! ウェイと鳴くぜ。
リサショのみんなは知ってるよネ☆
得物はハチェットと〜、宇宙☆
今回は特別に爆弾も用意しちゃったぜ〜!
オカルティック&コズミック的なカンジで、リサちゃんと頑張るぜ〜!
ま、それなりに『オシゴト』には慣れてるからさ。頼りにしてよ、爆破フレンズの皆サマ〜☆

『√EDEN』……リサチャンとタケチャンのオウチ……。
『侵攻』ダメ……ゼッタイ……。
『やられる前にやる』……『徹底的』に……『破壊』スル……。
アト……『大門博士』にオゴッテモラウ……イッパイ タベル……。
リサチャンは……『お肉』がスキ……。
ドリンクバーも……ツケサセル……。
『爆破フレンズ』のミンナ……シクヨロ シクヨロ……。
リサチャンとモウシマス……カワイイ『テディベア』……。
『リサイクルショップ』の……キュートなマスコット……公認……。
『ふわぽこ』と『|呪物《オトモダチ》』で……タケチャンとガンバル……ウェ~イ……。
(初めましての方々に近づき、踊って可愛さをアピール)

博士の自由に対抗してみたかったので相談せずにいきなり登場だワン!
…いや、それ以上のネタはないのだけどね?対抗したけど博士とは初対面だった気がするニャン
という訳で、初めましての人も見知った人もこんにちは。僕は広瀬・御影だワン
相談は見てたけど、真面目に話進んでるからいっか、って感じで。ものぐさでテキトーなのが僕だニャン。異論もニャイし
戦闘は銃で支援射撃してると思うのだワン。条件整えたらとっとと脱出して皆で爆破見届けようぜーって意気込みだニャン

特別語るような事は…
……ん?
自動運転オメガ・トラックが例の曲を流しながら登場!どう考えても毒島博士の差金!
ウワーッ!!します自分で!自己紹介!
私はオメガ。
大門博士のライバルこと毒島博士が生み出した最高傑作……のボディをもつサイボーグ。
脳や脊髄諸々は生身ですのでヒトですよ。これでも。
武器は博士の作ったこの身。
重量約90kgのスピードよりもパワー型。ビームも射出可能です。
最近は車での轢き逃げ戦法が多……何でもございません。
リサイクルショップを営んでおります。どうぞご贔屓に。
趣味は食事と料理。
座右の銘は医食同源・棚からぼたもち。
ファミレスメニュー全制覇を目指します。
……え?そっちの意気込みではない?

知り合いが沢山集まって、爆破する流れになって
まさかそこから自己紹介始めるとは誰が予想できただろうか
俺のような陰の者(自称)が|自己紹介《こんなこと》するなんてな
知り合いならまだしも、見知らぬ相手を前に
……まあ、悩んでいても仕方なし、様子を見るか
なんとなく流れを見て、似たような自己紹介をすればいいのだ
よし、流れは掴んだし頭の中で確認もした
櫃石湖武丸だ
得意な戦法は刀による居合、妖力や霊力を使った術の類
愛用の武器は太刀の鬼々蒼々、大太刀の備州天津時雨
どちらも妖刀なので気をつけるように
太刀の方は触れると気が触れるそうなのでな
…俺より刀の説明をしている方が楽な気がしてきた
ちなみに俺は米が好きだ
おわり

(諸諸おまかせ)
デスネ、これから死地に赴くんデス。
皆サンの記憶にボクを刻んでおかないと。
ボクはシン・イー、勿論偽名デス。
今日は人類への偵察に来ていマス。裏切り者デス。
だってだって、酷いんデスヨ。
孤児のボクを拾ってくれた家、戦わざるもの食うべからずとかいって、実戦主義で。
そんなの、才能なかったら、爆弾埋め込むしかないじゃないデスカー。
死んだら終わりの身デス、この武器が火を噴くのはボクの最期なんデスヨネ。
いや~、楽しみデスネ、自爆特攻。
骨くらい拾って貰えますヨネ?
骨も残らないって?
アハハ。
だから宴では……一番高いお肉に、ドリンクバーとサラダとご飯、デザート付きで未練を残さないようにしたいデスネ?
●パリピどもの宴
√|ウォーゾーン《WZ》、本日は晴天なり本日は晴天なり……波は見えず空高し……。
あーあーあー……マイクテストマイクテスト……これ、大丈夫ですか~? って誰も聞いてないか~。
√WZ、人類が奪還し、かろうじて生活を送っている機械都市のとある一角。
移動してきた√能力者たちがひとまずの拠点としたこの地に、のどかに響く声を辿れば不健康そうな面持ちの青年がひとり。拾いあげて修復したメガホン片手に何やら作業をしている真っ最中。
「『自己紹介』っていうならせっかくですし、欲しいですよね~お立ち台的なの」
そんな独り言と共に周囲に漂う小型ドローンは青年の意思に沿うように自動的に動き、廃材を用いて場を整備していく。
一方で──。
「ウェ~イ☆ ゼーロットくん見てる~?
今からみんなで……ゼーロットくんの大事なロボを……メチャクチャにしちゃいま~す!!」
「ウェ~イ……『宣戦布告』はタイセツ……」
|ある特定の層《純愛イチャラブ勢》から殺意を向けられそうな挨拶と共に、チャラッとしたグラサンの男は、どでかいテディベアと共に天蓋大聖堂|《カテドラル》『カテドラル・グロンバイン』を背景にスマホで自撮りしながら大胆な犯行予告をしていた。イエ~イピースピース☆
お前ここ観光地じゃねえんだぞ。
「えーなになに☆ お兄サン楽しそうなことしてるネ☆ うさてんちゃんも混ぜて☆」
「え? この場所で記念撮影デスか? いいデスネ。僕も入れてくださいヨ。記念記念」
しかし、見かけた√能力者たちはそんな武正の姿勢を咎めるどころか、カメラに映ろうと寄っていく。 ウェイウェ~イ! じゃあ撮るぜ~はいチーズ☆ クマピース……。
そうして写真を各々の端末へ写真を転送しつつ、始まるのは勿論感想タイム。
「うーん、うさてんちゃん的にはもうちょい盛ってほしいカナ☆」
「いやいや、映りいいじゃないデスか~。でも安心しましたヨ。これで僕の遺影の心配はなくなりましたからネ」
「お兄さん、それ笑えないっしょ!」
「『遺影』…イエ~イ……『駄目』……デモ『お揃い』はウレシイ……ハッピー……」
「じゃあもう一枚撮ろうヨ☆ 今度はこっちのカメラで……イエ~イ☆ これで爆発してもスペアがあるから安心だネ☆」
「イエ~イ……皆サンの方が不謹慎じゃないデス? あ、僕が言うな? そうデスネ」
遺影だけにね、イエーイってね。イエーイってね。やかましいわ。
ちなみに今このパリピ空間に種族的な意味で純粋な人間は一人もいない。もう終わりだね。
……と、まるで学友と遊園地に来たようなノリでわいわいしているパリピな一行を遠目で見つめ、不安を零す神秘的な青い瞳の少女がひとり。
「……本当に、大丈夫かな?」
「まあ多分大丈夫だニャン。ああ見えて皆√能力者だし……最悪、いざとなれば逃げるが勝ちだワン」
「本当に大丈夫かなぁ……?」
「うん、どうにかなる。多分」
少女の不安を慰めるような口調でありながら、片やカフェオレ、片やおにぎりをほお張りながら獣耳の少女と、和装に身を包み太刀を帯刀した武人めいた雰囲気の男は答える。大丈夫大丈夫。多分きっと、知らんけど。そんな意味を存外に含んでいなくもない相槌に、少女は不安を募らせていくが……それにしても。
「おにーさんちょっと食べ過ぎじゃないワン?」
「というかおにぎり何個持ってるの?」
「米はいくら食べても食べ過ぎることはないのだ」
「そうかニャあ……そうかも……ちなみにおにぎりの具は何はいってるワン?」
「これは高菜でこっちは昆布だな。そしてこれは恐らく梅干しかおかかの二択」
「予想より持ってるニャンね?」
「いや本当にこれ、大丈夫?」
「大丈夫ですよ~。まだ|始まったばかり《第一章》だし、リラックスリラックス~」
不安を募らせる少女に『作業場』から出てきた青年が通りすがりに声をかけるが──。
「なんか|見えちゃいけないもの見え《第四の壁突破し》てる人……いない?」
『いや、まあ多分アタシ達も似たようなもんだよ?』
「え、私あそこまでじゃないと思うんだけど!?」
独り聞こえる声に反論しようとすれば……ん?
…………なんか後ろから変な音がする──。
「ちょっ! 誰か! 誰か止め……! 避けてーーー!!!!」
『オーメガ! オメガ! オーメガ! 傑作♪ オーメガ オメガは 高性能~♪』
叫び声と急なエンジンの唸り……そして何より脳にこびりついて半日ほど、忘れかけたときにふと思い出して耳から離れなそうなメロディと共に、一台の軽トラが猛スピードで光のように通り過ぎるのを√能力者たちはただなすすべもなく見送……待って、今誰か乗ってなかった?
『もしや|例の神の怒り《物理エンジンが狂った》か!? MODの干渉か!?』
「リアルのエンジンがおかしくなってるのには違いないけど……!」
「あれ、あっちって確か『自己紹介会場』じゃなかったかニャン?」
「そういえば、整備をしてるとか言っていた気がするが」
小さくなるメロディを遠くに聞きながら、顔を見合わせた√能力者たちの、意味深な『間』の後、答え合わせのように少し遠くで爆発と悲鳴があがった.
●一番 ヨシマサ・リヴィングストン
「いやあ一時はどうなるかと思いましたが……じゃあ改めまして。意外と顔見知りが多くて心強いですが、初めてさんもいらっしゃいますし、みんな初対面って体で自己紹介させていただきますね~」
『自己紹介会場』──爆発の名残がいまだ燻る場にて、各々適当な場に腰かけた皆を前に、こほん、と軽く咳ばらいをしてからヨシマサ・リヴィングストン(朝焼けと珈琲と、修理工・h01057)は自己紹介を始める。
「じゃあ、改めましてボクはヨシマサ・リヴィングストンといいます。√WZの戦線工兵です。まあ工兵なので物の制作や分解、整備なんかもある程度できますので……」
この世界の出身者、そして歴戦の工兵、装備の整備点検を任せられるという大変心強いはずなのだが──皆、なんかもうそれどころではなかった。ヨシマサのその身は黒こげの、まるで口からしゃべるたびに黒煙が上がりそうな有様で、何より──。
「……あ、髪がアフロになってる? あはは、気になりますよね。でも|時間経過《次の章》で治るので気にされなくて大丈夫です~。このぐらいの爆発は戦場でいつだって浴びてますからね」
心強いような、WZジョークなのか分からない発言を続けつつ、スピーチは一番大切な特技やアピールに差し掛かる。
「えーと特技は~……先ほども言った通りなのと、今回の目玉である『爆発物』を√能力で瞬時に作ることですね。
他にも、|魚になる《インビジブル化》が特技です……まあ今は、いやさっきなりかけたんですが。
ともかく次回、こうご期待!」
彼なりのジョークであるのは分かるけれども、あの、頭に何か埋め込むと見えちゃいけないものが見えるんですか、とか。√WZの兵士って皆こうなんですか、とか。いやあ戦場においてもヨシマサはいつも通りだなあとか、各自そんな思いを抱きながら、拍手で歓迎するのだった。
●二番 レイ・イクス・ドッペルノイン
「あっ、どうも、レイです。自己紹介って言っても自分のことをよく覚えてなくて……多分√WZ出身です、覚えているのはそれくらい」
あの自己紹介の後にどうすればいいんだろう。そんなハードルが浮かんだかどうかはともかく、|レイ・イクス・ドッペルノイン《RX-99》(人生という名のクソゲー・h02896)は軽く頭を下げて皆へ挨拶をした。記憶障害を抱えた彼女に言えることはそれくらいで。えーと、あとは……。
『ていうか合体ロボ系ヴィラン殴りに行く系?』
ふと、レイの|思考《あたま》の中で天の声が響く。
『それ系は合体したら絶対暴走するオチじゃん、肝心なもん足りないとかで』
「玲子。今自己紹介してるから、それは後で……」
レイのAnkerでもある『九十九 玲子』はこうして施行に干渉し、オペレーターの様に戦闘をサポートしてくれる存在なのだという。けれども……。
「ごめん、話が途中だったけど。それで、自分は白兵戦も遠距離戦も両方こなせる感じかな、純粋なアタッカー──」
『嘘つけ、私が|クソゲー死にゲー《理不尽にも吹き飛ぶ程の経験》で学んだメソッドを駆使する走者だよお前は』
どうもこのAnker、インターネットの申し子的なあれでこう、若干特殊な嗜好がおありのゲーマーであらせられて。
よく言えば趣味が活かされて、悪く言えばインターネットの煮凝りな彼女の言葉は、その界隈に疎い人間が聞けば、さながら|古代語魔術師《ブラックウィザード》の呪文がごとし。
故に、レイは頭をふりどうにかごまかそうと、そ、そう……走者……そう、火力上乗せして一方的にボコったりワンパン狙いとかするかな……? ごまかせ、たかな?
分かるような分からないような、あーでもわかりますよ近距離パワー型的な? いや、速攻タイプ? 疎いものはなんとなく頼りになりそうと思い、薄々勘付いたものはしかし黙って拍手をするのであった。
『こいつ急に消えたり壁にめり込んだりゲッダンする事もあるけど、仕様だから気にしないでね』
「玲子!」
●三番 兎玉・天
「イエーイ☆ じゃあ次はうさてんちゃんだネ☆ ヨロシク~☆」
ピョンと軽やかにやってきた|兎玉・天《うさてんちゃん》(うさてん堂・h04493)。
一見ハイテンションな少女に見えるが、その実態は人間災厄であるがゆえに──。
「うさてんちゃん、自分の質量を操れるから重さや大きさを気分によって変えて棺桶とかで殴るヨ☆」
なんかとんでもない事言うてはりますけど。
「でもでもうさてんちゃんはニンゲンちゃんがだいすきだからマネっこしてるし、減らそうとするのは許せないんだヨ☆ 地球の平和を脅かす存在はどの|世界《√》でもうさてんちゃんが天誅だヨ☆」
そっか~なら安心~! そうかな……? そうであって欲しいね。
「それとネ、うさてんちゃんはお堂で雑貨店を営んでるからヘンテコ道具を使ったりもするヨ☆ 例えば……」
言うなり、どこからともなくピョッピョピョン♫と、ギリギリ何かしらの何かを侵害しないレベルのあやふやなメロディと共に取り出したのは可愛らしい、小学生の間で流行ってそうなプロフィール帳。
見たところたわいもない、「誕生日」「血液型」「好きな食べ物」「チャームポイント」などが書かれたそれを√能力者ひとりひとりに手渡して配っていく。
「『空欄絶許★ プロフ帳~☆』なんと、これをスカスカのままプロフ帳の持ち主に返すと、その空欄を埋めるために持ち主が書き込んだコトが本当になっちゃうヨ☆ つまりうさてんちゃんが捏造し放題ってワケ☆」
その説明に思わず紙を見れば──何やら通常のプロフィール欄とは違い、物騒なことが書いてなくも、ないかも……?
と、そちらは後々相談などで活用ならびに談合でもしていただくとして……。
「ダイジョーブ☆ 書いてもらった情報は個人情報保護の観点から目的外使用はしないコトを誓うヨ☆」
大丈夫かなぁ? まあ大丈夫だろう……急に入った個人情報取扱の説明に、災厄とはまた別種の、生々しい不安を抱きながらひとまずは皆、拍手を送るのだった。
●四番 物部・武正
「ウェ~イ☆ ていうか自己紹介? あんまやったことないから何言えばいいのか分からなくてウケる☆」
ウェイウェイチャラチャラと、見るからにチャラい雰囲気で次に紹介の番が回って来たのは物部・武正(モブチャラ男くん・h06619)。チャラいけれど、わりと|いい歳《アラサー》。周囲の√能力者よりも軽薄で目立つその正体は……。
「タケちゃんは、物部・武正。イケイケ宇宙で無害なチャラ男だぜ~! ウェイと鳴くぜ。 リサショの皆は知ってるよネ☆ リサちゃんともどもヨロシクだぜ~!」
ちょっと言ってる意味がよく分からないけれど、そうらしいです。ウェイウェイしてるし。
イケイケ宇宙の意味はちょっと分からないけど自己を紹介してるからね。何も間違ってないね。
ちなみに武正の言うところの『リサショ』とは、今回この作戦へ参加している√能力者も多数|行きつけて《所属して》いる『|リサイクルショップ《旅団》』の事であり、そこの名物は『爆発』である。なんで店の名物が爆発なんですか。さあ?
「大規模作戦なんてテンションあがっちゃって、てなワケで買っちゃった、ウェアラブルカメラ☆ これでリサショの宣伝にも使えそうなド迫力爆発映像が至近距離で撮れてバズり間違いなしってワケ☆ それにいつもの得物、ハチェットと~、宇宙☆ に加えて……今回は特別に爆弾も用意しちゃったぜ~!」
イエ~イ! オカルティック&コズミック的パワーに爆発が加われば……それはもう第二の宇宙だぜ?
ほらブラックホールとか、超新星爆発的な? そんな怪しげな言葉とともに、サングラスを正すと武正は言う。
「ま、それなりに『オシゴト』には慣れてるからさ。頼りにしてよ、爆破フレンズの皆サマ~☆」
分かったような分からんような……ともかくただのチャラ男ではないだろう。
√能力者が拍手を送ろうとした際、ひときわ大きい拍手が響き、何かが武正の隣にぬっと躍り出た──。
●五番 物部・リサちゃん
武正の隣に躍り出た影──それは、身の丈130cmほどのうすらでけえテディベア、物部・リサちゃん(ゲーセン生まれリサイクルショップ育ち・h06765)であった。
『物部』の苗字の通り、武正と親しい関係であるリサちゃんはボタンの様な何を考えてるのか、文字通りに表情の読めないキュートなフェイスのまま、ぺこりと初対面の仲間へと一礼した。意外と礼儀正しい。そして首を傾げ、手を口に持っていく。
これは……自分の可愛さを自覚している動きだ! 誰ともなく、そう思った。
「ハロー……リサチャンとモウシマス……カワイイ『テディベア』……。『リサイクルショップ』の……キュートなマスコット……公認……『爆破フレンズ』のミンナ……シクヨロ シクヨロ……」
そうたどたどしい、独特の言葉で話すと、右に左にピョンピョンと全身で可愛いダンスを踊る。まるでお近づきの印に思う存分可愛さを浴びてくれ、とでもいうかのそれは真実大変可愛らしいもので。
けれども若干ほら、でっかいテディベアってちょっと認識が狂いますよね。でも可愛いからいっか!
ところでこんな可愛いテディベアとあろう者がなぜ今回はこんな場所に? そんな疑問を抱いたような目線に応えるよう、リサちゃんは踊りを止め、口を開……口どこだろうな。ともかく言葉を紡いだ。
「『機械』が『√EDEN』に『侵攻』……リサチャンとタケチャンのオウチがナクナッチャウ……『侵攻』ダメ……ゼッタイ……」
ダカラ『やられる前にやる』……『徹底的』に……『破壊』スル……『ふわぽこ』と『|呪物《オトモダチ》』で……タケチャンとガンバル……『機械』を『|理解《ワカラ》』ラセル……ウェ~イ」
成程そんな事情が……おい意外と武闘派だぞこのクマ?
「アト……『大門博士』にオゴッテモラウ……イッパイ タベル……。リサチャンは……『お肉』がスキ……」
まあそこは……クマだもんね。分かる。
「ドリンクバーも……ツケサセル……」
意外とふてぶてしいなこのクマ? ともかく、心強い味方であることは間違いない。
踊りのお礼もかねて、皆はリサちゃんに拍手を送るのであった。
●六番 広瀬・御影
「はーい、次は僕の番。初めましての人も見知った人もこんにちは。僕は広瀬・御影だワン」
ひらり、手を振って金髪に獣耳、見たところキツネに似た半人半妖の少女、「みーくん」こと広瀬・御影(半人半妖の狐耳少女不良警官・h00999)が自己紹介を始めた。
顔見知りがそこそこいるとは言え、相談には顔を出さず今回初めて姿を現した彼女。
思わぬ伏兵とも言える、急に参加したその目的は一体──。
「別に深い意味もなく、博士の自由に対抗してみたかったので相談せずにいきなり登場だワン!」
とんだ|反逆者《トリズナー》♡ でもまあそれでこそこういった大規模作戦の醍醐味みたいなところはありますからね。現代において汚職警官は自由……汚職? その可愛い顔で汚職警官なの? えっ職業暗殺者でもある? 怖……。
「……と、張り切って対抗したけど博士とは初対面だった気がするニャンね?」
ここに来て急に正気に戻ってももう遅い♡ だがその対抗心だけでよりにもよってこの、どう転ぶとも知れぬ依頼に参加するとは中々の戦士。
しかし御影はその謎の反骨精神から気を取り直し、一応警官らしい顔になればこれまでのいきさつを皆へ伝える。
「でも相談は見てある程度把握してたし異論もニャイから、細かいところは皆に任せてみーくんは臨機応変に対応するんでよろしくだワン。もう少し真面目に言えば、戦闘は銃で支援射撃してると思うのだワン。それで条件整えたらとっとと脱出して皆で爆破見届けようぜーって意気込みだニャンね」
つまるところ「とりあえずなるようになれ」ざっくり言ってそんな形かもしれないけれども。
ここにいるメンバー全員多分そんな感じなので問題はないかと思われます。そんな空気でとりあえずレッツゴーだワン。
ところで──犬なんです? それともネコ? キツネ?
「それは、秘密だニャン」
だそうです。とりあえず深く考えず、皆は拍手で暖かく御影を迎えるのだった。
●七番 オメガ・毒島
「自己紹介……特別、私が語るような事は……」
ひび割れた眼鏡を新しいものに差し替えるとオメガ・毒島(サイボーグメガちゃん・h06434)は口を濁す。いえ先ほど爆発なんかしたりしなかったりしましたし、紹介などするほどの……そんな忘れようとする力(自力)を起こそうとしたオメガのオメガ・イヤーにオメガ・トラックの例の曲が聞こえてオメガオメガのゲシュタルト崩壊。ウワーッ!! します! 自分で! 自己紹介!
「……取り乱しましたが、 私はオメガ。大門博士のライバルこと毒島博士が生み出した|最高傑作《サイボーグ》……ええ、脳や脊髄諸々は生身ですのでヒトですよ。これでも。
見ての通り、武器は博士の作ったこの身。重量約90kgのスピードよりもパワー型。ビームも射出可能です。でも最近は車での轢き逃げ戦法が多……何でもございません」
おい真面目な流れで今なんか不吉なことを言ったぞこのサイボーグ……しかしオメガは動じない。うっかり口が滑ってもヒトの心に鉄の平常心。人はそれオメガ・ハートと呼ぶ。あとこれはもしや、自己紹介というか毒島博士のPRでは?
そう思ったオメガは大切なことを付け加えるのを忘れない。
「そういえば、先ほど話題にでましたが、『リサイクルショップ』を営んでおります。今回は店の常連さんも参加しているようで、初対面の皆さんもこの機会にどうぞご贔屓に」
こういう時こそ商売チャンス。けれども宣伝臭は薄めて自然にさらっと店の宣伝を済ませると、口が乗って来たオメガは続けて。
「趣味は食事と料理……このような身体でも味覚は味わえます。故に座右の銘は医食同源・棚からぼたもち。
今回は奢りということで、ファミレスメニュー全制覇を目指します……え?そっちの意気込みではない?」
真面目だと思ったらあなたも『|そっち《ハジケ》側』かな目や、分かるよ……な目。
様々な印象はともかく、皆は改めて全制覇いいよね。絶対やろうな。そして星詠みの財布にダメージを与えような! 的想いを込めて拍手をするのであった。
●八番 櫃石・湖武丸
世間は意外と狭い──櫃石・湖武丸(蒼羅刹・h00229)は意外な再開にしみじみと思う。
誘い合わせた訳でもなく、いや『爆破』の響きに誘われたのか、それとも食事の報酬に釣られたのか、そもそも気が合う故に知り合いとなったのか、因果はともかく参加した作戦はなぜか馴染みの知り合いが集まって。そのうえでなんでか自己紹介。なんと複雑怪奇なものであろうか。
「俺の様な陰の者が、知り合いではなく見知らぬ相手を、それもこんな大勢の前で自己紹介など……」
そもそも自己紹介とは己を知らない相手に向けてのものな気がするが、それは置いといて。
湖武丸は己の番が来るまでじっと皆の紹介を聞いて、参考にすることにした。幸いにも順番が回ってくるまで多種多様な自己紹介があった。成程成程、最低限名前と、戦法……意気込み……踊る? これは難しい。好きな食べ物。
そして、どうにかまとめて頭の中で確認していれば、とうとう己の番がやって来た──。
「櫃石湖武丸だ。得意な戦法は刀による居合、妖力や霊力を使った術の類……」
大勢の前で話すのは難しく、音量などもこれでいいのか分からないが、ともかく思ったよりはスラスラと出てくるもので。
「……愛用の武器は太刀の鬼々蒼々、大太刀の備州天津時雨。どちらも妖刀なので気をつけるように……特に、太刀の方は触れると気が触れるそうなのでな。通常では触れることもないだろうが、戦闘時の保証はできない」
自分でも予想以上に口をついて出る言葉……しかし、俺より刀の説明をしている方が楽な気がしてきたが、少しは自分の事も話した方がいいだろうか? そんな思考の元に出したのは──。
「ちなみに、俺は米が好きだ」
「それは知ってるワン」
「おにぎりたくさん食べてたからね」
「知られていた」
話し終えた湖武丸へ暖かい拍手と共に、外野から上がったふたりの声。
よし、話が早いと思う事にしよう。
●九番 シン・イー
「サテ、折り返し地点と言ったところデスカ?」
いちにいさん……涼し気に煙管をくゆらして、シン・イー(花如・h08156)は場の人数を数えて自分の番を確認する。
「皆サンの記憶、どれも十分ボクに刻まれましたし、皆サンの記憶にもボクを刻んでおかないといけませんからね。」
「さて、ボクはシン・イー、勿論偽名デス。
今日は人類への偵察に来ていマス。『裏切り者』デス」
とんでもない爆弾発言に、一瞬場がざわつくよりも静まり返り……しかし、誰かが行動を起こす前にシン・イーは何事もなく続ける。
「だってだって、酷いんデスヨ。孤児のボクを拾ってくれた家、戦わざるもの食うべからずとかいって、実戦主義で……そんなの、才能なかったら、爆弾埋め込むしかないじゃないデスカー」
『裏切り者』──身もふたもない説明であるが、この世界においてはまた別の意味を持つ。
人類を裏切り、戦闘機械群に着いた……と見せかけて、その実態は人類に派遣された『二重スパイ』
もう何がなんだか誰を裏切っているのか分からなくなってくる感がある説明だが、つまるところ「機械に寝返ったと見せかけて人類の味方なんだけど、機械の命令で人類を偵察しに来たテイで人類サイドにやってきた」……つまり|こちら《人類側》の味方……だよね? いややっぱり分からなくなってきた。
しかし、これで「いえ、『人類の敵』デスヨ」なんて言われたら怖いな。本当に怖い。
そんな空気で他の皆は一先ず話を聞く姿勢に戻る。
「ともかく、死んだら終わりの身デス、この武器が火を噴くのはボクの最期なんデスヨネ。
いや~、楽しみデスネ、自爆特攻。骨くらい拾って貰えますヨネ? 骨も残らないって? アハハ」
ひとり笑うシン・イーに皆は黙り、その言葉の重さを考える。そこには何か茶化すことも否定することも出来ぬ彼なりの生き方が存在しているように思えたのだった。
「だから宴では……一番高いお肉に、ドリンクバーとサラダとご飯、デザート付きで未練を残さないようにしたいデスネ?」
「いやそこはもっといい店行きましょうよ。奢りで」
誰かの一声で、若干流れが変わった。
そうだな焼き肉とか? 食べ放題でもよくない? ファミレスってどこまでファミレスなんですか?
ていうかファミレスの後でさらにボーナスを訴えればいいんじゃない? ナイスアイデア。よし闘争だ!
「……皆さん、逞しいデスネ」
そう呟きながら、どこか寂しそうに笑うシン・イーへ、皆は拍手の後に、もっと|いい食事《食べたいもの》を考えさせるのだった。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

