イア・エラー

母の手のひらから零れ落ちたのは、小さな小さな花弁だったと思う。/蕾ですらないそれは、落ちてそのまま枯れ果てた。/母の涙とて、奇跡の雫とは成り得ずに。/掬い上げたとて、崩れ落つ。/浮かんで割れたの、しゃぼん玉。吹いて荒んだ春嵐。/花も光も喪った。/だからあなたたちは、どうか。//どうか、幸せに。//──いつだって、想っている。//この願いが、あの空まで届かずとも。