⑱混沌なる神の宴
「ようやっと大将のお出ましね」
そう呟いたのは星詠みのオピウム・ラ・トラヴィアータ(放浪の|魅魔《サキュバス》・h06159)。自身が予知した情報を、彼女は気まぐれに他の√能力者に語って聞かせる。
「ほら、あそこ。見えるかしら?」
指さした先にあるのは「湯島聖堂」。元禄三年(1960年)に徳川綱吉将軍の命で建てられた、儒学の祖・孔子を祀る霊廟である。かつては幕府の学問所であり、現在も多くの受験生が合格祈願に訪れる史跡だが、そこは今混沌の如く姿を変える迷宮と化していた。
「大妖『禍津鬼荒覇吐』は、あの『魔空湯島聖堂』の中にいるわ」
王劍『|明呪倶利伽羅《みょうじゅくりから》』の使い手にして|秋葉原荒覇吐戦《あきはばらあらはばきのいくさ》を引き起こした元凶。その正体はこの星に神話が生まれる前より存在したとされる『無形なる原初が神』の一柱だという。
「御大層な肩書きね。けど、それに釣り合うだけの力はありそう」
全盛期から大きく弱体化し、古妖の1体として認識されていた禍津鬼荒覇吐だが、王劍戦争で本来の姿に戻り、単独で「ジェミニの審判」を執り行う程の神力を取り戻した。戦争終盤に新たな王劍執行者に覚醒する簒奪者が現れたのも、おそらく彼の影響だろう。
「このままもう少し力を取り戻せば、『全範囲・全対象・無限回復』なんて√能力も使えるそうよ」
敵も味方も無差別に回復する、戦場では使い所に悩む√能力だが、禍津鬼荒覇吐はそれを使って秋葉原にいる全勢力を回復させ、戦争を延々と継続させるつもりだ。戦という「宴」が続けば続くほど、彼の神力は満たされていくのだ。
「この乱痴気騒ぎにも飽きてきたし、そろそろ終わらせて欲しいわね」
真なる神力を取り戻す前に禍津鬼荒覇吐を討てば、秋葉原荒覇吐戦は終結する。しかし相手はあの『マガツヘビ』さえ遠く及ばない完全存在で、かつ戦争前にも幾度かEDENの√能力者と交戦している。
「つまり、あなたたちは舐められてるってことよ」
EDENの力を見切ったつもりでいる禍津鬼荒覇吐は、自らがEDENに倒される事など微塵も想像していない。「完全存在」であるが故の驕りが、彼奴を討伐する上で重要なポイントになる。
「あとは地の利を得ることね。迷宮攻略なら慣れてる子もいるでしょう?」
迷宮化した魔空湯島聖堂は常に姿を変え続けるため、決まった形というものはない。
つまり禍津鬼荒覇吐も把握できないので、これも利用すれば戦闘を有利に運べそうだ。
「これが祭りの終わりになるか、次の祭りの始まりになるかは、あなたたち次第ね」
それ以上助言する気はないようで、オピウムは湯島聖堂に向かう√能力者らを見送る。
これが秋葉原荒覇吐戦の最終決戦。いにしえより存在する神の宴から、√EDENを守り抜けるのか。
マスターより
戌こんにちは、戌です。
今回のシナリオは秋葉原荒覇吐戦の第三戦線、大妖『禍津鬼荒覇吐』との決戦です。
このシナリオでは下記のプレイングボーナスに基づいた行動を取ると判定が有利になります。
プレイングボーナス:迷宮化した湯島聖堂を攻略・利用して戦う/禍津鬼荒覇吐が「完全存在」である事を利用する。
禍津鬼荒覇吐は『無形なる原初が神』の一柱であり、過去の交戦を通じて√EDENを守る√能力者たちの力を見切っています。
しかし完全である事が逆に油断となり隙を生むこともあるでしょう。また、戦場となる「魔空湯島聖堂」は混沌の如く姿を変える迷宮と化しており、この環境を利用することでも戦いを有利に進められます。
彼の討伐に成功すれば、秋葉原荒覇吐戦はEDENの勝利です。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
116
第1章 ボス戦 『大妖『禍津鬼荒覇吐』』
POW
アラハバキクリカラノオオダチ
【原初の神力】を纏う。自身の移動速度が3倍になり、装甲を貫通する威力2倍の近接攻撃「【荒覇吐倶利伽羅之大太刀】」が使用可能になる。
【原初の神力】を纏う。自身の移動速度が3倍になり、装甲を貫通する威力2倍の近接攻撃「【荒覇吐倶利伽羅之大太刀】」が使用可能になる。
SPD
ウマシアシカビノウタゲ
半径レベルmの指定した全対象に【無形なる原初の神の神力】から創造した【不完全な√能力】を放つ。命中した対象は行動不能・防御力10倍・毎秒負傷回復状態になる。
半径レベルmの指定した全対象に【無形なる原初の神の神力】から創造した【不完全な√能力】を放つ。命中した対象は行動不能・防御力10倍・毎秒負傷回復状態になる。
WIZ
トコアマツホムラツヅリ
自身を攻撃しようとした対象を、装備する【王劍『明呪倶利伽羅』】の射程まで跳躍した後先制攻撃する。その後、自身は【原初の神力に満ちた陽炎】を纏い隠密状態になる(この一連の動作は行動を消費しない)。
自身を攻撃しようとした対象を、装備する【王劍『明呪倶利伽羅』】の射程まで跳躍した後先制攻撃する。その後、自身は【原初の神力に満ちた陽炎】を纏い隠密状態になる(この一連の動作は行動を消費しない)。
プラチナ・ポーラスタ|魔法少女《シスター・ジャスティス》見参!
戦う前に神様の正義を問うわ。
只人の私には分からないかも…。
『霊銃』で二・三発撃ち込むけど、これは敵わない…反撃される前に脱兎の如くダッシュで逃げるわよ。
騙し討ちは性分じゃないけど本当に敵わないし、地の利を活かすのは戦術よ。
混沌な迷宮に逃げ込みウタゲの的を絞らせないようにするわ。
うっかり鉢合わせしたら攻撃を咄嗟の一撃で撃ち落としてまた逃げる。足を止めちゃダメ…継戦能力と、足が攣っても根性で走る。
迷宮が幸運なことに私を荒覇吐の背後に導くまで走る。
背中から攻撃は気が引けるけど【凄凛】で貫くわよ。
王劍なんて他人の力を借りている人に卑怯とは言われたくないわね…
「|魔法少女《シスター・ジャスティス》見参!」
混沌の迷宮と化した湯島聖堂に、颯爽と降り立ったのはプラチナ・ポーラスタ(『|正義《ジャスティス》』の|魔法少女《タロット・シスターズ》・h01135)。魔法少女の姿に変身している今は「シスター・ジャスティス」が通り名だ。
「教えて神様。あなたの正義は何?」
戦いを始める前に、彼女は『禍津鬼荒覇吐』の正義を問う。この星に神話が生まれる前より存在したとされ、無形なる原初が神とも称される大妖怪が、此度の戦争を引き起こすした理由を。
「正義だと? くだらぬ。俺の『宴』にそんなものは不要。殺し合い、血を流し、この地が阿鼻叫喚で満ちるほどに、俺の神力も満たされるのだ」
ただ"力"のみを重んずる荒覇吐に、正義だの悪だのは無意味な価値観に過ぎなかった。
彼の最終目的は、自らの神力を取り戻し、この戦争という名の『宴』を永遠に続けさせること。全範囲・全対象・無限回復というふざけた√能力があれば、その望みも叶う。
「只人の私には分からないかも……」
「ならば貴様も『宴』の贄となれ!」
修羅道としか表現しようのない望みに忌避感を示すプラチナの前で、荒覇吐は【ウマシアシカビノウタゲ】を発動。今はまだ不完全とはいえ、無形なる原初の神力を解き放つ。
「このっ」
「ははは! こそばゆいわ!」
霊銃「Sister's High」で二・三発撃ち込んでみても、荒覇吐にはかすり傷しか与えられない上、そのダメージもすぐに治癒してしまう。ただでさえ完全存在と称される相手に、回復まで使われては手の出しようがない。
「これは敵わない……」
「どうした、もう終わりか!」
反撃される前に、プラチナは脱兎の如くダッシュで逃げだした。無論、ここまで来ておいてみすみす逃がしてもらえるとは思っていない。わざと背を見せ、追ってきたところを返り討ちにする算段だ。
(騙し討ちは性分じゃないけど本当に敵わないし、地の利を活かすのは戦術よ)
絶えず変化し続ける混沌の迷宮に逃げ込み、【ウマシアシカビノウタゲ】の的を絞らせないようにするプラチナ。あの神力を受けると回復と引き換えに行動不能に陥るため、おそらく死ぬこともできずに延々殴られる羽目になる。
「見つけたぞ、小娘!」
「くっ、ツイてない」
うっかり迷宮と本人と鉢合わせすれば、荒覇吐は喜々として『明呪倶利伽羅』を振るう。怨に満ちた王劍の攻撃を、プラチナは咄嗟に霊銃で撃ち落としてまた逃げる。真っ向勝負では到底勝ち目はないと、悔しいが認めざるを得なかった。
(足を止めちゃダメ……)
捕まれば死ぬよりひどい目にあう、地獄の鬼ごっこを続けるプラチナ。継戦能力には自信があるし、足が攣っても根性で走る。諦めなければきっとチャンスは訪れると信じて。
「ぬう、見失ったか。逃げ足だけは早いやつよ!」
湯島聖堂をこんな有り様にした荒覇吐本人も、迷宮の変化を把握している訳ではない。
ゆえに獲物を追っている間に自分が道に迷うこともあるし――たまたま運よく、追われていた獲物が彼の背後に導かれることもある。
「信じる正義を貫き通すために」
背中から攻撃なんて気が引けるけれど、この幸運を逃すわけにはいかない。プラチナは凛剣「Platinum Heart」を抜き、その刃に魔力と「正義の意志」を注ぎ込み、【凄凛】|正義の剣戟《ヒロインズ・セイバー》を発動する。
「輝け私のPlatinum Heart!」
「なにッ……ぐおッ!!」
光り輝く正義の『凛剣』に変形したレイピアが、凛とした白金の魔力軌跡を描いて敵の背中を貫く。正々堂々とはとても言えない不意打ちだが、覚悟を決めて放った一撃に曇りはなかった。
「おのれ、卑怯な真似をしてくれるではないか!」
「王劍なんて他人の力を借りている人に卑怯とは言われたくないわね……」
不本意な形で背中に傷を負った荒覇吐が、怒りの形相で振り返る。戦意喪失させられるほどのダメージは与えられなかったが、完全存在とてダメージを受けない訳ではないと分かった。毅然とした態度で怒号に言い返し、正義の魔法少女は剣を構え直す――。
🔵🔵🔵 大成功
マルザウアーン・ノーンテッレト◎アレンジ・連携大歓迎です!
ただ見ているだけでも分かる、圧倒的な力……これが大妖・禍津鬼荒覇吐……!
だが、恐れてなどいられない。立ち向かわねば、此処は永遠に闘争の続く地獄となってしまう……
そんなことにはさせんッ!!
オピウムさんの星詠みに曰く、彼は随分と我々√能力者を下に見ているようだ。
未熟なオレなど歯牙にも掛けぬだろう。
ならば、その隙を突かせてもらうッ!
彼の死角に壁がくる位置へ移動し、力を溜めた怪力でその壁をぶち破って強襲する!
不意をついて武器落としに成功すれば御の字、次いで手を休めずに全力の√能力で攻撃する……!!
失敗も、反撃を受けることも恐れない!
此処で必ず倒して、この宴を終わらせるッ!!
「ただ見ているだけでも分かる、圧倒的な力……これが大妖・禍津鬼荒覇吐……!」
ついに姿を現した『秋葉原荒覇吐戦』の大将に、マルザウアーン・ノーンテッレト(銀の星・h08719)は戦慄する。ただの妖怪や人間とは文字通り格の違う、禍々しき神力に息が詰まりそうだ――だが、恐れてなどいられない。
「立ち向かわねば、此処は永遠に闘争の続く地獄となってしまう……そんなことにはさせんッ!!」
禍津鬼荒覇吐が神力を取り戻すまでの猶予は残り少ない。全範囲・全対象・無限回復が始まれば、これまで√能力者たちが重ねてきた戦果も全て水の泡。どれほど敵が強大であろうと、今ここで討たねばならぬのだ。
(オピウムさんの星詠みに曰く、彼は随分と我々√能力者を下に見ているようだ)
未熟なオレなど歯牙にも掛けぬだろうと、マルザウアーンが敵の動きを観察した通り。
他の√能力者との「宴」に興じている荒覇吐は、こちらから仕掛けぬ限り見向きもしない。過去の交戦を通じて、√EDEN側の戦力を見切ったつもりでいるようだ。
(ならば、その隙を突かせてもらうッ!)
心の中で強く意気込みながら、彼は「銀狼の籠手」を装着した拳を握り、移動を行う。
刻一刻と形を変え続ける迷宮・魔空湯島聖堂。その造りは荒覇吐も把握しておらず、奇襲にはもってこいの環境だった。
「ここだなッ!」
荒覇吐の死角に壁がくる位置へ移動したマルザウアーンは、全身の筋肉が隆起するほど力を溜め――ありったけの気魄を込めて拳を叩きつける。まさか壁をぶち破って強襲してくる敵がいるとは、向こうも予想していまい。
「なにッ?! 誰だ貴様は……!」
爆発物でも用いたように弾け飛ぶ壁。不意を突かれた荒覇吐が振り向くよりも速く、狼獣人の剛拳は彼の手から「明呪倶利伽羅」を叩き落とした。放物線を描いた王劍が、反対側の壁に深々と突き刺さる。
「名乗るほどの名はないッ! 押し通るッ!」
首尾よく武器落としに成功したマルザウアーンは、次いで手を休めずに√能力を発動。鍛錬の結晶たる鉄拳と習熟した技能を駆使した【|百錬自得拳《エアガイツ・コンビネーション》】で、荒覇吐に連続攻撃を仕掛けた。
「ぬかったわ! 俺としたことが!」
不意打ちとはいえ戦闘中に武器を手放したのは、不覚としか言いようがないだろう。
荒覇吐は原初の神力を纏って自己強化を行うが、王劍が手元にない状態では必殺の【|荒覇吐倶利伽羅之大太刀《アラハバキクリカラノオオダチ》】は繰り出せない。
「まだまだいくぞッ!」
「犬っころめが、舐めるなよ!」
凄まじい手数で連撃を続けるマルザウアーンに、荒覇吐はやむなく徒手空拳で応戦。
いくら武器がないとはいえ相手は原初の神、身一つであっても圧倒的な暴威を誇る。だがマルザウアーンは失敗も、反撃を受けることも恐れない。
「此処で必ず倒して、この宴を終わらせるッ!!」
一度殴られれば倍殴り返す。技の引き出しが尽きるまで彼が攻撃を止めることはない。
永遠の闘争を欲する大妖に、永遠の滅びを。まっすぐな正義感と鍛え上げた肉体が、禍々しき神を迷いなく打ちのめす――。
🔵🔵🔵 大成功
アヤメイリス・エアレーザーこの混沌の如く姿を変える迷宮に、完全存在……
鹵獲王劍の概念と、其れを本来の鹵獲者とは別人物が√能力で引き出す――鹵獲王劍とは『EDENが全員で共有しており、直接鹵獲したEDENが代表者となる』のが本質みたいね
だから――こういう事も出来る
鹵獲王劍『アンサラー』の力を宿す弾丸――妾の√能力を、黒き瘴気の弾丸として射出
完全存在さん?……自慢の王劍、別の王劍とは言え――王劍を握るのは王権執行者の特権じゃないのよ
そうしてブラフを張りながら渾沌なる迷宮に身を隠し、奇襲を仕掛ける
王劍の本質を全く使えないと侮るかしら?その通り
――だから、こんな奇襲を受ける
渾沌の迷宮から飛び出し、大妖の後頭部に弾丸を叩き込む!
「この混沌の如く姿を変える迷宮に、完全存在……」
無形なる原初が神の一柱を名乗る通り、これまでアヤメイリス・エアレーザー(未完成の救世主・h00228)が遭遇した簒奪者の中でも『禍津鬼荒覇吐』は別格だった。だが、こちら側にも切り札はある。
「鹵獲王劍の概念と、其れを本来の鹵獲者とは別人物が√能力で引き出す――鹵獲王劍とは『EDENが全員で共有しており、直接鹵獲したEDENが代表者となる』のが本質みたいね」
√EDENを防衛する√能力者たちは、すでに一度王権決死戦を制し、王劍の鹵獲に成功している。簒奪者のように王劍の力をフルパワーで引き出せるわけではないが、ごく限定的な運用においてはアヤメイリスにも使用権があった。
「だから――こういう事も出来る」
地球に重なり合う√の特性を『属性』として魔弾に変換する「√の魔弾銃」。その弾倉にアヤメイリスは鹵獲王劍『アンサラー』の力を宿す弾丸をセットする。あえて脅威を見せつけるように、敵の目の前で。
「我が弾丸は救世の御業。失われし戦いの果てに楽園が手に入れた応報の刃。その漆黒を弾丸とする事で根源を掌握する」
√能力【|根源の弾丸は原初の応報刃を励起させる《ルートバレット・アンサラー》】。黒き瘴気の弾丸が射出され、周囲を侵蝕し破壊する。執行者の手にあった時ほどの威力はないが、それは紛れもなく王劍の力であった。
「なんだとッ……この力は!」
王権執行者にして現在も『明呪倶利伽羅』を掌握中の禍津鬼荒覇吐が、よもや気付かないはずがない。√EDENの√能力者に対しては余裕の態度を取っていた彼が、その弾丸からは警戒した様子で距離を取った。
「完全存在さん? ……自慢の王劍、別の王劍とは言え――王劍を握るのは王権執行者の特権じゃないのよ」
不敵な笑みを浮かべながら、瘴気に紛れて迷宮の影に消えていくアヤメイリス。実際のところ彼女は王劍を掌握している訳ではないので、執行者の特権を揺るがすほどとは言い難い。しかしブラフを張るのも戦術の一環だ。
「フン……王劍の力の切れ端を使えたところで、虚仮威しに過ぎんわ!」
されど流石に相手は原初の神、ハッタリが簡単に通じるほど間抜けではない。迷宮に身を隠したアヤメイリスを追うよりも、彼は他の√能力者との戦闘を優先した。実質の脅威としてはそちらの方が上だと判断されたのだ。
「王劍の本質を全く使えないと侮るかしら? その通り」
それは、なまじ王劍の真の力を知っているからこその油断と言えよう。事実、敵の王劍と正面から打ち合えばアヤメイリスの勝算は低い。先程の挑発やブラフは、結果的に彼我の実力差を教えることになってしまった。
「――だから、こんな奇襲を受ける」
「なにッ?! 貴様、いつの間にそんな所に!」
混沌の迷宮からアヤメイリスが飛び出した先は、先程までいた場所とは真逆。迷宮の変化は誰にも読めないとはいえ、もう少し警戒していればみすみす背後を取られなかったものを。
「喰らいなさい!」
「ぐおぉッ!!」
慌てて振り向く間もなく、瘴気の弾丸が後頭部に叩き込まれ、大妖が吠える。いくら正規の王劍に劣るとはいえ、クリーンヒットした場合のダメージは無視できない。EDENに鹵獲された「アンサラー」の力が、禍津鬼荒覇吐を蝕んでいく――。
🔵🔵🔵 大成功
リリンドラ・ガルガレルドヴァリス【兎竜】
強い力を持つ神なら人助けに力を使って欲しいものだけれど、ままならないものね。
もうすぐ年の瀬なのよ、ゆっくりする為にもこの戦争は早々に終わらせたい。
というわけで今回は大事な友達と共闘させてもらうわ。
禍津鬼荒覇吐をさっさと討伐して襠とお茶会でチアーズとしゃれこみたいわ。
【行動】
迷宮の案内は同行者の襠に任せて、わたしは第六感を用いた危険感知にあたるわ。
トラップも要警戒、一応相応のサバイバル知識はあるから自然地形の違和感位なら感じ取れるかも。
戦闘にて変身能力で注意を襠が引いてくれるなら、こちらは火力に全振りした攻撃で対応するわ。
正義剣舞を使用しリリンドラ式屠竜舞踏剣術にて華麗に舞い、敵を討つ!