自己紹介? 名前からかな~?
ボクはガブリエル!ガブちゃんって呼んでいーよ!
えっとね~最近はね~
ちょっと死にかけたけどやさしい|おじさん《パパ》が助けてくれていろいろ援助してくれてるんだ~!
死にかけるなんてあるあるだけどねっ!
えっ、|パパ《おじさん》の部下? か、かほごっ!
得意なのは爆弾をなげる!あと潜入もちょこちょこしてるよ!
だってボク、今ほっとな裏切者ちゃんだからね!
しゅっと行ってしゅっと投げてしゅっと逃げる!みたいな!(みぶりてぶり)
爆破いいよね!心ときめいちゃう!地上で派手な花火をうちあげちゃお~!
テンションぶちあげのファミレス!
メニューの端から端まで!あれを!絶対!やる!(るるん♪)

俺は√EDEN世界の者だが
学生として、可愛すぎる妹達と過ごしつつ
警視庁異能捜査官としても、己の正義を貫くべく活動している
そう、俺の思う正義をな
故に今回は己の正義に則り、なんかすごい機械類を皆と爆破しよう
今回赴いたのは、娘のガブリエルの保護者をと上司に頼まれたからだ
お願いねと唐突に告げられたが慣れているし
確りとこなしてみせよう(きり
ちなみに俺は参謀タイプといったところか
今回の作戦? 派手に爆破しよう(脳筋
最前線で殴ることも得意だ
あとは縛ったり刻んだり封じたり殴ったり殴ったり、独楽も得意だな
そして座右の銘は『甘い物は正義』
なので己の正義に従い、ファミレスでは甘味を端から端までいただこうと(わくそわ

あはは、この圧倒的ホーム感!
アウェーでも負ける気がしないね
俺はチェスター・ストックウェル。見ての通り幽霊さ
ドリンクバーつきステーキをいただくためにも頑張るよ
戦闘では実体のなさを活かすことが多いかな
不意打ちや|敵を盾にする《同士討ち》で敵陣を引っ掻き回すのもワクワクするね
武器は念動力と|P232SL《銃》、それに使役している死霊たち
俺がどんな人間かは、一緒に戦っていくうちにわかるんじゃないかな?
機械達に会ったら、そのセンサーカメラに向かってピースサインしてやるんだ
俺が見える?って
座右の銘は
Stay strong. Be brave. Go beyond.
……その、ヤバくなったらフォローはよろしく

√ウォーゾーンの殺伐とした世界の中に、ワタシ達という|狂気《輝き》
あ〜もうワクワクしちゃう!
火薬?薬物?ガス?|作戦《リクエスト》にお応えしちゃうよ!
まずは自己紹介!いいとも、第一印象は大事だからね
ワタシ、すごく覚え易いって言われるんだよ
声?爽やかな性格?技術職としての魅力?どちらにしても嬉しいな〜
ワタシは萬シェプファ!名前で呼んでくれると親しみがあって嬉しいなぁ(チラチラ)
物作りや実験が大好きな人間厄災!創作に狂気は付き物
だから作る人達に囁き、彼等の心の奥にある|狂気《情熱》引き出す!
……時々チョットやり過ぎちゃうんだねぇ
ワタシ自身作るのも大好き!今回の作戦、とっても楽しみにしているよ!

NG描写無し
(自身の能力の公開による現戦力の正しい把握。なるほど、大事だ)
機体名、フォー・フルードと言います。どちらが姓、名という訳でもないので好きな呼び方をしていただければと思います。自分の特筆すべき点としては狙撃能力と迷彩による敵地潜入になるかと思われます。
近接戦闘も可能ではありますが得意ではありません。
再起動してからの連続稼働時間は一年と三ヶ月ほど。この中では経験の浅い身であると思いますが任務遂行には全能力を持って挑ませていただきます。至らない点があれば修正点として記録しますのでよろしくお願いします。
(もし物部さんが外星体である事を明かされた場合、内心かなり驚く)

基本語尾:~です、~なのです
一人称:自分の名
敬称:名字さん付け
戦闘にはマジメですが基本バカなのでアドリブ可
半ば食べ物に釣られるような形で参加しましたが、仕事はしっかりやりますです!
研修にはよくあるレクリエーションとかいうやつですね!
ラピスはラピスと申しますです、もともとはベルセルクマシンと決戦型WZを足して2で割った感じの高機動兵器でしたが、戦闘機械群にタコ殴りでぶっ壊されて少女人形化されましたです!
そんな恨み節全開で全壊してやりますのでシクヨロです!
あ、戦法は高機動格闘で得物はこのパイルバンカーです。高速射出した上で超々高圧電流流したりできるので工場の設備に流せば結構ダメージ与えれますです!
●保護者たちの黄昏
時刻は少し戻って、自己紹介の始まる前。
前述の通り、√能力者たちが好き勝手過ごしている一角。ワイワイと賑わう場所から少し離れた|人気《ひとけ》のない場所に、とある青年は周囲を見渡して手首をさすり、|地に足をつけた《・・・・・・・》。
どうやら今回は√能力者以外もいるようで、ならばこの後の自己紹介だけでも『実体化』せねばと覚悟を決めたのだが……。
「ね~何してんの!」
「うわあ!」
誰もいないと思っていたところを、急に声をかけられて、驚きつつ振り返れば青年と同じくらいの年頃、そして背丈の少女が立っている。
そして、少女は青年が抑えた『手首』を見ると何やら納得して声を弾ませ、自分の『左手』を見せつけてきたのであった。
「あっ! もしかして|キミも《・・・》? ね、『爆発』いいよね! 地上で派手な花火をうちあげちゃお~!」
「……待って、何の話!?」
「どうしましたのです? もしかして、早速戦闘スタイルの話でしょうか?」
青年が事態が呑見込めないままでいると、そんな声に誘われたのかふらりと可愛らしい|少女人形《レプリノイド》がやってくる。そして手を見せ合っているような形になった二人を眺めて呈した疑問に──。
「そう!」
「そうなの!? 俺違うよ!?」
「成程~! やる気十分! その様子ですとお二人は手を使う『接近タイプ』です? ラピスも接近戦ならやりますですよ!」
青年置いてけぼりで進む話に、少女人形は腕に装備したパイルバンカー、そして両手のガントレットレッドを見せてやる気十分な凛々しい顔をする。接近戦は任せてくださいです! かっこい~! ね? 爆発する? はい、高圧電流を流しこむので機械なら多分すると思いますです!
何やら不穏なやりとりに若干青年は不安を抱いた。今の女の子って皆……こんななのか?
そんなかれらの姿を遠巻きに眺めながら、黒髪の青年は真剣な面持ちでふむ、と顎に手を当ててしみじみと思った。出逢って間もないのにすぐ打ち解けるかれらの姿は微笑ましく、学ぶところもあるが多いが……なんだかこう、全体的に『陽』なのだ。向こうでは記念撮影をしている一団とかいるし。でも何やらピース……ピースの形がなんかおかしい気がする……。
「最近の若い子とは、皆あんな感じなのだろか……?」
「と、言いますと?」
「おやおや、お兄さんジェネレーションギャップ的なやつかい。お兄さんも若いのに」
青年の声を受けて、ベルセルクマシンと、頭がフラスコめいた異形の男が応えれば。
「俺には可愛い妹達がいるのでこれでも年下と触れ合うことは多いが、妹達はあそこまでではなかったので……あと何か、ピースにしては変なポーズではないか?」
「おや、ご存じありませんか、『ギャルピ』」
「ぎゃるぴ?」
「はい、この様なポーズで、若い子の間ではスタンダードな決めポーズと認識しています」
「成程……?」
「『映え』ポーズだねぇ。これで流行間違いなし!」
青年のさらっとした妹自慢とどこかズレた疑問に、ベルセルクマシンは真面目に答えるとさらっと例のポーズを示してみせる。それを見て青年は真似して、その横でフラスコ頭の怪人もポーズを決める。
「ちょっと男三人でこれは面白すぎる! せっかくだからワタシたちも向こうに倣って記念撮影でもしちゃう? はいチー……あっワタシの頭が! 見切れてる!!」
「このポーズで自撮りは流石に厳しいのではないだろうか」
「成程、自撮り棒とはこのような時に使うのですね」
「何事も諦めたらっ! そこで終わりなんですよっ!」
試行錯誤の末、どうにか腕が攣りそうになりながら男がシャッターを切ったと同時に、少し遠くで爆発音が上がった。
●十番 ガブリエル・レーゲン(春雷・h08077)
さて、時は今に戻って、自己紹介も折り返して十人目。
順番が来るとガブリエル・レーゲン(春雷・h08077)は天真爛漫に、元気よく名を名乗る。
「ボクはガブリエル! ガブちゃんって呼んでいーよ! えっとね、得意なのは爆弾をなげる! あと潜入もちょこちょこしてるよ! こう……しゅっと行ってしゅっと投げてしゅっと逃げる! みたいな! だってボク、今ほっとな裏切者ちゃんだからね!」
しゅしゅっと言う擬音に、分かるような分からないような、まるで踊るような大きい身振り手振りで説明するガブリエル。
ところで、まさかの『裏切者』二人目。そして人間爆弾二人目のエントリー。
明るい口調とかけ離れたような戦法に、改めに√能力者たちは|この世界《√WZ》の過酷さを改めて知る……というよりも、もしかしてやっぱり爆発に惹かれて爆発隙が集まってるのか?『爆破フレンズ』なのか? 皆頭に火薬が詰まってるのか?
卵が先か鶏が先かのような疑問はともかく、しかし彼女のその言葉を受け取れば、非能力者でありながら潜入工作と爆発物の扱いには信頼がおけそうだ。
「それで、えっとね~最近はね~……ちょっと|死にかけた《・・・・・》けどやさしい|パパ《おじさん》が助けてくれていろいろ援助してくれてるんだ~!」
まあ死にかけるなんてあるあるだけどねっ! と物騒な事をさらりと言ってのけるガブリエルにとある青年がニコリと笑い、続ける。
「そして、今回はそうならないように『保護者』として俺もいる。」
「えっ……!」
「唐突なお願いだったが、頼まれたからには確りとこなしてみせよう」
どうやら今回は知り合いとの参戦のようだが、きりりとやる気満々の『保護者』はともかく、ガブリエル当人は少々不満げに過保護とぶつぶつ。しかし思い出したようにぱあっと明るくなれば、声を弾ませて。
「そう! 終わったら打ち上げ!」
任務の後はおいしいごはん! それはとても重要ですが──。
「テンションぶちあげのファミレス! ね、メニューの端から端まで! あれを! 絶対! やる!」
誰とは言わんが軽い気持ちで「どうせ一食おごっとけばええじゃろ~」くらいで適当に言ったその言葉。
「一人一品」とは言ってないからね、じゃあ全部頼むね! お代わりもするかも!
人、これを『口は災いの元』と呼ぶ。でもどうせならやりたいですよね。
そんな同意を込めて皆は拍手を送るのだった。ぜってえ博士の財布にダメージ与えような!
● 十一人目 楪葉・伶央
「さて、先ほどガブリエルの紹介でも少し言及させてもらったが──」
続けてガブリエルの『保護者』──楪葉・伶央(Fearless・h00412)は口を開いた。
「俺は楪葉・伶央。√EDEN世界の者だが、学生として、可愛すぎる妹たちの頼れる兄として、そして警視庁異能捜査官としても己の正義を貫くべく活動している──そう、俺の思う正義をな」
端整な顔で落ち着いて語るその頼れる経歴。文武両道、人柄、そしてその落ち着いた物腰から「これはちょっと期待できるのではないだろうか。こう良心として」と、そんな期待が皆の間に流れ始める。
「今回は、説明の通りガブリエルの保護者を上司に頼まれたが、参加するからには己の正義に則るつもりで……」
「……なんかすごい機械類を皆と爆破しよう」
駄目かもしんねえ。
でもまだ、まだこう意外とジョークとか言うタイプかもしれないし。
「ちなみに俺は、最前線で殴ることも得意だが、どちらかと言えば参謀タイプといったところだが──」
作戦は大切ですからね。参謀を自称してくれるとは心強い。
「──今回の作戦は、派手に爆破しよう」
駄目かもしんねえ。
でもまあどうせ破壊するのであれば爆発が手っ取り早く大打撃を与えられる選択肢ではある、理に適った攻撃手段ではあるのかもしれないが……縛ったり刻んだり封じたり殴ったり殴ったり、そんな伶央の攻撃スタイルを聞いているとそこまで考えていないのかもしれない。でも脳筋でもいい。勝てば勝ちなのだ。
「それと、得意なものは独楽。そして座右の銘は『甘い物は正義』
なので己の正義に従い、ファミレスでは甘味を端から端までいただこうと思うが……今の季節、フェア商品はなんだろうな?」
すっと、懐から玩具の独楽を取り出してファミレスへの意気込みを語る伶央へ皆は拍手を送りつつ、季節のフルーツを思い思い想像して少し胸を弾ませた。しかしそれ以上に甘味を語る伶央の声はワクワクと甘味への想いを隠し切れず、戦闘への意気込みとはまた違う、本来の年相応の若者らしさを見せるのであった。
●十二人目 チェスター・ストックウェル
見渡したメンバー。初対面の者もいるが馴染みの面子も多い。そして何よりこの|空気《ノリ》──チェスター・ストックウェル(幽明・h07379)はにやりと笑って口を開く。
「あはは、この圧倒的ホーム感! アウェーでも負ける気がしないね」
場に似合わぬ、まるで学校帰りの様な制服姿。そして若者と言ったノリで何やら手首を気にしながら明るく、言葉を続けて曰く。
「俺はチェスター・ストックウェル。見ての通り幽霊さ……今は非√能力者にも見える様に『実体化』してるけど、これ痛いからあまりやりたくないんだよね。今回はドリンクバーつきステーキをいただくためにも頑張るよ」
実際ファミレス的にはいい金額ではあるのだが、先ほどの流れからするとどこか慎ましやかで控えめな内容に聞こえてこなくもないその注文……それはともかくチェスターの続けることに、肝心の戦闘スタイルに話は移っていく。
「と言う訳で、戦闘で|この身体《実体のなさ》を活かすことが多いかな。不意打ちや、敵を盾にする同士討ちで敵陣を引っ掻き回すのもワクワクするね。
肝心の武器は念動力と|P232SL《銃》、それに使役している死霊たち。一応これでも長い事カミガリやってるからね。戦闘は心配しないでよ。爆発は……なんか慣れた、から大丈夫だと思う。
座右の銘は『|Stay strong. Be brave. Go beyond《強く生きろ。勇気を出せ。越えて行け》.』
それ以外の、俺がどんな人間かは一緒に戦っていくうちにわかるんじゃないかな?」
「それと──機械達に会ったら、そのセンサーカメラに向かってピースサインしてやるんだ
『俺が見える?』って」
悪戯っぽく、しかしどこか寂しそうな響きで言うと、気を取り直して自信なさげに年相応の声で続ける。
「ああでも、……その、ヤバくなったらフォローはよろしく。
センサーとか赤外線とか、もしかしたら|機械《あいつら》には本当に見えるかもしれないから……喜んでいいのか分からないけど」
そんなチェスターを勇気付ける様に、皆は優しく拍手で応えるのだった。
●十三人目 |萬《よろず》・シェプファ
「√ウォーゾーンの殺伐とした世界の中に、ワタシ達という|狂気《輝き》……はあい、そんな訳でワタシの番だねぇ!」
打って変わって出てきたのはフラスコ頭に白衣を纏った|萬《よろず》・シェプファ(|~工房より愛をこめて《From the studio with love~》・h07678)
フラスコ内の液体を揺らし、ハイテンションで出てきた|いかにも《・・・・》なその姿の正体は「人間災厄「クリエイターズ・ハイ」言葉の響きは良く分からないが何やらヤバそうな雰囲気……からはかけ離れたいやにフレンドリーな声で自己紹介を始める。でもよ、こういうのが一番やばいんだぜ。
「ワタシは萬・シェプファ! 名前で呼んでくれると親しみがあって嬉しいから気軽にね、嬉しいからね。シェプファ。はい、覚えたね? それとこう見えて警視庁公安部総務課特殊犯罪対策センター、技術担当だからね! 怪しくないよ!
ところでその正体は、物作りや実験が大好きな見ての通りの人間厄災! 創作に狂気は付き物、だから作る人達に囁き、彼等の心の奥にある|狂気《情熱》を引き出す!
だから『クリエイターズ・ハイ』なんて呼ばれてるけど……時々チョットやり過ぎちゃうんだねぇ。でも創作ってそういうものじゃない!?」
情熱的にいい声で熱く語るその姿──実感する者もいるようなその言葉に、皆は半ば聞き入るのだが。
「あとねぇ、ワタシ、すごく覚え易いって言われるんだよ」
そうだろうな、皆思った。
「声? 爽やかな性格? 技術職としての魅力? なんだろう~皆さんはどう思う? どちらにしても嬉しいな〜」
見た目じゃないかなあ……いやでも様々な種族の入り乱れる√能力者たち、ヒトは見た目で判断しちゃいけないから、そのあたりは今後の付き合いとかで判断するとして……。
「あ〜もうワクワクしちゃう! ワタシ自身作るのも大好き!今回の作戦、とっても楽しみにしているからね!
火薬? 薬物? ガス? なんでも作戦リクエストにお応えしちゃうよ!」
この作戦で頼れる人物には間違いなさそうだと、皆は彼のスピーチの情熱へのお礼も含めて拍手をするのであった。
●十四人目 フォー・フルード
今回の様な大規模作戦──現地で他の者と合流・協力することもあるが、基本は単独行動になることが多い通常の依頼とは異なり、最初から協力を求め、作戦を立てるタイプの依頼であれば、自身の能力の公開による現戦力の正しい把握は重要であろう。
そんな思考の元、自身の順番が回ってくるとフォー・フルード(理由なき友好者・h01293)は静かに申し出た。
「機体名、フォー・フルードと言います。
どちらが姓、名という訳でもないので好きな呼び方をしていただければと思います」
前との落差が凄い、それもこういった様々なメンバーが集まった場であればこそ。『爆破』と『ファミレス』に惹かれてる者が多いためメンバーのノリはゆるいものではあるが、それはともかく。
「自分の特筆すべき点としては狙撃能力と迷彩による敵地潜入になるかと思われます。破壊工作であればある程度覚えはあります。近接戦闘も可能ではありますが得意ではありません」
重要なのは事前に各々の戦闘スタイルを把握すること。
特にフォーのように、得手不得手が決まっている者は、サポートや、特技を活かした計画も重要になることだろう。今回の主な計画が『敵地への爆破』ということであれば、設置や起爆等、それに周辺に含まれる警備機械等も含めて考える点は多い……のだが、とりあえず今は自己紹介に戻ろう。
「ベルセルクマシンとして再起動してからの連続稼働時間は一年と三ヶ月ほど。この中では経験の浅い身であると思いますが任務遂行には全能力を持って挑ませていただきます。至らない点があれば修正点として記録しますのでよろしくお願いします」
大変に美しく、模範的とも言える自己紹介を済ませると、フォーは少しばかり間をおいて、続けた。
「ファミレスはドリンクバーをお願いします」
なんて? 少し間をおいてフォーはもう一度言う。
「ファミレスはドリンクバー『で』お願いします」
せめてポテトも付けようぜ。いやベルセルクマシンって物食べられるの? じゃあスープバー?
そんな、変な気配りの声をあげながら、皆は心強い仲間へ拍手を送るのだった。
●十五人目 ラピス・ノースウィンド
「ファミレス食べ放題と聞いてやってきましたです!」
言ってない。言ってないんですけど前述の通り「一人一品」とも言ってないからこれはもう言ったようなもんです。圧をかければ言葉は現実になるのです。夢は叶うし頑張れば叶うものなのです。
ともかく、そんな√WZの過酷さに似合わぬ、明るい快活な声でラピス・ノースウィンド(機竜の意思を継ぐ少女・h01171)は声を弾ませた。
「と、半ば食べ物に釣られるような形で参加しましたが、仕事はしっかりやりますです!
研修にはよくあるレクリエーションは大切ですし!」
さて、コホンと小さく咳ばらいをしてラピスは真面目に、明るい口調と声はそのまま自己紹介モードへと移のだが。
「ラピスはラピスと申しますです。今は|少女人形《レプリノイド》ですが、もともとはベルセルクマシンと決戦型WZを足して2で割った感じの高機動兵器でした。えへん! ……でも、ある日戦闘機械群にタコ殴りでぶっ壊されて少女人形化されましたです!」
しかし流石は√WZ出身者、出てくる過去が……重い!!
肉体が壊れても修復可能な種族故、いや、人間ですら蘇生されて駆り出されるような修羅の国──快活に述べるそのギャップに、他世界出身者は何度目とも知れぬが、改めてこの世界がとんでもない環境なことを知るのであった。
「ってな訳で、今回はそんな恨み節全開で全壊してやりますのでシクヨロです!」
本当に、思う存分にぶつけてほしい。あとファミレスでご飯いっぱい食べな……。そんな若干の親心めいた気持ちが芽生えたか芽生えないかはともかく、ラピスは装備した武装を見せて戦闘の説明へと移行する。
「あ、戦法は高機動格闘で……得物はこのパイルバンカーです。
高速射出した上で超々高圧電流流したりできるので工場の設備に流せば結構ダメージを与えれますです!」
物騒なのである。他の世界だったら間違いなく圧勝できそうなエグい攻撃手段がスイと出てくるのである。しかし、逆に言えばこれから敵対する機械群もそれほどの戦力を有するという事──決して気は抜けない。
改めて、この世界の惨状を少しでも救うべく、皆は決意を込めて拍手を送るのであった。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

