⚡️オーラム逆侵攻を成功させよ!
●始まった逆侵攻は止まらない
「えーと、皆集まってくれておおきにね! ちょっと今回は特別な作戦になるんやけど……」
星詠みの|濱城・茂音《はまぎ・もね》(HATAKEの伝承者・h00056)が資料を読みながら√能力者達に内容を告げ始めた。
「今回は√ウォーゾーンの統率官『ゼーロット』っちゅう奴が企ててる√EDEN侵攻を抵抗組織の人がそれとなく引き止めててくれてるさかい、その間に逆にこっちから敵の拠点『レリギオス・オーラム』に攻めたれやーって作戦やね。おおまかに5つの作戦に分かれるんやけど、これは皆自由に決めたってええよ」
まず、1つ目は「統率官『ゼーロット』の撃破」。戦闘機械群をすばやくかわし、√ウォーゾーンの羽田空港に天蓋大聖堂カテドラル『カテドラル・ゼーロット』を構える敵司令官ゼーロットに直接対決を挑む作戦だ。
2つ目は「オーラム派機械群の壊滅」。√ウォーゾーンの川崎市中心部で、レリギオス・オーラムの戦闘機械群と積極的に戦い、敵軍勢の壊滅を目指す作戦になる。
3つ目は「大黒ジャンクションの破壊」。√ウォーゾーンの大黒ふ頭にある「大黒ジャンクション」は、√EDENに通じている。√EDENへの大規模侵攻を阻むため、大量の軍勢を送り込めるこの地点を破壊するのがこの作戦となる。
4つ目が「√能力者の解放」。√ウォーゾーンの扇島の地下には、ゼーロットの一派が捕らえた√能力者達を幽閉する為の巨大な『扇島地下監獄』が建設されている。ゼーロットらのレリギオス・オーラムは人類殲滅派だが、√能力者は蘇生するため幽閉していたようだ。ここを襲撃し、囚われた√能力者達を救出するのがこの作戦だ。
そして5つ目が「カテドラル・グロンバインの破壊」。√ウォーