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春爛漫花見日和〜捜査三課の場合〜

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●麗らかな陽気に誘われて
 某所、八曲署近くの公園。桜の数も多く敷地内に川があったり映える和風建築があったりと見ごたえがあるため地域ではかなり有名だったりする。ちょうど桜の見頃、人も沢山集まるであろうこの時期にも関わらず、熾烈な場所取りを勝ち抜いてくれた腕利きの猛者達のおかげで、暖かな陽射しの降り注ぐ今日この日に、八曲署捜査三課による花見が開催される運びとなったのである。
「春一番が吹く季節ですからね。
 寒かったらこちらのブランケット使ってください」
 暖かくなり始めた時期と言えど、強い風が吹けば冷えることは冷える。
 身体に影響が無い事と、肌感覚でどう感じるかはまた別の話で……|荒平・蛮《あらひら ばん》(筋トレは1日にして成らず・h01687)は、駐車場に近い側に陣取りながら、キャンプ用品を広げている。
「ふふ~、春一番の場所取り妨害も乗り越えて無事ここまで来ましたね~」
「ブルーシートふっとばされたりと大変だったが、こうして花見を迎えられたらその時の苦労も吹っ飛ぶな」
 しみじみと述べるヨシマサ・リヴィングストン(朝焼けと珈琲と、修理工・h01057)の言に、|色城・ナツメ《しきじょう・なつめ》(頼と用の狭間の|警視庁異能捜査官《カミガリ》・h00816)も場所取りの様子を思い出しながら深く頷く。
「……くしゅっ。それにしてもまた少し寒くなってきましたね。これを超えたら暖かくなるのかな〜。すみません蛮さん、ブランケットお借りしていいです〜?」
「どうぞ。お湯も沸かしましたから、好きな飲み物を選んで召し上がって下さい。インスタントですが。ご希望があればコーヒーは豆から抽出しましょう」
 小さなくしゃみをし、肩を摩るヨシマサに、蛮がブランケットを差し出しながらそう返す。お茶やコーヒーなどを配りながら声をかけて手渡しをし、頼られるのが非常に嬉しそうである。
「今日は天気も良いですし、絶好の花見日和ですね。荒平さん、飲み物ありがとうございます。
俺もブラックコーヒーもらえますか?」
「ええ、天気に恵まれて最高のお花見日和です。ああ、こちらにもブラックコーヒーを。朋枝は何にする?」
 頬を撫でる春風に息をつく|志藤・遙斗《しどう・はると》(普通の警察官・h01920)に、傍らの『|娘《監視役》』を気遣いながら、|冬島・公彦《ふゆしま・きみひこ》(改造人間のサイコメトラー・h02490)が同意する。
「はい、ブラックコーヒーを2杯ですね。お嬢さんにはミルクココアを用意しましょう」
「荒平さんおひとりで用意するのは大変そうですし、お手伝いしましょうか?」
 持ち手つきの紙カップで手際よく飲み物を用意するその姿に、マリー・エルデフェイ(静穏の祈り手・h03135)が声をかける。
「どうぞお気になさらず、好きでやっているので。ですが……私がすぐに都合がつかない時にはお願いできると有り難いです」
「分かりました、お任せ下さい。色城さんはミルクティーですね」
「……マリーくんや蛮くんが気を配ってくれるので、とても楽だな」
 キビキビと動く姿を眺めながら、|春日井・千尋《かすがい ちひろ》(うっかり幽霊人情派・h03750)が零す。
「嬉しいですね、みんなでお花見……」
 |八手・真人《ヤツデ・マト》(当代・蛸神の依代・h00758)が言葉通りの様子ではにかんだ。
「特殊捜査四課の四季宮だ。今日はこのような場に呼んでいただき……」
「全く四季宮さん、愛想ないなあ。堅い堅い、楽しい宴だぞ?
 もう少しノリ良くさあ……無理?」
「柳……大体俺はお前の監視の為に付き合っているのであって……」
 この挨拶がてらに乾杯の音頭を取らされんばかりの|四季宮・昴生《しきみや・こうせい》(蛇神憑きの|警視庁異能捜査官《カミガリ》・h02517)という男は、俗にいう仕事人間と呼ばれるタイプの堅物である。本来であれば花を愛でる情緒などない……目の前で茶々を入れてくる|柳・依月《やなぎ・いつき》(ただのオカルト好きの大学生・h00126)という監視対象が「いえーい、三課の皆とお花見♪」などと喜び勇んで参加したいと述べなければおそらくこの場に現れないような人種である。まあ、監視対象がこれなので、何かあればフォローと抑えに回る、振り回されるタイプの苦労人、と言ったあたりが実情だろう。がんばれ、マジがんばれ。
「そうだな、代われ四季宮。俺がやる」
「あら、手がお留守じゃない。それじゃあ乾杯出来ないわよ。はい」
 立ち上がった|神谷・浩一《かみや・ひろかず》(人間(√汎神解剖機関)の|警視庁異能捜査官《カミガリ》・h03307)が、イグ・カイオス・累・ヘレティック(BAR『蛇の尻尾』のママ・h04632)に差し出されたコップを受け取る。
「あー、こういう場は無礼講ってのが常だが、普通に他の花見客も居るから、あんまし羽目外すんじゃねぇぞ、以上。乾杯……って、なんだこれ。白湯じゃねぇか」
「お湯のお湯割りよ」
 ともあれ、八曲署捜査三課のお花見はこうして幕を開けたのだった。

