シナリオ

⑨死合之神楽

#√妖怪百鬼夜行 #秋葉原荒覇吐戦 #秋葉原荒覇吐戦⑨

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 #√妖怪百鬼夜行
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⚔️王劍戦争:秋葉原荒覇吐戦

これは1章構成の戦争シナリオです。シナリオ毎の「プレイングボーナス」を満たすと、判定が有利になります!
現在の戦況はこちらのページをチェック!
(毎日16時更新)

●明神しろしめす御前にて
「此度は、御協力ありがとうございます」
 拠点の会議室にてディラン・ヴァルフリート(|義善者《エンプティ》・h00631)は一礼する。
 王劍戦争――秋葉原荒覇吐戦も第二戦線に突入した。
 此度の予知も、その戦いの一つだ。

 戦場となるのは神田明神境内。
 星詠みの悪妖『椿太夫』の予知を受け送り込まれた古妖との戦闘となる。
 敵は龍神喰らいの大百足「三上山媛」。
 藤原秀郷の伝説で退治された三上山の大百足の娘を名乗り、龍神の一族を喰らったとされる親の力を受け継ぐ神格級の第二世代だ。

「留意点は……主に二つですね」

 一つ、敵は神田明神の御祭神達の霊力を浴びて強大化している事。
 元より凄まじい力を持つ簒奪者が更にその力を増しているのだ。
 少なくとも無策で正面からぶつかるのは得策ではない。

 二つ、現地では民間人が巻き込まれる可能性がある事。
 道義的な理由に加え、敵に彼等の殺戮を許す事は敵勢力のリソース増強に直結する。

「御祭神の霊力は、敵にのみ利するものではないようです。
 此方も恩恵を受ける事で、戦闘を有利に運べるかと」

 この戦いで恩恵を受ける手段は"自らの正義を示す事"だとディランは告げる。
 言葉として唱えるのが分かり易いが、行動で示すなど他のアプローチでも良いらしい。
 あくまで自らの正義だ。必ずしも大義、倫理に準じる必要は無い。
 信念や戦う理由と言い換える事もできるだろう。

「……どうか、御武運を」
 最後は言葉少なに見送られ、あなたたちは戦場へと赴く。

マスターより

ふーみー
 当シナリオをご覧くださりありがとうございます、ふーみーです。
 今回は王劍戦争『秋葉原荒覇吐戦』第二戦線シナリオをお送りします。
 受付タイミングは断章投下後~送信可能な間はいつでも。

 プレイングボーナス:民間人を逃がす/こちらも御祭神の霊力を浴びて戦う。(片方でも可)
 制圧効果:⑮の戦力を半減する。
 当シナリオでは"己の正義を示す"が霊力を浴びる条件となります。

 また、希望する展開の指標として個人的に難易度オプションも実施しています。
 興味のある方はMSページをご覧ください。
 それでは皆様の健闘をお祈りしています。
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第1章 ボス戦 『龍神喰らいの大百足「三上山媛」』


POW 人を惑わす大百足の煙管
【高速で突進しての不壊の煙管での一撃】による近接攻撃で1.5倍のダメージを与える。この攻撃が外れた場合、外れた地点から半径レベルm内は【人を惑わす甘い匂いの毒煙に覆われた領域】となり、自身以外の全員の行動成功率が半減する(これは累積しない)。
SPD 進化する暴食の大百足
自身の【毒牙たる顎肢】がA、【美女の上半身から生える鋭い鎌脚】がB、【百足の下半身が伸びてそれ応じて脚の数】がC増加し、それぞれ捕食力、貫通力、蹂躙力が増加する。ABCの合計は自分のレベルに等しい。
WIZ 伝説の三上山の大百足
【龍神すら殺すことが出来る猛毒】のブレスを放つ無敵の【山を七巻き半する程の超巨大なムカデ】に変身する。攻撃・回復問わず外部からのあらゆる干渉を完全無効化するが、その度に体内の【妖力】を大量消費し、枯渇すると気絶。
イラスト 柿坂八鹿
√妖怪百鬼夜行 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●旧き伝説の血脈
「ふ……存外よう馴染むものよ。これも縁というものか」
 既に祭神の霊力を受けた古妖の姿は背丈からして常の出現より一回り上回る。
 裡に秘めた力の増大は一回りどころではない。

 この神田明神が祀る祭神は三柱。
 一ノ宮に縁結びの神、だいこく様と親しまれる|己貴命《オオナムチノミコト》。
 二ノ宮に商売繁昌の神、えびす様と親しまれる|少彦名命《スクナヒコナノミコト》。
 三ノ宮に除災厄除の神、まさかど様――|平将門命《タイラノマサカドノミコト》。
 三上山の大百足を討った事で知られる俵藤太、即ち藤原秀郷と争った古の将である。

「歓迎しよう邪魔者ども。馳走と言えど歯応えが無くてはつまらぬ故な。
 さぁ――妾の糧となるがよい」

 物理的な重みすら錯覚する程に周囲を圧するのは神威と紛う荘厳な妖気。
 招かれざる簒奪者を打ち払え。


※周囲に巻き込まれた民間人は居たり居なかったり(プレイングで指定可)。
 居る場合、敵は積極的に民間人を狙いますが
 守り避難される行動を取る事でプレイングボーナスとなります。
 
