the Dark

✴︎Deal with the “Hope”

くらがりの・こえ 7月1日00時

『力が欲しいか?
オレのささやかなお願いをひとつ聞いてくれるなら、手伝ってあげるよ!』

芝居がかった調子でアクマ言ったアクマの言葉に、

「──その取引、乗ったぁ!!」

と、白い災厄が微笑みと共に言って。

「なに、ケチくさいことは言わないさ。
いいよ、ふたつとも願ったげる。」

とも、言ったから。
そうは見えずとも、行動に強い縛りのあるアクマは笑った。

『あっはははは!ふたつ?希望は欲が深いね!
いいよ、希望。あげるね。』

元より|名を知っている《・・・・・・・》相手だ。さぁ、なにを貰おうか?



・この話の、https://tw8.t-walker.jp/thread/club_thread?thread_id=37712
取引詳細。
・取引相手:筺守・希望
くらがりの・こえ 7月1日00時
子供のように手を伸ばして、光の花咲く枝を手折ってから。そのまま無邪気にも見える動作で手が伸びる。

『他にも花が欲しいな』

くらがりの腕が白い災厄の胸元へ。
許したのなら、腕はずぶりと沈んで、その身の奥まで伸びるだろう。
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筺守・希望 7月2日18時
「いいよ」

こともなく、白い災厄は微笑みを返す。
言葉と共に、その細い両腕を広げ、まるで迎え入れるように悠々と。

「アタシに花を願うなら、何が咲くのか見届けてやろうじゃないの」
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くらがりの・こえ 7月2日23時
『はは、希望らしいね』

腕が伸びる。表面だけ人間を模したくらがりの腕が白い災厄に触れる。そのまま、

(ずぷり)

胸元へ沈み込む。指先を超えて腕まで入り込んでいるのに、貫通して背中からその手が這い出すことはない。
──どうしようかな?
白い災厄が蓄積した情をひとつひとつ撫で上げながら、どれを摘み取ろうかと無貌のかげが首を傾けた。滑ってしまうような感情はいらない。白い災厄には、そう……

『これにしようか。希望は、なんの花だと思う?』

パキリ、と一本の花が手折られる。なぞなぞをするかのように、逆なく何の花かを尋ねた。
……これだけは選ばない。人への友情。アクマは人にはなれないから。
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筺守・希望 7月3日19時
らしい、という言い方に片眉を上げる。
ただ、その疑問を口にするより前に、胸から迫り上がる感覚が一瞬にして思考を塗り潰した。

「──っ」

遠慮も配慮もない触れ方に、食いしばれどなお小さく息が漏れる。
眼下には身体にめり込んだ影の腕。モノクロームの境界に視界がぼやけると、目の前にあるはずの影の声はどうしてか内側から響く。心そのものに問いかけるように。

「そりゃあ白百合、かな」

木漏れ日を湛え、柔らかな風に揺蕩う白百合。花が人ならば、そうあろう。息を整えて、ゆっくりと口の端を上げた。
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くらがりの・こえ 7月4日23時
差し込んだ腕が探るように蠢く。悪意を産み出した人類はアクマの根源。手を差し込めたなら摘み放題だ。けれど白い災厄はそうとは行かない。……災厄であるから。

『白百合かぁ。一輪なら死者に捧げる花だしね』

そんな状態で世間話でもするように言う。
清楚で美しい佇まいから世界宗教の聖母の姿に例えられ、純粋や高貴の花言葉を持つ花をそう評す。

『希望には桜も似合うよ』

春の代名詞と謳われるほど華やかで。咲く時は短く。儚く散る故に別れや死を思わせる。
手の内におさめた光の花も、桜であった。仮初の希望が叶うように、散り様は鮮やかだろう。

……これにしようか。花をパキリと手折る──アクマの手がつかんだ花は、どんな形だろうか?
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筺守・希望 7月5日16時
「誰が献花だこのバカ」

花に何かしらの意味を見出すのは、すべて人間が始めた勝手だろうに。
それにしたって、よく喋ると呆れながら災厄は返す。

オマケに提案された桜も、基本的には終わりありきの花。
だとすれば、この影が思う災厄の花とは『死』か。
桜は好きだけれど、それは全く面白くもなんともない。

「……それは、随分な口説き文句だこと」

自らの花が桜であれば──どれだけがその下に埋まっているものか。
ならばなおのこと、無意識に白百合を選ばずにはいられない。

故に、アクマがつかんだそれは、5枚の花弁が広がる──桜の形をしていたことだろう。
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くらがりの・こえ 7月6日00時
花はただ咲くだけで。
それに意味を思うのは人間の感性故で。
花は自身に意味も意思も意図も持たないと認識した上で、何某かへ繋げてしまうのは──悪意も希望も人類の感情から産まれたからだろうか?