|遅れて済まない、ポジションはクラッシャーで良いか?《おくすまぽじくら》
いや、相談とか聞いてても、さぁぁぁっぱり解らねぇし
オレ|考える事嫌い《バカ》だしさ
殴り先決まってんなら|破壊者《クラッシャー》に勤しむ
あ、オレはアーストだ、よろ(軽い)
あれだ、要は敵の鉄人形を叩き壊してスクラップにして博士のところに持ち込んで|再利用《リサイクル》して参加者全員で巨大ロボに乗り込んで戦うんだろ?
オレの得意な技はこの槍と雷を使った攻撃だ
メカって高電圧に弱いだろ、普通
アニメに出て来る電気鼠、放電して敵のメカ爆破してるだろ
あれやりたい。色々怒られない範囲で
ファミレスは肉食いたい、肉
ハンバーグでも良い
楽しみにしてる

※アドリブ歓迎
あれ、もう方針決まったんだ?
はや〜い、みんな元気だねぇ!
お邪魔になっちゃうと悪いから
ちょっと離れた所でニコニコしながら様子を眺めているよ
本当に元気で
勇ましくて
血色が良くて…
じゅるり
僕?
僕はウルル、那弥陀目ウルル
√EDENの吸血鬼さ
好きなお惣菜は鶏レバーを甘辛く煮たやつ(食べさせる側目線)
血を吸ったり操ったりが主な戦法だよ
僕ら吸血鬼は√EDENに保護された身だ、この世界を護る義務がある
今回も例外ではないけれど
√WZって敵が機械ばかりじゃない?
僕とは少し相性が悪くて…
様子見で軽めの所を探していたらここに行きついたワケなのさ
そっか〜、爆破するんだぁ〜
血の気が多くてとっても素敵♡
じゅるり
●主役は遅れてやってくる(らしい)
全員の自己紹介も終わり、場を見渡せば中々の大所帯メンバーになったものだと思う√能力者(と人間爆弾)たち。
予想外の長丁場になってしまった故に休憩と、親睦を深めるご歓談タイムを挟んでからいよいよ作戦立案に移るという流れでまとまり、ひとまずは一度解散と言うその時、堂々と大地を踏みしめ、声高らかに、鎧に身を包んだ一人のドラゴンプロトコルが登場した。
「ハァ……ハァ……|遅れて済まない、ポジションはクラッシャーで良いか?《おくすまぽじくら》」
『おくすまぽじくら』──オクラホマみてえな、太古の昔より異世界に伝えられしその宣告呪文。
あるものはその、伝承でしか知らぬ古代語魔術めいたそれを生で聞けたことに感動し、あるものは響きが面白いからとりあえず真似をしたくなる衝動に駆られ、またある者は存在しない記憶に抱かなくてもいい胃痛を抱くであろう。今何時だと思ってるんですか。今何時だと思ってるんですか。本当にすまないと思ってるんですか。よく知らんけど。
そんな空気の中「あ、この人|追加戦士《参加者》か?」と理解が遅れた√能力者を構いもせず、フフンと若干ドヤった顔で男が口を開こうとしたその時、背後からもう一人、ゆるい男の声がした。
「あれ~遅れちゃった? でも、もう方針が決まってるなら楽だねぇ」
「なっ!? 俺よりさらに|遅れてくる者《滑り込み》がいただと!?」
「いや~、僕はそんなつもりなかったんだけどね? 確かに途中から来たけどお邪魔になっちゃうと悪いから、いつ声をかけようかなって遠くから見てただけで……え? なんかライバル視されちゃってる?」
声の主はコートに身を包んでトランクを引いた、今まさに「旅の途中ふらっと立ち寄りました」と言うような格好の柔和な男。一方的にかけられた声に戸惑いながらも、気さくな態度で皆に近寄れば「とりあえず挨拶いいかな?」と笑いかける。なんか……大変なタイミングで来ちゃったみたいだけどねぇ? でも元気で、勇ましくて、血色が良くて……嫌いじゃないかも。じゅるり。勿論皆もね♡ ちょっと今何かいいましたよこの人。
閑話休題。
勿論、遅れて来たとは言え、協力者であるというならばその申し出を断る√能力者たちではない。
ゆえに早速場を整えなおし、各々が先ほどのように軽い紹介を行えば、二人にも自己紹介をお願いするのであった──さて、それでは対照的な追加戦士の発表です。
●十六人目 アースト・ラリス・サジタリウス
遅れてきたドラゴンプロトコル──アースト・ラリス・サジタリウス(黄金の猛竜・h06080)は、改めて皆の前に立つ。端整な顔立ちに鍛えられた長身、ドラゴンの特色を色濃く反映したその種族性……そして本格的な鎧に身を包んだ格好は、その出身世界、√ドラゴンファンタジーの名の通り御伽噺の騎士のようなのだが──。
「いや、さっきも言った通りオレ|考える事嫌い《バカ》だしさ、相談とか聞いてても、さぁぁぁっぱり解らねぇし、とりあえず殴り先決まってんなら|破壊者《クラッシャー》に勤しみたいんだが……あ、名乗ってなかった。オレはアーストだ、よろ」
口を開いた途端そんな軽~い言動が飛び出て、ギャップが最近の√EDENの容赦しない寒暖差みたいなことになっている。だがその、己の欠点と戦闘スタイルを自覚する姿勢は誉れ高い……いやそこまで考えてるからな……ちょっと自信なくなってきたな。でも本能で生きる姿、先生いいと思うぞ。
そしてアーストは手にした槍を軽く振って見せ、今回の目的地である『カテドラル・グロンバイン』を親指で指し示して難なく言ってのけるのだった。
「オレの得意な技はこの槍と雷を使った攻撃だ。メカって高電圧に弱いだろ、それにスクラップにしちまえば問題ないし、そしたら博士のところに持ち込んで再利用リサイクルして……そんで参加者全員で巨大ロボに乗り込んで戦うんだろ?」
大体あってるので何とも言い難いが……合体ロボはどうだろう? 現在不在なのは置いといて、実際乗るとなると誰がメインになるか配置で揉めちゃわない? というか操縦できる? 操作間違えて爆発オチにならない?
「あと、あれだ。あれやりたい……ほらあの、アニメに出てくる|電気鼠《ぺかちう》。あいつ放電して敵のメカとかさ壊してるじゃん。あんな感じで行きたい」
それ以上いけない。今回この場に|ハッキング系が得意な奴《電脳戦士》がいなくて本当に良かった。
そんな、なぜかドキドキする皆に「んな訳でよろしく」と告げると……思い出したように言葉を続けた。また何か言うんですか、怖い。今度はセーフであってくれ。
「あ、重要なこと忘れてた。ファミレスは肉食いたい、肉。ハンバーグでも良い」
楽しみにしてる、とニッと笑うアースト。言動は|危うい《ギリギリ》だが頼りになりそうな彼へ皆は拍手を送るのだった。
●十七人目 那弥陀目・ウルル
さて、長きに渡った自己紹介の時間もとうとう最後の一人。
那弥陀目・ウルル(世界ウルルン血風録・h07561)は帽子を取って一礼すると、穏やかな口調で始める。
「僕はウルル、|那弥陀目《なみだめ》・ウルル。√EDENの吸血鬼さ。好きなお惣菜は鶏レバーを甘辛く煮たやつ
……あ、吸血鬼って言っても悪い吸血鬼じゃないよ? 勿論血は吸うし、好きだけどね……大丈夫だよ! 皆のことは美味しそうとか全然思ってないから! ちょっとは思うけど! 誉め言葉、誉め言葉!」
「まあそんな訳で吸血鬼らしく、血を吸ったり操ったりが主な戦法だよ。勿論、蝙蝠なんかに変身も出来るからね、スタンダードな由緒正しい吸血鬼だよ!」
吸血鬼──√EDENでは「世界難民」として各国政府から秘密裏に保護されている種族。一口に吸血鬼とくくっても様々なタイプがいるのだが、ウルルはどうやら一般的な『吸血鬼』と聞いて浮かべるような血族らしい。よく見れば顔周り以外に露出の少ない服装やサングラスもそのためなのだろう。
ところで、吸血鬼と言えば『血液』。それを主食とする生態に眉を顰めるものもいるだろうが、多種多様な種族の入り乱れる√能力者においては、もしかしたらまともな部類なのかもしれない。だって|戦闘中におもむろに敵を食べる人《怪異解剖執刀術の使い手》もいますからね。血ならなんなら出所が保証されてる分、まだ全然セーフですよ、セーフ。輸血パックとかありますし、「バレなきゃセーフ」という言葉もありますし……しかし、それにしても。
皆の顔に浮かんだ疑問を察したように、ウルルは頷いて言葉を続ける。
「そう、だから本当は|この世界《√WZ》や機械とは少し相性が悪いんだけど……今回の大規模侵略は、√EDENにも危機が及ぶそうじゃない?──僕ら吸血鬼は√EDENに保護された身だ、大事な大事な第二の故郷とも言えるあの世界を護る義務がある」
そう、今回は√WZだけではなく√EDENにも被害が及ぶかもしれない瀬戸際の話。ウルルは少し真剣な面持ちでそう決意を告げたが、次の瞬間にはぱあっと顔をほころばせて曰く。
「ってな訳で、今回の作戦、様子見で軽めの所を探していたらここに行きついたワケなのさ。だってほら『爆破』とか聞こえちゃったからねぇ?」
確かに、爆破してしまえば機械も何も関係ないものね──そう納得しかけた皆の耳に「血の気が多くてとっても素敵♡」などと聞こえたか聞こえてないか。続けてじゅるり、とすすった音が聞こえたか聞こえていないか。
ともかく皆はウルルの立派な決意に拍手を送るのであった。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
第2章 ボス戦 『スカー・スカーレット』

POW
アシュラベルセルク・スカーレット
自身が受けた武器や√能力を複製した【機械の腕】を創造する。これは通常の行動とは別に使用でき、1回発動すると壊れる。
自身が受けた武器や√能力を複製した【機械の腕】を創造する。これは通常の行動とは別に使用でき、1回発動すると壊れる。
SPD
オートキラー・スカーレット
自身を攻撃しようとした対象を、装備する【レールガン】の射程まで跳躍した後先制攻撃する。その後、自身は【光学迷彩】を纏い隠密状態になる(この一連の動作は行動を消費しない)。
自身を攻撃しようとした対象を、装備する【レールガン】の射程まで跳躍した後先制攻撃する。その後、自身は【光学迷彩】を纏い隠密状態になる(この一連の動作は行動を消費しない)。
WIZ
オーバー・スカーレット
自身の【機体】を【真紅】に輝く【ダメージを反射する決戦モード】に変形させ、攻撃回数と移動速度を4倍、受けるダメージを2倍にする。この効果は最低でも60秒続く。
自身の【機体】を【真紅】に輝く【ダメージを反射する決戦モード】に変形させ、攻撃回数と移動速度を4倍、受けるダメージを2倍にする。この効果は最低でも60秒続く。
●裏切りがいっぱい
さてここで、決定事項と現状のおさらい。
今、√能力者たちは|天蓋大聖堂《カテドラル》『カテドラル・グロンバイン』──√EDENで言う『三ツ池公園』に存在する大規模な拠点の破壊を決定。その上で実行に移すべく、目的地へと向かっている。
しかし──。
ただでさえ進行されている真っ最中の√WZ。
敵地、それも最大級のロボット工場付近ともなれば激戦が予想されるはずだったのだが……。
「なんだか静かすぎませんか?」
思わず不安の声をこぼす程、道中何もない。
勿論一向が警戒し、慎重に進んでいる事もあるが、状況的に敵がこちらを把握し、罠や急な待ち伏せを仕掛けている可能性もある……しかし、それにしても、ここまで何もないのは──。
そして、もう一つ気になることがある。
『カテドラル・グロンバイン』に近付くに連れて、戦闘機械の残骸が周囲にやたら散らばり始めているのである。
もしや別の√能力者や協力者達が先回りしてくれているのだろうか?
そんな期待も微かに芽生えつつ、気を抜かずに一向が慎重に進んでいると、前方に『それ』はいた。
道の真ん中、群れて襲いかかる戦闘機械群を一体の赤いベルセルクマシンが躊躇なく屠っている。光化学迷彩、レールガン、そして相手の攻撃を反射するかの様な熾烈な攻撃に、成す術もなく撃ち落とされる機械たち。そして最後の一体を仕留めると、ベルセルクマシンは己の機体に新たなキルマークをつける。
『スカー・スカーレット』──友好強制AIを克服したにも関わらず、裏切りを警戒されて戦闘機械群の元にも戻れず殺戮衝動を全てにぶつける悲しき|元ベルセルクマシン《狂戦士》。趣味はキルマークを増やすこと。
そんな地元じゃ名の知れたヤベーやつである。ちなみに女性型。かわいいね。
「へ〜ロボでも裏切りの概念とかあるんだ。ウケる」
「めっちゃ感情あるじゃん。迷惑」
その光景、情報を共有した際に誰かが呟いたその声に──スカーレットはこちらへと気付き……キレた!!
「ロボって言うな!!!!」
どうして戦いは避けられないんだろう……あとキレるとこそっちかよロボがダメならなんだよ面倒だなこの機械風情がよ……。
そんな棚上げの心で√能力者達は立ち向かう。まあいいやどうせ全部ぶっ壊すし……そんな頭狂戦士度なら負けてないぞうと思った矢先──。
「アンタらもスクラップにしてやろうか!!」
それ、こっちが言う前にベルセルクマシンに言われることあるんだ。
なんか悔しい気持ちを抱いたり抱かなかったりしつつ、かくして前哨戦にも似た戦いの火蓋は切って落とされたのであった。

連携・アドリブ歓迎
採血〇
ロボの地元とは何処ぞや。工場?
さて、自己紹介では銃で援護射撃とか言っていたが、僕は嘘つきなのである。嘘つきたかった訳ではないが
【皆よろしく】でもふもふした小型妖怪達を呼び出し、攻撃はせずにスカーレット君にまとわりついて邪魔をさせよう。僕自身は御用警棒で小型妖怪達の邪魔を手伝ったり、キルされないように助けたり、攻撃したり。爆弾の気配がしたら一斉退避しよう
味方に視認されやすいよう小型妖怪達は白とか分かりやすい色の妖怪に来てもらおう…スカーレット君の黒とか赤に紛れない色であれば、虹色でも蛍光色でも僕はとやかく言わないニャン。各小型妖怪達の個性に任せるワン

【連携・アドリブ・採血◯】
|傷んだ緋《スカー・スカーレット》…スタイルや空気感、似たものを感じますです。
だからこそ、|蒼風《ラピス・ノースウィンド》としては負けられないです!
戦法は、真正面から殴り合います!いきますよ参謀さん!
あ、勿論考えあっての殴り合いですよ。
ラピスの【龍虎猛追撃】、どうぞどうぞ腕でもなんでもコピーしてくださいです。
ただ拳法とは技術あってのものです。身体の中に威力を効率的に伝える【重量攻撃】、
相手の動きを見て次への連携へどのように殴るか蹴るかグラップルワイヤるか。
即席で真似れるもんならやってみろ、です!
それに、ラピスと楪葉さんとの連続攻撃、隙があるとは思わないことです!

NG描写無し
お互い友好AIを一度入れられた時点で機械群からすれば落伍者のような物。気楽にやり合いましょう。友好AIを気にせず戦えるのはこちらとしてもありがたい話です。
戦闘は毒島博士に何かしらの対機械群用の銃を要求します。最初はロマン武器等を渡されてその性能を褒めつつ丁重にお断りし次の武器を要求。毒島博士の技術力は確かな物なので要求をしていくとスマートな対機械群用の銃を渡され性能の素晴らしさを端的に褒めつつ、前線組(参謀組)を狙撃でサポートします。
狙撃一発目は敵の近くにわざと外し√能力発動、未来予測を開始してから本格的な攻撃を開始する事で相手の攻撃と位置を予測して対応します。

プロフ帳○
採血○
『うさてんちゃんの空欄絶許★プロフ帳』で博士をコキ使ってやりましょう(好きな食べ物欄をミチミチにしながら)
日頃大変な目に遭わされていますので、たまには許されるでしょう。ええ、ええ。毒島博士、お許しください!
尊敬する人欄を空欄にし、うさてんさんへ
ハッ!博士への尊敬と感謝の念がみるみると芽生えて来た気が……!?
※一応元から多少は尊敬&感謝していた為プラシーボの可能性も
博士に送らせた献血ルーム建設キットも完成!
参加者にはジュース代わりのダイナマイト配布。
ご自由にお取りくださいコーナーへ山積みにされる爆弾等
これらを相手のゴールにシュゥゥーッ!!でございます。
……今投げたの、八尺玉では?