●みんなして張り切った結果、食事がとても豪華になるあるある
「ふふふーお花見だー!って事でちょっと奮発してきましたよ!
 ご飯皆食べるでしょ?という事でちょっと頑張ってきたの」
 肉類が多めの食べ応えだけを突き詰めましたと言わんばかりのボリューミーな弁当を広げ、ドヤァ、としているのは|十六夜・宵《いざよい・よい》(思うがままに生きる・h00457)。
 「皆様どうぞー」と笑顔で差し出しているが、彼自身はそこまで量を食べる方ではない。ちまちまと少しずつ弁当を突いている。
「すっげぇ……これ全部作ったンっすか!?」
 こちらの方が気楽だからと、スーパーで売っているオードブルやパーティープレートの惣菜を持参した|狗養・明《いぬかい あきら》(狼憑きの警視庁異能捜査官カミガリ・h00072)。個人で持ち込んだり、有志で協力して仕上げた本格的なお花見弁当を前に圧倒されている。

 さて、では今回の主役である捜査三課有志で仕上げた特製弁当の中身を紹介しよう。

 行楽弁当の主食筆頭、おふくろの味『おにぎり』
 フレッシュ野菜からフルーツ・あんバターなどのおやつ系まで何でもござれ『サンドイッチ』
 お弁当の主菜の大定番『唐揚げ』
 パリッ、じゅわっ、こっちもいいぞ『辛みチキン』
 お弁当の海の幸と言えばこれだ『エビフライ』
 溢れる肉汁爆弾『ミートボール』
 飾り切りした私は食べても、たこすけは食べないでください『タコさんウインナー』
 ワイルドな振りして草食系『アスパラのベーコン巻き』
 何故君がここにいる、欲望の象徴『うなぎの蒲焼』
 火は通せよ、絶対だぞ!!『マグロ』
 迷うな、甘いの、しょっぱいの、どっちが好きなの?『卵焼き』
 なんか君が居ると許された気になるんだ『ポテトサラダ』
 行楽弁当の彩りの守護神『ブロッコリー』
 お酒があるなら僕も行くよ『枝豆』
 甘辛シャキシャキ『きんぴらごぼう』
 真人君御用達『かまぼこ』
 何を挟んでも上手くやる、オールラウンダー『はんぺん』
 花よりどうのと言われるが、居なきゃ締まらん『団子』
 パリパリほくほく『大学イモ』
 子供も喜ぶうさぎさん『りんご』