梅枝・襠【兎竜】
迷宮だ!迷宮だ!
早く攻略しないと女王さまが追ってくるかもしれない!追ってくる!?このあたしを?そんなわけないよね、リリガルちゃん。世間はいつだって乾杯に溢れてる。
迷路は死霊に先行させて探らせよう。 見つかってジャムにされても死んでるから問題ない。死人に口なし!!
荒御魂を発見したら死霊全部ぶつけよう。
そんじゃ、リリガルちゃん乾杯!
あたしが先に行くよう。
攻撃は小槌でジャストガード、もしくはネズミに変身して小さくなって躱そう。あたしがネズミ!?そんなわけないだろ!小槌を振るったタイミングで、巨大ティーポットに変身!
視界を遮ったら、後は可愛い子が話題を変えてくれるとも!
「強い力を持つ神なら人助けに力を使って欲しいものだけれど、ままならないものね」
原初の神という壮大な肩書ながら、戦乱と破壊を招くしか能がなさそうな『禍津鬼荒覇吐』に、リリンドラ・ガルガレルドヴァリス(ドラゴンプロトコルの屠竜戦乙女《ドラゴンヴァルキリー》・h03436)は眉をひそめる。正義を貫き悪を砕くがモットーの彼女としては、絶対に見過ごせない相手だ。
「もうすぐ年の瀬なのよ、ゆっくりする為にもこの戦争は早々に終わらせたい。というわけで今回は大事な友達と共闘させてもらうわ」
「迷宮だ! 迷宮だ!」
彼女に呼ばれてやって来た梅枝・襠(弥生兎・h02339)は、混沌の如き迷宮と化した「魔空湯島聖堂」に大興奮。彼女のテンションが高いのはいつものことなので、驚くほどではないかもしれないが。
「早く攻略しないと女王さまが追ってくるかもしれない! 追ってくる!? このあたしを? そんなわけないよね、リリガルちゃん。世間はいつだって乾杯に溢れてる」
「ええそうね。禍津鬼荒覇吐をさっさと討伐して襠とお茶会でチアーズとしゃれこみたいわ」
友達というだけあってリリンドラは襠の扱いには慣れているようで、取り留めのない話にも調子を合わせている。それでますます気を良くした襠は、眷属(?)の|死霊《ザクロ・パイ》に迷宮を先行させる。
「見つかってジャムにされても死んでるから問題ない。死人に口なし!!」
元が死んだザクロを煮詰めてジャムジャムしたモノなので、扱いの方もぞんざいだ。
ピクニックのような足取りで死霊を追っかける襠を、さらに後ろからリリンドラが追う。死者と化け兎と竜乙女の異色パーティだ。
「迷宮の案内は襠に任せておけば安心ね」
本当に安心?かどうかはさておき、リリンドラは第六感を用いた危険感知にあたる。
常に安定せず変化し続ける迷宮となれば、トラップも要警戒。冒険者として相応のサバイバル知識はあるので、自然地形の違和感位なら感じ取れるだろう。
「襠、ちょっと止まって」
「えっ、なになに? うわあ落とし穴! こんな所に穴掘った兎は誰? あたし? いいえあたしは無罪です女王様! うっかり不思議の国にご招待されちゃうところだったね、ありがとうリリガルちゃん」
死霊ならスルーできても生身だと引っかかるトラップもある。色んな意味で足元がおぼつかない襠をうまくフォローして、リリンドラたちは魔空湯島聖堂を攻略していく――。
「なんだ、この雑霊どもは?」
湯島聖堂をこんな有り様にした張本人は、迷宮の最深部にいた。先行する死霊は一瞬で握り潰されてしまったが、パーティのお相手を見つけた襠は手持ちの死霊を一斉に投入。
「そんじゃ、リリガルちゃん乾杯!」
「乾杯!」
遮二無二突っ込んではザクロのように弾け飛ぶ死霊たちに続いて、少女たちも切り込みをかける。襠が振りかぶるのは「打出の小槌」、リリンドラが抜き放つのは「正義の屠竜大剣」だ。
「あたしが先に行くよう」
リリンドラよりも一足速く敵と肉迫した襠は、勢い任せに小槌を打ち付けようとする。
しかし禍津鬼荒覇吐は先んじて【トコアマツホムラツヅリ】を発動。兎顔負けの跳躍で間合いを制すると、王劍『明呪倶利伽羅』で先制攻撃を仕掛けてきた。
「子兎が、我に敵うつもりか?」
「敵う敵わないじゃない! やるかどうかだってリリガルちゃんが言ってた! 言ってなかったかも! よし話題をかえようあたしも変わろう」
盗品の小槌でこれをガードするのは難しいと判断した襠は、瞬時にネズミに変身して躱す。どろんバケラーの【|化獣《バケモノ》】なら、この程度の高速変身はお手の物。ネズミに化けるのはあまり得意ではないので、毛並みに泥が付いているが。
「鬱陶しいネズミめ!」
「あたしがネズミ!? そんなわけないだろ!」
小さくなった体を活かしてちょろちょろと走り回る襠を、荒覇吐は【ウマシアシカビノウタゲ】の神力で捕らえようとするが。畏れ知らずの化け兎はネズミから再び人型に戻り――。
「嘘つきだーれだ!」
「ぬぅ?!」
小槌を振るったタイミングで、今度は巨大ティーポットに変身。脈絡のなさに荒覇吐は困惑させられるが、彼女の行動は何もかも考えなしではないし、狂っていてもクレバーである。
「視界を遮ったら、後は可愛い子が話題を変えてくれるとも!」
立ち塞がる巨大ティーポットの影から、飛び出してくるのは正義の屠竜戦乙女。【|正義剣舞《アクノショウサン》】を発動したリリンドラの身体は青色の炎に包まれ、疾風の如き速さを得る。
「ギアを上げるわ!」
「なにっ……貴様は?!」
変身能力で注意を襠が引いてくれるなら、こちらは火力に全振りした攻撃で対応する。
意識と視界の死角から現れた新手には、原初の神とて即応はできない。がら空きになった胴体に、斬撃が入る。
「この後もお茶会の予定が詰まってるのよ、さっさと倒れなさい!」
小柄な体躯に見合わぬ竜の怪力で、対ドラゴン戦闘用の大剣を自由自在に振り回す。
独自に編み出した「リリンドラ式屠竜舞踏剣術」を披露し、戦場にて華麗に舞う戦乙女を、誰が止められるというのか。
「ば、馬鹿な……がはあッ!!」
とうに見切ったと思っていたEDENの連中に、まだこんな奴らが紛れ込んでいたとは。
襠のトリッキーさとリリンドラの勇猛さに圧され、禍津鬼荒覇吐の身体から血飛沫が上がった――。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
ケヴィン・ランツ・アブレイズおいおい、弱体化してなおこの迫力かィ。底が知れないねェ。……まァそれくらいの大物じゃなきゃ、ここまでの大事にはならねェのも確かだがなァ。
はてさて、ヒトに零落したこの身でどこまでやれるかは怪しいモンだが……だからと言って尻尾を巻いて逃げるって択は有りはしねェンだがなァ!
奴さんが慢心してるってンなら、付け入る隙はそこかねェ。
ひとまずは〈盾受け〉〈ジャストガード〉〈エネルギーバリア〉〈激痛耐性〉を最大限に活かして、決定的な一撃だけは喰らわねェようにしつつ、〈重量攻撃〉〈属性攻撃〉〈鎧砕き〉でやり返す。
とは言えこれだけじゃ追い詰められるから、どこかで流れを変えねェとなァ。
となると……コイツを使うしかねェかィ……!