ウォルム・エインガーナ・ルアハラール・ナーハーシュ
正義というものはよくわからないが、戦う理由でよいなら助かるね、ヨルマ。
私の理由はひとつだけ。私のAnkerの為だ。彼は私に、神であれと望んだ。だから私は神として、人のために戦う。それだけが理由だ。
だから、悪いが君だけに集中するわけにはいかない。

ヨルマ。右足の補助器具に変身。これで私は走れる。
一帯の人々の恐怖などを喰らい、自身の強化兼パニックを抑え催眠術で行動操作、「群手」に手を引かせ逃がす。
「虚現」で敵の目をそらし、捕食は「精霊」による口内焼却、鎌脚は杖で受け流し、増えた脚を怪力で掴んで地に投げ、杖で串刺す。
私一人が来ているわけではないから、倒しきろうとはしないよ。民衆を逃がすのが優先だ。
見下・七三子
私はか弱い戦闘員ですけど、団結力だけは誰にも負けないと自負しています。
ひとりはみんなのため。みんなはひとりのため。私たち戦闘員は、みんなでひとつ。
……なので、ふふ。力を合わせたら、大きなことだってできちゃうって、私は信じて、誇っています!

ということで、みんな、手伝ってくださいー!
逃げ遅れた方の避難誘導に全力を注ぎましょう!
三上山媛さんの攻撃が一般の方に当たることがないように、各自チームを組んで守って離脱を!
逃げきれなかったら私と代わって。煙管の一撃で狙われたらごめんなさい、当たりに行って!すぐチームに誰かに回復してもらってくださいね。

私もできるだけ、足止めに行きます。急いで離脱してください!
和紋・蜚廉
祭神の力を借り受けるため、穢痕読を使用。

奉られている平将門と交渉。
我の正義か…強さを示すこと。
その為に、生き抜くこと……いや。
そうだな、大切なことを忘れていた。

我がAnkerを、守る事。だ。
応えてくれるか、祭神よ。
迫る厄災を跳ね除けるため、その力をこの身に借りるぞ。

宿した力は、穢痕爪に纏わせる。
加速衝動を蓄積しながら、祭神の力を纏った射程自在の爪を操作。

いかに部位が増えようと、潜響骨と翳嗅盤が動作を感知する。
野生の勘で、この力の扱いも把握した。
油断の匂い…過大な力を得た事で、気が随分と大きくなっている。
動きも併せて雑多だ。
確かに、掠るだけでも致命なのだろうな。

加速衝動の蓄積は、我の速度も向上させる。
攻撃を捌き、受け流し。
時にはグラップルで抑え込む。
蓄積が充分に溜まった瞬間。

穢痕爪を腕に纏って超速度の一撃を解放。
貫通攻撃を重ね、いかなる障害をも貫いた瞬撃を叩き込む。
天神・珠音

Anker、母である天神・まりか(h02429)とともに参加します。
母には民間人の救助をおまかせし、わたしは戦うことを選びます。
【御祭神の霊力を浴びて戦う。】
わたしはお母さんも、民間人の皆さんも命をかけて守ります。
お母さんは普通の人より強くても√能力者じゃない…だから守ってみせる!

わたしは…人の命を守りたい何ていう資格はないかも知れない…
色んな人の命を喰らったわたしが…
それでも、助けられない人を見るのがもう嫌なんです…
だから、わたしはもう誰の命も失いたくない!

√能力を覚醒させて、勢いよく連撃を食らわせに行きます!
痛みも悲しみもすべてくらい尽くすために…!
天神・まりか

娘の珠音(h00438)とともに参加するよ。
まぁこういう相手ほどヒーローの出番ってやつだろうけどね…
ここは娘に譲ってアタシは民間人を救うことに尽力するよ。

「ヒーロー参上だ!お前ら、アタシの言うことをよく聞いて…こっちが安全だからな!」
ここでヒーロー「ワンダー・フェニックス」としての自分の存在感を発揮する。
自分のような人間であれば民間人の目を引くこともできるはずだ。
説得も危険であることを伝えるなら可能になるだろう。

「ちっ…娘が傷つくのは放っておけないけどな…こういう時は『信じてるぜ』って言うべきなんだろうな!」
そう言って娘を応援しつつ、敵から離れるように避難を行う。
黒統・陽彩
POW
アドリブ連携等歓迎

「己が正義を示すか。承知!」
ライズ・ブラックとして戦場に降り立つと同時に凛と立つ
「誰かの理想を夢を叶える手伝いをすること!それこそ我が信念!我が正義!
そのために誰かの明日を奪わせはしない!」
いつでも救災ツールからドローンを展開して民間人の避難誘導
「あの怪物は私が対処する!後ろを恐れることは無いぞみんな!
その代わり、隣の誰かに手を貸すんだ!」
ライズ・ブラックの背中に勇気を押された誰かの姿を見て向き直る