 以上の愉快な仲間達でお送りするぞ。

「いや、小学生の運動会か。ほうれん草の胡麻和えとか、茄子の煮浸しとか詰めてきたから、お前ら野菜も食えよ」
 あまりの茶色に呆れた様に肩を竦めながら、個人で持参した重箱を広げる浩一。
「火を通しすぎて焦げ気味の料理を作る貴様には到底到達できぬ物だな」
「うるせぇ、今に見てろ」
 ククッ、と笑いを噛み殺し揶揄ってくるマカミに、明が歯噛みしながら短く返す。
「じゃあお弁当一番のり~。なんでしょう、こういう弁当を作る機会はほぼ初めてだったんですが、コンビニ弁当よりも満足感が強い味がしますね~」
 ヨシマサが料理に手を付けつつ、周囲の皆の皿にも率先して取り分けていく。
「ヨシマサさん、料理うめえなですね」
 取り分けられた料理に舌鼓をうつ|刃渡・銀竹《はわたり・つらら》(博打打ち・h02791)。
「あっ、蛮さん~、おにぎりを真っ先に焼こうとせずにちゃんと一度食べてから焼いてくださいよ~」
「1個食べてから、食べてからにしますから」
 そう言いながら醤油とホットサンド用のフライパンを取り出して、テーブルに置き、準備を整えていく蛮。
「持ち寄った物と合わせて、量は問題なさそうですね」
 遙斗も周囲へと料理を取り分けながらビールを開ける。
「ってか、準備とか全然参加出来なくて悪い!とりあえず分けられそうな大袋のお菓子とかツマミとか……酒とかも持って来たぞ。
 この酒には伝説があってだな……お、弁当めっちゃ豪華じゃん!これが作ったやつ?すげえな!」
 持参した物を出しながら目を輝かせる依月。
「ほら、朋枝も遠慮せずに食べなさい。……うん、こうやって外で食べるといつにも増して美味しいですね」
 周囲の喧騒を眺めながら、『|娘《監視役》』の皿へと料理を取り分けながら、自身の皿へ取り分けた料理を味わう公彦。お弁当も朋枝に手伝ってもらって素晴らしいものになった。作っている最中、「お父さんちょっと下がってて」と言われたのは考えない事にする。
(記憶を無くす前の『僕』もエビフライが好物だったんだろうか?)

「……飲まないのか?」
 昴生へとビールの缶を差し出す浩一。
「いや、万が一にも酔って迷惑をかける訳には……」
「体質的に無理じゃねぇんなら最初くらい付き合え。……まあ、無理にとは言わねぇが」
「……そう言うのなら有難くいただこう」
 缶の縁がぶつかる。

「お花見、お弁当、はんぺん、かまぼこ……かまぼこ。かまぼこ、かまぼこ、かまぼこ……」
「真人くんには、これかな」
「アッ、ヨシマサさん、かまぼこありがとうございますっ。
 どうして俺がかまぼこ食べたいってわかったんですか……? エヘヘ……」
「ふふ~…すごいでしょう。超能力です」
 柔らかな笑顔で返すヨシマサだが、まあ、あれだけ口に出していればわかろうものである。
「うふふ、真人の好物しか入ってないお弁当作ったわよ〜」
 そう言ってどーん、と累の出したお重には、色とりどりのかまぼこ、ちくわサラダ天、ちくわ胡瓜、ちくわinチーズ、はんぺん、しまいにははんぺん入りパンケーキの上にバターがドーン。練り物フルコースである。
「わァ……!! 俺専用の、お弁当ッ……!?
 累ママ、ありがとうございますっ。いただきますっ。う、嬉しいっ……おいしいっ……。――たこすけ、こっちならいっぱい食べてもいいよ。でも、俺の分はちゃんと残してよね……」

 ビールを傾けつつ、枝豆を堪能している千尋。
「春日井さん、この辛味チキン、頑張って作った甲斐があって美味しいですよ!」
 つまみにと薦めるマリー。
「ふむ……とても絶賛のようだな。ひとつもらえるかい?」
 こうしてお花見は和やかに進んで行くように見えた。

