シナリオ

⑧死を拒むときめき

#√汎神解剖機関 #秋葉原荒覇吐戦 #秋葉原荒覇吐戦⑧

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 #√汎神解剖機関
 #秋葉原荒覇吐戦
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⚔️王劍戦争:秋葉原荒覇吐戦

これは1章構成の戦争シナリオです。シナリオ毎の「プレイングボーナス」を満たすと、判定が有利になります!
現在の戦況はこちらのページをチェック!
(毎日16時更新)

●ハートビート
「皆さん大変です! 秋葉原のダイビルに、人間災厄の『リンゼイ・ガーランド』が出現しました!!」
 星詠みである漆乃刃・千鳥(暗黒レジ打ち・h00324)が指し示したのは、今回の戦争地図のほぼ中心部に当たる場所。わざわざこんな激戦区に現れた理由は、この人間災厄の特性による部分が大きいだろう。
 √汎神解剖機関の合衆国に管理されていた人間災厄、彼女の能力は『近づく者を自殺させる』という危険極まりないものだ。多数勢力の入り乱れる戦場、その中心にこんなものが居れば、混乱は必至――敵の思惑はわからないが、『王劍戦争の全勢力の妨害』という目的には最適な人選とも言える。
「まあ簒奪者が巻き込まれて死ぬ分にはご自由に、といったところですが、民間人の巻き添えは見過ごせませんよね……!」
 他の戦場同様、放置しておくわけにはいかない。被害が広がる前に駆け付け、この人間災厄を討伐してほしいのだと彼は言う。

●とぅんく
「先ほども申し上げましたが、『近づく者を自殺させる』という彼女の特性は、僕達のような√能力者にもしっかり有効です! 気合とか意志の力で何とかなったらよかったんですけどね!!」
 まあ、それで解決するならこんな危険物扱いはされていないだろう。抵抗を試みればある程度は耐えられるかもしれないが、それも自殺までの時間を少し遅らせるくらいがせいぜいか。
「不明な点が多い特性ですが、幸い有効な対抗手段が一つ予知されています!」
 星詠みの言うそれは、『リンゼイ・ガーランドに好きだと思わせる』という突拍子もないものだった。
「なんかよくわかりませんが! 彼女の特性は『彼女が好きだと思った相手』には効かないようなのです!」
 敵として遭遇して早々に好かれろというのもまあまあ無茶な話だが、何も本気で恋に落とせと言っているわけではない。一瞬、少しでも良いからドキッとさせることができれば効果はある。
「演技でも演出でもその場限りの嘘でも構いません、どうにかこう……ときめかせてきてください!!」
 半ばヤケになったような激励を飛ばして、千鳥は一行を送り出した。

マスターより

つじ
 どうも、つじです。
 こちらは王劍戦争『秋葉原荒覇吐戦』のシナリオとなります。戦場は⑧ヴァージン・スーサイズ(秋葉原ダイビル)です。

●👿『人間災厄『リンゼイ・ガーランド』』および『怪異「|自殺少女霊隊《ヴァージン・スーサイズ》」』
 制御不能の無差別自殺能力を持つ、合衆国管轄の『封印指定人間災厄』です。大統領命令により戦線に投入されるようになりました。
 この無差別自殺能力は戦闘で使用する√能力とは別に常に発動しています。射程は不明ですが、戦場に入った時点で影響下にあり、近付くほど悪化するとお考え下さい。

●プレイングボーナス
 『自分の自殺を防ぐ(一瞬好かれるだけでも効果あり)』
 きゅんとさせる方向で頑張っていただければさらにボーナスを積みます。

 以上、皆さんのご参加お待ちしています。
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第1章 ボス戦 『人間災厄『リンゼイ・ガーランド』』