高速突進の前にドンと立ち、ザンバで受け止める
確かに強力な一撃によって全身に激痛が走るが我慢する
その隙にリアライズ・ガンを接射
内部から黒枝が飛び出して拘束と同時に一刀両断だ!
サルサ・ルサルサ
始まったわね妖怪大戦争。わたしもEDENの分類的には獣妖らしいし一枚噛ませて貰うわ。伝説だか藤原だか知らないけど。一尺のサボテンにも五万の棘って格言、覚えて帰って貰うの

このでかさなら的あてしやすそうね。【棘々萬々】は乱れ打ちの技。飛び跳ねながら乱射してもよく刺さるはず。「スナイパー」で人の姿をしてる部分への狙撃を織り交ぜればいい「だまし討ち」になるかしら。攻撃は体の小ささをいかし「毒耐性」「空中ダッシュ」「残像」で翻弄して逃げ回るわ。

わたしの正義?そんなもの「よく食べよく寝てよく遊ぶこと」に決まってるわよね。おいしいもの食べるにも、ぐっすり寝るにも、いっぱい遊ぶにも、お前の殺戮はぜんぶ邪魔よ
メイド・メイド
ご存じでしょうか。
神田明神の御利益は、確かに縁結び、商売繁昌、そして厄除けではあるのですが、実に多くの御守りを授かることができるのです。
特にそのひとつ厄除けについては、情報技術のための厄除御守というものもございます。
実に将門公は懐の広い御方でございます。

つまりこの神社において、精密機械メイドである|当機《わたし》は、大怨霊将門公の加護を乞うこともできるということです。
|実験空間《サンドボックス》を展開し、御祭神平将門命に祈り奉ります。
|新皇《まさかど》を崇めし地を荒らす不届きものを祓う力を、どうか|当機《わたし》に賜りたく存じます。
加護を授かることができれば、民たちに攻撃が及ぶようでしたら、システム:銀の弾丸で【空中移動】をし、超高硬度電脳結晶版で【盾受け】をしましょう。
百足は頭をつぶせばよいと伺った気がします。
メイド・ヒールによる【踏みつけ】の【2回攻撃】によって大百足の頭を貫きましょう。
四之宮・榴
アドリブ・アレンジ・連携歓迎。

心情
…人々を助けるのは…能力者としては…必須なの、です。
…だから…無辜の民は…出来るだけ…助けます。

…僕が傷つくことが、厭いません。
…だって、僕は…それしか出来ないから…僕、1人で…救える命なら…喜んで…。
…それに、意味がないと謂われてもいい。
…い、一時凌ぎだって…いいの…助けたいだけだから…

行動
攻撃は、√能力でカウンターメインに。
僕自身は、おびき寄せを使用して、一般人に攻撃の手が行かないように。守れるように庇うを。
回避は、第六感からジャストガードと受け流しを主体に。
回復は、インビジブル融合と生命力吸収で、誰一人として虐殺なんてさせません。
攻撃は距離に合わせて。
高峰・茉莉花
連携&アドリブ歓迎

藤原秀郷の伝説で退治された三上山の大百足の娘かぁ、大物といえば大物だけど退治された伝説だからしょぼいといえばしょぼい?
ともあれ忍法・摩利支天法で摩利支天の加護を纏って、移動速度3倍で民間人を担いで一旦巻き込まれない位置まで逃がすよ!
というかデカい、デカいよ!?山を七巻き半する大百足って神田明神に収まらないでしょ!?
逃げるの大変だけど、これでも忍者だし逃げ隠れは大得意!だから民間人担いで逃がすよ!

逃がしたら大百足退治だね
まぁ有名な伝説だけあって弱点も明確だね
霊忍刀「陽炎丸」に唾を吐きかけて、忍者の技量で百足の身体を昇っていって脳天に唾で濡れた陽炎丸を突き立ててやるんだから!
千堂・奏眞
難易度:→

「自分の正義」っていうのがどういうもんなのかはわからないが………
(傍にいる精霊たちを見遣り)
『誰かを助ける』という考えだけは、昔から譲る気はねぇよ

高速&多重詠唱で錬金弾を使用し
障壁属性の弾丸を多数確保

弾丸は敵と民間人の間に撃って障壁を展開
錬金術で怪我や毒の治療及び足が速くなる支援を民間人にしつつ避難誘導をする

敵には視力低下・機動力低下・攻撃手段となる部位が脆くなる状態異常を付与
その身を避難先とは反対方向に吹き飛ばす衝撃波を放つ

民間人の避難が終わった後は
錬金弾の弾を重力属性に変えつつ|皆《精霊たち》との連携攻撃で確実に仕留めるぞ


二人称
お前・お前ら(精霊たち)
テメェ(敵)

アドリブ
連携歓迎

●神魔討滅演義
「正義というものはよくわからないが、戦う理由でよいなら助かるね、ヨルマ」

 神田明神――簒奪者が我が物顔に席巻した神域へと気負いなく踏み込み、ウォルム・エインガーナ・ルアハラール・ナーハーシュ(回生・h07035)は己が眷属に声を掛ける。
 戦う理由。
 それでよいのなら答えは明瞭だ。