『お気に召した?……もらうね』

眉を寄せた白い災厄にそう笑ってから、くらがりの腕を胸から引き抜いた。腕が抜け落ちていくのに、なにか芽生えるような異質な感覚をあなたに遺しただろう。
手折った花を見せつける。
花弁は五枚。淡い桃色。桜の花。

『“しかしいま、やっとわかるときが来た。”』

アクマがどこかの物語の一節を吟じた。自身に相応しい花は白百合だと、“これは信じていいことだ”ったのに。
でもどっちの花でも“綺麗”だって人間は言うんじゃない!
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くらがりの・こえ 7月6日00時
きみの心を一輪もらうね。別に心を失う訳じゃないさ。その|心《思い》をオレに向けてね。

『|Ne m'oubliez pas《わすれないで》』

桜の花にそう願う人もいるんだって。わすれないで。ほらきみも願う存在を知っているだろう?
わすれないで。わすれないで。わすれないで。わすれないで……どうして願われたのか、忘れちゃった?
──願われたのを忘れてしまった、それに気付いた、いまの気持ちはどう?

『忘れないで』

その気持ちを、わすれないで!
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筺守・希望 7月6日21時
その花は違うはずだ。
 何がおかしい。
  耳障りな声だ。
   アタシが何だ。






──誰が、何を言っている?

コイツが何を言っているのか、理解ができない。
わからないならそれで良いはずなのに、この心のざわつきは何だ?

忘れるな。
何を?
わかるはずもない。

『欠落』したものを、筺守は認識することができないのだから。
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筺守・希望 7月6日21時
「……何か不快なことを言われてるのはわかる」

口の端を尖らせると、胸の辺りを払いながら。忘れたくとも、キミはそんなカタチをしていないと不満気に呟く。

「実のところ、アタシはキミと親近感を抱いてるんだけどね」

白と黒、人の感情に住み着く者同士。
でも、正しくは違うのかもしれない。

暗闇の中に影は溶けてしまうから、輪郭を、その輪郭を強い感情で照らし出す光が必要なのかもしれないと。
自らの存在証明のための、悪意。

「キミは、その光をあの子に見出した」

違うかい?
そんな仮定を、悪魔へとぶつける。

──だとしたら、随分と浮気者じゃないかい。ええ?
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くらがりの・こえ 7月7日15時
『…………あはは!』

アクマがわらう。

『俺が、×××を手にするのに、』

わらう。

『尽くすのは、』

そう言うアクマの笑みは、何故だかいつもと違う色をしていた。

『おかしい?』

浮気だなんて!移り気が出来るなら×××××ない。
|筺守・希望《白い災厄》への干渉で────ああまだ“道”が“見え”ない。
EDENってやつは××だな。
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くらがりの・こえ 7月7日15時
『…………“貰い過ぎ”たな。』

|桜《心の花》を手に、くらがりの身体が翻る。

『うーん、そうだ!希望。その力、あげるよ!』

白い災厄に与えた力。一次的な付与ではなく、永続する力として。使いようによっては世界を焼きかねない力を手軽に握らせて、アクマは笑う。
……その笑みはもういつも通りだった。

オレのやることはもうないかな。なにかある?あっても行くけど!

『希望、またね!』

──“忘れないで”ね。

桜を手にしたまま、アクマはそう囁いて 消えた。
少なくない時間話していた感覚だったのに、時間は然程経過しておらず……
今、くらがりで出来た女性体に、黒衣の男の右手…白い光が触れようとしていたところだった。
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筺守・希望 7月7日21時
問いかけたつもりが、肝心な答えが聞き取れない。部分点なのかどうかすらわかりはしない。

それにしたってよく笑う。笑わせることは好きであっても、一方的に笑われるだけでは割に合わない。

「ああ、ちゃんちゃらおかしいね」

その色の変化に気がつけば、アクマも何か逡巡することがあるのかと笑った。
それは、ままならない生き方に対する同情かもしれない。

なんだかんだ、自我を得た以上は不透明なルールの下で生きていくしかないのだろう。アクマも、災厄も。
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筺守・希望 7月7日22時
「もらえるものは借金以外もらうけどね」

 こんなもん気軽に渡すなと、確かめるように手を開いては閉じてを繰り返して。

「たまにはお日様の下で会おうよ」

来るなと言っても来るだろうし、遠回しに皮肉を込めて。

果たして何を覚えておけというのか。
あるいは何を忘れているのか。

視界が元に戻ってもなお、白い災厄はしばらく首を捻っていたのだった。
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くらがりの・こえ 7月8日23時
白い災厄に小さな楔を打ったアクマは、皮肉のこもった言葉に笑って答える。

『──いいよ。お日様の下には、影が出来るからね』

そんな呟きが、白い災厄の耳に入ったかは分からない。聞かせようとすればいいのに、絶対聞こえるようには言わなかったから。
おっと、この場に居続けると危ういな?災厄の心ではなく、光で満ちた花を掲げて──もう路地裏に、くらがりは見えない。


✴︎END✴︎
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