プロフ帳◯の人とかには空欄絶許★プロフ帳を配り尊敬する人欄に毒島博士と書き思い込ませてオメガちゃんの√能力にバフするヨ☆効果は2時間又はプロフ帳が破損するまでだヨ☆
採血◯ニンゲンちゃんをマネしたお飾りの循環していない血液だから絞り尽くしOKだヨ☆無くてもヘーキだからネ☆成分はニンゲンちゃんと同じハズだヨ☆
うさてんちゃんはピョピョン♪不思議道具☆「モー烈★スタンピード藁人形(牛型)」を使うヨ☆この牛型(小型)の藁人形は群れで赤色に突っ込んでくんだヨ☆毒島博士ちゃんの所から貰った爆弾を全ての牛にくくりつけてオーバー・スカーレットで真紅状態になった敵に突っ込ませるヨ☆
アドリブ連携何でもオッケーだヨ☆

採血〇だよ!
血が必要?血の気は多いよ!(どんっと右腕だして)やっちゃって!!
わーい!爆破だ~!!
ボクが自前で爆弾もってきてもあんまりきかないかもな~
確実にやるならしがみついてお腹と頭の同時に爆破しか~でもしんじゃうし~
と、思ってたら!
わぁ!オメガちゃんすごい!
ひぇ!これめっちゃいいダイナマイトじゃん!もらっていい…!?
最高すぎ~!
毒島博士にお礼言わなきゃ! 博士ありがとう! 素敵! 天才!!
素敵な爆弾一杯抱えて、よしじゃあ投げにいこ!
先に前に立ってる皆の後ろからよーく狙って…えーい!
あははは! 爆破されちゃえ~☆
参謀が脳筋的に切り開いたとこを上手に狙って投げてくよ~!
おかわり爆弾だ~!

採血〇
普段は採血する側なので、提供側で役に立つならば喜んで
ちなみに獅子座のO型だ(引き摺る自己紹介
参謀仲間と前へ、めんみつな作戦の元に動こう
今回のメンツや状況から、最良の作戦はこれだろう
とにかくあのロボを派手に爆破しスクラップにしてやろう
力こそ正義、爆破は浪漫、だ
オメガの爆弾も有難く使わせて貰う
これは何とも素晴らしい爆弾だな
流石はDr.毒島、天才がすぎる
勿論博士への称賛も
敵が決戦モード中は攻撃躱しつつ
与ダメージよりも、鋼糸や霊符で隙を作る
その後、参謀仲間(前衛)と連携しロボを爆破したり殴ったりしよう
位置取りはガブリエルを庇えるよう意識
保護者だからな
ふふ、皆、派手に爆破しているな
作戦通りだ(どや
●13:46 お役立ち二銃士を連れて来たヨ★
紅、赤、深紅──名前の通りに鮮やかな色合いの機体色、そしてベルセルクマシンにしては優美な、女性らしい曲線を描くまるで貴婦人の如きデザインの『スカー・スカーレット』といよいよ対峙し、√能力者たちはそれぞれ武器を構える──その少し前。
『カテドラル・グロンバイン』近く、いつ敵が出てもおかしくない雰囲気に、√能力者たちは周囲に危険がないことを確認すると、一度足を止めて軽く作戦会議を開いていた。
急な戦闘に入ろうとも近接攻撃が得意なものはその場で即対応出来るが、遠距離、そして支援・援護を主とする立ち回りの者は、何か前準備があるならば今仕込んでおいた方が良いのではないだろうか、という趣旨である。
「なるほどなるほど~、じゃあこんな時こそ~☆ ピョッピョピョン♫『空欄絶許★プロフ帳~☆』」
「おお、それが例の……では早速拝借して──」
作戦に頷き、|兎玉・天《うさてんちゃん》(うさてん堂・h04493)が大山かもしれないし山葵かもしれない、聞く人により異なる声色を感じさせるその名状しがたい不思議なリズムの物言いで取り出したるは例の『プロフ帳』
その場で書くのは大変だから今のうちにネ☆ と、一枚一枚√能力者たちに配っていれば、説明を聞いた時から心当たりがあったのか、|オメガ・毒島《Ω・ぶすじま》(サイボーグメガちゃん・h06434)はオメガ・メガネをクイをあげればさらりさらりとその場で書き上げ、てうさてんちゃんへ返却する。
でも折角の機会ですからね、|とある箇所《・・・・・》以外はきっちり書いてさしあげましょう。特に食べ物などは私こう見えても少々こだわりがありまして……ああ欄が狭い! 書ききれない!
「はーい、じゃあこれ、|そういうコト《・・・・・・》でいいのカナ?」
「はい、お願いします。ええ、ええ……毒島博士、お許しください!」
ここでおさらい。
皆へ配られたプロフ帳は『空白を|持ち主《うさてんちゃん》が埋めれば、その項目が現実となる』というもの。つまり例えば、【尊敬してる人】の空欄にうさてんちゃんが【毒島・博士】と書けば、面識がなくとも、人となりを全然知らずとも、特に尊敬の心がなくとも、プロフ帳が消える、もしくはタイムリミットの二時間は体内に毒島博士への尊敬の念が沸き上がって『心から尊敬する』ことになる。気軽に現実改変とかやっぱ怖いっスね人間災厄と不思議道具は。
しかし、それだけだと毒島博士以外特にメリットはないのだが──ここにオメガの【博士の出張ラボ】内に博士本人を呼び出す√能力がある。それを組み合わせれば、『皆の感謝で毒島博士の自己顕示欲とかそういうろくでもないあれが満たされてパワーとなり、気を良くした博士がじゃんじゃか武装兵器や便利アイテムをその場で作ってくれて皆ニッコリ』みたいなコンボが発動するわけですね。71歳をフル活用。えげつねえ。
「……まあ、日頃大変な目に遭わされていますので、こんな所業もたまには許されるでしょう。あ、ちなみにラボはこんなこともあろうかと、オメガパワーと皆様のご協力で先ほど安全そうな場所に建てさせて頂きました。肝心の材料は、まあこの世界ですからスクラップを拾えばどうにかなるでしょう」
「わあ用意周到☆ じゃあ皆も『尊敬してる人』は空白でネ☆ それ以外も埋めてくれると嬉しいケド、他にもご要望があったらヨロシク☆」
ふむふむと説明を聞きながら、思い思いに現状の足りない・欲しい|武器《もの》を浮かべる√能力者たち、その姿はまるでクリスマスプレゼントを浮かべる子供の様な純粋さ……。
「はい! 献血ルーム建設キットと血液ください!」
「爆弾! 爆弾!」
「自分は何かしらの対機械群用の銃を」
「いい感じの刀とか」
そうでもなかった。えげつなかった。
●14:25 |血祭り《くれない》や
そして今、『スカー・スカーレット』を前に、√能力者たちは口を開く──。
「地元じゃ名の知れた存在……はて、ロボの地元とは何処ぞや。生産された工場? じゃあ|この辺《川崎》なのかワン?」
「分からないです! でもラピスの地元では聞いたことないです!」
「少なくとも俺の地元でもないな……しかし川崎育ちとは、俺の知識によると恐らく喧嘩が強い」
「僕も知ーらない、って、カワサキってそんな場所なの?」
「多分その知識、不良漫画とかからのイメージニャンね?」
そんな、広瀬・御影(半人半妖の狐耳少女不良警官・h00999)とラピス・ノースウィンド(機竜の意思を継ぐ少女・h01171)の疑問に、きりりと何か偏った知識で答えた楪葉・伶央(Fearless・h00412)へ、ガブリエル・レーゲン(春雷・h08077)が再び疑問を呈し……この生死のかかった戦場において、まるでちょっと遠出した先で面倒な不良に喧嘩を吹っ掛けられて面倒くせえなあみたいな肝の座った反応、見習いたい。
まあ状況的にはあながち間違っていないのだが──。
「そう、友好AIを一度入れられた時点で機械群からすれば|落伍者《不良》のような物──しかしあの様子ですと|対象《ターゲット》は友好AIを恐らく上書きしていることでしょう。同類でも気にせず戦えるのはこちらとしてもありがたい話です。落伍者同士、気楽にやり合いましょう」
では自分は後方支援にて、この場から移動します──そう落ち着いた声が響いたと思うと、身にまとった|EOC《電磁的光学迷彩》マントのせいか既にフォー・フルード(理由なき友好者・h01293)の姿はどこにも見えず、ただその声で√能力者たちは思い出す。戦いの時だと。
「|傷んだ緋《スカー・スカーレット》……確かに、ベルセルクマシンのフォーさんはアレと近しい存在でしょうが……ベルセルクマシンと|少女人形《レプリノイド》の違いはありますけど、ラピスもスタイルや空気感、似たものを感じますです。だからこそ、|蒼風《ラピス・ノースウィンド》としては負けられないです! という事で|参謀《楪葉》さん、今回の作戦をお願いしますです!」
ラピスのまっすぐな瞳に作戦を請われた伶央は指を顎に当てて思案し、皆の顔を見渡す。
「ふむ……そうだな、今回のメンツや状況から……最良の作戦はこれだろう」
「とにかくあのロボを派手に爆破しスクラップにしてやろう。力こそ正義、爆破は浪漫、だ」
大丈夫かなあ!?
「了解です! 真正面から殴り合います! いきますよ皆さん!」
「わーい !爆破だ~!!」
「まあ分かってたけど、なるようになるかニャア……」
……大丈夫かなあ!?
●14:29 博士の|部屋《ラボ》
皆と別れ、単独で狙撃ポイントへと移動するついでにフォーは「やってますか」と暖簾をくぐって居酒屋に入るような、そんな空気で即席で建てられたラボに入り、オメガ、そして毒島博士と対面し状況を伝えて要求する。
「──という訳で、今の状況に相応しい対機械群用の銃をお願いします」
「成程それなら……発想を変えて、これはどうだ!」
毒島博士が取り出したのは銃火器……ではなく数枚の設計図。
「運よく|新鮮《・・》な材料がそこら中に転がっているからな! どうだこの機会に、人型から多脚型としてアームを二、三本増築し、新たな姿と戦闘形態に生まれ変わるのは!」
「成程、銃火器ではなく|腕《アーム》の増築ですか。確かにそれならば一度に複数の武器を扱えて、戦力が文字通りに数倍となる訳ですね」
「その通り! ついでに視覚を360度に拡げて下半身をキャタピラのタンク型に……」
「大変魅力的な提案ですが、あまりに現在とかけ離れた姿になると使いこなすには少々時間がいるかと。後でお願いするかもしれませんが、一先ず今は手っ取り早く、破壊力のある、そして扱いやすい……|銃《・》をお願いできればと思います」
やんわりと断り、しかし博士を持ち上げつつも己の要求を通すフォーの大人な対応に、毒島博士は不服ながらも少し考えてから、どこか古めかしい形状の単発式ライフルを取り出して、説明する。
「ふむ、仕方ない……ではこれはどうだ? |どこぞの世界の技術を《√DFの飛竜狙撃銃》改良した、自動照準機構付きのライフルだ。最新兵器に比べれば威力は劣るがその分命中率は百発百中。適当に目を瞑って撃ってもターゲットに当たるぞ! 銃弾? どの弾でも互換性はある! 私を甘く見るな!」
「成程、この様な乱戦が見込まれる状況下では大変頼りになるものですね。ありがとうございます」
「あ、フォーさん。これ、是非皆さんへ持って行ってください」
一礼をし、銃を携えてラボを出ていこうとするフォーへ、オメガが「これうちで採れた野菜なんですけど作りすぎちゃって」みたいなテンションで手渡した袋の中には、ダイナマイトと爆弾がぎっしり。見れば、室内の「ご自由にお取り下さい」コーナーにも似たようなものが山積みになっている。
「私も後程合流しますが、とりあえずここに来れば山ほどあると宣伝をお願いします、ええ……」
「ありがとうございます。それでは店長もご武運を──」
●14:32 戦いのとき
「しかし、接近戦を挑んで本当に大丈夫だワン?」
「うーん、ボクが自前で爆弾もってきてもあんまりきかないかもな~」
「あ、ラピスは勿論考えあっての殴り合いですよ」
「なんだか、俺たちが考えなしのような言い方をしていないか?」
「気のせいです! まあ見ててくださいです!」
作戦決定後もいささか不安が残る空気の中、そう言うや否や、ラピスは元気いっぱいに単独、スカーレットに突っ込み、先手必勝とばかりに攻撃を仕掛ける。ガントレットを用いたそれは接近戦──格闘技に近い動きで、あご打・回し下段・発勁・震脚等と連続攻撃を繰り出していく。しかしスカーレットは機械の身ながらどこか余裕の態度と言った雰囲気でラピスの攻撃を受け止め──そして、動きをコピーして同じ攻撃を反撃に繰り出した。
しかしそれが狙い、とばかりにラピスは不敵に笑って攻防に転じる。
「どうぞどうぞ、思う存分コピーしてくださいです……ただ拳法とは技術あってのものです」
「身体の中に威力を効率的に伝える重量攻撃、相手の動きを見て次への連携へどのように殴るか、蹴るか、グラップルワイヤるか──即席で真似れるもんならやってみろ、です!」
つまりただ動きを攻撃をコピーしてもそれは表面上の動きを真似しただけで、|極めた者《オリジン》には遠く及ばないとラピスは知っているのだ。故にスカーレットの攻撃は全く意味をなさない。それどころか隙を産み出すに近しいボーナスタイム。故に軽々とスカーレットの攻撃を捌き、腕を壊して|機体《ボディ》に一撃を叩きこみ、その自分よりも巨大な機体を地面に叩きつけると、ラピスは攻撃のチャンスと呼びかける。
「|参謀《楪葉》さん!! ガブリエルさん!!」
「ああ!」
ラピスの声に、|Chertan《改造電動ハンドガン》と|Algieba《霊符》を構えた伶央が応え、スカーレットに光線を撃ち込んで一部の回路をショートさせる。しかし戦闘に特化した機械には聊か改造ハンドガンは攻撃力が心もとなく、煙が立ち上がってダメージは与えられてはいるのだが、倒すまでには至らない。そこに攻撃の霊符を撒いて時間稼ぎを行いつつ、機械と己の攻撃手段に相性の悪さを実感し、何か他に決定打となる武器をと思案する伶央の傍でガブリエルが珍しくオロオロとしていた。
「あっ……チャンスだけど、でもどうしよう! 爆発、確実にやるならしがみついてお腹と頭の同時に爆破しか~でもしんじゃうし~」
「その戦法は絶対駄目だからな!」
「過保護……!」
緊迫した状況ながら、どこかほのぼのとしたやりとりをするふたりの前、起き上がって体勢を立て直そうとするスカーレットの|視界《センサー》を塞ぐものがあった。
「さて、銃で援護射撃とか言っていたが、僕は嘘つきなのである。嘘つきたかった訳ではないが……今はそんな気分じゃない、みたいな? しかし、だからと言って見てるだけじゃなく、少しは働かないとだニャンからねえ……ていうか普通に心配だワン。ってことで、じゃあ『皆』頼むよー」
戦場に似合わない、まるで知り合いに語り掛ける様な声色で御影が言うと、ふとそこかしこから何かが現れ始めた。まるで煙のように揺らめいたそれは、十を超える小型の妖怪たちであり、皆一様にこう……モフモフとしていた。
モフモフばかりではない、皆一様に|奇妙《・・》な色合い、まるでスカーレットの赤・黒・白に被らないように配慮した……蛍光色やら虹色やら、一目で異物と分かるようなそれがスカーレットの視界や手足にまとわりつき、邪魔をする……モフモフ好きが見ている分にはさながら天国のような、いやでも蛍光色はどうだろうか……ともかく、まあまあ羨ましいような光景ではあるが、しかし所詮は機械、恐らくモフモフなど感じる訳もほだされる気持ちもなく、さながら猫に小判、豚に真珠、月とすっぽん、あと何か……何かそういうあれである。
「まあ僕は|妖怪《みな》の個性を尊重するワン。来てくれるだけありがとうだし……」
若干他人事な御影はともかく、それらがスカーレットの動きを封ずるようにまとわりつく。振り落とされそうになったり、妖怪の手が回らぬ場所は気をそらすように御影が妖力を込めた警棒で攻撃し、動きを封じていた。それがまたスカーレットの怒りを呼び起こし、戦法も何もないようなめちゃくちゃな動きを誘発させる。
「とりあえずこいつらの動きは僕たちでどうにかするから、早く攻撃お願いするニャン。あ、出来るだけ避けるけど妖怪達には当てないようにお願いしたいワン」
「え~でもどうしよう~!」
「はーい、お困りのようだネ☆ フォーさん、というか毒島博士からお届けものだヨ☆」
そこにふと現れたうさてんちゃんが、大きな袋を広げ、皆へ何かを手渡す。さっきそこでフォーさんと会ってネ☆ ていうかわあまるでサンタさんみたいじゃナイ☆
「ひぇ! これめっちゃいいダイナマイトじゃん! もらっていい……!? 最高すぎ~!」
「これは何とも素晴らしい爆弾だな。流石はDr.毒島、天才がすぎる」
「見ただけで分かるワン?」
「えっラピスも投げるんですか?」
「あとで毒島博士にお礼言わなきゃ! いや、今言っちゃお! 博士ありがとう! 素敵! 天才!! よしじゃあ皆! 投げにいこ! 爆発タイム!!」
●14:52 |爆発《パーティ》タイム
四苦八苦しながら小型妖怪を前面から引きはがし、どうにか立ち上がって態勢を立て直したスカーレットの機体にふと衝撃が、そして恐ろしい程に、戦場に似合わぬ程心から楽しそうな笑い声が響く。
「あははは! いい爆弾~! あははは! 爆破されちゃえ~☆」
笑い声の主──ガブリエルが手あたり次第に笑いながら投げた爆発物。一つ一つの破壊力は低く、機体へのダメージは少ないが四方から吹き荒れる爆風にぐらつき、そして急に不自然に、まる感知できぬ障壁にぶつかったかのように自分の意思とバランスに反して止まる。
「対象確認、障害を掃討する」
ガブリエルを爆風から、そしてスカーレットからかばう様な位置取りで立つと、手袋を嵌めなおしてナイフを構えた伶央──そこから四方に張り巡らされたのは不可視の鋼糸。ダメージを与えるよりも捕縛の方面に切り替えたそれらに絡めとられ、スカーレットは身動きが取れぬまま、しかし次の瞬間、自身の機体を真紅に輝かせてモードチェンジを行う。今までより目に見えて攻撃の手数とスピードを増やし、鋼糸からの脱出を行うとすぐ目の前にいた伶央とガブリエルにレールガンを向け、反撃を試みるが──。
「必ず当たるという事は、逆に言うと、必ず|外せる《・・・》ということ──」
少し離れた高所に陣取ったフォーは毒島博士から受け取った銃を構え、スコープを覗きながら味方の戦況を確認し、ひとり確認するように呟く。
そしてあえてスカーレットから狙いをズラして一発を放ち、√能力を発動させる。
「算出完了、誤差許容範囲内、|射出《FIRE》、さて、ここからが|本番《・・》です。皆様、ご武運を」
どこからか発射された弾丸、そして二発目を頭部に受けてセンサーの不具合を生じたスカーレットに、√能力者たちは弾丸の来た方角、視界には捉えられないがそこにいるであろうフォーへ手を振り、スカーレットへと向き直る。
「そう、まだ勝負はついていないですよ!」
「もう少しだ、皆頑張ってくれ!」
死角から浴びせられるラピスの一撃にレールガンをそらされ、そこへすかさず伶央が動きを封じる霊符を撒く。御影が妖力を込めた警棒で足を狙い、よろめかせるとそこへチャンスとばかり、うさてんちゃん再びの不思議道具『モー烈★スタンピード藁人形(牛型)』──原理は知らぬが何故か自動で突進するウシ型の藁人形の群れ、もう何を言ってるのか分からんが、不思議道具だからしょうがない。爆弾をくくりつけたそれが突っ込んで盛大に爆発炎上。とどめとばかりにガブリエルが駄目押しで爆弾をおかわり。もう一丁! お嬢さん、コントロールがえぐい程上手でいらっしゃる。
「ふふっ、皆のチームワークで派手に爆破しているな。作戦通りだ」
「いや~いいね! 爆発ってこうじゃなきゃ!」
うむうむどやあと、先ほどの格好い真剣な戦闘とは真逆に、何故か満足げに腕組みで爆発に見入る伶央とニッコニコのガブリエル。その横で全小型妖怪の避難を確認した御影とラピス、うさてんちゃんが派手に炎上する光景を見つめている。
「こういうのって『やったか……?』と思うと、大体終わってないワンよね」
「やなこと言う~! でもそしたらもう一回爆破チャンスじゃん!」
「ガブリエルちゃんはポジティブです」
「でもでも、こんだけやったなら勝ちカモ?☆」
「……ハア、ハア……終わりましたか?」
そんな中、めっちゃくちゃフラグめいたことを言いながらオメガが遅れてやってきた。今まで全力で毒島博士をよいしょしていたせいでわりと、下手したらこの場の誰よりも体力を消耗しているのであったが。
「あっオメガちゃん! 爆弾ありがとう! すっごくよかったよ! オメガちゃんも記念に投げなよ!」
「え、終わったところにいいんですか……じゃあお言葉に甘えて……」
「あ、御影ちゃんも投げてないよね? ラピスちゃんも! うさてんちゃんは……爆発してたけどいいや! 投げよ!」
なんの記念だか分からないが、ガブリエルに言われるがまま皆に手渡された爆弾。周囲を見渡せば、なんでかやけに満足気な、「いいんだ、ワンパクでもいい。健やかに育ってくれ」みたいな顔で完全に|保護者《あに》モードに入った伶央が皆をにこやかに慈しみの目で眺めていた。
その目に断ることも憚れて、皆はガブリエルに言われるがままとりあえず、いまだ炎上しているスカーレットだったものへと爆弾を投げるのであった。なんの儀式なんですか、これ。さあ。
●15:03 夏だから
援護射撃から数分。炎上が収まらないがそれ以上状況が進行しないことで、一先ず皆の元へ戻ろうとしたフォーの視界に、つんざくばかりの爆発音、それから、それはそれは見事な八尺玉が数発映ったという。
誰ですか、花火混ぜたの。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

(ヒトに擬態してるだけで血が通ってないからネ、採血はされても出ないぜ!)(その他諸々歓迎ウェルカム☆)
ワオ、マシーンなレディ☆ おひとりサマとは、なかなか度胸がアリアリのウェイだネ。
何はともあれアメアラレ〜? タケちゃんのハートは、もうすっかり『合体ロボのド派手な爆破』に向いちゃってるワケで〜? 完成済みのロボはお呼びじゃナイんだぜ〜!
そんじゃ マ〜、とっておきの宇宙をお見舞いしちゃうぜ。揺れはド派手に、対象はマシーンなレディに一途だぜ☆
足止めはしておくから、前衛の皆サマで遠慮なくやっちゃってほしいぜ〜!