「私の理由はひとつだけ。私のAnkerの為だ」
 この場には居ない聖職者、異なる√で出会った青年の事を想う。
 己を己たらしめた楔。あの悲痛な叫びが、絶望と信仰が色褪せる事は無い。

「彼は私に、神であれと望んだ。
 だから私は神として、人のために戦う。それだけが理由だ」

「それはそれは。随分と御行儀の良い神擬きも居たものよ」

 妖気に屈せぬ黒き男に意識を向け、大百足の声には隠す気も無い嘲笑の色。
 絶大な霊力を得た事による全能感――ではない。
 新たな伝説として君臨せんと野望のみに殉じる|我欲《エゴ》、古妖の価値観が誰かの為などという御題目を解する事は無い。理解する気も無い。

「まぁよい。龍ならざるはちと物足りんが、景気付けに喰らうも一興であろう」
「だから、悪いが君だけに集中するわけにはいかない。
 ヨルマ。右足の補助器具に変身」

 声を掛ければ眷属は主の意に応え形を変える。
 戯れに災厄を振り撒く三上山媛とウォルムでは視座が異なる。
 人知の及ばぬ脅威を前にどうしようもない人々の絶望が彼には見えている。

「――我は|蛇《マケ》となり、汝らに祝福を齎さん」
「ほう……?」

 外見が変化する訳ではない。
 ウォルムの【|創造の尾《ウネカウ》】は範囲内の負の想念を力と為し、能力を桁違いに引き上げる。
 挨拶代わりの薙ぎ払いは幻影に惑わされ空を切った。
 返礼の精霊を差し向け、その全身を焼き払う。

「ッ――」

 無数の属性攻撃を突き抜け現れた鎌脚は正確にウォルムを狙っている。
 杖で受け流し、怪力で払い除け、次々に降り注ぐ追撃を捌いていく。

「小手調べでこれか」
「良い。中々に見違えたではないか。少しは愉しめそうで安心したぞ」

 この戦場に駆け付けたのはウォルムだけではない。
 軽い催眠を避難の助けとした民間人から意識の配分を幾らか大百足に傾ける。
 心身に満ちていくのは√能力の強化とも性質の異なる霊力の加護。

「……いいだろう。此処からは行動で示すとしよう」
 古妖の甲殻に杖の先端を突き立て、渾身の力で押し返す。

「わたしはお母さんも、民間人の皆さんも命をかけて守ります」
 暴虐の古妖を前に、天神・珠音(どこにでもはいないトウテツ・h00438)は誓う。
 民間人の救助を請け負う珠音の母は元ヒーローだが√能力者ではない。
 だから、"現役"の自分が守ってみせるのだと。

「まぁこういう相手ほどヒーローの出番ってやつだろうけどね……」
 荒ぶるは邪悪にして強大、人々の生命と営みを脅かす簒奪者。
 計り知れない脅威なればこそ各々が最善を尽くす事が肝要だ。
 歯痒さはある。
 だが、ヒーローの先達として天神・まりか(天神・珠音のAnkerの母親・h02429)は判断を誤らない。

「ヒーロー参上だ!お前ら、アタシの言うことをよく聞いて…こっちが安全だからな!」
 かつて悪の組織と戦っていた伝説のヒーロー『ワンダー・フェニックス』として名乗りを上げる。
 積み重ねた経験は無くならない。
 それはある種のカリスマとなり、軽い催眠状態にあった人々へ浸透していく。

 ――信じていいのか、と誰かが問うた。
 そこにあるのは悪意でも混乱でもない。
 共に居る家族や自分自身、彼等一人一人も守りたいものを持つが故の不安と恐怖。
 人々の命を背負う事の責任と重圧。

「ああ、大丈夫だ! アタシを信じてついて来な!」
 当然、背負う覚悟など出来ている。
 一瞬の躊躇いも無く応え、先導しながら娘たちの元へ振り向く。

「ちっ……娘が傷つくのは放っておけないけどな……
 こういう時は『信じてるぜ』って言うべきなんだろうな!」
「任せて……!」

 応援する声に勇気を燃やし、少女は一振りの槍と共に大百足へと切り込む。
 重く硬い手応え。
 返す鎌脚の一撃を捌けば、頭上から無遠慮な視線が突き刺さった。

「ヒーローの……娘と言ったか。その割には匂うな?
 血と罪と悪の匂いだ。なあ――貴様。どれだけ喰らった?」
「わたしは……人の命を守りたい何ていう資格はないかも知れない……」

 嗅覚、或いは古妖の備えた何らかの能力に依るものだろうか。
 揶揄する声は的確に珠音の過去を抉る。
 悪の組織に拉致され、あらゆるものを喰らい尽くした記憶。
 今や少女は多くの人の命を喰らった|化け物《怪人》だ。

「それでも、助けられない人を見るのがもう嫌なんです……。
 だから、わたしはもう誰の命も失いたくない!」

 決然と口にした少女の姿に、三上山媛は不気味なものでも見るような目を向ける。
 御祭神の霊力が少女の身に巡るのを見ずとも本心である事は分かった。
 込み上げるのは決して相容れない"正義"に対する嫌悪感。