POW |希死念慮《タナトス》
60秒間【誰にも拘束・監視されない自由な時間】をチャージした直後にのみ、近接範囲の敵に威力18倍の【突発的感染性自殺衝動】を放つ。自身がチャージ中に受けたダメージは全てチャージ後に適用される。
SPD 怪異「|自殺少女霊隊《ヴァージン・スーサイズ》」
【|自殺少女隊《ヴァージン・スーサイズ》】と完全融合し、【自殺衝動の超増幅】による攻撃+空間引き寄せ能力を得る。また、シナリオで獲得した🔵と同回数まで、死後即座に蘇生する。
WIZ |自殺のための百万の方法《ミリオンデススターズ》
【様々な自殺方法の紹介】を放ち、半径レベルm内の自分含む全員の【ヴァージン・スーサイズによる自殺衝動】に対する抵抗力を10分の1にする。
イラスト 芋園缶
√汎神解剖機関 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

櫃石・湖武丸
好きだと思った相手に効かないとな
√能力も完璧でないと言うべきなのだろうか
しかし、自殺衝動を抱かせてくるのは厄介だ
何とかして相手にときめきを抱いて貰わねば

精神抵抗と狂気耐性で堪えつつ思い付く
俺がときめくあれがあるじゃないか、猫だ
化け狸直伝の変化術を使って猫の姿に変わる
ふわふわの毛並み、もっさりとした尻尾、ふくふくの手足
伸びをしてみせたり、地面にごろごろと転がって無防備な姿を晒す
どうだ、日頃猫と同居している俺の観察力、演技力
それを参考に俺がときめいた猫の仕草をやってみせるのだ
そして視線が合ったら控えめに「にゃーん」
問題なのは敵が|犬派《別勢力》だった場合、刺さらないかもという所
ええい、なんとかなれ


 たとえば憎い仇が居るとして、許せない相手が居るとして、それに対するものと同じ感情が心の裡で渦を巻き、自分自身へと向かってくる。それがリンゼイ・ガーランドのもたらす『自殺衝動』だ。
 戦場に立った途端に燻り始めた黒い火種が、歩を進める程に燃え上がっていくのを、櫃石・湖武丸(蒼羅刹・h00229)は自覚する。今はまだ耐えていられるが、それも時間の問題だろうか――この状況を打破するには、√能力の欠点を突くしかない。
「しかし、ときめかせろと言われてもな……」
 そう、打開策の方針は明確だが、具体的にと言われると難しいもの。湖武丸にとっても難題であるこれに、しばし頭を悩ませて。
「……あれでいくか」
 どうにか思い付いたのは、そう。自らが『ときめいた』時の記憶だ。
「行くぞ」
 手で印を切って、敵へと向けて地を蹴る。急激に加速する自殺衝動の中、発動するは『化け狸直伝の変化術』、次の瞬間彼の姿は小さな獣の姿へと変わっていた。
『ね、猫……ッ』
 ふわふわの毛並み、もっさりとした尻尾、ふくふくの手足――それらを駆使して伸びをひとつ打つと、その場でごろんと寝転がってやる。
 同居している猫の姿を思い返し、それを再現するように湖武丸は動いて見せた。
「にゃーん」
『くっ……!』
 極めつけとばかりに控えめな声で鳴いてやると、リンゼイの方から喉の鳴る音が聞こえた。
 刺さったか? それはここからでは判別できない。もしも彼女が犬派だったらどうする? そもそも大の大人が何をやっているんだこれ? そんな言葉が一瞬頭をよぎるが、今は深く考えないことにした。
 ――ええい、なんとかなれ。
 そのままごろごろと転がって、湖武丸はリンゼイの方へと身体を跳ねさせる。
 その跳躍は軽やかで、迷いなく。自殺衝動から解き放たれた、心の様を映し出したよう。
 能力『ヴァージン・スーサイズ』を無効化すれば、リンゼイの隙は明らか。無抵抗な彼女のもとに飛び込んだ湖武丸は、化け猫の爪で敵の身を引き裂いた。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

天霧・碧流
★正義感は皆無ですが、√能力者の迷惑になるような行為はしません。アドリブ歓迎です。

フフ、面白い力を持っているんだな。
それで恐れられて閉じ込められていたお姫様ってわけだな?