(何かあったらすぐ逃げられるように、魔改造三輪車に乗っておきます。キコキコ、かわいいね。発明品が活躍しているところを見て、毒島博士も喜ぶことでしょう。多分そう、部分的にそう)
コレが、『合体ロボ』……? チガウノ……? ジャア、イラナイ……カエッテ……。
カエッテ クレナイ ナラ……『合体ロボ』にナッテモラウ……。
『殺傷力の高いもの』……トゲトゲ、カチカチ、ズッシリ……『戦闘機械の残骸』イッパイ……ゼンブ、ブツケル……。
『頭上注意』、『巻き込み注意』……『ご安全に』……。
リサチャンの……オリジナル『合体ロボ』……カッコイイ……。

『レイ、ここにあるブツ自由に使っていいって博士が言ってる』
じゃあ手ごろなコンカッションで
『派手なの使いなって遠慮すんな』
『ほらよ、|自走型クラスター爆弾《パンジャン》』
エグいの選ぶね玲子
...真っ直ぐ走るよね?
『博士の発明品だよ、真っすぐどころか飛んだりドリフトも出来るに決まっている』
この爆弾に『亜空間力学』付与して、【爆破】の当たり判定を見た目より大きくして回避し辛くしとこ
一回で二回被弾するダメージ計算重複バグ込み
『詐欺判定?いいねそれ』
防御はヴォイド・オーパーツの「無」にラベンダー・ブルーの接触判定を付与して、見えない壁を形成
これで反射ダメージ対処するよ(オーラ防御・ジャミング)

相手を倒したら機体にキルマークつける、少しわかる気がするぞ
俺もパンの袋に付いている皿が貰える応募シールの用紙が見当たらない時は
そのシールを腕に貼って一時避難させるんだ
今度は冷蔵庫にでも貼っておこうと思う
前衛で参謀?するらしいので俺も前に出よう
参謀とは……あまり細かいことは考えないでおこう
オメガが√能力で毒島博士を呼び出すんだったな
えぇと、感謝の気持ちを伝える
(会ったことないんだよな……)
いつもオメガ達の力になってくれてありがとう
いい感じの剣を出してくれると嬉しい
いい感じの剣をもらったら悪鬼片鱗
武器に負けるようではいかないからな
腕力を強化に加えて怪力と鎧無視、敵目掛けて切断
おお、流石の切れ味

ふーん、戦闘用の機械でも性別とかあるんだ
血管はないのにね(不満気)
まあその分はね!
血気盛んな仲間が集まっているからね!
ちょっとくらい貰っちゃってもいいよね!!!
ん?なぁにそれは?
プロフ帳に何でも送ってくれる博士?
へ〜え、僕こういう不思議なギミック大好き!使ってみよっと!
サラサラサラ…
じゃあ特技欄に太鼓持ちって書いて貰って…
がんばれ♡がんばれ♡
オメガくんほど素敵なサイボーグって見た事ないな♡ 天才♡博士の科学は世界一♡血管ツルツル♡
献血ルーム建設キットと血液ください
僕は【医術】の心得と医療器具があるから
怪我した子を手当しようねぇ
【錬金術】や【武器改造】【防具改造】も嗜んでいるから、人外の子でも多少はイケるんじゃないかな
じゃあとりあえず採血しようね♡(注射器を構える)
(「採血◯」と書いてくれた人には採血針でプスッといきます。手当が不用の方には何かこう…隙を見ていきます)
回復や防御行動が間に合わない子には『血癒術』を使うけど、可能な範囲は医術でなんとか!
行動不能は困るよね、針も通らなくなるし…

可愛いベルセルクマシンだねぇ
敵じゃなかったら沢山お話したかったのにな〜!残念残念!
ああなったらもうね、|解体《スクラップ》にするしかなくなっちゃったね!
毒島博士から爆弾の支援もあるそうでワタシ、とってもドキドキ
他の人が作った爆弾の構造を是非調べてみたいな〜!
クラフト・アンド・デストロイでチョチョイと解体して中身を確認して情報収集
うんうん、うんうんうん、素晴らしい!毒島博士は素晴らしいね!
構造を理解したら今度は制作、そこにワタシの知恵をコラボ!
錬金術で金属を錆びさせる液体を作ってこの爆弾にエッセンス
ベルセルクマシンの回路をマヒさせる効果付き爆弾!
それでは飛んでけ、それ〜!!
●13:48 全員不審者
さて前述の通り、全員に配られて説明された、うさてんちゃんのプロフ帳と出張毒島ラボの件を聞くと、|那弥陀目《なみだめ》・ウルル(世界ウルルン血風録・h07561)はプロフ帳の裏表を眺めながらニコリと笑った。
「なるほどなるほど……へ〜え、僕こういう不思議なギミック大好き! 使ってみよっと!」
言うや否や、ウルルは慣れた手つきで、時折スマホを覗き込んだりしながら躊躇いなくサラサラとペンを走らせる。旅をしてるとねえ、こんな面倒な書類をたくさん書かなきゃいけないけど、それに比べればこれは完全に趣味だし何も気にしなくて好き勝手書けるからいいよねえ……サラサラサラ……。
「……えーと『苦手な食べ物』うーん、この辺はプライバシーだから適当に書いちゃお! 持ち主に空白を埋められなきゃ、こっちが嘘書いてもいいんだよね!」
「あ、|そういうの《デタラメ》ありです? じゃあワタシも真似して嘘書いちゃう!」
「なんだかルールの隙間をつくやり方だけど、記憶がないし私も似たようなものか……」
『じゃあ私が|代筆《指示して》やるよ。ほら、こういうのって|特定回答《隠しコマンド》で最強パラメータとか発動するじゃん? 見つけようぜ! 強くてニューゲーム!』
「玲子、どうせ碌でもない事書くんでしょ。それはやめて」
「お姉さんさっきからどうしたの~? あ、もしかして『宇宙』と|交信し《つながっ》ちゃってる系? 分かる~☆ 大丈夫☆ 最初はうっとうしいけど慣れるから☆」
ウルルの声に反応し、同じようにペンを走らせていく|萬《よろず》・シェプファ(~|工房より愛をこめて《From the studio with love》~・h07678)と|レイ・イクス・ドッペルノイン《RX-99》(人生という名のクソゲー・h02896)。なんでか人間っぽくないやつらしかいない、そんな空間に『自認:人間』レイが馴染みかかっていると、ふとチャラりとした声がかかれば物部・武正(モブチャラ男くん・h06619)がウェーイとプロフ帳をヒラヒラさせながら立っていた。
一見まともな『人間』が現れた、と思った傍から、子供大のテディベアと、武人めいた羅刹の男──物部・リサちゃん(ゲーセン生まれリサイクルショップ育ち・h06765)と櫃石・湖武丸(蒼羅刹・h00229)が顔を出す。
今回、人外しかいないんですか。はい。
「とは言ってもタケちゃんも難しいぜ~☆ 皆そうなら適当に書いちゃお!」
「タケチャン……リサチャン……ココの『漢字』がワカラナイ……」
「物部、熊じゃない方の物部。俺もここの意味が分かない。『マイブーム』とは何だ」
「ウェーイ? 全く二人とも困ったチャンだゼ☆ マイブームってのは今ハマってる趣味みたいなもんで……リサちゃんのは……何々? 『すわりみぎ……』知らんぜ! もう適当にGo Go☆」
「成程、趣味……趣味? まさか自己紹介といい、このような場で己を見つめ直すことになるとは。あとそこは『座右の銘』だが……むう、言われてみると難しい」
「そんなに真面目に考えなくてもいいんじゃないかな~? いや、いい事だと思うけどね! あ、僕もう書けたからお先~!」
そんな和やかともカオスとも言えぬ妙に平和な空気の中【尊敬する人】の欄を空白にしたウルルがプロフ帳を提出しようとしたその時、シェプファがふと冗談とも本気ともつかない楽しそうな声色でふと疑問を呈した。
「ねえこれってさぁ……『性別』を空白にして『ヒ・ミ・ツ♡』なんて持ち主に書かれたら、一体どうなっちゃうんだろうねえ!」
「えっ何それ怖い! 性別欄、きちんと書いたよね!? ……あ、読み仮名忘れてた、サラサラ……」
慌てて追記するウルルはともかく、楽しそうに紙を見直しているシェプファのチャプチャプと|揺れる頭《・・・・》を見ながらいや、それは……アンタ周囲から見ればもう似たようなものでは? と、レイは浮かんだ言葉を呑み込んだ。
そして脳内にすかさず響く『おっ流行りのタイプA/Bか?』という謎の言葉にも答えず、無言でプロフ帳を提出する。
こうして少女はまたひとつ、|大人になっていく《見て見ぬ振りをする》のであった。
●13:57 シン・お役立ち二銃士~|再臨《リボーン》~
「ところで、僕は医療と錬金術の心得があるし、後方支援で皆の手当てに回ろうと思うんだけど……そまあその分はね!
血気盛んな仲間が集まっているからね! ちょっとくらい貰っちゃってもいいよね! うん、でもちょっとはね……それに、人外ならそれはそれでね? ってな訳で、どうせなら博士を|持ち上げて《ワッショイ》して最高の設備をね~、作ってもらおうかなって~」
先に出発した一団を見送り、プロフ帳を提出する寸前、ふと手持ちの医療器具と注射器を少々心細そうに眺めながらウルルは呟くと、シェプファはうんうんと|頭《フラスコ》を振って同意を示す。
「分かる~、ワタシもこう、この機会に他人の|製造し《つくっ》た爆弾の構造を調べてみたいけど……でも、お高いんでしょう?」
その声に、ふと思いついたウルルは【特技欄】を打ち消す様に二重線を引き、『太鼓持ち』と書いてもらうように指示を出す。それを横目で見たシェプファはポンと手を打って真似をする。
「ほら、こうしてプロフ帳に書けばあら不思議~……わあ、どんどん思いもしない褒め言葉が湧いてくるよ! 恐怖体験!」
「ワオ! ナイスアイデア! それでは早速……なんと! ワタシの|意思《くち》が|意思《くち》じゃないみたい! 真夏のホラー!」
「わ~そもそもシェプファくんってどこが口だか分からないけどね……がんばれ♡ がんばれ♡ オメガくんほど素敵なサイボーグって見た事ないな♡ 流石博士♡」
「マッド♡ 理想の老後♡ 神をも恐れぬその所業♡ 流れてる血は何色か?」
「天才♡ 博士の科学は世界一♡ 血管ツルツル♡ 前期高齢者♡ マッドの代名詞~♡」
心にもないかもしれない、けれど今『心からの尊敬』の念から出る言葉は本心かもしれない。そもそも敬いなのか分からない言葉がふたりの口からどんどん出てくる。やっぱ怖いっスね現実改変能力は。
「ってな訳で、献血ルーム建設キットと血液ください」
「ワタシは簡易工作キットと部品を」
うわあ急に|本性《物欲》を現すな。
そんな騒ぎを知らず、湖武丸はたどたどしく博士へ感謝の気持ちと要望を伝える。
「いつもオメガ達の力になってくれてありがとう。博士と会うのは初めてだが……その、いい感じの剣を出してくれると嬉しい」
ふたりとは打って変わって静かに、しかし誠実に述べるが本人なりにそれだけでは感謝の心が足りないと思ったのか、無茶ぶりで疲れ切った毒島博士の前に、おにぎりを一つ添えると、ふと目を瞑り静かに拝む。
感謝は伝わるけど……それは絵的に駄目じゃないかな!? 無駄に焦る二人を前に、湖武丸は首を捻るのであった。
●15:05 |再戦・再起動《やっぱりやってなかった》
先導して道を歩き、確実に『|何か《戦闘》』があったであろう、爆発跡と、周囲にいまだ立ち上がる煙と炎の前に口笛を吹き「Fuu♪」とか口笛を吹きながら、武正はウェアラブルカメラを回し、余裕の態度で呟く。
「いやいやいや、主役は遅れてやってくるなんてやってたら終わっちゃった感じ~? 折角買ったカメラの出番がこれだけはツライぜ~」
「『花火』キレイ……タマヤ~……」
そしてキコキコと、魔改造三輪車に乗って着いてくる子供、否、リサちゃんが追い付いて同じように爆発を眺めていた。しかし──。
「全員……スクラップだ!!」
炎を切り裂き、突如として『スカー・スカーレット』がその機体を現す。多少傷はつけども、まだ動力源を立たれず動くその機体に、しかし武正は余裕を崩さずに笑う。
「ワオ、マシーンなレディ☆ おひとりサマとは、なかなか度胸がアリアリのウェイだネ」
「レディ……タケチャン『浮気』はダメ……」
「ウェイ? それは違うぜリサちゃん~。タケちゃんのハートは、リサちゃんに向いてるけど、何より今回はもうすっかり『合体ロボのド派手な爆破』に向いちゃってるワケで〜? ああいう完成済みのロボはお呼びじゃナイんだぜ〜!」
「……アレは『合体ロボ』……? チガウノ……? ジャア、イラナイ……タケチャンも『無罪』……」
「無罪!? 何はともあれアメアラレ〜? とっておきの宇宙をお見舞いしちゃうぜ。揺れはド派手に、対象は……今だけは、マシーンなレディに一途だぜ☆」
「リサチャンも……オトモダチと『頑張る』……オリジナル『合体ロボ』……」
よく分からない世界を繰り広げるふたりに、スカーレットは何も言わず、ただ己の機体を変形させ攻撃回数と移動速度を上げようとする──。
「そんじゃ マ〜、ってなワケで? レディ、踊ってよ」
武正が笑って指を鳴らすや否や、ふと周囲に目に見えぬ衝撃波が起こり、スカーレットの視界が揺れてぐらりと天地が上下する。視界から感知センサー、すべてに異常ノイズが走り、速度を上げたせいもあって機体のコントロールが取れず、咄嗟に別方向へと突進するのだが──。
「『殺傷力の高いもの』……トゲトゲ、カチカチ、ズッシリ……『戦闘機械の残骸』イッパイ……ゼンブ、ブツケル……『頭上注意』、『巻き込み注意』……『ご安全に』……」
スカーレットの進行方向、猛スピードで突っ込もうとしたその先に、|桐箱《おともだち》を手にしたリサちゃんが周囲のスクラップを集めて、禍々しい形状のトラップを作成して待ち受けている。
「──!!」
避ける暇もなく突っ込み、控えめな爆発を起こすと、爆風を浴びながら武正とリサちゃんは平然と、背後へ声をかける。
「はーい、じゃあ前衛の皆サマ~! 遠慮なくやっちゃって~!!」
「……『|追撃《ボコボコ》』はタイセツ……」
●15:13 端数が余ると悲しい
「うん、任された」
武正のその声に応える様に背後から現れると、湖武丸はスクラップから抜け出したスカーレットの攻撃を刀で受け止める。その複製された『機械の腕』と鍔迫り合いの様な形を取りつつ、独りごとのように、まるで目の前の状況とは別のものを見ているかのように淡々と呟く。
「相手を倒したら機体にキルマークつける──真似をしようとは思わないが、少しわかる気がするぞ」
女性型とは言え、大柄なベルセルクマシン──対格差のある中、湖武丸はふと能力を開放し、通常の怪力に加えて祖先の羅刹鬼の力により腕力をさらに増幅させる。その上で博士自慢の刀の耐久性によりスカーレットの分厚い装甲を無視するような切れ味で『腕』を切り落とすのだが──。
「俺もパンの袋に付いている皿が貰える応募シールの用紙が見当たらない時は、そのシールを腕に貼って一時避難させるんだが、いかんせんベタベタするし、取りにくいので」
「ちょっとそれ分かるかも~、ないと思ったら、そもそも紙を貰い忘れてるヤツ☆」
「リサチャン……『朝食』はパン……シール……ペタペタ……『お皿』タクサン……」
「お前は、お前らは──!」
複製された腕を失い、距離を取ろうとするスカーレット。抵抗しながらも叫び続ける機械を、湖武丸は容赦なく斬りつけて、確実に装甲を剥がしていく。その接近戦に、レールガンで距離を取ろうとも難しく、ただひたすら防御に回るしかない。
「だから──今度は冷蔵庫にでも貼っておこうと思う」
そこかしこ、断線された回路を露わにし、ショートさせながらスカーレットは戸惑いと、怒りを込めて叫ぶ。
「お前は!! 何の!! 話を!! してるんだよ!!!!」
「む? 聞こえなかったか? パンのシールを集めるとな、皿がもらえるんだ」
答えになっていない返答をすると、湖武丸は刀を収めた。
絶対、確実に聞きたかったのはそっちじゃないが──。
「分かる~!」
しつこく再起動を仕掛け、決戦モードに変形しかけたスカーレットの腕を一撃、大鎌で武装したウルルが武装を斬り落とす。
「いやあ、お皿ね。あれお得だよねえ。うん」
つやっとした顔で大鎌──己の血液で創造した武器を構え、ウルルは湖武丸の隣に立つ。彼は確か献血ルームにて待機していたはず、とふと何か言いたそうな武正たちや湖武丸に察すると、ウルルは先回りするように回答する。
「いやね、プスリプスリとちょっぴり頂いた皆の血液がジューシーで人間とは異なってスパイシーで……なんだか元気いっぱいみたいな? あ、勿論採血OKな子だけだよ!? それはともかく、そんな訳でキッチリ医療班として|血癒術《ブラッディヒーラー》をかけてるけど、この調子だとどうも大丈夫そうだし、それなら数で押しちゃおうって参戦しちゃった!」
「ウェ~イ、タケちゃんの血ってもしや意外とイケル? 高評価ちょい嬉しいカモ☆」
「ハッピーハッピー……タケチャン……『高評価』……リサチャンも『鼻が高い』……」
「成程、前衛は多い方がいいので助かる」
「いやあなんだか初めてなお味で、やる気いっぱいだからね~」
ペースを崩さぬ武正とリサちゃん。それに増してマイペースな二人は武器を構え、いまだ闘志を失わぬスカーレットへと向き合うのであった。
●16:24 |それでも僕らはやってない《爆発無罪》
「ウフフ、元気いっぱいで可愛いベルセルクマシンだねぇ」
一行とは少し離れた小高い場所からシェプファは不敵に、液体を揺らして笑う。けれども一転。
「敵じゃなかったら沢山お話したかったのにな〜! 残念残念! ああなったらもうね、|解体《スクラップ》にするしかなくなっちゃったね!……というワケで、レイ君やっちゃえ~!」
「大丈夫かなあ? これ本当に大丈夫かなあ……?」
『大丈夫だって、行ける行ける』
レイはふと少し前の出来事を思い出し、迷いを振り切ると息を吸ってスカーレットへと|あるもの《・・・・》をけしかけた。
『レイ、選び放題だよ。折角だからこういう時は派手なの使いなって、遠慮すんな……ほら、こんなんはどう?』
少し前、毒島博士の簡易研究所で、武装を選んでいる最中、ありふれた|コンカッション《手榴弾》を手にしたレイに玲子が言葉をかける。彼女が目を付けた|ソレ《・・》は──|自走型クラスター爆弾《パンジャン》。言わずと知れたろくでもなく、名高く、そして意外やデカいその兵器。初めて見るなんとも言えぬ巨大な形状に不安げな、しかし若干の興味をそそられてレイはしげしげと眺める。
「エグいの選ぶね玲子……これ、真っ直ぐ走るよね? 途中で爆発しないよね?」
『博士の発明品だよ、真っすぐどころか飛んだりドリフトも出来るに決まっている』
「おっやってるねえ!」
ぬっと現れたシェプファは、レイとパンジャンを交互に眺めるとうんうん、うんうんうん、素晴らしい! などと言いながら唐突にパンジャンを『クラフト・アンド・デストロイ』で解体・解析していく。毒島博士は素晴らしいね! うーん、素晴らしいけど、ちょっとスパイス足りなくない?
「ってことで、この爆弾にひとつまみのエッセンス……」
「え、唐突に……一体何したの?」
「なあに、ちょっと錬金術で金属を錆びさせる液体とか、ベルセルクマシンの回路をマヒさせる効果をちょいと詰め込んで博士とワタシ夢のコラボ! みたいな?」
分解されたのに、すっかり元通りになったパンジャンを眺めると、レイは思考を組み立てる
「敵は機械……ならば、これに『亜空間力学』付与して、【爆破】の当たり判定を見た目より大きくして回避し辛くしとこ。その上、一回で二回被弾するダメージ計算重複バグ込み」
『詐欺判定? いいねそれ。でもアンタはどうするの? このデカさなら離れてても爆弾を防ぐのは難しいよ?』
「爆発する前に味方全体に『|ヴォイド・オーパーツ《無》』のにラベンダー・ブルーの接触判定を付与して、見えない壁を形成。これで反射ダメージを対処するよ」
『よっしゃ、急げば行けるか……じゃあそれで……』
完全に戦闘スイッチの入ったレイと玲子──その時は行けると思ったのだが……いざしげしげと眺めるとこの珍妙な兵器。本当に大丈夫かなあ!
『今更だ! 当たって砕けろ!!』
「ええい、いっけー! もうどうにでもなれー!!」
不安のまま、レイが点火し、パンジャンは走る。負けじとレイが走り、味方の姿を確認すると呼び集めて周囲へ見えない壁を展開……だがパンジャンはレイなど気にせずに立ち上がろうとしたスカーレットめがけて走り──そして。
川崎近郊で、前例のない盛大な爆発が起こった──。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

めっちゃかわいそう。飴ちゃん食べます?ロボだから無理か。まあ飴ちゃん、持ってないんですけど。
スクラップにされるのはちょっとご勘弁願いたいっすね~。ここらへん普通のシナリオだったら破壊する系の√能力をぶっ放して対応するんすけどこのノリのシナリオですからね。なにか一つボケないともったいない気がしてるんすよね。思いつかないから|こんな日《だいぶ経ってから》の提出になったんですけど。
ここらへんMS様のダイスでどうにか出来ませんかね。|リサイクルショップ《ウチの旅団》だとゾロ目が出たら爆発が起こって全てが有耶無耶になるんですが特にゾロ目が出なければ『爆拡形態』全部を有耶無耶にしたいと思います。どりゃー!