「目障りだな。疾く失せよ」
「ッ――――」

 長大な大百足の巨躯を鞭の如くしならせ、ウォルム達を牽制しながら三上山媛は煙管を振るう。
 圧倒的な速度に加え、よしんば躱せたとしても【人を惑わす大百足の煙管】がもたらすのは毒煙領域の生成による戦場の掌握だ。
 地を揺るがす強打が容赦なく少女を捉える。

「妾は興を削がれた。口直しの一つでも……」
「痛いの……いやだから……」
「!」

 絶命したかに見える肉体が、動く。
 四凶の力を宿す暴食のトウテツ怪人、その身に宿す能力の一端。

「痛みも悲しみもすべてくらい尽くすために…!」
 致命の傷は形を変え、飢餓の象徴たる巨大な口を創造する。
 √能力を喰らい模倣する【|痛みを喰らい尽くす《ペインフルイーター》】が、古妖の暴威を写し取る。

「囀るなよ小娘。それは妾の|畏れ《信仰》と為すもの。
 苦痛を、悲嘆を、絶望を! 喰らい糧と為すのは妾であると――思い知るがいい」

 自在に伸縮する大口の再現する反撃は古妖の甲殻をも打ち砕いた。
 傷口から毒血を流し、忌々しく顔を歪めた三上山媛の口許に邪悪な笑みが浮かぶ。
 所詮は戯れ。
 その方が面白そうなら、先に有象無象を磨り潰すのも悪くない。

「……人々を助けるのは…能力者としては……必須なの、です」
 ゆらりと立ち塞がったのは四之宮・榴(虚ろな繭〈|Frei Kokon《ファリィ ココーン》〉・h01965)。
 ヒーローと共に民間人の避難を助けていた少女が一歩前に出る。

「……だから……無辜の民は……出来るだけ……助けます」
「ふん……」

 古妖の矛先が榴に移った事には幾つかの要因がある。
 D.E.P.A.S.である彼女の、ある種の狙われ体質とも言える敵意の誘引。
 強大な大百足からすれば矮小な少女への侮り。
 一振りで殺す程度は大した手間でもないと煙管を振るう。

「……っ!」
 古妖の判断にも幾つかの誤りがあった。
 儚げな見掛けと裏腹、榴が√能力者でも屈指の|実力《レベル》を持つ一人である事。
 その身の一部をインビジブルと置き換え共生する受容体の、生身より無理の利く肉体。
 霊力の加護を受け、少女はそれ自体が天災めいた一撃をも受け流してみせる。

「……僕が傷つくことは、厭いません。
 ……だって、僕は……それしか出来ないから……
 僕、1人で……救える命なら……喜んで……」

「……虫唾が走る」

 上乗せされた嫌悪が気紛れと鬩ぎ合う。
 民間人に狙いを移したのは他者を守らんと命を張る者たちを絶望させたかったからだ。
 それ以上の拒絶は却って邪魔者へと敵意を引き付ける。

「気狂い共め。ならば精々その身を挺し、無意味に死に晒せ!」
「意味がないと謂われてもいい。
 ……い、一時凌ぎだって……いいの……助けたいだけだから……」

 まぁいい、と古妖の狡猾が働いた。
 長大な百足の身体が可能とするのは戦線の拡大、隨神門前から避難民の元まで伸ばした上半身に√能力者たちが追い付くには速度に長けた者でも数秒の猶予がある。
 人々を庇い勝手に攻撃に当たりに来るなら、そこを削り殺すまでの事だと。

「贄たる我が声が聴こえるのなら、全てを投影させて……」
「無駄と言った!」

 榴の【|見えない怪物達の恩仇《エンミティ・オブ・インビジブル》】は√能力のリソースそのものとなるインビジブルに干渉し、力量に応じた数――今は41の再現物を作り出す。
 発動には敵の強撃を受ける必要がある点で捨て身の荒業だ。
 だが、その分だけ多くの人々を守れる。

「誰一人として……虐殺なんて……させません」
 予測を上回ったのは三上山媛の苛烈さだった。
 再現された己の√能力を浴びながらも、保身より加害を優先する破滅的な悪意。
 そんなものに敗けはしないと、覚悟と共に誓いを重ねる。

「ええ、そうですね」
 少女の決意に応じる声があった。
 少なくとも……この場に於いて。各々の"正義"を抱き戦う者たちは、一人ではない。

 か弱い戦闘員を自認する見下・七三子(使い捨ての戦闘員・h00338)だが、団結力だけは誰にも負けないとの自負がある。
 ひとりはみんなのため。みんなはひとりのため。戦闘員は、みんなでひとつ。

「……なので、ふふ。
 力を合わせたら、大きなことだってできちゃうって、私は信じて、誇っています!」

 例えば悪意ある強大な敵から人々を守り戦う今のようなシチュエーション、人手は幾らあっても困らない。
 神話の如き戦いであっても、縁の下から皆を支える事は出来るのだと。