決定的な一撃が来ると〈第六感〉〈戦闘知識〉で読めたら、それに合わせて《ルートブレイカー》を使用し、逆に相手の隙に転換する。
相手の必勝の一撃を凌ぎきったら、満を持して《幻想具象化・真竜顕現》起動。
※竜の姿の時は厳かな口調で
「この力を見せることが貴様へのせめてもの敬意だ! 受けてみよッ!」
「おいおい、弱体化してなおこの迫力かィ。底が知れないねェ」
王劍『明呪倶利伽羅』を掌握し、秋葉原荒覇吐戦を起こした大妖『禍津鬼荒覇吐』。
湯島聖堂にて真の姿を顕した彼は「無形なる原初が神」の肩書きに違わぬ、圧倒的な神威を発していた。
「……まァそれくらいの大物じゃなきゃ、ここまでの大事にはならねェのも確かだがなァ」
√妖怪百鬼夜行のみならず様々な√の簒奪者を巻き込んで、一月に及ぶ戦乱を巻き起こした元凶。かつてない強者と対峙したケヴィン・ランツ・アブレイズ(|“総て碧”の《アルグレーン》・h00283)の口元には、自然と笑みが浮かんでいた。
「はてさて、ヒトに零落したこの身でどこまでやれるかは怪しいモンだが……だからと言って尻尾を巻いて逃げるって択は有りはしねェンだがなァ!」
「ククク、その意気だけは褒めてやろう。貴様の命で『宴』を盛り上げるがいい!」
人竜騎士からの挑戦を、禍津鬼荒覇吐は余裕綽々で受けて立つ。往時の力を取り戻しつつあり、幾度かEDENとも交戦している彼は、ここで自分が敗れる可能性など微塵も想像していない。
(奴さんが慢心してるってンなら、付け入る隙はそこかねェ)
永い時を生きる完全存在であるが故の油断。だがそれは絶対的強者の証明でもある。
一瞬でも気を緩めぬよう戦斧と盾を構えるケヴィンに、神の暴威は容赦なく降り掛かった。
「貴様に見せてやろう、王劍の力を!」
原初の神力を纏った荒覇吐の【アラハバキクリカラノオオダチ】は、ただの刀剣とは比較にもならぬ切れ味を発揮する。ケヴィンは「矜持示す黒騎士の盾」にエネルギーバリアを張って、ひとまずは防御を固める。
「受け損ねたら盾ごとぶった斬られそうだ。やるねェ……!」
騎士として磨いたガードの技術を最大限活かしても、刃筋を多少逸らすだけで限界。
どうにか決定的な一撃だけは喰らわないようにしながら、負けじと「暴竜殺しの黒鉄斧」でやり返す。
「フン。まさに蟷螂の斧だな」
竜の炎を帯びた大斧の重撃は板金鎧も砕く威力を誇るが、原初の神の肉体はそれ以上に強靭だ。ケヴィンがどれほど全力を尽くして戦っても、荒覇吐はまだ余裕を残した様子で追い詰めていく。
(どこかで流れを変えねェとなァ)
戦闘が長引くにつれて負傷も増えていく。いくら彼がタフでも生命力は無限ではなく、苦痛に耐えて粘ってもその先がない。尋常の手段では敗北の結末を変えられないのは明らかだった。
(となると……コイツを使うしかねェかィ……!)
覚悟を決めたケヴィンは、奥の手を出すタイミングを見計らう。焦って仕掛けたところで見切られてしまう、やるとするなら好機は一度きり、向こうが先に仕掛けてきた時だ。
「そろそろ終いにするか。死ね!」
禍津鬼荒覇吐の王劍が、さらに強大な神力を帯びる。決定的な一撃が来ると、ケヴィンの第六感が警鐘を鳴らす。過去の戦闘経験と照らし合わせても、こいつを喰らえば絶対に死ぬ――。
「待ってたぜ、その一撃をよォ」
荒ぶる戦神の「荒覇吐倶利伽羅之大太刀」に合わせて、ケヴィンは【ルートブレイカー】を発動。いかなる√能力も無効化する最強の右手が、禍津鬼荒覇吐の神力を消し去った。
「なにぃッ?!」
荒覇吐もルートブレイカーの存在を知らなかったわけではない。だが、まさかここまで能力を温存していたとは。必殺の一太刀は消去され、逆に荒覇吐自身の隙に転換される。
「竜漿圧力、臨界突破。味方全軍、攻撃範囲からの退避を確認。特殊段階、限定解除承認……」
相手の必勝を凌ぎきれば、ケヴィンは満を持して【|幻想具象化・真竜顕現《ドラゴンプロトコル・イグニッション》】を起動。
一時的に人としての姿を捨て去り、失われた筈の前世の力――真なる竜へと回帰する。
「さあ、俺の逆鱗に触れた代償、高くつくぞ……ッ!」
「なん、だと……まさかこの時代に、真竜が!?」
真竜としてのケヴィンの姿は、深い緑色の鱗纏う巨竜。故に銘は“|総て碧《アルグレーン》”。紀元前の時代に去ったはずの存在が目の前に降臨し、禍津鬼荒覇吐も驚愕を隠せない。過去に|竜《ドラゴン》の実物を知っているからこそ驚きも尚更だ。
「この力を見せることが貴様へのせめてもの敬意だ! 受けてみよッ!」
真竜”総て碧”は厳かな口調で禍津鬼荒覇吐に告げ、咆哮と共に必殺のブレスを放つ。
実体・霊体問わず灼き尽くす純粋なエネルギーの奔流が、無形なる原初が神に襲い掛かった。
「見かけだけの虚仮威しではない、だと……ぐおおぉぉぉぉぉッ!!!!?」
この威力は紛れもなく、荒覇吐が知るかつての真竜と同格。よもや現代の√EDENで見えるはずのなかった存在に、彼は予想外の不覚を取った。混沌たる魔空湯島聖堂に、神の絶叫が木霊する――。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
天國・巽【龍鋏】
「まさか荒覇吐がそんな御大層な野郎だったとはね」
何度も戦った顔を思い浮かべる
奴が憶えてるかはさて置き
何故か気になる、無形なる原初が神という言葉を胸に
霊剣鍔鳴の導きを使い、迷宮を攻略する
長さは1m余り
握った拳に防護の鉄輪、|猿臂《肘》を打てばその刃が突き刺さろう姿
「あいヨ、任された」
途中、合流した藍花を左手に先へ
敵は
SPD技で閉じ込め
POW技でかく乱、攻撃
近付けばWIZ技を使用すると予想
物理法則も無視する戦場では
空中移動と帰神法 応龍で対処
だが強敵の攻撃に接近もままならならず
見切り、龍鱗自在で防御しつつ迷宮の法則を探る
なに奇妙建築は見慣れたもんだ
「よし見切った。……そろそろ、お前さんの"本当の刃"みせてやるかィ?」
藍花の呟きに乗じ
空中移動にダッシュを交え
緩急つけて右へ左へ
「いくらそっちが完全でも所詮は一人――こっちは二人だ、なァ藍花」
傍の襖に飛び込む
出先はドンピシャ荒覇吐の背後
それでも飛んで来る先制攻撃に
「だよな?」
龍鱗解除
攻撃を藍花で上段へ弾いた
瞬間
懐へ
切落
肘と刃を腹へ突き立てる
蓬平・藍花【龍鋏】
初めて誰かを害することに震える指先を止められないボクよりも
|ボク《糸切鋏》を上手く使えそうな共闘相手の大きな手の小指に手を添え、詠唱を呟き
陰陽師にも似た狩衣に歩く度に裾から花弁が舞う袴の形振りから
【付喪転変の儀】で変身した|本体《糸切鋏》を巽くんへと託し
「|ボク《糸切鋏》の|腕《間合い》は、こんなにも短いのだから⋯届かなければ怖くないはずだもの、ね?」
ひとりでは立ち向かえなかった相手へと
煽るように実体を持たぬ姿で、ふわりと笑う
辿り着くまでの間
『Kokoo|⋯koko⋯kokko⋯《篝火を全部集めましょ》kokoon⋯』と囁き謳う【螢火之導】
幾重にも咲き誇り続ける螢石に似た睡蓮たちは
彼を守り、彼の一打を繋ぐ架け橋になるはずだから
対峙し大見栄を切る彼には小さく笑って頷いて
刃先が敵に当たる感触に併せ『シャキリ』と呟くと
巽くんの攻撃に上乗せされたボクの霊力が零距離からの衝撃波として飛んでいく
実際に切られた感覚が敵を貫き付与される『不運』が
誰かを助ける『幸運』に繋がれば良い、と希う
「まさか荒覇吐がそんな御大層な野郎だったとはね」
まだ正体が判明する前、何度も戦った顔を思い浮かべる。『荒覇吐童子』時代の奴は実力も立場もあくまで有力な古妖の一角に過ぎなかったが、王劍を掌握した奴は以前とは桁違いの神力を得ている。
(奴が憶えてるかはさて置き)
何故か気になる「無形なる原初が神」という言葉を胸に、天國・巽(同族殺し・h02437)は湯島聖堂の攻略を開始する。荒覇吐の神力にあてられ混沌の如く変容した聖堂はまさに迷宮だが、彼には霊刀「鍔鳴」の導きがある。
「さあて、神さんはどこにおわすかな」
鍔鳴りの音で使い手を怪異に導くという、霊刀の長さは1m余り。握った拳には防護の鉄輪を着け、猿臂を打てばその刃が突き刺さろう姿。これから修羅場に向かうにしては、余裕のある所作で歩を進める。
「おや? 来てたのかい」
「あっ。巽くん」
その道中で偶々出くわしたのは見知った顔。振り返った蓬平・藍花(彼誰行灯・h06110)の表情は、深い憂いと微かな恐怖を帯びていた。他者を傷付けることを好まぬ彼女が、このような所にいるのは珍しい。
「丁度良かった……巽くん、ボクを使ってくれる?」
敵の恐ろしさよりも、初めて誰かを害することに震える指先を止められない自分よりも、もっと上手く使えそうな彼に、藍花は|本体《ボク》を託すことにした。巽の大きな手の小指に手を添え、詠唱を呟く。
「悪き縁を断ち、良き縁を結ぶ……敵に厄を、貴方に益を結びましょ……?」
陰陽師にも似た狩衣に、裾から花弁が舞う袴を纏った、ビスクドールのような女子――人の世で生きるための姿から、【|付喪転変の儀《メタモルフォーゼ》】により真の姿へ。藍染の組紐と房飾りをあしらった、年代物の糸切鋏が巽の手に収まる。
「あいヨ、任された」
変身した藍花を左手に、巽はさらに先へと進む。付喪神とは世界創世に関わる「八百万の神々」が器物に魂を宿した存在。無形なる原初が神に挑むにあたって、この上なく頼もしい加護を得た。
『|Kokoo⋯koko⋯kokko⋯kokoon⋯《篝火を全部集めましょ》』
巽の手で敵の元に運ばれるまでの間、藍花は【螢火之導】を囁き謳う。一節紡ぐたびに一輪、螢石で出来た睡蓮を模した花が、彼女らの傍らでふわりと咲く。ひとつひとつは儚くとも、其れはきっと巽を守り、彼の一打を繋ぐ架け橋になるはずだ。