スクラップ宣言をよそに献血ルームで献血しながらプロフ帳を書くという暴挙
へえ
女の子から手紙をもらうことはあったけど、こういうアンケートは初めて
尊敬する人?
毒島博士かな。リサショでイカした発明品を見せてもらってるし
さて。フィールドもあたたまっただろうし、俺もポジションにつこう
追惜を外して|幽霊の姿へ《本領発揮》
敵のレールガンでの先制攻撃は実体のなさで回避
センサーカメラ等で認識されている場合は、世界の歪み・冥々で擦り抜けてしまおう
さあ、カウンター攻撃だ!
簒奪者に視認できない死霊を召喚。スカー・スカーレットの元へと嗾け、数体で敵を羽交締めにした後、残りに毒島博士からもらったダイナマイトを投げ込ませよう

ボクは基本非戦闘員なので、サポートさせていただきマス。
武装についてはお言葉に甘えて。
しかし皆サン、殺意たけーデスね……
爆弾、ミサイルを、これ見よがしの的◎の後ろに並べておきます。
あのタイプ、こういうの、思わず撃たずにはいられないんじゃないデスか。
撃てば、どっかんどっかん火花火柱黒煙が上がると思うので、攪乱しマス。
最後にコールサインで仲間……あ、スカーレット先生こっちデス!!と合図して陽動。
あいつら酷いんデスヨー、ボクのこと、機械兵団のスパイだ~って!!
まあ、十中八九、知るか殺す、デショウけど。
射程範囲に踏み込めば、今度は当てる爆弾をドカンと。
博士から貰った爆弾デス、どうなってもシリマセン。

能力的に皆に影響与えても嫌だしなーってことで
|殿《しんがり》はオレに任せて皆は先に行け!!
あ、格好良いなこの台詞
スクラップにしてやるって言われてもなー
オレ、割と色んな人に言われてるんだよな、脳味噌がスクラップになってるって
昔はもーちょっと自分でもマシだったよーな気もするし、うん、否定しねぇ
こないだはポンコツとも言われた(胸張って笑い)
でも戦闘能力だけはポンコツとは言わせねぇ!
雷神の戦鎚――突撃槍に雷電纏って手当たり次第に近いのから吶喊攻撃
外しても全然構わない
放電地帯になればメカはひとたまりもねぇだろ?
能力複製されても電撃には強いし気にしねぇ!
皆が先に行ってる間はオレがたっぷり遊んでやるぜ!
●16:25 後方野郎Cチーム
パンジャンが立派に己の役目を果たし、空に還ったその頃──待機場所兼|献血所《ドリンクバー》──ウルルのおねだりから毒島博士の老体を鞭打って作られた、冷暖房に冷蔵庫、ソファとついでにダイナマイト諸々完備な献血ルーム内にて、実体化したチェスター・ストックウェル(幽明・h07379)とヨシマサ・リヴィングストン(朝焼けと珈琲と、修理工・h01057)は響いてくる轟音に、見える訳でもないがなんとなく揺れる天井を眺めた。
「お、派手にやってますね~?」
「ヨシマサはこの爆発どっちサイドだと思う? 俺は……|コッチ《味方》」
「分かる。この|盛大すぎる《ヤケクソな》爆発はほんのり|リサショ風味《爆発オチ》を感じます」
呑気な、しかしどこかずれた世間話をしながら、椅子にもたれてリラックスしているヨシマサとは対照的に、チェスターは針の刺さった左手を動かさないように静かにプロフ帳を埋めていく。……女の子から手紙をもらうことはあったけど、こういうアンケートは初めて。まあ暇つぶしには丁度いいんだけど……えーと、【尊敬する人】は毒島博士だけど、【好みのタイプ】──これも書かなきゃダメ?
「何々【好みのタイプ】……ホウホウ……」
「うわぁ!!」
突如真上から聞こえた声に動揺し、プロフ帳を隠そうとしたチェスターの姿に覗き込んだシン・イー(花如・h08156)は冗談デスよと笑う。
「ボク、グラサンしてるし、ここからそんな小さい文字なんてそんなにハッキリ見えませんヨ」
「いやでも……! 本当に、見てないよな……!?」
大丈夫大丈夫、そんな安心させつつも、どこかからかうような笑みを浮かべつつ、シン・イーは冷蔵庫を開けた。ところでジュースとかありません? うわあ当たり前だけど血液、とダイナマイト……冷やしていいんデスか? コレ。
「いやもう戦況が全っ然分かんねえんだけど……とりあえずここって|食い物《くいもん》ねえの」
「あ、ボクいいの持ってますよ~はい、√WZ名物クソマズタブレット」
「うん不味い!!」
ふらりと外の見回りから帰ってくるなり、アースト・ラリス・サジタリウス(黄金の猛竜・h06080)はヨシマサから手渡されたタブレットを噛み砕きながら報告する。
「なんか向こうですげー爆発……うわ本当にまっじいなんだこれがあって、とりあえず仲間は無事で先行ったみたいだがどうも呑み込めねえし後味最悪なんだけど、そろそろ俺らも出発してもいいかもしれねえ。なあいつまでも口に残るんだがなんだこれ」
「報告するか、味の感想言うかどっちかにしてくれませんカ? はいお水」
冷蔵庫の隅に入っていたミネラルウォーターを手渡され、一気飲みすると、アーストはよし、と気合をいれる。その声に丁度献血の終わった二人と、荷物をまとめたシン・イーが頷く。
「それでは重役出勤ですが~」
「フィールドもあたたまっただろうしね!」
「いっちょ行きマスか」
「やってやろうぜ!」
●16:32 他世界よこれが√WZだ
──と、そんなノリでヨシマサの運転するランダバウト8045に乗り込み、呑気にパンジャン爆発跡地にやってきた一行。二回もド派手に爆発したにも関わらず、その悪名高い『機械都市』はすでに自動修復を行い、立ち上がる煙以外には何事もなかったように元通りとなってる。
しかしその煙の中に紛れるよう、例のベルセルクマシン──『スカー・スカーレット』はゆらりと立っていた。流石に連戦でダメージを負い、ところどころ装甲は剥がれ、錆び、自慢のキルマークも見えぬほどの姿なのだが周囲への、√能力者たちへの敵意はそれ以上に増していた。
「うわ、敵ながらめっちゃかわいそう。飴ちゃん食べます? ロボだから無理か。まあ飴ちゃん、持ってないんですけど。タブレットならありますけど……ロボだからどのみち無理か~かわいそ」
「あれ食わせればな~すっげえダメージじゃねえ? だって俺まだ口ん中不味いんだけど」
「まだお水ありマスよ。それはともかく、相手はメチャお怒りの様子……じゃ、|相談通り《・・・・》お願いできマスか?」
「OK、このメンバーなら優勝間違いなしってね! 後方は任せた!」
そう言うや身に着けた|バングル《追憶》を外すとチェスターは実体化を解き、幽体となってスカーレットへと単身向かう。姿は見えぬが、|何か《・・》が接近していると察知したスカーレットはその方向へとレールガンを構え、発射する。しかし幽体であればするりと通り抜けて接近──流石に爆風には吹き飛ばされそうになりなったチェスターのその体を何かが受け止める。
その正体はチェスターの使役する『|お騒がせ《フーリガン》な幽霊たち』──どこからともなくワラワラと湧き出たそれらは、スカーレットの機体の隙間に入り込み、電子系統をショートさせ、あるいは羽交い絞めにして動きを封じる。まるで『金縛り』にあったかのように固まるスカーレットは咄嗟に光学迷彩を展開させるが『|仲間《同類》』である死霊の姿を認識するチェスターにとって無駄な足掻き。
サイドががら空きだよ、そんな笑顔でダイナマイトを投げ込んで前衛を果たすと、チェスターは後続の仲間へとサインを送る。さ、カウンター攻撃の時間だ!
●16:36 |不正はなかった、いいね《一言雑談参照》
「さて、いっちょやりますか~。√WZ生まれのプライドと……あと、チェスターさんに続いて『見せろリサショ魂』みたいな?」
そんななんとも言えぬ言葉と共に車のハンドルを切ると、ヨシマサは爆弾を詰め込んだドローンへ支持を出し、そしてスカーレットめがけて突っ込ませた。その結果は──。
|不発《02》。
まさかの|不発《02》。不正はなかった。いいね?
「ヨシマサ!?」
「えぇ……」
「おい」
「……はい、という訳でしてね~……どうしましょ」
博士の爆弾はカスや。
逡巡の後、ヨシマサはすべてをなかったことのように流し、車から降りる。そして手に持った銃火器を|装甲撃砲装置《インフェルノギア》に変形させ……発射。ドローン攻撃の比ではない|誘爆《65》を起こした。せ~の、銃火器さいこ~!
こいつ……全部有耶無耶にしやがった!!……あれ冷蔵庫に入れてたのが悪いんじゃないデス?
●16:39 裏切り者のちょっといいとこ見てみたい
「さて、気をとりなおして|仕上げ《・・・》にかかりマスよ。お願いしマス」
シン・イーの指示に従い、ヨシマサと戻って来たチェスターはドローン、そして死霊に指示をして簡易的な的を持たせ、スカーレットの周囲に飛ばす。典型的な、◎の形をしたそれは戦闘機械の|本能《AI》にも近しいものか、回路のバグなのか、スカーレットは√能力者に目もくれず、錯乱に近い連射で的を狙う。ややもすると通常より危険なその状況──周囲に火柱や黒煙の上がる中、シン・イーは涼やかに、慣れた手つきでコールサインを打ちこみ、混乱するスカーレットの|思考AIへ直接サインを送信する《頭の中に直接語り掛ける》。
ハイ、ボクこう見えて|裏切者《・・・》なので──。
「スカーレット先生……スカーレット先生聞こえマスか……ボクです……」
「……誰だよ!」
響く声に、我に返り答えるスカーレット。そういうとこ律儀で可愛いね。所詮は悲しき落伍者がよ。
「はい、『協力者』デス。今、直接先生に語り掛けていますが……聞いてくれマス? あいつら、そうあのクルマに乗ってる一行デス……あいつら酷いんデスヨー、ボクのこと、機械兵団のスパイだ~って!! だからホラ、先生どうか仇を取ってくれませんカ? ほら同じ『裏切り|派閥《レリギオス》』として……」
「知るか!!!!」
機械に怒りの『感情』があるのかはさておき、しかし最早まともな思考が組み立てられないスカーレットのAIを混乱させるには、それで十分だった。という訳で──あとは任せましたヨ。
「任せろ!」
そして、独り車から降り立つ者がいた。
●17:01 |変化球のお約束《味変爆弾》
「それじゃ……|殿《しんがり》はオレに任せて皆は先に行け!! あ、格好良いなこの台詞」
猛スピードで立ち去ったヨシマサたちの車を見送り、ひとり場に残るアースト。ところどころショートさせて最早立っているのが不思議なくらいのスカーレットに向き直ると、その傷だらけの姿を眺めながら独り呟く。
「スクラップ……スクラップにはなりたくないがそういや、オレ、割と色んな人に言われてるんだよな、脳味噌がスクラップになってるって。昔はもーちょっと自分でもマシだったよーな気もするし、うん、否定しねぇ……こないだはポンコツとも言われた」
どこか胸を張って笑うアーストだが、|雷神の光槍《突撃槍》を構え、そして宣言する。
「でも戦闘能力だけはポンコツとは言わせねぇ! 天雷の一撃、喰らって倒れろ!」
そうして、槍に力を籠めると猛スピードでスカーレットへと突撃し、力任せに機体へと振りかぶる。槍の動きに共鳴する様に空は雷が響き始め、周囲は次第に放電が蓄積されパチパチと目に見えて稲妻の柱が立ち上る。機械には大敵とも言える電流──通常であれば距離を取るべき|それ《・・》に目もくれず、いやもはや周囲の判断も出来ぬのか、スカーレットは咄嗟にアーストの一撃を防御すると、ここぞとばかりに『能力』を複製させて近距離からの反撃に転じる。しかし──。
「悪いな、俺、雷にはちょっと強いんだ」
お前と違ってな──そう不敵に笑うと、攻撃を受け止めるとアーストは再び槍を振りかぶり、スカーレットのショートする頭部を切断するが如く薙ぎ払った。
ひと際大きい雷鳴が轟き、落ち、そして──止んだ。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
第3章 ボス戦 『『ドクトル・ランページ』』

POW
ドクトル・リッパー
【装甲と一体化した斬撃兵器】を用いて「自身が構造を熟知している物品」の制作or解体を行うと、必要時間が「レベル分の1」になる。
【装甲と一体化した斬撃兵器】を用いて「自身が構造を熟知している物品」の制作or解体を行うと、必要時間が「レベル分の1」になる。
SPD
マテリアル・キラー
【物質崩壊光線】を放ち、半径レベルm内の自分含む全員の【打撃】に対する抵抗力を10分の1にする。
【物質崩壊光線】を放ち、半径レベルm内の自分含む全員の【打撃】に対する抵抗力を10分の1にする。
WIZ
ドクトル・テイル
【長大な尻尾状の部位】を用いた通常攻撃が、2回攻撃かつ範囲攻撃(半径レベルm内の敵全てを攻撃)になる。
【長大な尻尾状の部位】を用いた通常攻撃が、2回攻撃かつ範囲攻撃(半径レベルm内の敵全てを攻撃)になる。
破竹の勢いというよりは爆破の勢いで進みながら、無事合流を果たし、目的地である『カテドラル・グロンバイン』へと辿り着いた√能力者達。
へえここが巨大ロボのハウスね……まあ今は留守らしいけど。結局全部壊すから関係ないじゃん! などと思い思いに感想を述べ、外側から眺めたり、ついでに記念写真をイエ〜イと撮ったりの休憩を挟みながら……じゃあ、いっちょ|爆破《やり》ますか。
そんなノリで、しかし手つきは当初より手慣れて各々|破壊工作《戦闘準備》に取り掛かろうとした矢先──。
「スカーレットがやられたか──」
ふと、カテドラルの入り口に立ち塞がる影があった。
『ドクトル・ランページ』──少女のようなあどけない見た目でありながら『巨大派閥レリギオス・ランページ』の統率者となる機械。ちなみによく戦場で生体パーツ蒐集とインビジブル捕獲をしてる姿が目撃されている。可愛いね。
それはともかく、本来この川崎一帯は『派閥レリギオス・オーラム』の支配地域であり、ランページの派閥とはまた別なのだが──異なる目標を掲げ、派閥内外で内輪揉めに内輪揉めを重ねている機械たちであれば、助太刀、他陣営の偵察、劣勢を煽りに来たなどで彼女が出張って来る理由も色々とあるだろう。結局他人の不幸が一番面白いですからね。
さて、そんなドクトル・ランページ。
戦闘の絶えない√WZに馴染み深い者であれば、すでに刃を交えた者もいることだろう。だが、相手の手の内を知っているという空気を一蹴するように、ランページは一行へ武器を向け、宣告する。
「最初に言っておく。私達は進化している。もう以前の私のとは違う。故に、みくびるな」
それは一体どのような意味であろうかと、√能力者達が身構えた次の瞬間──。
「ちょっとパーツとか増強して、背とか、尾も伸びたし」
「あと爆発とか、多分耐えるし」
おもしれー|機械《おんな》……可愛いね。確かにこの爆発に耐えたら、相手の勝利でいいんじゃないかな。知らんけど……だが、こちらも負けられないのだ。人類の存続、√WZの未来、留守らしいけどEDENの平和……そして打ち上げ、博士の財布──全てを賭けた最終決戦の火蓋が今、切って落とされた。
さあ、闘いだ!

これからいよいよ派手にぱーん(爆破)して楽しい打ち上げに行く予定だったのに…
なんかでてきちゃったし…!
でも大丈夫!ボクは攻撃を持たないけど~
毒島博士助けて~!オメガちゃんもここまで連れてきてくれてありがと~!
博士天才!すごい!世界一!素敵な爆弾くださいな~!
わぁいやった~!
じゃあちょっと投げてくるね!!
あっ、伶央!
ちょうどいいところに!
なんかしゅばっとざくっとできるじゃん? あれやって動きとめて
そしたら狙いやすくなるし!
いーかんじの所を狙って~、爆弾そーれ!
あはは! きれーに爆発しちゃえ~!ん~、いー音!
やっぱ派手にやらなきゃね!はやく平和になりますように~!
早く終わらせて!打ち上げにいこ~!

すっかり季節のパフェ気分だったが、もうひと仕事だな
巨大ロボハウスの爆破とは心躍る
ふふ、参謀としても腕が鳴るな
彼女とは以前も相まみえたが
Dr.毒島の爆弾に耐えられるか?
何といっても毒島博士は天才だからな(声デカ
では、手当たり次第に全て爆破しよう(作戦
しゅばっとざくっと?
ああわかった、だから俺の後ろにいろ
今の俺はガブリエルの保護者
前衛でしゅばっとざくっと、スカルペルで牽制し鋼糸で捕縛し
皆が爆破しやすいよう拳や蹴りや爆弾で攻撃
機械をも破壊する、陰陽の気を込めた連撃だ
爆発も、もしかしたらワンチャンするかもしれない
皆の見事な爆発に、再び後方兄面しつつ
今の季節だと、モモかシャインマスカットのパフェだろうか

あー、アンタは敵?
敵か、そうか
じゃあ倒す
初対面だしそもそもこの√も初めてだし
比較対象見てねーし
オレにはアンタの違いが解らねぇ!
雷撃纏った槍で斬撃受け止め、なんか作ったり|解体《バラ》したりするのは邪魔しとく
爆発に耐えても所詮は機械だろ
これには耐えられるか?
と雷竜に変身して大きく羽ばたき宙を舞い
行くぜ、オレの取って置き…!
|10万ボルト《ぺーかーちぅー!》
(一瞬画像と音声の乱れがありました)
攻撃全力でぶっ放したところで
空腹起こして元の姿に戻りながら力尽き墜落
腹減った…飯…、とか譫言ほざきつつ
そうだ、あとで博士に奢って貰うし大丈夫だよな…と気絶すっかもオレ
そしたら誰か回収してくれるかな、どうだろ

まだ敵がいたのか
なんか…戦いが終わった気がしていた…すまない
あれだけ飛ばしてたら、全部終わってないかなとか
毒島博士をヨイショしつつ俺も前に出ておこう
さっきの武器、とてもよかったぞ
やはり物を作る者のセンスというものだろうか
あいつの持っている兵器も気になるところ、模倣犯を使ってみよう
機会系の兵器の構造はあまり理解できていないので
こう、イカした刀のイメージで作り上げれば大丈夫だ
しかし毒島博士が作った得物には劣るな
……(腰と背中に持った妖刀がそれぞれカタカタと揺れる)
浮気ではない、持ってみたかっただけだ
俺には、お前達が頼りだよ
ところでご馳走になる予定の俺の焼きおにぎりは?いつ食べられるんだ?