「ということで、みんな、手伝ってくださいー!
 逃げ遅れた方の避難誘導に全力を注ぎましょう!」

 七三子の【|警邏作戦《パトロール》】が召喚するのは戦闘員の幻影達。
 老人、子供、怪我人、逃げ遅れた者たちのフォローに回り百足の猛攻から命を守る。

「ええい、木っ端共がわらわらと……!」
「私もできるだけ、足止めに行きます。急いで離脱してください!」

 座標の入れ替えによる転移、味方同士で傷を癒す回復のおまじない。
 消費される歯車であった者たちは、チームワークを武器に古妖へと立ち向かう。

「藤原秀郷の伝説で退治された三上山の大百足の娘かぁ」
 忍の健脚を活かし避難を手伝っていた高峰・茉莉花(現代っ子の忍者娘・h02548)は肩書に違わぬ猛威を振るう古妖を見遣り呟く。

「大物といえば大物だけど退治された伝説だからしょぼいといえばしょぼい?」
「……何やら戯言が聞こえたな」
「うわこっち見た」

 殺戮を阻まれ、己の能力を模倣した反撃を受け、古妖の目には苛立ちの色が濃い。
 味方から注意が逸れるなら、これはこれで好都合かと茉莉花は考える。
 何かと突っ込まれる事も多いが腕利きの忍者、逃げ隠れは大得意と太鼓判を押している。自分で。

「だって要するにやられ役の引き立て役じゃない?
 しかも娘なんて如何にも格下げ感があるっていうかさぁ」
「……ふ」
「ふ?」

 重ねて煽れば三上山媛はおもむろに動きを止める。
 まさか憤死するのかと一抹の期待を抱くも、烈火を思わせる怒気と裏腹に古妖の様子はいやに凪いでいた。

「よかろう。命知らずの愚昧には永劫の畏怖で報いてくれる」
 ドクン、と百足の全身が脈を打つ。
 現時点でも怪獣めいて巨大だった姿が、更に規模を増していく。

「戯れは此処まで。喜ぶがいい、妾の本気を味わう栄誉をくれてやる。
 刮目せよ――妾は今日、父を凌ぐ伝説と成ろう……!」

 顕現せしは【伝説の三上山の大百足】。
 山を七巻き半すると語られた巨躯は誇張に非ず、その存在は天地を揺るがし君臨する。

「というかデカい、デカいよ!?
 山を七巻き半する大百足って神田明神に収まらないでしょ!?」
『戯れは此処までと言ったであろう?
 安心するがいい。貴様等は言い訳の余地一つ無く、完膚なきまでに蹂躙してやる』

 器用に身をくねらせ真の姿を晒した大百足が神田明神を破壊する事は無かった。
 だが、規格外の巨躯はその全身が武器だ。
 身動ぎ一つで地を均し、びっしりと生え揃い蠢く鎌脚に死角は無い。

「「自分の正義」っていうのがどういうもんなのかはわからないが………」
 援護射撃を繰り返しながら位置取りを調整すること数十秒。
 そも、古妖の出現から今に至るまでが数分と経たぬ間の激動だ。
 そうそう悪夢にも見ないような敵のスケールは諦める理由になるか?
 まさか。
 翳る事の無い意思を胸に、千堂・奏眞(千変万化の|錬金銃士《アルケミストガンナー》・h00700)は傍にいる精霊たちを見遣る。

「『誰かを助ける』という考えだけは、昔から譲る気はねぇよ」
 御祭神の霊力が身体に馴染むのを感じる。
 確かに敵の規格は常軌を逸しているが、その幾らかは霊力を浴びたが故の事。
 その点で言えば条件は対等なのだ。
 威容を誇る簒奪者との差は、見た目ほど絶対的なものではない。

「これならカバーしきれるな……リロード!」
 精霊術と錬金術を掛け合わせた【|千変万化の錬金弾《アルケミカル・ブラスター》】は奏眞の代名詞。
 敵には状態異常で蝕む衝撃波を、味方には錬金術による強化を。
 即興で幾らでも調整の効く汎用性、そして巨体にも有効な高威力の範囲火力は【進化する暴食の大百足】の対応力も上回る。

『無意味だ』
「それを決めるのはテメェじゃねぇ」

 外部干渉の完全無効化はダメージのみならず状態異常も悉くを跳ね除ける。
 それはつまり妖力も倍以上のペースで消費するという事だ。
 莫大な生命力を削るか、妖力を削るか。
 あらゆる攻撃一つ一つに消耗を強いられる分、敵は寧ろ脆くなったと言っていい。

『ならばその身と魂で理解せよ』
「打てるだけの手は打った。頼むぜ……!」

 百足の全身、各関節部から溢れだすのは龍神殺しの猛毒の吐息。
 ブレスそのものに外部干渉無効の無敵は無い。
 ただ、その規模が巨躯相応に凄まじい。
 衝撃波を連射して迎え撃ち、しかし抑え込むに足りるかどうか。

「このでかさなら的あてしやすそうね」
 サルサ・ルサルサ(サボテニックヘヴン・h04751)は動じた風もなく、心身を殺す災厄の波濤を見上げる。
 起源:タマサボテンの獣妖に分類される者としてサルサは妖怪大戦争の最前線に乗り込んだ。