いくら愛を語ったところで、恐れて遠く離れていたら興ざめだよな
だから、ダッシュで近づいて、思い切り密着し、リンゼイの顎に手をかける。
気持ちを伝えるためにはこのぐらいして当然だろ。
魅了するためにまっすぐその目を見つめ
「俺はアンタを恐れないから安心してくれよ。まあ、アンタが本当に想っているヤツには敵わないのかもしれないが。でもアンタの恋を応援してるよ」
なんてリンドーをアゲつつ。

隙が出来たらスッとその胸に狂華を突き刺すか。美しいお姫様


 その戦場に至ったところで、自然と呼吸が浅くなる。立っていること、その場に居ることさえもが俄かに億劫になり、手を伸ばせば何もかも終わるという『安易な解決策』だけが脳裏に浮かぶ。
 合衆国管轄の封印指定人間災厄、そんな物々しい肩書の意味するところを、天霧・碧流(忘却の狂奏者・h00550)もまたその身で感じ取っていた。
「フフ、面白い力を持っているんだな」
 襲い来る自殺衝動をそう笑って、碧流は目の前の敵を見遣る。リンゼイ・ガーランド、眼鏡の奥の瞳と視線がぶつかり、死にたい欲求がさらに深まっていく。
 なるほど、これは恐ろしい。揶揄するように、碧流は続ける。
「それで閉じ込められていたお姫様ってわけだな?」
『そんな良いものではありませんが』
 リンゼイ側の返答に構わず、前へと踏み込む。それは『無差別自殺』能力を持つリンゼイにとっては予想外の動き。驚いた様子の彼女に対し、碧流は素早く身を寄せた。
 悪化する衝動も覚悟の上、『彼女を恐れて遠くから』ではどれだけ愛を語ったところで白々しく聞こえてしまうだろう。
『……死ぬのが恐くないんですか?』
「気持ちを伝えるためにはこのぐらいして当然だろ」
 リンゼイの顎に手をかけて、視線を合わせて碧流は言う。
「俺はアンタを恐れないから安心してくれよ。まあ、アンタが本当に想っているヤツには敵わないのかもしれないが」
 それでも、アンタの恋を応援してるよ。強引な振る舞いにそう付け加えた言葉が響いたのか、リンゼイの声音が揺らぐ。
『一体、何を考えて――』
 言い終わる前に、碧流にはそれがわかった。意思とは関係なく胸中をどす黒く染める感情、自らの首に刃を突き立てようと蠢く両手、それらが急に自由を取り戻す。
 その瞬間に、碧流はリンゼイの胸に刃を突き立てていた。
『――!』
 今度こそ、驚愕に目が見開かれる。赤い花だけがその胸元を飾って。
「じゃあな、美しいお姫様」
🔵​🔵​🔵​ 大成功

チェスター・ストックウェル
あはは、好かれないとジ・エンドかあ
やっぱり合衆国管理の災厄はクレイジーだね
とはいえ、見た目だけで釣れるような子には見えないし――そうだ、いい方法があった!

身を隠してガーランドに接近し【念動力】を使って【不意打ち】で彼女を空へと引っ張り上げよう
そこをすかさず【空中浮遊】で近づき、受け止める

やあ、素敵なお嬢さん
空中散歩は初めてかい?
俺みたいな幽霊に攫われないように気をつけて

狙うのは吊り橋効果でガーランドをときめかせ、それが恋によるものだと錯覚させること
無差別自殺能力を無効化したら【霊弾】を使用
構えたP232SLから霊属性の弾丸を放ち、敵を撃ち抜く