「ほう。次に『宴』に華を添えるのは貴様らか」
かくして迷宮の最深部に辿り着くと、大妖・禍津鬼荒覇吐は修羅の笑みで出迎える。
挨拶代わりに発動するのは【ウマシアシカビノウタゲ】。無形なる原初の神力が、無差別なる癒やしと引き換えに敵を閉じ込めんとする。
「うつるとは 月もおもはず うつすとは 水もおもはぬ 己が身の内」
巽は直ちに【帰神法 応龍】を発動。 太古の神霊を身に纏い、疾風の如く空を駆ける。
龍の力を限定的に取り戻した彼の動きを捉えることは容易ならず。神力の波動は虚しく空を切る。
「龍の力か。だが、俺がかつて見た|竜《ドラゴン》に比べれば蜥蜴のような非力さよ!」
その程度であれば恐るるに足らずと、禍津鬼荒覇吐は【アラハバキクリカラノオオダチ】で追撃。原初の神力を纏った彼は文字通りの”神速”で、かく乱と攻撃を仕掛けてくる。
「巽くん、大丈夫?」
「心配無用……と言いたいが、流石になァ」
巽が以前戦った時とは完全に別物だ。あわや叩き斬られそうになるところを、藍花の造った螢石の睡蓮が盾となる。幾重にも咲き誇り続ける幻想花たちは、この時のために用意したものだ。
「ならば総て散らしてくれるわ!」
荒覇吐はさらに王劍『明呪倶利伽羅』を振るい、螢石の幻想花を砕き散らしていく。
強敵の猛攻に巽たちは接近すらままならないが、焦燥に駆られることなく見切りに徹し、被弾を龍鱗で防ぎながら迷宮の法則を探る。
「なに奇妙建築は見慣れたもんだ」
物理法則すら無視する戦場では、先にルールを把握した者が優位に立てる。湯島聖堂をこんな有り様にした禍津鬼本人も、変化を把握していないらしい。となれば巽にとっての優先事項は、この空間を味方につけることだ。
「よし見切った。……そろそろ、お前さんの"本当の刃"みせてやるかィ?」
戦闘を始めてから1分足らず。迷宮の法則を理解した巽は、意味深な調子でささやく。
すると左手の糸切鋏から藍花の人間態が幻となって現れ、ほころぶ口元を袖で隠す。
「|ボク《糸切鋏》の|腕《間合い》は、こんなにも短いのだから……届かなければ怖くないはずだもの、ね?」
「ほう……? 大口を叩いたものだな、ガラクタ風情が!」
ひとりでは立ち向かえなかった相手へと、実体を持たぬ姿で煽るようにふわりと笑う。
これには禍津鬼荒覇吐も癇に障ったか、挑発だと分かった上で敢えての前進。対する巽は彼女の呟きに乗じ、ダッシュを交えた空中移動で、緩急つけて右へ左へ。
「いくらそっちが完全でも所詮は一人――こっちは二人だ、なァ藍花」
大見栄を切る巽に、小さく笑って頷く藍花。激しさを増した敵の攻勢を凌ぐため、残りの幻想花を全て迎撃に費やし。王劍に斬り捨てられる寸前で、傍の襖に2人で飛び込んだ。
「よし、ドンピシャ」
「なにッ?!」
飛び出した先は荒覇吐の背後。偶然ではなく、空間の歪みを読み切った巽の戦略だ。
完全に不意を突かれた荒覇吐だが、それでも瞬時に【トコアマツホムラツヅリ】を発動。すでに攻撃体勢を整えていた巽を上回る速さで、先制攻撃が飛んでくる。
「だよな?」
しかし、それさえも――荒覇吐の行動パターンは、最初から全て巽の読み通りだった。
肌の龍鱗を解除した彼は『明呪倶利伽羅』の刺突を藍花の刃で合わせ、摺り上げる。怨嗟の王劍を糸切鋏の付喪神が上段へと弾いた瞬間、敵の懐へ。
「切り結ぶ刃の下こそ地獄なれ 踏みこみみれば後は極楽」
其は後の先の極み、【御之破一刀流極意 切落】。がら空きになった荒覇吐の腹に、肘と刃を突き立てる。刃先が敵に当たる感触に併せ、藍花が『シャキリ』と呟けば、巽の攻撃に付喪神の霊力が上乗せされた。
「が、ぐはああっぁッ!!!?!」
実体ある刃の斬撃に加えて、零距離で放たれた霊力の衝撃波が、原初の神を切り裂く。
実際に切られた感覚に貫かれ、絶叫悶絶する荒覇吐。龍の剣豪と糸切鋏の付喪神の連携技は、物理的な傷だけでなく、決して祓えぬ『不運』を彼に刻み込んだ。
(この『不運』が、誰かを助ける『幸運』に繋がりますように)
仮に不運が発動しても、敵も味方もそれを些細な偶然としか思わないかもしれない。
だからこそ、それは禍津鬼荒覇吐に致命傷をもたらす一手になるやもしれない。誰かがその「一手」に届きうるよう、藍花は密かに希うのだった――。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
ルミナス・オーガ
マスターちんあなご〜!
と敵を見つけて自転車に乗り突撃するマスターちんあなご達
敵の√能力は第六感でウマシアシカビノウタゲの発動タイミングを感知し能力範囲外から拳銃で攻撃するように他のマスターちんあなご達に指示する(行動不能になっても天照と自分が動ければ問題ないから)オーラ防御発動しておき被弾を防ぎつつ迷宮化した湯島聖堂を利用して敵の死角に回り込む
そして√能力を使用し天照と融合して出番は終わりです。
緋村・天照ルミナス・オーガ
天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅…大妖・禍津鬼荒覇吐、潰す!
無形なる原初が神の一柱を見つけて刀を引き抜く
SPDで判定
今回はマスターちんあなご達に任せる…
今回は第六感を使用し迷宮で敵の死角を目指して行動し見切りで敵の√能力の範囲外を行くようにする
必殺、マスター能力…ギガトン・ハンマーァァァ!
鬼神の轟鎚の防御無敵貫通、極大威力と敵を引き寄せる力を使用し敵の頭を殴り飛ばす
お前達、古妖を倒す為なら手段は選ばない!宝天虹道流…奥義!宝天無限剣!
回転の力で実体を持つ4体の残像と共に四方八方から敵を斬り裂いた
「天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅天誅……」
鬼気迫るという表現も生温いほどの殺気を帯び、魔空湯島聖堂に殴り込みをかけたのは緋村・天照(流浪人アマテ…今日は何処へ行く?・h06134)。かつて古妖達に大切な飼い主を殺され、故郷の√を滅ぼされた彼女は、それ以来仇討ちの為に刃を磨いてきた。
「大妖・禍津鬼荒覇吐、潰す!」
「ほう! 獣にしては良い殺気だ!」
そんな彼女が戦乱の宴に興じる「無形なる原初が神」の一柱を見つければ、即座に刀を引き抜き斬り掛かる。対する『禍津鬼荒覇吐』は愉悦の笑みを浮かべ、王劍『明呪倶利伽羅』を抜いた。
「マスターちんあなご〜!」
強大な王権執行者と戦うにあたって天照は1人で来たわけではない。ヒトでも妖怪でもない不思議生物、マスター・ちんあなご(オーガ・ディザスターの仲間達・h06569)が自転車に乗って、群れをなして突撃を仕掛ける。
「なんだ、こやつらは? 宴の邪魔をするな!」
太古の時代から生きる禍津鬼荒覇吐でも、こんな珍妙な存在は知らないようで、鬱陶しそうに【ウマシアシカビノウタゲ】を発動。いまだ不完全な無差別治癒の√能力で、ちんあなごを拘束しようとする。
「マスターちんあなご~!」
√能力発動のタイミングを第六感で察知したマスターちんあなごは、一緒につれてきた同族に、能力範囲外から攻撃するように指示した。人型に変身したちんあなごたちは鬼形の拳銃を抜き、数にものを言わせてバンバンと乱射しまくる。
「今回はマスターちんあなご達に任せる……」
その弾幕に紛れるように、天照も荒覇吐の√能力の範囲外へ。怒りを抑えきれないのは事実だが、我を失っては勝てる戦も勝てなくなる。無策で正面から突っ込んでも敵わないことは、彼女も分かっていた。
「しつこい奴らめ、散れ散れ!」
ただの通常攻撃では豆鉄砲と大差ないか、ちんあなごの弾幕を荒覇吐は剣で切り払い、神力で無力化していく。当初は10匹以上はいた不思議生物の群れは、あっという間に全員行動不能に。
「マスターちんあなご~!」
「ぬうっ?! こいつ、まだ……」
「覚悟しろ!」
だが、同族の指令役となっていた1体のマスターちんあなごは、オーラで被弾を防ぎながら、天照と共に荒覇吐の死角に回り込んでいた。迷宮化した湯島聖堂の構造変化を、巧みに利用したのだ。
「マスターちんあなご~!」
千載一遇の好機を得たマスターちんあなごは√能力を発動。Ankerである天照と融合し、一時的に√能力者化させた上で「鬼神の轟鎚」を与える。手元に出現した巨大な槌を、彼女は力いっぱい振りかぶり。
「必殺、マスター能力……ギガトン・ハンマーァァァ!」
「ごがはぁァッ!?!!」
振り下ろした瞬間に空間ごと引き寄せられた荒覇吐は、極大の衝撃に頭を殴り飛ばされる。並の古妖より遥かに強靭な原初の神の肉体でも、受け止めきれぬ程のダメージが芯まで響く。
「お前達、古妖を倒す為なら手段は選ばない!」
たった一撃で天照の怒りが収まるはずがなく、ハンマーを投げ捨てた彼女は「逆刃刀・星薙」を再び抜刀。身体を回転させて実体を持つ4体の残像を作りだし、同時に四方八方から斬撃を仕掛ける。
「宝天虹道流……奥義! 宝天無限剣!」
「お、おのれッ……ぐああぁぁぁッ!!!」
古妖への憎しみを全て叩きつけるような、容赦ない斬撃の嵐が禍津鬼荒覇吐を襲う。
いかに王劍でもひと振りでその全てを受け切るのは不可能であり、絶叫と共にほとばしる血飛沫が、魔空湯島聖堂を紅く染めた――。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
二階堂・利家何を為すにせよ…|不完全《人間臭い》な神様が居たものだな
明呪倶利伽羅が己を王権執行者として見出さなければ、一体何が出来たというのだろうか
如何に童子新生とやらが神威の権能の発露だとしても、死後蘇生のみに着目すると√能力者は誰でも備わっている。知性体としては成り立ちが異なる『欠落』を言い換えただけか?