「伝説だか藤原だか知らないけど。
 一尺のサボテンにも五万の棘って格言、覚えて帰って貰うの」

 大百足に比べればあまりにも小さい身体がダイナミックに跳ね回る。
 放つは300連の【|棘々萬々《チキチキバンバン》】。
 虚空でバウンドするかのように不規則な動きは多角的な攻撃を織り成し、奏眞の錬金術がもたらす強化と相まって猛毒のブレスと真っ向からぶつかり合う。

「神として在る身だ。|この程度《・・・・》に勝手を許す訳にはいかないね」
 黒き男の意の儘に、彼に隷属する精霊が力を振るう。

「相手が神でも……化け物、でも……同じ……です」
 死に至る猛毒へ自ら身を晒した少女に代わり、不可視の怪物達が再現したブレスの応報を見舞う。

「EmitCreatePeer |> SetConsensusState |> ConnectOpen |> Handshake」
 メイド・メイド(学名:霊長目ヒト科メイド属メイド・h00007)の【|叡智の盾《マイニング・シールド》】が猛毒を阻み、超高温の排熱で焼き払う。

「わたしの正義?
 そんなもの「よく食べよく寝てよく遊ぶこと」に決まってるわよね」

 百足の巨躯にも負けぬほど躍動するサルサには、猛毒のブレスを迎え撃つ味方の姿がよく見えた。
 遠くにはヒーローに導かれ……少なくとも、ひとまずは無事に逃れた民間人たちも。
 彼等の中には観光に来ていた者も、それをもてなす側の人も居ただろう。
 今は戦っている√能力者たちだって、簒奪者が暴れていなければ共に食道楽や観光を楽しめたかもしれない。

「おいしいもの食べるにも、ぐっすり寝るにも、いっぱい遊ぶにも、
 お前の殺戮はぜんぶ邪魔よ」

 満ちる霊力がサボテンのトゲに更なる力を与える。
 死が形を成したかのような猛毒の波濤が、霧散する。

『莫迦な……! 矮小な塵芥の分際で!』
 必滅を期したブレスは打ち破られた。
 動揺と激昂、癇癪めいた巨躯の振り回しはそれだけで周囲を更地に変えるだろう。

「ブラックさん……! 本当に良いんですね!?」
「ああ、任せろ!」

 戦闘員との入れ替わりによる七三子の転移に巻き込まれる形で、暴虐の正面に飛び込んだ者が居る。
 山をも超える巨体に正面から叩きつけた剣の銘をブラック・ザンバ・ブレードと言う。

「己が正義を示すか。承知!」
 怯む事は無い。
 ヒーロー"ライズ・ブラック"の装束を纏い、黒統・陽彩(ライズ・ブラック・h00685)は己が正義を叫ぶ。

「かの理想を夢を叶える手伝いをすること! それこそ我が信念!我が正義!
 そのために誰かの明日を奪わせはしない!」

 陽彩自身の実力、御祭神の霊力、奏眞の錬金術。
 複数の要因が重なったとて、大百足の勢いを僅かにでも押し留めた事こそ奇跡だった。
 痛みを感じている暇さえ無い。
 地を削りながらも力尽くに押し込まれ――その勢いが更に減じる。
 陽彩に並ぶ形で正面から愚直に立ち向かったもの。
 それは伸縮する異形の大口だった。

「わたし、だって……!」
 猛毒のブレスとの激突から数秒。
 傷を修復する形で全身に怪物の口を生やした異形を走らせ、先行した大口を追い、珠音は全身を叩きつけるように百足の大質量を食い止める。
 無茶の代償に壊れかけた身体と敵能力の再コピー、差し引きは幾らかプラスに傾くか。
 ――足りない。だが、諦める訳にはいかない。
 母が自分を信じているのだから。

 もう一人。
 誰もが手一杯の中、絶望的な力比べに加わる者が居る。

「悪いね。年甲斐もなく手が出ちまった」
「お母さん!?」
「気ぃ抜くんじゃないよ珠音! ――アタシたちなら、やれる!」

 超常の力を扱うヒーローだったまりかだが√能力者ではない。
 |本来なら《・・・・》√能力者の戦いに並び立つ事は出来ない筈だった。
 御祭神の霊力を受けた事で成り立つ、束の間の共闘。
 抑え込んだ。

「私も負けてはいられないな。確実に、そして的確に――行くぞ!」
 陽彩のリアライズ・ガンは想像を弾丸として具現化する。
 体内で黒枝と化し縫い留める【|連黒撃《ブラック・コンボ》】は無敵に阻まれ、その分だけ妖力を削り取る。

『おのれ……!』
「そろそろガス欠が近いんじゃないか?」

 殆ど感覚を失った身体を奮い立たせ、挑発的に笑ってみせる。
 確かに度を越した巨体そのものの脅威は身を以て味わった。
 だが、それも動かす為のエネルギーを失っては張子の虎だ。
 三上山媛の余裕の無さこそ、その限界を雄弁に物語っている。

『有り得ん……認めるものか! 霊力を、更なる力を寄越せ!
 将門公よ、貴様の器はその程度では無かろう!』
「然り。足りぬのは汝の思慮であろう」
「ええ、実に将門公は懐の広い御方でございます。将門公は」