例えばそう、こんなふうに
――気まぐれで飽きっぽいから


 胸を引っ搔くようなその感覚は、肉体を得た時ともまた違う、奇妙なものだった。わずかに削れ、ひび割れたそこへ、静かな感情が流れ込む。
 どこまでも深く、色のないそれが広がっていくのは、不快だけれど妙な安心感があった。
 ――どうやら、幽霊でも死にたくなるらしい。
 敵の能力を浴びたことによる発見に、チェスター・ストックウェル(幽明・h07379)の顔に思わずといった笑みが浮かぶ。
「やっぱり合衆国管理の災厄はクレイジーだね」
 好かれなければジ・エンド。結論としてはひどくシンプルだが、そこに至るには少しばかり手を尽くす必要がありそうだ。
 『一目惚れ』でもしてくれれば話は早いが、外見だけで勝負するのは心許ない。釣れるような子には見えないし――。
「……そうだ」
 いい方法があった。思いついた策を手に、チェスターは標的へと手を伸ばした。
 それは念動力による奇襲の一手。リンゼイを引っ張り上げるようにして、チェスターは空中で彼女を受け止める。
「やあ、素敵なお嬢さん。空中散歩は初めてかい?」
 突然のそれに目を丸くしていた彼女だが、やがてその目は物憂げに細められた。彼女にここまで近付いた者が、『無差別自殺』の影響を免れることはないのだから。
『……言い残すことはありますか?』
 返答ではない、憐れむような問いかけの後に、チェスターは引き抜いた拳銃を自らの頭に当てる。
「ああ……それじゃ、俺みたいな幽霊に攫われないように気をつけて」
 彼は飽くまで爽やかに笑う。
 気を付けないとそう、こんなふうに。
「――気まぐれで飽きっぽいから」
『え』
 抗えぬ自殺衝動、襲い来るそれを感じさせない様子で、チェスターの銃口がリンゼイを向く。
 彼が仕掛けたのは胸の高鳴りを無理矢理作る、強引な手段。簡単に言えば『吊り橋効果』だ。冷静になれば終わってしまう、一瞬のときめき。けれど一度でも恋と錯覚してしまえば、リンゼイの能力は失われる。
 銃口から放たれた霊属性の弾丸が、人間災厄を貫いた。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

佐野川・ジェニファ・橙子
こういう希死念慮?というのがあたしのような陽の美女にどう作用するのかと思うじゃない?
「この今マジサイコーな時に死んどくか!」みたいな気分よ
頭が拒否しても体が言う事聞かないとかもありそう、こわ〜
一旦「お前を殺してあたしも死ぬ」という気持ちでいましょう

登場は颯爽と
所作は軽やかに
美しく歩いてド正面から対峙
目的は、バチバチの存在感で魅了すること
決して目を逸らしません
範囲ギリギリで立ち止まったら瞳を見つめて、卒塔婆の鋒を向けて悠然と微笑む
…ので頼むからオチてほしい

強い力が解けた一瞬、爆速で距離を詰めて思い切りどてっ腹にぶちこみます
見た目だけじゃなくて腕っぷしの強さもウリなの、ごめんなさいね


 たとえば毎日が楽しくて、世界はまだ見ぬ面白いもので溢れていて、好きなものや好きな人が近くにあって。それを思うままに味わえている今が最高なのだとしたら。
 この輝きの最中こそが、きっと終わりに相応――。
「――なるほど、こうなるわけね」
 死んどきますか! くらいのテンションで動く自分の感情を、どこか面白がりながら佐野川・ジェニファ・橙子(かみひとえ・h04442)は戦場に立つ。
 敵の持つ『無差別自殺』能力は、自己否定に縁のない陽の美女にも効くらしい。一番派手な死に様は何か、それともみじめに無様に終わらせて、その落差こそが一番映えるか。思考が染められゆくのを感じながら、敵――リンゼイ・ガーランドを真っ直ぐに見る。
『死に方は決まりましたか?』
「そうね、『お前を殺してあたしも死ぬ』ってやつでどう?」
 半ば自分に聞かせるように言い返し、橙子は自死に走ろうとする思考を前へと向ける。
『心中する相手が私で良いんですか』
 構わない、とばかりに颯爽と、そして軽やかに。橙子は正面から歩を進めた。
 歩く姿はいつも通り、自信に満ちた様子で。美しい自分を誇示するように敵へと向かう。
 内側で荒れ狂う自殺衝動、自信の首をへし折りたいと暴れる両腕を無理矢理抑え、目は決して逸らさず、卒塔婆の鋒を向けて悠然と。そんな堂々と立つ彼女の姿を――少しでも『美しい』と思ってしまえば、そこは術中。
 前に進む意志は少しも変わらず、ただ軽くなった心と身体を解き放つように、橙子のヒールが地を穿つ。
『――!』
 驚愕に見開かれるリンゼイの目から視線を外さぬまま、急速接近した橙子は卒塔婆を力ずくで叩き込んだ。
 虚を突かれた敵は防御も回避も間に合わず、まともにそれを喰らうことになる。
「腕っぷしの強さもウリなの、ごめんなさいね」