八百万の神々が身近だった時代を疑う理由は無い。嘗ての現人神の殆どは欠落を満たし、役目を終えたのだろう
なればこそ、禍津鬼荒覇吐にも順番が回ってきたと言える
神代への回帰を否定する事で、人間讃歌を実証しようじゃないか
◆
神力として取り込んだ、王劍『明呪倶利伽羅』が与えた強大なインビジブルの大群をインビジブル融合で逆利用して生前の姿に変化し、不完全な『全範囲・全対象・無限回復』の効果を分散して飽和させることで完全存在の神格を弱体化させる
皆の力を貸してくれ
拘束を振り切る大跳躍からの先制攻撃を屠竜大剣でジャストガード。陽炎を纏った隠密状態になる前に継戦能力+怪力で捕えて、バーサーク+切り込みで喉笛を食い千切る
「何を為すにせよ……|不完全《人間臭い》な神様が居たものだな」
遥か古代より存在し、あのマガツヘビすら凌駕する完全存在と称される『禍津鬼荒覇吐』。だが二階堂・利家(ブートレッグ・h00253)に言わせてみれば、畏怖すべき存在とは到底思えない。
(明呪倶利伽羅が己を王権執行者として見出さなければ、一体何が出来たというのだろうか)
開戦以前の荒覇吐は、有力な古妖のひとりとして何度も事件を起こし、√能力者と交戦を繰り返してきたが、逆に言えばそれ以上の存在ではなかった。そもそもが古妖として封印の憂き目にあっている辺り、神力は相当に弱まっていると見ていい。
(如何に童子新生とやらが神威の権能の発露だとしても、死後蘇生のみに着目すると√能力者は誰でも備わっている。知性体としては成り立ちが異なる『欠落』を言い換えただけか?)
荒覇吐が持つ神力や特性は、いずれも一般的な√能力者の延長線上にあるものと利家は推察していた。まだ人類がこの世界の主役ではなかった時代、神々とは太古の√能力者を指す呼び名だったのかもしれない。
(八百万の神々が身近だった時代を疑う理由は無い。嘗ての現人神の殆どは欠落を満たし、役目を終えたのだろう)
√ドラゴンファンタジーで殆どの竜がインビジブルとなるか力を失ったように、荒覇吐の同族にあたる「無形なる原初が神」も、すでに世を去ったと考えられる。いまだに神力を残す荒覇吐のほうが、むしろ例外的なのかもしれない。
(なればこそ、禍津鬼荒覇吐にも順番が回ってきたと言える)
いかに長く生きようが、この世に永遠不滅など存在しない。戯れに始めた「宴」だろうが、ここを奴の最期の地にしよう。決心と共に利家は屠竜大剣「殲術処刑人鏖殺血祭」を抜く。
「神代への回帰を否定する事で、人間讃歌を実証しようじゃないか」
「戯言を。この『宴』の主役が誰なのか、まだ分かっていないようだな!」
禍津鬼荒覇吐から見た人類など、瞬きほどの間に消えていく塵芥。自分の掌の上で戦い続け、宴に興をもたらすだけの存在だと考えているだろう――その思い上がりを叩き伏せる時が来た。
「皆の力を貸してくれ」
利家が【ゴーストトーク】で語りかけたのは、荒覇吐が神力として取り込んだ、王劍『明呪倶利伽羅』が与えた強大なインビジブルの大群。長きに渡り王劍に縛られ続けてきた死者の魂だ。
「なにッ……貴様ら、何のつもりだ!」
降霊の祈りによって生前の姿に変化したインビジブルたちは、自動的に荒覇吐の【ウマシアシカビノウタゲ】の対象になる。まだ不完全な『全範囲・全対象・無限回復』の効果を分散して飽和させることで、完全存在の神格を弱体化させるのが狙いだ。
「小賢しい真似をするではないか、小僧!!」
王劍と自身の神力を逆利用された荒覇吐は、余裕から一転して怒りの形相に変わる。
飽和した神力に自らが囚われるなど、神の沽券にかけてあってはならない。全身に力を込めて、彼は【トコアマツホムラツヅリ】を発動した。
「興が冷めるわ。さっさと死ね!」
「いいや、死ぬのはお前の方だ」
拘束を振り切る大跳躍からの、王劍による先制攻撃。受け損なえば真っ二つになる一撃を、利家は完璧にガードした。不完全な神程度に、剣と剣の戦いで遅れを取る気はない。
「しぶとい奴め……ぬぅ?!」
「捕まえたぞ」
渋面を歪めながら陽炎を纏い、隠密状態になって仕切り直そうとする荒覇吐。だが、その前に利家はがしりと彼の腕を掴んだ。血中の竜漿濃度異常がもたらした尋常ならざる怪力は、神でさえ簡単には振りほどけない。
「時代遅れの神は、人の糧になってもらおうか」
「は、放せ……ぐぎぁぁぁッ!!!?」
間髪入れずに【サヴェイジ・ビースト】を発動。獣化した猫の牙で喉笛を噛み千切る。
蛮性極まる猛獣人の反撃を受けた禍津鬼荒覇吐は、首から洪水のように血を吹き出して、苦悶の絶叫を迸らせた――。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
カトル・ファルツア運命の日
相手が完全存在だろうとやるしかねえ!行くぜ!
と戦闘開始
まず奇襲が出来るように野生の勘とハンティングチェイスで迷宮化した湯島聖堂を利用して戦う事にする
…まじで?
この迷宮に迷い込んだ少女に出会う。この場所から離れるように言うも非√能力者には言葉が通じない事を思い出しどう伝えるか悩んでいると何故か自分の言葉が分かるらしく
禍津鬼荒覇吐は完全存在であるので一発攻撃を当てても倒れない事から予めエネルギーバリアを張ってから奇襲する
敵の√能力ほ装甲を貫通する威力2倍の近接攻撃【荒覇吐倶利伽羅之大太刀】を使用してくるという事はエネルギーバリアを展開する事で確実にその技が来るのは分かるので視力で敵の動きを見つつ破壊の炎を投げつつ特殊な手錠で捕縛する
覚醒精霊憑依獣形態になり無敵貫通突っつきをわざと外し、その地点から半径レベルm内はラセン無法地帯を展開する(外した隙を狙われないように弱めに撃つ)
これでくたばりやがれ!
敵の√能力を封じ込めたらラセン無法地帯を利用して高速移動し無敵貫通突っつきを放ち攻撃する
運命の日
何ここ…轟絶訳分かんないですけど…
突然迷宮らしき場所に迷い込み戸惑っていていると
はは…何これ…ファンタジー?ぴえん越えてぱおんってこう言う時に使うの?
上の方を見る化け物がいるし今までの√能力者達の戦いを迷宮の壁に隠れながら見ていた
こ…今度は何?私だって出られるなら出たいよ!
変な鳥が話しかけて来て突然俯いたので話しかける事にした凄く驚かれた
足手まといにならないようするからなんか手伝わせて…
言われた通り迷宮から出ようするが敵の視線は迷宮の出口を向いておりどう考えても気づかれるので謎の鳥に協力する事にした
もう…轟絶意味分かんないですけど〜!
謎の鳥からスピリットガンを借りて謎の鳥が突っつきを撃ったのと同時に回転弾?を放ち敵が怯んだ隙に全力で出口の方へ駆け出した
鳥が戦ってくれたので何とか逃げれそうだ
「相手が完全存在だろうとやるしかねえ! 行くぜ!」
秋葉原の、ひいては√EDENの命運がかかっているとなれば、ここで逃げる選択肢はない。ここまで来たからには倒すだけだと、カトル・ファルツア(ラセン使いを探す者・h01100)は己を奮い立たせる。が、かと言って無策で突っ込むほど彼は蛮勇でもない。
(まず奇襲が出来るように……ん?)