●|きのこたけのこ《いつもの》
(皆で前もって作ったお弁当がそれはもう楽しみすぎる!
 なんたって結構無理矢理にウナギの蒲焼をねじ込んだんだから!)
「うっひっひー!経費でウナギが食えるー♪」
 うきうきでうなぎに手を伸ばそうとした|日南・カナタ《ひなみかなた》(新人|警視庁異能捜査官《カミガリ》・h01454)へと鋭い視線を向ける男がいた。
「ところで、カナタ君?そのポケットに入っているのは何ですか?まさか、|タケノコ《ヤツ》を持ってきてなんていないですよね?」
 遙斗だ。いやもってくんなよカナタ、いつも修羅場でしょう、君。
(はっはっはー、見つかんなかったら大丈夫でしょー!……なんて考えてたのが甘かった…!怨敵きのこ先輩…!
 なんなの!?なんてポケットに隠し持ったのにわかるの!?)
 笑顔でぐいぐいとカナタの額へとエアーガンを押し付ける遙斗。目が笑っていないぞー。
「やめて!?銃突きつけないで!?例えエアーガンでも!」
「今日こそ白黒つけましょうか?あぁ、そうだ、この前言っていた反射神経を鍛えるのも良いですよね」
 両手を挙げるカナタ、銃口を突きつけながらオラオラする遙斗。いつもの風景ともぐもぐと料理を食べながら眺めるナツメ。
(なんか志藤さんとカナタが銃撃戦?隙ありだぜです)
 カモメに見せかけたドローンでうなぎを掻っ攫う銀竹。
「——日南さんと志藤さんは、また戦ってるんですね。すっかり見慣れたような気も、します……フフ」
 真人がもくもくと練り物を食らいながら、すっかり日常と化したやり取りを穏やかに眺める。かまぼこ、はんぺん、おいしい。
「お前は学習しろっ」
 その声と共にカナタへと|鉄拳《げんこつ》がくだる。そうして拳の主……浩一の視線は遙斗へ。
「あ、神谷さん……えーっと、ですねこれはその……アレですよ。アレ!花見の余興的な……」
「アンタも持ち歩くならこっちじゃなくてきのこにしておけ。没収」
「ハイ、すいませんでした。……それ結構高っかったやつなので後で返してくださいね」
 渋々と言った体ではあるが、手にしたエアーガンを浩一に差し出す遙斗。
「はぁい……大人しくお弁当食べまぁす……すん……」
 2人して反省しつつ、弁当へと振り返るカナタ。
「ウナギ食べるか……あれ?取っておいた俺のウナギどこ…?
 あーー!のこのこ戦争やってる間に鳩に取られてたーー!鳩めー!しかし飛んでった鳩にはどうしようにもない……」
「あれ、カナタンどしたの?」
「宵ちゃん……うなぎ、俺の、うなぎ……」
「……うん。うん。お疲れ様なのよ。お弁当一緒に食べよう?」
 すんすんとするカナタを慰める宵。徐々に元気を取り戻すカナタ。
「えへへ、やっぱり宵ちゃん大好き!」

(なんだか興が削がれました。大人しく花見でもしますか)
 改めて花見を楽しみながらビールを片手にタバコを深くふかしてみせる。
(まぁ、こんな日もたまには良いものですね)

