シナリオ

④異形聖女、奮わば災禍

#√汎神解剖機関 #ゾディアック継承戦争 #ゾディアック継承戦争④

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⚔️王劍戦争:ゾディアック継承戦争

これは1章構成の戦争シナリオです。シナリオ毎の「プレイングボーナス」を満たすと、判定が有利になります!
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(毎日16時更新)

「おいでいただき、ありがとうでござる!「ゾディアック継承戦争」については、もうご存知でござろうか!某、これについての星詠みをしたゆえ、今から説明させていただきたく!」
 サスケ・ブレイブ(|猿飛《SARUTOBI》・h13023)は、自らの呼びかけに応じたEDENに対してそう元気よく礼を述べると、自身が見た星詠みの内容を語り始めた。
「貴殿らに向かっていただきたい場所は「旧福岡県公会堂貴賓館」!此処にて√汎神解剖機関の『聖ポメラニアン』なる女性が、何らかの儀式を行っておるのでござる!」
 √汎神解剖機関のヴァチカンに存在する「聖人蘇生庁」なる組織から派遣された聖女『聖ポメラニアン』。どうやら偽名であるということだが、本物の聖人――「神品復活者」なる存在であるのは確からしい。蘇生失敗した聖遺体を接いだ五本腕のこの聖女は、今回覚醒した王劍『ファルの心髄』から、√能力者が武装などの作成に必要なエネルギー「ゾディアック」を奪い、持ち帰る為の何らかの儀式を行っているのだという。
「儀式の内容は完全に不明、これを阻止する方法も予知することは出来なかったでござる。かくなる上は『聖ポメラニアン』を斃し、なるべく早めに撤退していただくが最善でござろう!」
 『聖ポメラニアン』は異形の五本腕でもって、「五本腕連携攻撃」を行ってくる。それが具体的にどのようなものになるかは何しろ腕である。対峙したEDENの戦法によって変わるだろう。しかし、その連携攻撃に何らかの対処を行うことができれば、『聖ポメラニアン』の撃破は格段に楽になると予知が告げている。
「つまりこれは、かなりの純粋な戦いとなることが推測され申した。もちろんこれを搦め手に変えるは、貴殿らのやりよう次第でござるが……連携攻撃にさえ対処できればよいのでござる、貴殿らそれぞれが戦いやすいように最善を尽くせば、道は開かれましょうぞ!」
 某は貴殿らを信じておるでござる故、無事の帰還を祈っているでござるよ!
 少女の姿をしたベルセルクマシンの星詠みは、無垢な笑顔でそう言った。