あとグロンちゃんのお家ぶっこわすだけでもう打ち上げの気分だったのですが!?
こうなったら腹いせにその角圧し折ってやりますです!
それはさておき、ラピスは前回しそびれてた毒島おじーちゃんに挨拶しておくです。おや大門ハカセと違って意外にイケオジです!何やら渋みがある!と、ヨイショしときますです。3割くらい本心です。
で、今回ラピスの能力が雷電を纏って火力+スピードに還元できる能力なので電力増幅装置的なのが欲しいです!
さ、あとは頼れる参謀さん達と連携を取りながらぶん殴ります!
背中と腹部・片目までは犠牲連打、物質破壊光線なんて使おうものならとんでもなく痛いですよ!
こっちの痛みはペインキラーで誤魔化します!
●敵<<<<<<<<<<<打ち上げ
さあこい貴様たち──悠然と武器を構え、こちらを迎え撃たんとする『ドクトル・ランページ』に、√能力者たちは声をあげる。
「えっ!? まだいたんです!!??」
「だよね!? なんで!? あっでもたくさん|ぱーん《爆破》できる……? いやでも打ち上げ……!!」
「分かる。あれだけ|派手にやったから《飛ばしたから》、もう終わった気がしていた。すまない」
ラピス・ノースウィンド(機竜の意思を継ぐ少女・h01171)は思いますです。えっもう完全にあとは適当にグロンちゃんのお家をぶっこわして大勝利! 希望の未来へレディーゴーで打ち合げだと思ったのですが!? もうあとは適当に襲撃かけるくらいで、すっかりご飯気分だったのですよ!?
分かる。ボクもあとは建物? パーンってして終わりだと思ってた! 爆破チャンスだけど!! と続けるのはガブリエル・レーゲン(春雷・h08077)。ううご飯食べたい、でもパーンって、博士のダイナマイト最高だったから嬉しいような……今度もすごいのが出来るかもだけど……! でもご飯だよね!?
そんな若干物騒な女子たちの隣で、櫃石・湖武丸(蒼羅刹・h00229)は同じく頷く。分かる。俺も、もう終わりだと思って焼きおにぎりの事を考えていた。王道に醤油を塗ってもいいし、味噌を塗っても大葉で包んでもいい。すまない。だがもう完全に頭が焼きおにぎりなんだが。
多分この場の皆、『ドクトル・ランページ』以外全員思っていた。えっ、まだ終わってなかったんですか?
終わってなかったんです。
「いやーまあ、敵なら倒せばいいんじゃね? どうせこの辺全部ぶっ潰すんだし。爆破? もするんだろ?」
「確かに、最終的な目的は『カテドラル・グロンバインの破壊』俺もすっかりパフェの気分だったが、それまでにもう一仕事、だな」
アースト・ラリス・サジタリウス(黄金の猛竜・h06080)は後ろから余裕めいた素振りで敵を見て宣う。だって俺、「みくびるな」とか言われても|あいつ《ランページ》ととは初対面だし、っていうかこの|世界《√WZ》も初めてだし。だから進化とか言われても違いが分かんねーし。
ふふ、そうだな。楪葉・伶央(Fearless・h00412)は少女たちのやりとりを微笑ましく、後方兄面で見守りながら言葉を続ける。俺は以前彼女と相まみえたことがあるが、しかし、こちらも強力な仲間が揃っている。さ、皆頑張ろう。
すべてはこの世界、√ウォーゾンの平和、そして我らが勝利、打ち上げのために──。
●酷使は続くどこまでも
「とは言っても、ボクは攻撃を持たないから~……ってことで、天才毒島博士助けて! 素敵な爆弾くださいな~!」
「そうだな、博士は天才だからきっとすごい爆弾を作るんだろうな。きっとそれはもうすごい爆弾を」
ふと、ガブリエルと伶央は、後方に控えている毒島博士におねだりをする。
無茶振りで追いつめている訳ではない。
ただ、おだてれば調子に乗っていやきちんと成果をあげてくれるからついつい、ね? こっちも要望を伝えやすくてね? だって戦いなんだから遠慮してたら負けちゃうし! なんかーもっと盛大にパーン!! って感じのハデハデなやつ! あと投げやすくて、たくさん持ててポイポーイってできる大きさがいいな!
ガブリエルのニュアンス100%のお願いに、伶央は横から補足する。そして出来るなら、全てを爆破するので大量に、威力は高く、しかし運搬時の安全が保障されているものをお願いしたい。俺はこの子の保護者なのでその辺の安全性はきちんと目を光らせるが……大丈夫博士は天才だからな! 伶央、そんな大声出るんだ……。
そして爆弾を量産している中、横から「はい!」と元気な声がかかる。こんにちは毒島おじーちゃん。おや、大門ハカセと想像してたら意外にイケオジです! ラピスはお世辞に三割ほど本心を交えながら博士をヨイショしていく。何やら渋みがあり、どことなくマッド! そして相手がいい気になったら、すかさずほしいものをおねだりする、これが世渡りの極意です。はいはい、今回ラピスは作戦的に、電力増幅装置的なのが欲しいです──!
●龍と角と電撃と
「──ふふん、これであのランページの偉そうな角をへし折ってやりますです!」
「……なあ、そういやランページ、だったか? なんであいつ、機械の癖に角はやしてんだ。この世界でも流行ってるのか?『竜』」
「まあ流行ってるようなもんです! ラピスも元は竜型高機動兵器ですよ!」
「ほー、なんかよく分からんがすげえな」
「成程、世界には色々な『龍』がいるんだな。確かにあの角は斬り甲斐がありそうだ」
爆弾組より先に帰って来た、何かを装着したラピスに、ふとアーストが自前の角をかきながら呟く。そして、湖武丸は何かを納得しながら、同じようになんとなく、己の角に触れた。皆別々の角がある。なんだか面白い。
「あれ? そういえばお兄さんも竜……そういえば自己紹介で雷を使うとか……ひらめきました! おふたりとも、ちょっとご協力くださいです」
ごにょごにょと耳打ちするラピスにアーストはニヤリと笑って槍を、湖武丸は表情の変わらぬままに刀を構える。爆弾ができるまでまだ先、ならば先にやっちまうか! そしてさっさと終わらせよう。
言うや否や、アーストは猪突猛進の勢いでランページに突っ込み、槍を振り上げて先手を取る。だがランページはその一撃に臆することなく冷静に、体の装甲と一体化した斬撃兵器にて受け止めると素早く反撃に回る。頑丈な装甲は槍に負けず、火花を散らして互いに攻防を繰り広げる──攻撃の中でランページはアーストを分析する。更なる進化のため、そしてこの攻撃に置ける弱点を──。
だが、アーストの纏う防具と槍の類いはこの世界には珍しいもの。様々な敵と交戦の記録はあれども、今のランページには熟知とまでは行かぬ故、通常なら実行出来る武具の分解や複製の手が使えない。故にほぼ純粋に力比べに等しいものとなる。電撃を纏った槍が装甲を貫き回路がショートすると、己に被害が出るに、ランページは部位を切り捨て、一度距離を取ったアーストへと投げつけた。
それがアーストへ接近する前に、湖武丸は間に入り、太刀の一撃で切り捨てる。
ああ、そうだ、先ほどの戦いでは毒島博士の武器を使ったが、中々良いものだった。たまには違う武器を使うのも新鮮でいい。そんなことを考えて、刀を納めると、ふたりと距離を取った装甲を纏う敵を見る。
先ほどから観察していた武装は物珍しく、そして気になるものであったが故に──浮かんだのは『「それ」、俺も使ってみたい』という子どものような、純粋な好奇心だった。
気になることは試すが吉。早速湖武丸はもう一度抜刀し、構えるとアーストに下がっていてほしい、と合図を送る。そしてターゲットをこちらへ変更したランページと向き合い、装甲の一撃──並みの刀なら折れてしまいそうなその攻撃を太刀で受け止める。全ては狙い通り。そうして能力を発動して、装甲の力を写し取った『変幻自在の霊刀』を手に具現化させた。
とは言え、湖武丸は機械には疎い。切れ味などは恐らく先の手合わせでなんとなく分かったがその他はさっぱり。まあ構造はともかく、機械だから恐らくこんな具合に。まあ多分、イメージだけど使えないことはないだろう。装甲が強力であればある程、それを写し取った武器も強力になる。一度しか使えないが──その判断を見誤るような俺ではない。
通常の太刀にて右半分の装甲を剥ぎ取る。けれど、折角作ったが故に目指すは……角、いやもっと斬りやすそうな──一瞬の隙をつき、湖武丸は背後へと回る。急に消えた様な動きに、一瞬遅れて身を捻ったランページ。そのさらに無防備な『尾』を、湖武丸は具現化した『刀』で一太刀の元に切断した。
「成程、こういった力──まあまあだが、博士の得物には劣るな」
消えゆく太刀を眺め、何気なく呟いたその言葉に、ふと腰と背中に背負った妖刀がカタカタと、抗議のように揺れた。それに苦笑し、引き抜いて刀身を眺める。
「浮気ではない、博士の得物も、これも、ただ興味本位でもってみたかっただけだ」
襲い掛かるランページに、再び対応し、左の装甲を斬り落とす。ほら、俺には、お前たちが頼りだよ。
そしてその一瞬をついて、アーストはランページへと飛び上がり、『姿』を開放した。
●十万ボルトの衝撃と
咆哮からの衝撃、そこにいたのは黄金に光輝き、身体に電気を纏いし雷竜──ドラゴンプロトコルであるアーストの竜としての姿。流石に一瞬身じろいだように見えたランページだったが、そこは冷静に、再びアーストに向かうと斬撃をしかける。だが熾烈な攻撃にアーストの竜の身体には傷一つつかない。そうして、意にも介さず──悠々として竜はランページをとらえると、口を開く。
「機械は電気に弱い、行くぜ……俺の取っておき……そして目に焼き付けろよ、|ニセモン《機械》じゃねえ真の竜の力を!」
そして竜は息を吸い込み、雷鳴を轟かせながら、盛大に発することの──。
「──|10万ボルトー《ぺーかーちぅー》ー!!」
雷を伴う咆哮、そしてその身に相応しき激しき電流のブレスがランページを、周囲を襲う。超格好いい竜からかけ離れたような画像と音声の乱れが一部ありましたが、ご覧の映像は正常です。
「待ってましたですよ!!」
ラピスは、竜の電気を受けると、入れ替わるように元気よく出動する。毒島博士に作らせた『電力増幅装置』により、アーストの落雷と放電を変換し、増幅させたその力は通常の数倍以上。ともかくパワーアップ完了です!
そうして、ラピスは超スピードでランページへ近接攻撃を仕掛ける。威力と引き換えに負荷がかかる痛みをペインキラーで誤魔化し、即座に再行動に移っては一方的に近しい攻撃を仕掛けていく。ランページは攻撃を変え、飛び回るラピスの身を察したのか、『物質崩壊光線』を放ち、打撃への抵抗力を低下させるも食らわなければ無意味と言わんばかりに、一方的な攻撃に翻弄されている。
「さ、ようやく俺たちも出番が来た」
力を使い切り、人の姿に戻って墜落したアーストを回収しながら合流した伶央が湖武丸とガブリエルへと説明を行う。先ほどラピスから立案され、組み立てた新たな作戦。アーストと湖武丸、そして現在のラピスの攻撃で粗方敵の装甲と力は削いでいる。故にここからはさらなる猛攻撃をしかけ、完成した爆弾の力で一気に片を付ける。
「つまり、手当たり次第に全て爆破しよう」
「はーい!」
「分かった」
伶央は大変格好いい、キリッとした顔でふたりにそう告げた。
今更だけど、突っ込みが不在なんだなこの班は。
●作戦『B』
「ラピスちゃん、よけて!!」
ペインキラーで痛みを耐えつつ、装甲をほぼ失ったランページへ攻撃を仕掛けているラピスの元にふと声がかかり、咄嗟に交わすと、盛大な爆発音がした。
あ、これはつまり──。
「やったー! やっぱり最高~!」
「お疲れ様! 一時下がって、後は俺たちに任せて少し休んでくれ!」
念願の爆弾が命中し、ハイテンションで騒ぐガブリエルに、伶央はラピスを労い、ついでに爆弾を渡す。つまり、皆の攻撃のお陰で次は作戦Bだ。Bの意味? 『BAKUHA』
さて、コントロールがうますぎるだけでなく肩の力が強すぎるガブリエル。そんな間にもう一発。ん~、いー音!
「あっ、そうだ伶央! なんかしゅばっとざくっとできるじゃん? あれやって動きとめて! そしたら狙いやすくなるし!」
「しゅばっとざくっと? ……ああ、あれか? 分かった。だから俺の後ろにいろ。危険だぞ」
参謀とは言えあくまでも保護者の姿勢は崩さずに、ガブリエルを庇う様に前に出れば、伶央はランページへと|スカルペル《医療用メス》を投げる。
爆弾に紛れて飛んでくる斬撃に気を取られた隙、ランページの手足は鋼糸に捕縛される。引きちぎろうにも目に見えぬそれは、装甲の隙間に食い込んで余計に力が強まるのみで──その無防備な身に飛んでくるのは容赦ない爆弾、そして打撃。
先ほど己が放った『物質崩壊光線』その余波で通常より打撃への抵抗が低下している身には、人の打撃でも致命傷に近しい。その上に陰陽の気を込めたというのだからひとたまりもない。
「そんなに逃れたいのなら、斬ってやろう」
不意にかかった声に、だが切断されたのは糸ではなく、己の身体──湖武丸の一撃に、ランページの上半身はずれて落ちる。そのうえで、ラピスの一撃が、とどめと言わんばかりに角をへし折った。そして──。
「じゃあ、まだ爆弾投げていない人はいるか?」
「はーい! いっぱい投げたけどまだ投げる!」
「あ、これ恒例になるんです?」
「俺も、折角だから記念に」
消えゆく意識の中で聞こえるふざけた声も、飛んでくる爆弾の雨と『カテドラル・グロンバイン』に爆発音にかき消され、ランページは意識を失った。
「やっぱ派手にやらなきゃね! はやく平和になりますように~! じゃあ早く打ち上げにいこ~!」
「そういえば焼きおにぎり。いつになるんだ? もうすぐだろうか」
「はっ何を食べるか考えてなかったです! 季節限定のものとかあるんでしょうか?」
「今の季節だと、モモかシャインマスカットのパフェだろうか」
盛大な爆破の光景から背を向け、呑気に思い思い呟く面々の声に反応し、腹減った……と気絶寸前のアーストが呟く。
まあもう少しの辛抱だから、安心して気絶するといい。お疲れさまでした。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

ワーオ、またまたメカ・レディ☆
まったくモ〜。ゼーロットくんってば、隅に置けないぜ〜! 隅に置けないの意味は知らないぜ。
なんか隅っこに置けないらしいぜ。逃げ場はないってコト〜?
何はともあれアメアラレ〜?
コレが終わったら打ち上げだぜ〜!
んじゃ、やりますか。
皆サマ、ヤンチャなボーイズ&ガールズだからネ。
タケちゃんはハチェット片手に援護するぜ。
とはいえ〜? 「爆発に強いなら内部から破壊」みたいなのは試みちゃったり〜?
食らえ、魅惑のチヤラヲ・ウィンク☆
メカ・レディも恐怖って感じるのカナ?
コレが未知なる宇宙への恐怖――シンギュラリティってヤツだぜ。
ところでシンギュラリティって何〜? ギュラいぜ~☆

(引き続き魔改造三輪車に乗っています。キコキコ、かわいいね)
『打ち上げ』……タノシミ……リサチャン、オナカ スイタ……。
タケチャンと……ウェイ スル……。
『メカ・レディ』……タケチャン、『浮気』はダメ……。
タケチャン、『裏方』……?
カワイイ リサチャンは……『主演テディベア賞』……。
『練習の成果』を……ミセル トキ……。
カッコヨク『活躍』シテ……カッコヨク トッテモラウ……。
リサチャンのホウが、『メカ・レディ』ヨリ……カワイイ……。
(三輪車から跳躍し、呪物コレクションぽいぽい。そして、ふわぽこキック! とってもかわいいね)
●そしてすべてが狂っていく
物部・武正(モブチャラ男くん・h06619)は『ドクトル・ランページ』を見ると、わざとらしく大げさに口笛を吹いた。
「ワーオ、またまたメカ・レディ☆ まったくモ〜。ゼーロットくんってば、隅に置けないぜ〜!」
先ほどのスカーレットから、女性型が二連発。しかしサイボーグ等も存在するが、戦闘機械に性別は関係あるのだろうか……などと、多分武正がそこまで考えて発言しているのかは不明である。だって『隅に置けない』の意味は知らないぜ。多分こう、スミっていうからなんか隅っこに置けないらしいぜ……つまり? 逃げ場はないってコト〜? あとゼーロットくんもよく知らんぜ。この世は知らない不思議がいっぱいだぜ~。
「『メカ・レディ』……タケチャン、『浮気』はダメ……デモ『逃走』もダメ……?」
少し遅れ、武正の後ろから物部・リサちゃん(ゲーセン生まれリサイクルショップ育ち・h06765)がキコキコと三輪車を漕ぎながらやってくる。拠点からずっと三輪車で移動していたリサちゃん。可愛いね。
「だってリサちゃん~! 逃走なんかしたら、打ち上げいけないぜ☆」
ビシッとリサちゃんを指さして宣う武正に、リサちゃんはおててを口(この場合の口はリサちゃんの腹のそれではなく、一般的な生物の顔についているものを指す)のあたりに持って行って、小首をかしげて可愛いいポーズ。可愛いね。
「『打ち上げ』……タノシミ……リサチャン、オナカ スイタ……イケナイは『駄目』……」
「そうだぜ~だから? 何はともあれ、アメアラレ〜? メカ・レディを倒し終わったら楽しい打ち上げだぜ〜!」
「『打ち上げ』……『ご飯』イッパイ……タケチャンと……ウェイ スル……」
「そうだぜ、その調子だぜ~……ってことで、んじゃ、やりますか」
そう言いチェットを構えた武正を見て、リサちゃんは三輪車のハンドルをバイクのエンジンを吹かすが如くブンブン捻る。やる気いっぱいだね、可愛いね。
「タケチャン、『|裏方《えんご》』……?カワイイ リサチャンは……『|主演テディベア賞《メインアタッカー》』……。」
ナラバ『練習の成果』を……ミセル トキ……。カッコヨク『活躍』シテ……カッコヨク『新しい』カメラでトッテモラウ……。
だって、リサチャンのホウが、『メカ・レディ』ヨリ……カワイイ……。
顔には出ぬ闘志を燃やすと、リサちゃんは急に三輪車を急加速させ、ランページに突っ込む。しかし轢き逃げでも起こすのかと思えば、直前で急停止を行い、それにより引き起こされた勢いで三輪車から跳躍し、ランページめがけて何故か呪物コレクションを投げ始めた。待ってリサちゃん、俺もいるぜ……! なんて言う訳ないぜ~!
そのよく分からない攻撃に上空へ、そして落下する悍ましくもまがまがしい雰囲気を放つ物体を避け、気を取られたランページに、武正は接近してハチェットで攻撃を行う。それを交わしながらランページは物質崩壊光線を放ち、武正に攻撃をくわえようとするが──。
「誘導完了☆ リサちゃん今だぜ!」
その言葉と共に、ふとランページの顔に影がかかる。そして、リサちゃんの130cmの体格をいかしたふわぽこキックがモロに顔面に入り、吹っ飛んだ。
「ワォ☆ モロに顔面入ったぜ~!」
「キック……イッパイ『練習』シタ……『満足』……リサチャン カッコイイ?」
「格好いいぜ~! でもでも? リサちゃんばかり格好いい思いはさせないぜ~☆ 『爆発に強いなら内部から破壊』みたいなのは試みちゃったり〜? そこんとこ、どうなのさ?」
立ち上がり、おかしくなった首を直して立ち直りかけたランページに、武正は普段かけているサングラスを外し、顔を上げ、その人にあらざるダイクロイックアイを瞬かせた──食らえ、魅惑のチヤラヲ・ウィンク☆
モロにそれを受けたランページの、人に似た顔。その瞳孔が凝縮し全身が震えだす。そうして、開いた口から悲鳴にならぬ音を発すると、頭を抱え──膝から崩れ落ちた。
「……メカ・レディも恐怖って感じるのカナ? けど、宇宙を知った|人間《いきもの》は、決して前と同じ人間ではいられない――らしいぜ? コレが未知なる宇宙への恐怖――シンギュラリティってヤツだぜ」
「タケチャン……『お話』ムズカシイ……」
「おっとゴメンだぜ☆ 俺も分からんぜ~シンギュラリティって何〜? ギュラいぜ~☆」
「ギュライ……ウェイ……」
『ドクトル・ランページ』が宇宙と呪物、どちらに恐怖したのかは定かではない。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

ブラボー!ブラボー!!素晴らしい爆発だったねぇ(盛大な拍手)
やっぱりコラボって素敵♪自由に活動させて貰えて本当に嬉しいな〜!
それで君がボスなんだ、運がなかったねぇ……
ん?ちょっと!ちょっと君、そこを詳しく!
背と尾が伸びて?爆発にも耐性あり?この短い時間で強化を?
一体誰が!どこで!ハァッハァッ、おじさんに詳しく聞かせてくれないかなぁ
もう終始刺激が多くてワタシってばテンション上がっちゃうよ~
聞かせて貰えなさそうだから戦うしかないね
爆発にも耐性があると言っていたし、これしかないかな
この頭に入ったワタシの特殊溶解液
クイックドロウとスナイパーの力で腕を狙っちゃうよ!
金属も溶かすワタシの毒は如何かな?