 吼える大百足の眼前へ飛翔する二つの影。
 メイドと和紋・蜚廉(現世の遺骸・h07277)は、ヒーローたちとはまた異なる形で正面から三上山媛と相対する。

「ご存じでしょうか。
 神田明神の御利益は、確かに縁結び、商売繁昌、そして厄除けではあるのですが、
 実に多くの御守りを授かることができるのです」

 大怨霊と畏怖されるのは将門公の一面に過ぎない。
 そも、彼はこの神田明神に祭神として祀られているのだ。
 民に仇為す邪悪と同列に扱う事こそ見当違いも甚だしい。

「特にそのひとつ厄除けについては、
 情報技術のための厄除御守というものもございます」

 メイドは語る。
「つまりこの神社において、精密機械メイドである|当機《わたし》は、
 大怨霊将門公の加護を乞うこともできるということです」

 それは彼女の【|召喚術式・メイドのための実験空間《マウント・メイド・イン・サンドボックス》】。
 効果範囲内はメイドの|万事都合のいい空間《サンドボックス》と化す。

「御祭神平将門命に祈り奉ります。
 |新皇《まさかど》を崇めし地を荒らす不届きものを祓う力を、
 どうか|当機《わたし》に賜りたく存じます」

 請願は聞き届けられた。

「――記憶に問うは我が爪。汝の過去が残る限り、その痛みをこの身で穿つ」
 一方、蜚廉の【穢痕読】は触れたものに宿る記憶との交渉を要するものだ。
 条件を満たしたのはつい十数秒前、龍神殺しの猛毒が打ち破られた頃の事。
 能力を発動した彼の前には一柱の武神が佇んでいた。

「小手先の儀礼は不要。特に許す。――唯、語るべきを語るがいい」
 声は威厳を崩す事無く告げる。
 今も一秒を争う死闘の只中だ。
 略式の礼を取り、蜚廉は静かに応じる。

「我の正義か…強さを示すこと。
 その為に、生き抜くこと……いや。
 そうだな、大切なことを忘れていた」

 もう一つ有るのだ。
 二つの"芯"と並ぶ理由が。
 神前に示す答えに、全霊を以て応じる。

「我がAnkerを、守る事。だ」
 多く言葉で飾る事はしない。
 短い言葉に、語る声に万感の意思を込める。

「…………」
「応えてくれるか、祭神よ」

 直接の返答は無かった。
 神は現世を生きる者の意思を肯定も否定もしない。
 ただ、穢痕爪の発現が一つの事実として彼の元にある。

「迫る厄災を跳ね除けるため、その力をこの身に借りるぞ」
 精神世界の風景は遠ざかり……蜚廉の意識は現実に帰還する。

『ふざ、けるな! 流れは此方に向いていた!
 今日この時を他に於いて、これ以上の好機があるものか!
 それを……! 貴様等の如き塵芥に邪魔立てされる等と……!』

 【進化する暴食の大百足】が古妖の肉体を更に変貌させる。
 虚仮威だ。
 もはや巨体を自在に暴れさせる余力など無く、顎肢や鎌脚の小手先の変化で敵対者を引き裂かんと足掻くのみ。

「油断の匂い……過大な力を得た事で、気が随分と大きくなっている。
 動きも併せて雑多だ」

 確かに、掠るだけでも致命の悪足掻きだ。
 だとしても【伝説の三上山の大百足】を解いた方が余程脅威だっただろう。
 肥大化した自尊心に呑まれ、闇雲に振るわれる暴力を捌く事は蜚廉の力量を以てすればそう難しくはない。
 疾走殻を軋ませ続けることで溜めた加速衝動は臨界に達しようとしている。

「――まぁ有名な伝説だけあって弱点も明確だね。
 オン・マリシエイ・ソワカ!」
 その時、地上から大百足の頭頂まで駆け上がってきたのは忍者娘。
 【忍法・摩利支天法】の真言を重ね、先人の逸話に倣い霊忍刀「陽炎丸」に唾を吐きかける。

「これでフィニッシュだ! ありったけを注ぎ込むぞ!」
 同時、地上では戦闘員の回復を受けた陽彩が残る力を振り絞る。

「百足は頭をつぶせばよいと伺った気がします」
 システム:|銀の弾丸《シルバーバレット》の4対8翼から成るメイドの空中機動。
 加速の勢いを乗せ必中の踏み付けを見舞い、反動で身を翻しもう一度。

「祭神より借り受けしは誅罰の力。驕れる者に突き付ける逆襲の刃である。
 今こそ――穢れは導き、我は奔る」

 ザンバの斬撃が一刀両断に斬り裂き、【穢導閃】の瞬撃が貫き、
 陽炎丸が突き刺さり、メイド・ヒールが打ち砕く。
 抵抗は一瞬だった。
 妖力の尽きた巨体は無敵性を喪い、大きく擡げ振り回していた身体は地に接する事無く悪い夢のように薄れ消えていく。

 後に残ったのは出鱈目な破壊の痕。
 そして、守り抜かれた神田明神と人命という確かな事実。
 伝説を凌駕せんとした古妖との死闘は、√能力者たちの勝利に終わったのだ。
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