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第1章 ボス戦 『聖人蘇生庁聖者『聖ポメラニアン』』


ハリエット・ボーグナイン

「はは、なるほど。腕が沢山あって便利そうじゃねえの」
 ――けど、言うよなァ? 「|過ぎたるは猶及ばざるが如し《ヤりすぎ注意》」ってさ。
 ハリエット・ボーグナイン(“|悪食《ダーティー》”ハリー・h00649)は『聖ポメラニアン』に出会うなり、自動拳銃『|Screamer《うるせェの》』を手にして牽制を行う。何をしていたのかさっぱりわからない儀式場に降り注いだ弾丸を飛びのいて避けた聖ポメラニアンは、五本の腕のひとつに握った聖別された銃からこちらも弾丸を放ってくる。それを『カズィクル・ベイ』(プロトモデル)――棺桶の丈夫な蓋で受け止めながら、ハリエットは床を蹴った。聖ポメラニアンの超至近距離まで一気に跳躍する。
 この時点で聖ポメラニアンは初動を誤った事に気が付いた。|相手《ハリエット》からの牽制射撃は、避けるのではなくすべて受けるべきだったのだ。しかし悔やんだところで後の祭り、こちらの腕はまだ五本|しかない《・・・・》。そのすべての腕に握られた武器をすべてハリエットに向け、剣を、戦斧を、棍棒を、そして弾丸を、次々に繰り出していく。
「おいおいおい、そんなモンかァ!」
 聖女の攻撃を全て棺桶のフタに食いこませ、死者であるがゆえにリミッターの吹っ飛んだ恐るべき怪力で棺桶の鎖で聖ポメラニアンの腕を拘束する。聖ポメラニアンは鎖による拘束によって出来た小さな擦れ全てを「傷」と認識し、拘束するべき腕を増やすことで抵抗する。この至近距離では遠隔距離には誰もいない故に使えない。十字剣による攻撃を、ハリエットは急所を外しながらやむを得ず受け、ただただ耐えて新しい腕を拘束する。それは聖ポメラニアンとハリエットとの我慢比べと言って差し支えなく――その我慢比べは、ハリエットの勝利に終わった。
増えに増えた腕を全て鎖で括られた聖ポメラニアン。それでも彼女は跳ね起き、動こうとする。だが腕はどれだけ増えても、彼女の視界は人間と同じだ。括られた腕を聖女は見ることができず。腕一本一本が彼女の「|重り《邪魔物》」となる。
「ココからは“|なんでもアリ《バーリトゥード》”だ。始めるぜィ」
 【|煉獄《ファイナル・デスティネーション》】。ハリエットの三徳包丁、自動拳銃の「|Screamer《うるせェの》」に「|Whisperer《ひそひそ屋》」、ソードオフショットガン、そしてハリエット自身の手足が、聖女の体を斬り裂き、穿ち、ひたすらに叩きこまれる――!!

橋本・凌充郎

「―――――――クク。現世へようこそ、聖人殿」
 |橋本《はしもと》・|凌充郎《りょうじゅうろう》(鏖殺連合代表・h00303)は、聖ポメラニアンを前に低い声で笑った。
「ただの人であれば貴様を歓迎しなければならないところだろうが……生憎、俺はただの人ではなくてな。残念だが、そうそうにあるべき所に帰ってもらわねばなるまい」
「なるほど、ただの人ではない……人でなしというわけですね」
 【|死喰らいの大叫喚《ビーステッド・ヘルエグゼクト》】によって速度を倍加し、即座に「故絶やしの拳銃」を抜き撃ちして制圧射撃を行う。聖女はその弾丸を避けもせず喰らった。何故? わかりきったことだ。聖ポメラニアンが傷を負えば負うほど、彼女の|腕《攻撃手段》は増えていく。聖女は凌充郎へと飛び、十字剣を凌充郎に叩きこまんとするが、それは即座に躱された。腕が重いのに聖女は気づく。腕だけではない、体全体がだ。凌充郎の弾丸に仕込まれた麻痺弾が、聖ポメラニアンの体を鈍くしていた。己の√能力を過信した判断ミスだ。
「――――――死の境界線こそ、人々に預けられた最期の静寂、安らぎの終着点だ。|役目《一つの生涯》を終えたものが、その境界線を踏み越えるものではない。」
 生者のみが、死者の結末を決める権利がある。死者に生者の歩く道を塞ぐ義務はない。
「――――――聖人とも称されるに至った貴様が、それを理解していない等とは俺は思っていないのだが」
 殺気を振りまく凌充郎の握った「故殺しの回転ノコギリ」が、ギュイイイイイイと耳障りな音を立てて増えた腕を斬り落とした。【|死喰らいの等活《ビーステッド・カッティングエッジ》】――真っ赤な血が飛沫き、凌充郎のバケツヘルムを汚した。
「―――――クク、すまないな。下らぬ事を語ったが、つまりはこうだ」
「――――――鏖殺連合代表、橋本凌充郎。今の貴様と聖人蘇生庁が気に食わんが故に、これより鏖殺に入る」
 麻痺弾により十全の力を振るえなくなった聖ポメラニアンの腕では、連撃を繰り出してもそれを躱され、逆に掴まれて斬り落とされる。腕が斬り落とされれば勿論傷になるわけで、端から腕が増える。けれど聖女の体は思い通りに動かず、凌充郎は速度を上げている。
 聖ポメラニアンの√能力は既に、彼女に激痛を与える為の肉体を増やすという重荷に成り下がった。腕は増え続け、凌充郎はそれを回転ノコギリで斬り落とす。聖女にそれから逃れる術は今やなかった。
 これは、屈服するまで繰り返される永遠の拷問だった。