 ――ああ、この破られ方が一番こたえるんですよね。
 そんな溜息まじりの苦鳴を残して、彼女はその場に頽れた。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

ゾーイ・コールドムーン
どうにかと言われても、とても困るね……!?
でも、放っておけば一般人の犠牲も出てしまう。やれるだけやろう

色々考えたけど相手の好みは判らない、それなら出来るのは嘘も吐かず、真っ直ぐ話すことくらいだ
だから怪異と戦いながら声を掛けていく。抵抗力を下げられても、短時間なら【狂気耐性】【精神抵抗】で保たせてみせる
上手くいったら纏霊呪刃で一気に近付き、【呪詛】の刃で攻撃しよう

リンゼイ、おれはきみを止めに来た
優しいひとに望まぬ殺しをさせるのは嫌なんだ。だからおれは死なない、きみに届くまで
(恋愛的な意味じゃないけど)好きだ。他者を傷付けないよう、普段は封印を受け入れているきみが。本気で誰かを好きになれるきみが!


 衝動と呼ぶにはやわらかく、形も定かでないそれは、ただただ静かに降り積もり、胸の奥で黒く澱んでいく。今は輪郭を捉えることもできないが、それは徐々に重さを増していき、やがて思考を染め上げていくのだろう。
 所以の無い絶望、リンゼイ・ガーランドの持つ『無差別自殺』の能力を乗り越えるには、彼女をどうにかしてときめかせる必要があるのだが。
「いや、どうにかと言われても……?」
 まあ、かなり無茶な注文ではある。思わずそう呟いたゾーイ・コールドムーン(黄金の災厄・h01339)は、しかしそれでも戦場へと踏み込んだ。
 死んでも復活する能力者や、簒奪者達ならいざ知らず、放っておけば一般人にも死者が出るだろう。そうなっては、取り返しがつかない。
「リンゼイ、おれはきみを止めに来た」
 敵の訪れを察したリンゼイが顔を挙げると、彼女の従えた怪異達がゾーイへと襲い掛かった。
 それを捌きながら、ゾーイは彼女に呼びかける。
「優しいひとに望まぬ殺しをさせるのは嫌なんだ。だからおれは死なない、きみに届くまで」
 そうですか、と素っ気ない声が返る。リンゼイ自身は先程から動いておらず、戦闘に参加していない。それもそのはず、彼女がそこに居るというだけで、ゾーイを侵す自殺衝動はその勢いを増している。
『抗わなくてもいいですよ。私の前ではみんなそうなるのですから』
 できれば今すぐ、自分の頭を両手で掴んで、黄金に。
 わけのわからない欲求を抑えながらの戦闘は、やはり精彩を欠く。少女霊達を切り抜けることすらできぬままだが、ゾーイは必死で言葉を紡いだ。
「でも、例外はあるんだよね?」
 返事はない。が、思い浮かべているのは恐らく『例外』である男のことだろう。
 それはある種の隙、「だから」と、ゾーイはそこに畳みかけた。
「好きだ。他者を傷付けないよう、普段は封印を受け入れているきみが。本気で誰かを好きになれるきみが!」
『何を、言って――』
 まあ、恋愛的な意味で言ったわけではない。しかし演技ではなく本心をそのまま口にしたそれは、ゆえに真実味を帯びていた。
 虚を突かれて困ったような、照れたような、そんな反応は、ゾーイの心身を即座に軽くした。
 自殺衝動をすり抜け、これまでとは違う素早い動きで敵の前へ。突き出したその刃は、確かにリンゼイの胸を貫いた。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

深雪・モルゲンシュテルン
私には恋愛の機微が全く判らないのですが……リンゼイさんが好いているリンドー氏は、実直な仕事人という印象を受けます
業務内容が最悪なのはさておき
つまり、彼女に好かれようと思うなら、使命のために戦う姿をアピールするべきと判断しました
……私が兵士やEDENとしての任務に忠実なのは事実です。実態からの乖離を抑えた方が、素人の即興芝居としては心に響かせやすいでしょう
加えて、単なる使命一辺倒ではなくリンゼイさんへの眼差しも感じられるように……やってみましょう