「こりゃ美味そうだぜ!いただきまーす」
 うなぎは銀竹くんが美味しく頂きました。

●オチがついたので仕切り直してカラオケです
 というわけで、誰が出してきたのかカラオケの機械がどんとシートの中心に設置される。
 多分経費でレンタルなんだよ。うなぎよりかは通る目あるって。知らんけど。
「カラオケ?
 そのようなものまで……一体、どこの誰がこんな物を持ち込んだんだ。……全く、賑やかなことだ。まあ、悪くは無い……か」
 唐突な出現に息をつく昴生。
「せっかくだから点数バトルだ。どうせなら、負けたら勝ったことの言うことを聞くと言うのはどうだろうか?」
「負けた方が勝った方の言う事を聞く……ですか?春日井さん、負けませんよ!」
 千尋の提案にマリーが乗る。まあ、全員が勝負を望むわけでもないだろうと思うので、有志で点数を競う感じの緩いカラオケ大会へと流れていくのであった。
 まずは言い出しっぺの千尋から。
熱いソングから演歌、バラード……そのレパートリーは多彩だ!……かわいいやつは……要練習と言ったところだろう。
 続いてはマリー、春に合う落ち着いた曲を危なげなく丁寧に歌い上げていく。
 良い点数が出ると大喜びしつつ、点数が悪いとしょんぼり。盛り上がり始めればどこからともなくタンバリンを取り出して合いの手を入れていく等、賑やかしにも徹していく。
「お、カラオケやってんの?
 俺もやるやる!いいか?」
 依月もマイクを手に、学生らしい気分の上がるポップな曲を選んで行った。
「カラオケはやっぱこれでしょ!」
 銀竹の番が回ると、20世紀後半に話題となった社会への反抗・疑問を歌う若者に寄り添った歌手の曲を入れていく。
 公彦は、朋枝が男性ボーカルの難しいラップ曲を思いのほか上手く歌っているのを驚いたり、朋枝に無理やり出場させられて仕方なく歌った90年代J-POPの男性バンドソングが予想以上の高得点を叩き出して困惑したり……。娘の楽しそうに歌う様子や、自身の歌う姿へと向く尊敬の眼差しを向ける様子を思い返し、ふと息を吐く。
(今日は一緒に来て良かった。これからも思い出を作れるだろうか)
 こうしてカラオケ大会は盛況のうちに幕を下ろした。勝敗?……みんないい声でいい点数だったよ。それでいいじゃないか。

●片付けるまでがお花見です
「落ち着いたかしら。じゃあ最後にとっておきのデザート。初代が現役で作ってた時から買ってる老舗の和菓子屋の桜餅に〜お団子に〜いちご大福よ🫰
 ……お茶も淹れるわね。粉のお茶ならゴミ(出殻し)が出ない!キャンプの知恵は素晴らしいわよねぇ……ね!
 でもケトルは便利ねぇ〜……え?電源?
 そんなの、バイクの荷台に小型ポータブル電源積んできただけよぉ?」
 累が頃合いを見て持参した和菓子をお茶と共に皆に配っていく。たこすけへの餌付けをしつつスムーズに手渡していく手腕は、まさにママの鏡である。
「さて、楽しい花見は片付けまでがセットだぞ。テキパキ動け」
 浩一が両手を叩き、終わりじまいを促す。
「あ、食べ残しは全部ボクが食べちゃいますね。
 お弁当も空になる方が幸せな気がしますからね。……まあ、弁当箱に感情とかないとは思いますが」
 そう言ってヨシマサが残りの料理を片付け始めた。
(今日は色々と新しい面の見られる集まりだったな)
 明が後片付けを進めながら1日を振り返る。
 先輩方と箸をつつき合ったり酒を飲み合ったりと、言葉を交え、親睦を深める中で、普段からの仕事に向けているそれぞれの心構え、それ以外の話でも、その人の新たな一面が垣間見えたりなどもした。……こんな穏やかな時間を送る事もあるのだと、昔の尖って荒んでいた、狂犬と呼ばれた自分が聞いたらどう思うだろうか。
「おや、何人か倒れて?仕方ないですね。車まで運びましょう」
「手伝おう。運ぶ」
 死屍累々と言った様子で倒れ込んでいる人影を見つけた蛮に、率先して行っていた片付けの手を止めた昴生が続く。よく見ている、この男、存外世話焼きなのだ。
 蛮が自身の愛車であるキャンピングカーまで迷惑な酔っ払いを担ぐ昴生を誘導する。蛮自身は、野郎は背中、女性はお姫様抱っこで軽々と持ち上げ搬送し、キャンピングカーへと転がしていく。
「さて、片付けも済んだね。ゴミは分担して各自持ち帰り。準備に手間かけてくれた奴の負担はある程度減らしてやんな。あとは酒飲み共で明日出勤の奴らは酒残すんじゃないよ。それじゃあお疲れさん」
 こうしてトップの軽い締めの挨拶にて、八曲署捜査三課の花見は幕を閉じたのであった。
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