迷宮化した湯島聖堂を利用して戦うために、彼は【ハンティングチェイス】で敵に探知されない長距離狩猟体勢を取り、野生の勘で奇襲に適したポイントを探るが――そこで彼はあり得ないものを見てしまった。
「何ここ……轟絶訳分かんないですけど……」
混沌の如く変容する建物の中で、呆然とうずくまる天道・エル(天使さんとチェーンソー・h09524)。彼女は√能力者ではなく、運命の悪戯で魔空湯島聖堂に迷い込んでしまった、なにも知らない別√の一般人だった。
「はは……何これ……ファンタジー? ぴえん越えてぱおんってこう言う時に使うの?」
上の方を見れば化け物がいるし、さっきから物騒な音が鳴り止まない。物陰に隠れながら今までの√能力者たちの戦いを見ていたが、突然の事に戸惑うばかりで理解が追いつかない。
「……まじで?」
そんな一般人らしき少女を見つけてしまったカトルは、まさかという思いを隠せない。
どうしてこんな危険地帯に普通の人間が。とにかく放っておくこともできず、傍に近寄って声を掛ける。
「おい、はやくこの場所から離れろ!」
言ってから彼は、自分の言葉が非√能力者には通じないことを思い出す。ジェスチャーかスマホで「逃げろ」とでも文章を打てば伝わるだろうかと、意思疎通の手段に頭を悩ませていると――。
「こ……今度は何? 私だって出られるなら出たいよ!」
「え? 通じたのか?」
突然変な鳥が話しかけて来て、びっくりしたエルは怒鳴るように言い返すが、驚いたのはカトルも同じだった。√能力者ではないにも関わらず、何故か彼女は|精霊憑依獣《カトル》の言葉が分かるらしい。
「足手まといにならないようするからなんか手伝わせて……」
言われた通り迷宮から出ようにも、化け物の視線は迷宮の出口を向いており、どう考えてもここを動いたら気づかれる。となれば化け物と戦っていた人たちの仲間らしい、この謎の鳥に協力する事がエルにとって生存率を高める唯一の選択肢だった。
「わかった。これを貸すから、俺の攻撃に合わせて撃つんだ」
「う、うん」
思ったよりも肝のすわった少女の申し出に、カトルはこくりと頷いて「スピリットガン」を手渡す。エルにとっては銃を持つのも始めてかもしれないが、こうなったからにはやるしかない。
「行くぞ……!」
完全存在である『禍津鬼荒覇吐』は一発攻撃を当てるだけでは倒せないだろう。反撃が来ることも見越して、カトルは予めエネルギーバリアを張ってから、物陰から奇襲を仕掛けた。
「ぬぅ?! なんだ、この妙な鳥は!」
迷宮の地形を利用したカトルの不意打ちを受け、禍津鬼荒覇吐がよろめく。彼の嘴はそんじょそこらの凶器より鋭い代物だが、やはり一突きしただけでは致命傷にならないか。
「こんな鳥まで参加するとは、賑やかな宴になったものだ!」
「おおっと!」
荒覇吐の√能力は装甲を貫通する【荒覇吐倶利伽羅之大太刀】の近接攻撃。カトルのエネルギーバリアも紙のように切り裂く代物だが、逆にバリアを展開しておく事で確実にその技に誘導することはできた。攻撃手段が分かっていれば対処もしやすい。
「暴れるなよ!」
優れた視力で敵の動きを見切り、大太刀の斬撃軌道に破壊の炎を投げつけるカトル。
飛び散る火の粉が視界を覆えば、その隙に彼は妖怪の力を封じる特殊な手錠をかけた。
「ぬぅ? こんなモノで神を縛れるとでも!」
並の妖怪ならば霊力や腕力を抑え込まれ、まともに戦えなくなる所だが、今回の相手は無形なる原初が神。多少は煩わしそうに顔をしかめても、戦闘継続には問題なさそうだ。
「精霊憑依獣の力も見せないとな!」
だが、少しでも力が弱まっているなら今がチャンスだと、カトルは√能力で覚醒精霊憑依獣形態に。巨大な鳥型の龍神に変化した【|覚醒精霊憑依獣のラセンス《ピリットクリーチャー・ラセン》】の突っつきは、無敵の防御すら貫通する。
「ぬるいわッ!」
だが、それも当たらなければ意味はない。原初の神力を身に纏い、移動速度を強化した荒覇吐は、稲妻の如き俊足で嘴を回避した。√能力の一撃すらも凌がれてしまった以上、もはや彼に打つ手はないか――。
「わざとだよ」
「なにッ?!」
カトルの嘴が突っついた地面を起点に、魔空湯島聖堂にエネルギーの嵐が吹き荒れる。
これは、彼の故郷の√に伝わる「ラセン」の力。覚醒精霊憑依獣の攻撃が外れた場合、周囲一帯にラセン渦巻く無法地帯が展開されるのだ。
「貴様、最初からこれが狙いで……!」
未知のパワーが支配する空間においては、さしもの荒覇吐も実力を発揮しきれない。
|神力《√能力》を無効化された彼は怒りの形相で王劍を振るうが、逆にラセンの力で強化されたカトルを捉えることはできなかった。
「これでくたばりやがれ!」
ラセンを利用して無法地帯を高速で飛び回り、再び無敵貫通突っつきを放つカトル。
そこにタイミングを合わせて、物陰から黒いフードを被った少女が――エルが飛び出してくる。
「もう……轟絶意味分かんないですけど〜!」
常識外の出来事が次々に起こって彼女の頭はパニック寸前だが、黙って見てたら死ぬ、ということは分かる。謎の鳥から借りた銃のトリガーを引くと、自然に宿る精霊の力が、特殊な回転する弾丸となって撃ち出された。
「ぐおぉぉッ……おのれぇぇ……!!」
覚醒精霊憑依獣の突っつきと精霊回転弾のクリーンヒット。これには禍津鬼荒覇吐もたまらず怯んだ。王劍を地面に突き立て片膝で己を支える姿からは、相当のダメージが蓄積されているのが窺える。
「今だ、走れ!」
「わ、わかった! じゃあね!」
この隙にエルは全力で出口のほうへ駆けだした。謎の鳥がまだ化け物の気を引いてくれているお陰で、なんとか逃げられそうだ。こんな事に巻き込まれるのは二度とごめんだと願うが――√EDENに来てしまった彼女にとって、今日こそが全ての始まりとなる、運命の日だったのかもしれない。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
真月・真守永遠に戦い続ける?そんなの一人でやってろよ!こっちは|妹を探す《やること》あるんだ!
…それに、いくら回復するったって絶対に|Anker《アイツ》は傷つけさせねぇ、オレが守ってやるって、そう約束したんだ!
決意と誓いを胸に迷宮に飛び込む。
うわっ、あぶねぇ!
3倍の移動速度で突っ込んでくる敵に、変化していく迷宮の中で傍に出現した物(石碑や仏像など)を盾にしてそれが装甲の代わりに貫通され壊される隙に吹き飛ばし攻撃を行い。砕けた破片を投げつけ直後に飛び込んで貫通攻撃のパンチを行い…とその場で思いつきながら攻撃していく。
(「これ、後でちゃんと直るんだよな…」)
ドンドン破壊されていく湯島聖堂を見ながら冷や汗を流しつつアドリブの対処を続けてまともに戦えないと油断させていく。
その間に心の中で周囲のインビジブル達に呼びかけ続ける。
(「これ以上コイツに滅茶苦茶にされないために力を貸してくれ!」)
限界まで油断させた所で四肢にインビジブルを纏ってダッシュ。懐に飛び込んで必殺パンチの一撃を狙う
「永遠に戦い続ける? そんなの一人でやってろよ! こっちは|妹を探す《やること》あるんだ!」
終わらない闘争の宴を求める『禍津鬼荒覇吐』に、もう沢山だと啖呵を切るのは真月・真守(誰かを守るワンパク少年・h00766)。無形なる原初が神だかなんだか知らないが、これ以上面倒事に付き合わされるのはゴメンだ。
「……それに、いくら回復するったって絶対に|Anker《アイツ》は傷つけさせねぇ、オレが守ってやるって、そう約束したんだ!」
「ふん、下らん。弱い者を守ったところで何になると言うのだ!」
決意と誓いを胸に迷宮に飛び込んできた少年を、荒覇吐は鼻で笑う。悠久の時を生きる完全存在に「他者と寄り添う」という思考はそもそも理解の外だろう。彼奴にとってほぼ全ての生命は、宴を愉しむための肴に過ぎない。
「俺が神力を完全に取り戻した暁には、貴様のAnkerとやらも宴に加えてやろう!」
嗜虐的な笑みを浮かべながら、禍津鬼荒覇吐は【アラハバキクリカラノオオダチ】を発動。原初の神力を纏った彼のスピードは通常の3倍に達し、凄まじい勢いで突っ込んでくる。
「うわっ、あぶねぇ!」
真守は咄嗟に傍にあった物を盾にして身を躱す。湯島聖堂の変化に伴って出現した幾つもの石碑やら仏像やらが、彼の身代わりに「荒覇吐倶利伽羅之大太刀」の餌食となり、バラバラに破壊されていく。
「いくぜ、おりゃ!」
「ぬぅっ?」
器物を破壊している間のわずかな隙を捉えて、真守は圧縮空気を充填した「特装圧縮銃」を発射。ちょっとでも相手がよろめけば、砕けた仏像の破片を投げつけて、直後に飛び込んでパンチする。
「てりゃ! 次はコイツだ!」
「チッ。こざかしいわ!」
自分の肉体と在り合わせの物を利用した【|その場で思いつき攻撃《アドリブアクションアタック》】。鋭く突き刺さるような打撃を食らって、禍津鬼荒覇吐は煩わしげに王劍を振るう。しかし軽快に戦場を走り回る真守に、必殺の一斬はなかなか当たらない。建物の損傷が増えるばかりだ。
(これ、後でちゃんと直るんだよな……)
ドンドン破壊されていく湯島聖堂を見ながら、冷や汗を流しつつもアドリブの対処を続ける真守。しかし場当たり的に手札を切っていくような戦い方では、ジリ貧になるのは目に見えている。