エキドナ・デ・イリオス

「私とあなたの信じる神は違います。故にこれは、信仰の戦い」
 エキドナ・デ・イリオス(狂信の|神聖祈祷師《ホワイトクレリック》・h02615)は聖ポメラニアンに告げる。
「『ヴァチカンの』聖人蘇生庁。ならば汝は異教徒を邪教と、悪魔崇拝者と定め、侵攻し、文化ごと多くの人々の命を奪い、心の拠りどころを焼き払った「かの教え」の元に聖人と成りつめた者。ならば我も、我の信仰を守るために汝を殺さねばならぬ」
 正気と狂気とを行き来しながら語るエキドナの言葉は、聖女を詰めていく。
「|楽園《√EDEN》を乱すことに、罪の意識は感じないのですか。これっぽっちも? 己の信仰の為に、何も感じないというのなら、汝は過ちを繰り返してきた歴史から何も学んでいないということ。あなたは自分が手の届かない楽園へと侵攻している」
 聖ポメラニアンは――本物の聖人であった。だからエキドナの言葉をまともに受け止めてしまう。かつてかの教えを広めるために他の文化を攻撃し、命を奪ったことは事実だ。
 【|神聖竜詠唱・第三楽章《ドラグナーズ・アリア・テルッツォ》】。エキドナの肉体が神聖竜の光を放ち、エキドナと聖ポメラニアンの罪悪感に対する抵抗力を大きく削ぐ。
「――それでも私はやらねばならない。たとえそれが罪塗れだとしても、私が父と子と聖霊に誓った以上、それは必ず果たされねばなりません」
 聖ポメラニアンはエキドナへと跳躍した。広間にはエキドナの歌が響いている。聖女から繰り出される十字剣の、戦斧の、銃の、棍の、香炉からの連撃を、エキドナは自らの祈りで動く三つの自律式竜漿兵器「ディヴァインブレイド」らとエキドナ自らの二つの腕で受け止め、そして隠し持った酒をぶっかける。何をされたのかわからず、聖ポメラニアンは頭から酒を被って一瞬戦闘を忘れた。そこへディヴァインブレイドの攻撃がエキドナの祈りの歌に連動して聖ポメラニアンへと猛攻を繰り出す。最初は攻撃に対して聖ポメラニアンは√能力によって腕を増やしていった。例え|神言拘束術《ウェルブム・ヴィンクルム》によって遠隔麻痺を行おうとも、エキドナは動けないままに歌い続ける。喉が、肺が動いていればいい。そして|救済十字剣《クルクス・ポエナ》による攻撃は、全てディヴァインブレイドが受け止める。エキドナが歌い続ける限り、神聖竜の光はエキドナと聖ポメラニアン、両方の傷を癒すが――ある時を境に、腕は増えなくなった。聖ポメラニアンが己の傷を傷と認めなくなったのだ。それは、エキドナの語った楽園侵攻の罪に対しての罪悪感が、【|神聖竜詠唱・第三楽章《ドラグナーズ・アリア・テルッツォ》】によって増幅された結果だった。
 エキドナは声帯と肺に及んだ麻痺によって歌を止める。それでもエキドナの祈りは、聖女へのディヴァインブレイドたちの攻撃を決して止めさせはしない――。