リンゼイさんに接近した途端に沸き上がる自殺衝動
『対WZ用大鎖鋸<滅竜>』の刃を自らに向けまいと、腕の動きを抑えつけながら語りかけます

くっ、なんて力……ですが、耐え抜いてみせます
あなた達に合衆国の大義があるように、私達にも√EDENを護る責務があるのですから
そして、リンゼイさん……あなたにも、望まない殺人はさせません
私は全てを護る使命のために戦います

衝動が消えたら『殲滅兵装形態』を起動
『従霊』からの[レーザー射撃]を浴びせた後、鎖鋸を振るい追撃します


 敵をときめかせろ、というのが今回の命題ではあるのだが、こと恋愛の機微について深雪・モルゲンシュテルン(明星、白く燃えて・h02863)は疎い、もしくは無自覚である。それでもなお攻略に挑むとなれば、有効例から類推するのが一番の近道だろう。
 そう、少なくともリンドー・スミスは無差別自殺能力の影響を受けていないことがわかっている。ならばそこから予想される傾向、つまり『好みのタイプ』は。
「役割に対して真摯に臨む実直さ……でしょうか」
 なんだか褒めたみたいになったがあの業務内容は最悪、いやそれはさておいて。
 アピールすべき点がそこであるのなら、演技の類が不向きな自分にもできることがある。
「……やってみましょう」
 導き出した回答を胸に、深雪は戦場へと向かう。

 秋葉原ダイビル、リンゼイ・ガーランドの居るそこに辿り着いた瞬間から、深雪は奇妙な何かを観測していた。色のないそれは足に絡みつくように、前に進むのを妨げてくる。一歩一歩が鈍く、重くなる感覚。それでも歩みを止めるわけにはいかない、絡みつくそれを踏み付け、振り払うようにして進む。
『引き返した方が良いですよ』
 こちらを認めたリンゼイが言う。眼鏡の奥の瞳はどこか物憂げで、その囁くような言葉を聞くと同時に、冷たい何かが身体を這い始めた。
「それは、できません」
『では、せめて少し立ち止まってみては?』
 そう問いかけるのは、自らの状態を確認させるためだろうか。気が付くと、深雪は自らの得物、その凶悪な刃を覗き込んでいた。
「くっ……」
 いつの間にか目の前にあったそれから顔を離す。鎖鋸を握りしめた腕は、しかし意思に反してこちらに刃を向けたままだった。
 暗い衝動、終わりへの誘惑、内側から生じるそれに抗うように、深雪はもう一方の手で右腕を抑える。歩みは、止めない。
「あなた達に合衆国の大義があるように、私達にも√EDENを護る責務があります」
 鋸の唸りを無理やり押しとどめたまま、一歩、また一歩と前へ進む。
 進むごとに増していく衝動に耐えながら、深雪はその視線を上げた。
「そして、リンゼイさん……あなたにも、望まない殺人はさせません」
『……』
 リンゼイが言葉に詰まるのがわかる。『戦線の混乱を期して最前線に放り込む』――そんな殺戮兵器のような、道具のような扱いには、彼女にとっても思うところがあった。
『だから、止まれないと?』
「ええ」
 そう深雪が応じる。衝動に呑まれかけた自分自身へ言い聞かせるように。
「私は、全てを護る使命のために戦います」
 その姿にリンゼイが何を思ったのかは定かでない。眩しいものを見るように、懐かしいものを見るように、目を細めて。
 ――アナイアレイターモジュール展開。|『従霊』《フュルギャ》各機、システムオールグリーン。
 深雪の操る多数の銃口がリンゼイを狙い、手にした刃もまた彼女へ向かう。攻撃を阻む自殺衝動は既に消えていた。

 ため息がひとつ、小さく響く。けれどそれは、すぐに砲声と擦過音に塗りつぶされていった。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

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挿絵イラスト