「ガキのくせにしぶといが、どうやら俺を殺せる手札はないようだな!」
小細工がなければまともに戦えない弱者だと、禍津鬼荒覇吐の中で相手への油断と侮りが大きくなっていく。そう思わせることこそが、真守の本当の狙いだとは考えもせずに。
(これ以上コイツに滅茶苦茶にされないために力を貸してくれ)
この間に真守は密かに、心の中で周囲のインビジブルたちに呼びかけ続けていた。そして限界まで敵を油断させたところで、満を持して【インビジブル・バースト】を発動する。
「今だっ! いくぞ!」
「なッ……速……!」
協力を取り付けたインビジブルを四肢に纏って、全力でダッシュ。急にギアの上がった真守の動きに荒覇吐は目が追いつかない。倶利伽羅之大太刀を振り下ろすよりも先に、懐まで飛び込まれ――。
「コイツを食らえ! おりゃっ!!」
「ぐ、ごはぁッ!!?!」
さっきまでと同じパンチでも、インビジブルの力を乗せた攻撃は装甲を貫く必殺技となる。防具や霊的な防護もろとも殴り飛ばされた禍津鬼荒覇吐の巨躯は、湯島聖堂の壁に強かに叩きつけられた――。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
和紋・蜚廉迷宮は生き物のように形を変える。
だが、我には読める。潜響骨が壁の軋みを拾い、次に揺らぐ経路を教えてくれる。
跳爪鉤で天井を渡り、斥殻紐で歪む足場を補強しながら、塵執相の奔る殻で駆け抜ける。
禍津鬼荒覇吐の完全性は揺らがぬ……が、揺らがないなら“真似ればいい”。
翳嗅盤が大太刀の軌道を捉えた瞬間、触厭で神力の奔流を殺ぐ。
迷宮が捲れ、壁が裏返り、床が落ちる。
それさえ利用し、位置取りを変え、奴の“完全”が見ていない角度へ踏み込む。
条件を満たし、穢刻還声が発動。
複製された完全性が、我の内部で噛み合い、武術の“型”が次々に形になる。
我が遺伝子に刻まれた原闘機構が反射を研ぎ澄ませ、奴の速度にも容易く追いつく。
殴るたびに理解が進む。
理解するほど適応が進む。
適応したぶんだけ、神の完全にひびが入る。
最後の一歩は、迷宮が開いた“ほんの一瞬”の死角。
闘気硬化した拳に、適応反射で得た力をすべて込める。
――完全であるなら、砕く価値がある。
我はただ、生き残るために、あの神を殴り倒すだけだ。
迷宮が拒むほどに、逆に道が見える。
完全性に奪われぬ“我”という核が熱を帯び、殻の奥で脈動する。
この拳はただの暴力ではない。存在を賭した証明だ。
ならば、迷う理由などどこにも抱く必要は無い。
翅音板を鳴らした合図で、鍛え上げ続けた我が脚力を解き放つ。
揺れ続ける迷宮の勢いすら利用し、重心を跳ね上げ――
あの神の中心へ届く“最短の軌道”を、我自身の拳で穿ち貫く。
(迷宮は生き物のように形を変える。だが、我には読める。潜響骨が壁の軋みを拾い、次に揺らぐ経路を教えてくれる)
神の降臨により混沌と化した『魔空湯島聖堂』を、和紋・蜚廉(現世の遺骸・h07277)は自らに備わった器官を頼りに進む。微細な気配も感知する体内の震動器官は、建物の変化を聞き逃さない。
「終いにするぞ、この宴とやら」
四肢に生えた「跳爪鉤」で天井を渡り、爪先から伸ばした「斥殻紐」で歪む足場を補強しながら、多重殻奔駆躰で駆け抜ける。【穢殻変態・塵執相】を発動した彼の体躯は黒褐に輝いており――瞬く間に『禍津鬼荒覇吐』の待つ最深部へと到達する。
「次の相手は虫けらか……宴の余興程度にはなるか」
数々の√能力者と激戦を繰り広げた禍津鬼荒覇吐は、すでに満身創痍だった。だが彼はまだ自身の勝利を疑ってはいない。あと数刻時間が過ぎれば、取り戻した神力によって全てを元通りにできるからだ。
「せいぜい這いずり回って、俺を楽しませるがいい!」
原初の神力を身に纏い、加速した荒覇吐が刀を振るう。王劍の膨大なインビジブルを完全に掌握した【荒覇吐倶利伽羅之大太刀】の前では、外骨格の装甲なぞ役には立つまい。これが人類の黎明期から生き続ける完全存在の力だ。
「穢れに染まりし掌にて、触れし力よ、我を嫌え」
空間の痕跡を読み取る「翳嗅盤」が、大太刀の軌道を捉えた瞬間、蜚廉は右掌の【触厭】で神力の奔流を殺ぐ。ただこれは√能力を無効化はできても、王劍自体の威力を殺すことはできぬ。
「ルートブレイカーの亜種か。そんなもの、もう散々見せられたわ!」
迷宮が捲れ、壁が裏返り、床が落ちる。斬撃の余波のみでこれだ。己の完全性だけでなく、過去幾度もEDENの√能力者と交戦した経験が、荒覇吐に勝利を確信させていた。宴を盛り上げる役者にはなれど、こやつらに己を滅ぼす力はないと。
(禍津鬼荒覇吐の完全性は揺らがぬ……が、揺らがないなら“真似ればいい”)
だが【荒覇吐倶利伽羅之大太刀】による迷宮の破壊さえ利用し、位置取りを変え、敵の“完全”が見ていない角度へ踏み込む。敢えて一度受けたことで【穢刻還声】が発動条件を満たし、原初の神力――完全性の模倣を以て蜚廉は反撃を仕掛けた。
「なんだ。虫かと思えば猿真似か?」
其れが自分の√能力を真似たものだと禍津鬼荒覇吐も察するが、本家本元には到底及ばぬもの。王劍と徒手空拳では武具の差もあり、たやすく受け流されてしまう。鬼神の口元に浮かぶは嘲弄の笑み。
「成程。こうか」
しかし戦闘を続けるうちに、複製された完全性が蜚廉の内部で噛み合い、武術の“型”が次々に形になる。【穢刻還声】の真価はただ敵の能力を真似るだけでなく、そこから新たな武技を編み出す事にある。
「廻れ、本能の歯車よ」
遺伝子に刻まれた【|原闘機構《オリジン》】が反射を研ぎ澄ませ、塵執相の加速と併せて、敵の速度にも容易く追いつく。踏み躙られるはずだった虫けらは、神の頂へと駆け上がり始めた。
「ッ?! なんだ貴様は……まさか本気で俺に勝つつもりか!」
「無論だ」
殴るたびに理解が進む。理解するほど適応が進む。適応したぶんだけ、神の完全にひびが入る。目の前の”敵”が急激に成長を遂げている事に気付いた禍津鬼荒覇吐は、真の脅威となる前にその命を刈り取らんとするが――。
「我が奔駆は、死すら置き去る」
飛躍的に向上した塵執相の自己再生速度は、王劍に刻まれた傷も立ちどころに塞ぐ。
無論、此度の敵は別格だ。癒やしきれぬ傷はある。だが戦闘を継続さえできれば、一瞬ごとに蜚廉の武術はさらなる高みに至る。
「――完全であるなら、砕く価値がある」
神域の剣戟にも勝る速度のラッシュが、禍津鬼荒覇吐の全身に叩き込まれる。最初は鉄の塊を殴るようだった感触も、次第に肉を打つ手応えを感じるようになる。爪と紐を活かして天井さえも足場とし、縦横無尽に駆け巡りながら技を放つ。それは人間にも神にも真似できぬ独自の型。
「我はただ、生き残るために、あの神を殴り倒すだけだ」
幾星霜の時を在り続けたのは蜚廉も同じ。荒覇吐との大きな違いは「生き延びる」事を強者の証とする点にある。完全性にあぐらをかき、延々終わらぬ「宴」に興じる彼とは、闘争にかける意識が違う。
「糞がァ! 舐めるなよ、この俺が貴様ごときに!」
認められるはずもない。長く生きただけの虫けらに、原初の神が追い詰められるなど。
だが事実は変わらない。神の完全性を打ち破るため、いわば対荒覇吐専用武術として洗練された”型”は、彼の肉体に深いダメージを刻み込んでいた。
(迷宮が拒むほどに、逆に道が見える)
この大一番において蜚廉の全感覚は極限まで研ぎ澄まされ、魔空湯島聖堂の構造を完全に把握していた。次はどこに壁が現れ、どこの床が抜けるのか。迷宮が開いたほんの一瞬の死角を縫って、彼は|最後の一歩《・・・・・》を踏み込んだ。
「この拳はただの暴力ではない。存在を賭した証明だ」
闘気硬化した拳に、適応反射で得た力をすべて込める。完全性に奪われぬ“我”という核が熱を帯び、殻の奥で脈動する。「進め、戦え、生き残れ」と、脳裏に己の声が響く。
「ならば、迷う理由などどこにも抱く必要は無い」
胸殻に仕込んだ「翅音板」を鳴らした合図で、鍛え上げ続けた己が脚力を解き放つ。
その刹那、迷宮全体がひときわ大きく揺れ、荒覇吐の体勢を崩す一方で、蜚廉の重心を跳ね上げる。敵の技も地の利も織り込んだ、神殺しの”拳”は、ここに成った。
「因果を此処に。穢れを刻みて、聲を返す」
黒き閃光と化した蜚廉は、鬼神の中心へ届く“最短の軌道”を、己自身の拳で穿ち貫く。
弾丸の如く突き抜け、壁を破り大地を抉ったところで、ようやく停まる。その背後には、胸部に風穴を開けられた禍津鬼荒覇吐の姿。
「……は? 馬鹿……な……! この俺がお前らなどに敗けるなど、そんな馬鹿な! あと数刻あれば、本気さえ出せば、お前らなど……!!!」
己の敗北に愕然とし、言い訳の断末魔を叫ぶさまは見苦しく。だが何を吠えたところで結果を覆すことはできない。いかに彼奴が強大にして部類の神力を誇ろうが――生き延びた者こそが、此度の戦における真の強者である。
「馬鹿な、馬鹿な馬鹿な馬鹿な……!!!」
認められぬ、受け容れられぬと叫びながら、禍津鬼荒覇吐の魂はインビジブルと化す。
√EDENを舞台に様々な簒奪者と√能力者を巻き込んだ修羅の宴――『秋葉原荒覇吐戦』は、ここに決着を迎えたのだった。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