土橋・サヱ

「私が言うのもなんですが……行き過ぎた宗教と言うのは好きませんね」
 |土橋《つちはし》・サヱ(鴉の剣、狐の太刀・h00850)は、刀である。寺社に奉納された刀が付喪神へ昇華したサヱは、少なからず信仰を得てこの世に顕現した存在だ。故にサヱはこう考える。
「等しく人が導かれるのが宗教。貴女のそれは未来を奪うモノ。ならば人から生まれた私がことごとくその思惑を打ち砕きましょう」
「この国土着の信仰に由来する方のようですね」
 聖ポメラニアンはそう言うと、サヱへと一瞬で距離を詰める。五本の腕から繰り出される連続攻撃。まずぶつけられんとしてくるのは背中の十字棍。サヱは大口径拳銃によって腕ではなく、十字棍そのものを狙って撃つ。破壊力を追求した弾丸は、棍――即ち殴りつけることを想定しているからには頑丈に作られた筈のそれを何発か集中させてぶつけることで破壊する。武器破壊狙いだと理解するや、香炉を持つ聖ポメラニアンの腕がそれを捨ててフリーになった。彼女はサヱが自身に「傷を与えないことを目的として」武器破壊を選んだことを理解している。サヱの大口径拳獣はマガジン式ではない、リボルバーだ。だから聖ポメラニアンのフリーになった腕はサヱの持つ拳銃のシリンダーを掴もうとしていた。銃を撃てば聖女は自ら自身に傷をつけさせるだろう。シリンダーを掴ませれば銃弾が発射できない。畢竟、サヱは最善を判断する。聖ポメラニアンの懐に飛び込み、暗器でもってまず彼女の短杖を破壊する。そして次にゼロ距離射撃が可能な拳銃の銃口から寸鉄を突っ込む。がり、と内部の構造を傷付けたのを確認する。これで銃を撃とうとすれば暴発する可能性が出てきた。香炉はすでに聖ポメラニアン自身が手放している。さらに仕込んであった卸金を取り付けた暗器でもって戦斧の刃を削り、幾度も銃で撃つ。聖ポメラニアンの武器をすべて潰し、最も効果的な間合を保ちながら聖ポメラニアン本体へと攻撃すべく右手に霊刀【影打ち】を、左手に大口径拳銃を、そして体の至る所に暗器や短刀を仕込んで【|傭兵式白兵術《ヨウヘイシキハクヘイジュツ》|・《・》|極《キワミ》】を繰り出した。
 傷ができるごとに聖ポメラニアンの救済十字剣を持った腕が増えるが、魔力によって紡いだ防護膜がサヱへの負傷を防ぐ。遠隔拘束術はそもそもの間合を作らないように動いている。
 四百と五十年、そしていくらかの時をかけて培った雑賀の戦技が、聖ポメラニアンへと叩きこまれていった――。

空地・海人

 ――|空地《そらち》・|海人《かいと》(フィルム・アクセプター ポライズ・h00953)は、変身ヒーローである!
「現像!」
 ルートフィルムを収めたカメラ型バックルの変身ベルトを腰に巻き、叫ぶことによって海人は『フィルム・アクセプターポライズ √汎神解剖機関フォームへと変身する!
 緑の装甲を纏う√汎神解剖機関フォームは、エネルギー弾を発射する拳銃「イチGUN」からエネルギー弾を発射する。星詠みが示した聖ポメラニアンの用いる五本腕連携攻撃への対処法、海人は考えに考え、考え抜いた。そして出した答えは、「やっぱ分かりやすいやり方が一番いい」だ。
「シンプルに全部、撃ち抜いてやるよ!!」
 自分より先に聖ポメラニアンと戦ったEDENによって施されたものか、聖女の持つ武器はその本来の破壊力よりも劣った状態である。だから海人は、そのシンプルでわかりやすいやり方を貫くことが出来た。聖ポメラニアンの持つ五本の腕から繰り出される攻撃は、どれも鈍かった。銃を持つ彼女の手から水銀の弾丸が撃ち出される。その弾丸をも、海人はエネルギー弾によって撃ち抜く。撃って撃って撃ちまくる、数撃ちゃあたるの精神だ。
 水銀とは、常温で液体の性質を持つ唯一の金属である。その水銀を弾丸として撃ち出すからには、その弾丸は√能力によって固定化されたものであるのだろう。だが、そして、海人のイチGUNは実弾ではなくエネルギー弾を撃ち出すものであり――熱を持つものだ。エネルギー弾によって撃ち抜かれた水銀の弾丸は、液状へと戻って広間に散り、そして熱によって蒸気化する。これは海人は全く意図していなかったことだが、ここに来て水銀の最も恐ろしい特性が発揮された。つまり、水銀蒸気――脳をはじめとした中枢神経に作用する神経毒である。海人にとってはまったく、あまりにも幸運なことに、√汎神解剖機関フォームは状態異常耐性を二倍にする効果を持つフォームだ。故に、海人に対しては猛毒である水銀蒸気は全く効果を発揮しなかった。しかし、聖ポメラニアンは違う。
「ぐっ、うぅ……」
 聖ポメラニアンが自らの武器として√能力化するに至った水銀の弾丸が、蒸気化して彼女自身を苛んでいる。今すぐに致死に至る性質の毒ではない。弾丸の状態であれば固形である。彼女に害をなすことはなかった。海人が、エネルギー弾という熱を以て弾丸を撃ち落とすという戦法を取ったが故の副次作用である。
 中枢神経の麻痺によって動きを鈍らせた聖ポメラニアンへと、海人は空撮爆弾・肺アングルボマーを突撃させ、爆破させる。
「ポライズ……エクスプロージョン!!」
 瘴気を撒き散らす爆弾が、聖ポメラニアンへと炸裂した。