(体の増設はいわば成長と言える。人間が細胞分裂によって変化する事と機械が必要なパーツを付け替えること、どこに差異があるのだろうか。パーツを増強したと訴えるランページに機械っぽい何かしらの思索をしながらスコープに標的を捉える)
【戦闘】
基本的には変わらずスナイパー技能を使った撹乱を行います。鉄の体には普通の銃弾には荷が勝つ。よって「Iris」によって霊力を込めた貫通攻撃の射撃で対応。相手の√能力で解体されそうになればこちらも発動。斬撃の威力を模倣した力場を打ち出します。
あと施設には「銀鳩」を投げて破壊を狙います。壊しておいて損はないでしょう、おそらく。

「また君かぁ、火事場泥棒的なヤツ?」
高確率でオーラムのデータ持ってくつもりかも
「グリッチで偽データ掴ませるかぁ【デバッグモード】実行」
何してるの玲子
うわ数値おかしくなってる
「アンタの技能を合計値276PTからふり直して、ハッキング50、ジャミング50、カウンター76、ジャストガード100くらいにした」
「それとテスト武器の【どんき】渡しとくから、これで攻撃な」
ヴォイド・オーパーツに仕込んだジャンクデータ(ジャミング)をテスト武器で攻撃した時にジャスト防御攻撃(カウンター・ジャストガード)で流し込めと(ハッキング)
てかこのテスト武器って見た目がハリセン...
「攻撃力はぶっ壊れだから気にすんな」
●戦場3S運動~進化・成長・勝利~
「ブラボー!ブラボー!!素晴らしい爆発だったねぇ!!」
|萬《よろず》・シェプファ(~|工房より愛をこめて《From the studio with love》~・h07678)は|頭《・》を揺らしながら盛大に拍手し、先ほどの爆発の余韻に浸っている。いや~自分ひとりじゃ出せないモノってあるじゃない? ワタシに限界があるってワケじゃないけど、協力することで奏でられるハーモニーみたいな♪ いや~やっぱりコラボって素敵♪ 自由に活動させて貰えて本当に嬉しいな〜!
そんな満足げにウキウキしていたが、クルッと頭を捻って『ドクトル・ランページ』を見ると急に冷静に告げる。
「それで、君がボスなんだ……運がなかったねぇ……」
「また君かぁ」
「うん? レイ君、知っているのかい!?」
「以前戦ったことがある。見たところ外見の違いはないようだけど……こんなところで会うなんて。もしかして、ドサクサに紛れて高確率でオーラムのデータ持ってくつもりかも?」
『|色違い《別個体》って訳でもなさそうだし。まあ成長してるっていうなら内部パラ違う再戦ボスタイプなんじゃない? ……まさかボスだと思ったら後半普通に出てくる雑魚ってことはないでしょ』
|レイ・イクス・ドッペルノイン《RX-99》(人生という名のクソゲー・h02896)には嬉しくない再会。背が伸びてる? とかその辺は全く分からないけど、油断はしたくないな。さっさと片付けちゃお。そんな思いで武器を構え、さてどうするかと思案していると……急に横の|人《・》が興奮し始めた。
「ん? そういえば背と尾が伸びて? 爆発にも耐性ありとか言ってたけどもしかしてこの短い時間で強化を!? 一体誰が! どこで! ちょっと! ちょっと君、そこを詳しく! ハァッハァッ、おじさんに詳しく聞かせてくれないかなぁ……どこすみ? SNSやってる? 改造する時は|意識《しこう》シャットダウンしてほしいタイプ??」
「やってない。あと、個人情報だから、そういうの知らないひとに話すなって言われている」
「正論すぎる」
『敵に諭されてるのウケる』
完全に怪しいおじさんと化したシェプファに、ランページは動じず、しかしバッサリと切り捨てる……返事してくれるだけ優しいね。可愛いね。
「もう~! 終始刺激が多くてワタシってばテンション上がっちゃうよ~!!
でも、聞かせて貰えないなら、もう戦うしかなくなっちゃったねえ……」
「テンションの差がさっきからエグいんだけど、とりあえず『鹵獲』とか言い出さないだけ安心した……さ、さっさと倒して終わりにしよう」
ふたりの後方にて、フォー・フルード(理由なき友好者・h01293)はランページの言葉、そして先ほど毒島博士に提案された『パワーアップ案』を反芻しながら思索する。『機械の進化・成長』とは矛盾をはらんでいるような言葉ではあるが、確か|相手《てき》は『機械の進化』を訴える|派閥《レリギオス》。体の増設はいわば成長と言える。人間が細胞分裂によって変化する事、あるいは端的に肉体を鍛え筋肉を増強させることとドーピング……それらと、機械が必要なパーツを付け替えること、どこに差異があるのだろうか──。
そこまで考え、しかし口には出すことはなくただ無言でスコープを構える。いえ、シェプファさんの好奇心へさらに油を注ぐのが恐ろしいという訳ではなく、あくまでも自分個人の意見ですので己の内に止めるのが最善かと。けれども、多少パーツの増強については考えても良いかもしれません。
●それぞれの想い~ろくでもなさと爆破を添えて~
『あいつが火事場泥棒的なやつだとしたら大人しくデータを渡したくないね。グリッチで偽データ掴ませるかぁ【デバッグモード】実行』
「何してるの玲子……うわ、なにこれ私の|数値《ぎのう》がおかしくなってる」
『そういう|能力《モード》だし。向こうがパワーアップしてるならこっちもしとけ的な? という訳で、アンタの技能を合計値276PTからふり直して、ハッキング50、ジャミング50、カウンター76、ジャストガード100くらいにしたから、これでなんかあっても大丈夫でしょ。耐性も上がってるし問題ない。はい、テスト武器の【どんき】渡しとくから、これで攻撃な』
Ankerの玲子によりわりと一方的に無法にいじくられつつ、言葉と共にふと手元に現れた武器──。
「これ、ハリセン……」
ツッコミでおなじみの、何の変哲もないそれを一応装備して振り回す。多分いい音がするんじゃないかな。気にすんな、攻撃力はぶっこわれだから。じゃあ行ってこい。
「自分が後方から援護するのでご安心を」
「ワタシも後から行くんでまずはレイ君が先行してほしいなっ☆」
チラリと武器を見、近距離攻撃であろうと察しフォーとシェプファは言葉をかける。大人なふたり故に武器の形状は人それぞれだろうと、そこまで言及しない優しさが痛い。もういっそ突っ込んでくれたほうが楽な気がする……そんな気持ちでレイはランページに突撃する。
作戦はただ一撃、このテスト武器を当てること──迫りくる攻撃をかわし、すり抜ける。レイへ狙いを定めようとするランページの気をそらす様に後方からフォーが対機械用の銃弾を発射する。勿論レイへ当たらぬ様に撃っている、そして己耐性が上がっているとは言え出来るだけ攻撃には当たりたくない……そんな気持ちで避けながら、ついにレイはランページの背後へと周り、ハリセンで一発。頭を叩いた。
スパァンッ!! と、いい音が戦場に響いた。
その刹那、見えぬ|ヴォイド・オーパーツ《無》へと仕込んだ妨害用のジャンクデータが、ランページの回路をハッキングし、一気に流れ込む。外見からは想像できぬエグい対機械用の攻撃に苦しむランページ、その隙をついて銃弾と液体が襲い掛かり……液体?
「シェプファさん、一体何を?」
横でツールガンを構えたシェプファの撃ったもの、それを被った途端煙を上げ、溶解するランページに冷静に銃弾を撃ち込みながらフォーは疑問を呈する。薬品にしては即効性が高い。何より機械への浸食が激しい。
「フッフッフ……あれねえ、ワタシの頭の中のコレ」
「成程、凄まじい」
フラスコ上の頭を指さし、中の液体を揺らすとシェプファはこともなげに言う。どうだい?金属も溶かすワタシの毒は! その言葉にフォーはシェプファをマジマジと眺める。そうして溶解するランページへ向き直ると、指鉄砲を撃つ動作を仕掛けた。流れ弾よろしく飛んできたランページの攻撃を複製したそれは見事ランページへと飛んで、後方に聳え立つ『カテドラル・グロンバイン』ごと盛大に爆発した。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

爆発とか言っちゃうと、漏れなくフラグになりそうだけど大丈夫?
――なら遠慮なく
いやー、毒島博士お手製のダイナマイトの威力はやっぱり違うね
さすがは店長の生みの親!
念動力で浮かせた、博士お手製の爆発物をドクトル・ランページに向かって投げつける
仲間が正面を行くならサイドから敵を不意打ちするように仕掛けよう
加えて霊障の効果で|回避率を低下させ《足止めし》仲間のアシストも
今だ、一気に|攻め込もう《上がろう》!
敵の攻撃は空中浮遊で躱すか、冥々で擦り抜け無効化
派手に爆発が決まれば、くるりと宙返りをしてゴールパフォーマンスを決めよう
イエーイ、λ(博士お手製の監視カメラ)見てる〜?
大門博士主催の祝勝会も楽しみだね

つまり爆発耐久テストってコトだよネ⭐︎うさてんちゃんはニンゲンちゃん大好きだからネ⭐︎ニンゲンちゃんを減らしまくってる√ウォーゾーンのみんなにはうさてんちゃん募るオモイがあるんだヨ⭐︎そのオモイいっぱいぶつけてあげるネ⭐︎【トキメキ★|流星群《メテオシャワー》】⭐︎
きっとみんなもいっぱい爆発させるだろうからこの爆発した数を数える「ドッカン★カウンター」で回数を数えておこうカナ⭐︎何回まで耐えられるカナ⭐︎ドクトルちゃんの現行バージョンの耐久力がこれでわかるネ⭐︎
この戦い、絶対に絶対にドクトルちゃんを爆発させて……そしてみんなで打ち上げに行くんだからネ⭐︎
アドリブ絡み連携なんでもOKだヨ⭐︎
●若者たち(外見だけ)
「敵もさ、爆発とか言っちゃうと漏れなくフラグになりそうだけど大丈夫? まあいいけど」
「つまり爆発耐久テスト向きってコトだよネ☆ ヤッちゃっていいんじゃナイ☆」
「確かに、遠慮なくやっちゃえるけど……テスト?」
まだたんまりと余っているダイナマイトを手でもてあそびながら、やや飽きれ交じりに敵を眺めるチェスター・ストックウェル(幽明・h07379)へ|兎玉・天《うさてんちゃん》(うさてん堂・h04493)はいつもの笑顔で笑った。
「敵だからネ☆ いくら爆発させても心が痛まないヨ ☆というか公共の場で何を言おうともう自己責任だヨ☆ 本人にその気はなくとも一度発した言葉には重大な責任が伴うんだヨ☆」
「えっ、そこまで……?」
「チェスターちゃんも気軽に適当なこと言っちゃダメだヨ☆ うさてんちゃんとの約束だヨ☆」
チェスターは思う。そして周囲を見渡し、なじみ始めた面々の自己紹介を思い出していく……あれ? 知り合って若干マヒしてたけどもしかして俺ってまだ感性がまともな方? はい、そうです。
「だってだって、うさてんちゃんはニンゲンちゃん大好きだからネ☆ ニンゲンちゃんを減らしまくってる√ウォーゾーンのみんなにはうさてんちゃん募るオモイがあるんだヨ☆」
「確かにそれは俺も分かるけど……まあ遠慮がいらないっていうんなら気楽だね、さっさと片付けちゃおう。食前の軽い運動にはなるように祈りたいね」
「ダネ☆ この後みんなで打ち上げに行くんだからネ☆ お腹空かせておこ☆」
あ、その前についでに……うさてんちゃんが、何か変なメカを取り出して戦場へと設置した。
「きっとみんなもいっぱい爆発させるだろうからこの爆発した数を数える『ドッカン★カウンター』で回数を数えておこうカナ☆ 何回まで耐えられるカナ☆ ドクトルちゃんの現行バージョンの耐久力がこれでわかるネ☆ よかったネ☆」
良い……いいのかなあ? チェスターは思った。だが、口には出せなかった。
●試合、開始
まずはチェスターがダイナマイトを念動力で浮遊させながら伴い、ランページ向かって接近する。相手の攻撃──その成長したとか言う長大な尻尾状の部位から繰り出させる攻撃をまんまと幽体化の力で避けると、隙をついてダイナマイトを投げつける。流石に一発で倒すことは出来ないと踏めばその身軽さを活かして四方八方へ回り込み、念力の力で様々な角度からダイナマイトを食らわせてランページを翻弄していく。その上で──。
「さて、そろそろかな? 博士のダイナマイトだけじゃなくて俺の力も味わってよ」
言葉と共に、ランページの動きが次第に低下していく。念動力により齎される作用『霊障』──敵の動きを低下させるそれは、機械の身体とは言え部品等に作用するのかじわじわと『呪い』のようにランページの動力に作用していた。ああ呪いだけに鈍いって。
「さ、場はあったまった! やっちゃってよ!」
「いいネ☆ さっきも言ったけど……うさてんちゃんのオモイ、いっぱいぶつけてあげるネ☆」
声をかけられて、言うや否や、うさてんちゃんの周囲に隕石が雨あられがごとく降り注ぐ。うさてんちゃんの巨大隕石……ならぬ巨大隕人としての力を発揮したそれは、よく見るとひとつひとつ、ハート型である。オモイってそういう……可愛いネ☆ まあ当たっちゃえば特に関係ないけどネ☆
勿論幽体であるチェスターには支障のない攻撃に、回避力の低下したランページはただでさえ雨の様に降り注ぐそれを避けることが出来ない。その上でダイナマイトの攻撃……というより隕石に当たり、誘爆した爆発を次から次へとくらう。そして、『ドッカン★カウンター』がグルグルとカウントし続けてよく分からなくなってきた頃に、ようやくと言うべきかやっとというべきか、よく耐えたというべきか、ともかく、ボロボロになって倒れた。
「イエ~イ、見てる~? 勝利! うーん、気持ちいい爆発だった!」
「カウンター止まっちゃったネ☆ まあ耐えたんじゃないかナ?」
くるりと宙返りし勝利パフォーマンスを決めると、監視カメラλに、映るか分からないがとりあえずピースして、チェスターは一息ついたと伸びをする。その横でカウンターをリセットして再び後々のためにと設置しなおしたうさてんちゃんと、さて打ち上げだネ☆ などと丁度良く空いた小腹を抱え、笑いながら何を食べるか考え始めたのだった。
そういえばダイナマイトって甘いらしいネ☆ えっいや俺は……気になるけどいいや。何事も挑戦だヨ☆ それよりデザート食べようよ! デザート!
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

これは大変デス、ドクトル先生へのヘイトがうなぎ登り。
……楽に死ねないデショウ、敵ながら不憫デス。
そういえば人間も粉々に骨を折って背を伸ばすという手段があるそうで……クッソ痛いってききますケド。
平和な世界でも人体改造あるんデスネ。
今回もボクは爆弾を設置して、後は皆サンにお任せ。
ボク自身が花火になったら笑えないデスシ……ワンチャン、幽霊に転生?
後はテキトーなこと言っておきマス。
流石ドクトル・ランページ、セクシーな角デス。
尻尾型装甲なんて全方位魅了するのでは?
ボクが自立型機械兵器でしたら求婚するのに。
怒っても喜んでも隙になりません?
後は(心強い仲間に)ヨロシク!
まだ花火になる日じゃないデスから。

アドリブ・連携歓迎
思うのだけど、ドクトル・ランページがマテリアル・キラーで【物質崩壊光線】放ったら【打撃】だけじゃなく爆発に対しても抵抗力下がるんじゃニャイ?打撃だけ下がるならむしろ凄くニャイ?
ドクトル・ランページが『マテリアル・キラー』使ってきたら、ちょっと検証してみよう。僕は『反射攻撃』のハチェットでぶん殴る。余裕あったら御用警棒に持ち替えてぶん殴り、違いを観察。爆発は…放っておいても起きるだろう、うん
誰か倒すだろうとふざけてるけど、仕事はちゃんとやるワン。仕事が失敗しない範疇で検証して、真面目な戦闘になったら真面目に戦うニャン

ドクトル…ランページ?
どうして今ここに…
たしかなんか機械側ですごい偉いらしい…あの!
うん僕その辺よくわかんないんだけど
ふ〜ん生体パーツに興味があるんだね〜(断章を見る)
更にあの見た目
ワンチャン吸血できるのでは?
となれば『血工術』と武器改造でこの日傘を強化しよう
愛してるよ博士♡材料下さい
トンテンカンテン…
うん!えげつねぇドリルみたいでとっても素敵〜♡
皆から血液を分けて貰って僕は今とっても元気!最高にハイってやつだね!!
多分爆発してるだろうから紛れて接近だ!
そのでけぇ尻尾に阻まれようともまとめてブチ抜いてやんよ!!
うおー!血もしくはそれに類するものを寄越せ〜!!
(手に入らなければしょんぼりします)
●それぞれの目的
シン・イー(花如・h08156)は周囲を見渡し、観察した。
絶望、怒り、困惑、焦燥──仲間の様々な『負』の感情を目撃した。それは主に「まだ終わりじゃなかったの!?」「打ち上げじゃねえの!?」「嘘だろ!?」という方面から引き起こされた……呑気デスね? 敵が目の前にいますヨ?
「それはともかくこれは大変デス、ドクトル先生へのヘイトがうなぎ登り……楽に死ねないデショウ、敵ながら不憫デス……爆死って痛いんデスかね~一瞬で飛ぶならいいんデスけど」
「ド、ドクトル……ランページ? どうして今ここに……!?」
「あっ、ちゃんと反応してくれてる人がいましたヨ。よかったデスね先生」
若干他人事めいたシン・イーの横で、|那弥陀目《なみだめ》・ウルル(世界ウルルン血風録・h07561)は『ドクトル・ランページ』を見て、期待通りのいい反応をしてくれた。ありがとう。ランページ先生の威厳が保たれます。
「ランページ……たしかなんか機械側ですごい偉いらしい…あの! うん僕その辺よくわかんないんだけどなんかすごい、すごいやつでしょ?」
「すんごいフワッとしてますが、まあ大体あってマス。なんかこう、生体パーツとかパクってくタイプの機械たちデスネ」
「ふ〜ん、生体パーツに興味があるんだね〜……うん? そういえばどことなく生っぽい? 背が伸びたとか言ってたし?」
ウルルはサングラスをややズラしてランページを観察する。先ほど刃を交えた『スカー・スカーレット』と比べるとヒトの面影があり、機械めいた分割パーツは見えるが、肌の様な表面をしている。これは……ワンチャン吸血できるのでは? 目の付け所が吸える or 吸えない。目の付け所がThe 吸血鬼。
「まあみーくんはなんでもいいワン。さっさと倒して引き上げるニャン」
広瀬・御影(半人半妖の狐耳少女不良警官・h00999)はハチェットを構えてふたりへ声をかける。とりあえずこれを倒せば終わりなら、さっさと爆破させて帰るワン。でも仕事ならちゃんとやるワンが……それまではちょっと適当にやらせてもらうニャン。爆破は誰かに頼むとして。
「あっボクは後方で皆サンにお任せしますヨ。爆破担当ってことで~」
「えーじゃあ僕は前衛? まあいいや! 皆に|元気《けつえき》分けてもらった分まで働かないとね!」
御影の言を察したのか、ウルルはよしと気合を入れ、シン・イーは手をひらりとさせてスススと下がる。いやだって、僕能力者? ってやつじゃないデスし。ほら、ボク自身が花火になったら笑えないデスシ……ワンチャン、幽霊に転生? それともデッドマン? 死んでも労働させられる、否定できないのがイヤな世の中デス。
●ヒトの力を見せてやれ
やる気がなさそうに言ったものの、御影はきちんと仕事はやるタイプである。
故に冷静に敵の出方を観察する。故に、むやみやたらに突っ込まず、まずは相手の出方を観察するのが当たり前。
ふむ、なんだか敵が光線を撃つと、当たった周囲がモロくなってる気がするワン……つまるところ、あれってアレじゃニャイ? 噂に聞く、いや聞いたかな? 聞いたかも……そんな噂の打撃の抵抗が下がる『物質破壊光線』ってやつじゃニャイ? 噂なんて真偽不明だけどもしかして……あの様子を見るに打撃以外も下がるんじゃニャイ?
敵の攻撃をひらりひらりと避けながら、隙を見て一撃を叩きこんでランページを翻弄していく中で御影はそんなことを考えていく。打撃だけ下がるならむしろ凄い技術だワン……つまり、試してみる価値はあると見た。
御影の「隙を作れ」という合図でシン・イーは後方、安全地帯にてハッキングツールを屈指する。そしてどうにかランページの|回路《しこう》へと語り掛ける。
「ランページ先生……ランページ先生……」
「む? 誰だ? 仲間か?」
スカーレットよりは素直な先生。御影の攻撃を装甲で防御し、光線を撃ち、斬撃を繰り出すというマルチタスクでシン・イーの問いかけに応答する。
「ハイ、僕は戦場でお見掛けした先生の姿に感服いたしまして……流石『ドクトル・ランページ』、セクシーな角にたくましい尻尾型装甲……しかも最近背が伸びたとか、ボクが自立型機械兵器でしたら求婚するのにと、涙で枕を濡らす日々でございマス……」
「よく分からんが、感謝する。我々は日々『進化』している故に……む、そこか」
先生、素直に受け取るがしかし容赦はない。光線でハッキング元を辿りシン・イーめがけて『物質破壊光線』を放った。しかしそれがチャンスとばかりに、御影は検証へと移る。こういうの、僕はハッキリさせときたいタイプだワン。
さて、光線の効果にて今、この場全員打撃に弱い状況、ランページも例外ではなく、ハチェットでとびかかり先制攻撃をしかけた御影の攻撃をモロに食らうと装甲が崩れる。ふむ……ハチェットは『叩き斬る』から打撃ワン? じゃあこっちは……?
次の検証を考えつつ闇に紛れ、ランページの攻撃範囲から避難した御影は、ふとウルルの姿を見つける──だが。
「……ウルル君なにやってるワン?」
「えっ、武器を改造してたら楽しくなってきちゃって……だって前衛って言うから張り切っちゃって、わあほら見て。えげつねぇドリルみたいでとっても素敵〜♡」
「感想はヒトそれぞれニャン。僕は否定しないワン」
そう、遊んでいた訳ではない。仲間から血液を分けてもらい、一番元気まであるウルルは元気すぎて徹夜明けみたいなテンションで『血工術』とWZの材料を用い、武器工作にいそしんでいた。真面目に対機械とか、失血攻撃とか考えた構造だけど……ただちょっと……最高にハイってやつだね!! ようしやるぞ!
えげつねえドリルめいた日傘をブン! と振り突撃する。その後ろから御影が援護に回り……余裕が出来たシン・イーが何かのスイッチを押した。そういえば、言うの忘れてましたが……隙を見てその辺にしかけといたんデスよね。爆弾。敵はいいけど、ボクはまだ花火になる日じゃないデスから。
急に周囲が爆発し始め、だがハイになっているウルルは気にせずに|日傘《ドリル》……じゃない|ドリル《日傘》を構え、飛んできた尻尾状の攻撃にもひるまずランページのボディへをぶち込んだ。全ては……血のために!
ボディを貫かれたその刹那、駄目押しとばかりに御影がハチェットから警棒に持ち替えて尻尾を叩き落とし、周囲が爆発し始めた。
「……なんだろ? 脂っぽくてコッテリとしてるけど、絶食した日にはいけないくもないくらいのお味? 新鮮味はないけど逆に考えると長期保存向きな気がする……」
「それ、オイルじゃないニャン? 吸血鬼ってそういうのもいける口なのかワン?」
「終わりました? いやー綺麗な花火デス……ああまで粉々になっちゃったら意味ないデスね。そういえば人間も粉々に骨を折って背を伸ばすという手段があるそうで……クッソ痛いってききますケド……平和な世界でも人体改造あるんデスネ」
「あれ最初に考えたやつヤバイと思うニャン」
「ね~改造とか怖いよね~……どうせなら武器にしといた方がいいよ」
「えげつねえ改造してたひとがなんかいってマスね?」
ランページから流れた液体をそれを回収し、味見して呟いたウルルに御影が声をかけ、シン・イーが合流する。たわいもない会話をしながら、爆発するランページだったものに背を向けて三人は思い、歩き出した。
じゃあ、目的も達成したし帰りますか、と。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功