静寂・恭兵

「ヴァチカン、聖人蘇生庁の聖者、か……|√汎神解剖機関《ウチ》もまだまだやっかいな組織を抱えてるものだな」
 |静寂《しじま》・|恭兵《きょうへい》(花守り・h00274)はそう呟き、同じ√の|警視庁異能捜査官《カミガリ》としては見過ごせないな、と続ける。
「あなたにはあなたの職務があるのでしょう。私には私の職務、いいえ、義務……それも違いますね」
 私は誓っている。父と子と聖霊への私の誓いは、必ず果たされるのですから。
「おう、職務を全うさせてもらうさ――その途中で、あんたの「絶対」が崩れても、文句は言うなよ」
 そう言うと、恭兵は自らの√能力を発動させる。【|霊震《サイコクエイク》】は、|警視庁異能捜査官《カミガリ》の√能力者であれば必ず使えるといっていい、基礎中の基礎だ。
 霊能震動波は、聖ポメラニアンに対して震度7相当の震動を与え続ける。地面が揺れているのではない。聖ポメラニアン自身が揺らされているのだ。範囲外へ逃げれば震動から逃れることは可能だが、恭兵の【|霊震《サイコクエイク》】の効果範囲は半径五十六メートルに及ぶ。そうなるともう、戦闘も儀式も行うことができない。そもそも、地震慣れしているこの国の人間でさえ震度7では動くこともできない。|況《いわん》や、聖ポメラニアンは他国の聖者であろう。立っていることも、戦闘行動を行うことも叶わない。そして、震動だけでは傷は出来ない。故に、聖ポメラニアンは自身の√能力を発動させることも出来ない状態でいた。完全な無力状態に陥った聖ポメラニアンに対し、恭兵はゆっくりと近づいていく。そう、聖ポメラニアンだけが震動の影響下にある。恭兵は自在に動けるのだ。床に這いつくばったままの聖ポメラニアンへと、恭兵は宝刀「曼荼羅」を鞘走りさせて抜き、聖女の体を斬り裂いた。聖ポメラニアンに明らかな傷がつき、血が飛沫くと同時に腕が増えるが、動けないこの現状において腕が増えたから何ができるわけでもない。彼女の√能力は、自らの体に腕を生やす者であるからだ。故に近接攻撃は使えず、そして遠隔麻痺攻撃ですら恭兵が近距離の間合いに入ってしまったが故に使うことができない。
「まあ、俺の|職務《シゴト》はこれまでだ。あんたはまだまだ死ねないみたいだが、せいぜい楽に死ねるといいな」
 聖ポメラニアンの死は既に決定しているという口ぶりで、恭兵は彼女の豊満な胸元にぐいと銃口を押し込み、引き金を引いた。
 ――銃声は押し殺されて、聞きとれはしなかった。

フォー・フルード

「聖ポメラニアン。多腕の聖者」
 フォー・フルード(理由なき友好者・h01293)が零したそれに、聖ポメラニアンが言葉を返す。
「どうかしましたか? 名前が可愛いことでしたら、それは良いことですけれども」
「ああ、いいえ。まさか聖職者との共通項に戦闘スタイルがあるとは思っていなかった物で」
「そうですか……」
 聖ポメラニアンはあからさまにしゅんとした様子を見せた。偽名であるということだ、この名前が気に入っているのだろう。褒めてもらいたかったのだろうか。そんな聖女の様子に気づいていないのか、或いは気づいていながら触れないことにしたのか、フォーは聖ポメラニアンにこう告げた。
「得難い経験です。戦闘能力向上のためのサンプルケースとして、挑ませていただきます」
 既に聖ポメラニアンは多数のEDENと交戦した。五本腕の持つ武器にも綻びが出ているし、彼女自身傷だらけだ。それでも彼女は、彼女自身の信仰にかけてこの場を放棄しない。既に彼女は誓っている。そしてその誓いは必ず果たされると言っている。ならばまだ生きている限り――死ねない限りは、聖ポメラニアンはどれだけ劣勢に立たされようが儀式場から逃げるということだけは行わない!
 フォーは自身の√能力【|泡沫理論・終末試行《プレディスティネーション・テルミヌス》】を発動し、己の過去の姿を模したインビジブル形態へと変異する。一度死ぬまでは解除されない変異だ。そして、このインビジブル形態は|多腕機構《・・・・》であった。そして更に【|機能的同等物《カタログ・レゾネ》】によって合計四十四の刀とアサルトライフル「Thurston3-C」をその増えた腕に携える。己と同等以上の腕の数を備えたフォーの姿を認めた聖ポメラニアンは、床を蹴ってフォーへと迫る。十字棍の一撃を、刀によって受け止める。次に振りかぶられた戦斧は、アサルトライフルの一斉射撃によって遂に砕けた。戦闘機械群のオイルで作られた液体火薬弾は、フルオートで撃ち込まれ、だから加減など出来はしない。戦斧を握っていた腕が吹き飛んだ。短杖の攻撃は十字棍同様に刀で受ける。
 そうして三つまでの連撃をフォーが捌いたあと、聖ポメラニアンは銃弾から水銀の弾丸を撃ち出した。かなりの近距離から放たれた弾丸であったが、それを搭載された弾道予測機能によって着弾地点を予想し、その機械の肉体、どこまでも戦闘に特化したインビジブル形態によって無理矢理にその場でトンボを切って避けた。そのまま空中でアサルトライフルを発射することで自身の躯体の軌道を変え、壁へと取りつく。聖ポメラニアンは最後に残った腕で、広間に飾られていた――恐らくは儀式のための物であろう、一本の槍に香炉の香りを注ぐ。ただ一振りの身に集中した槍は|審判天使《アンゲルス・ユディキイ》と化し、フォーを|神聖光線《ルクス・ディヴィナ》によって撃ち落とさんとする。その槍にどんな謂れがあるのかなどフォーは知らない。知らないから、光線を壁走りによって躱し、アサルトライフルからの液体火薬弾をしこたまブチ込んで、弾丸が擦れあうことで着火し、爆破した。
 今の聖ポメラニアンはこれ以上腕を増やすことができない。故に、彼女がいま打てる手は水銀の弾丸のみ。銃は一挺、対してフォーの持つアサルトライフルは四十四。
 銃声がいくつもいくつも鳴り響き――遂に、勝負は決着した。
 最後に立っていたのは、フォー・フルードであった。
 蜂の巣になった聖女の遺体に絨毯をかけて、フォーは血塗れの貴賓室を後にするのであった。

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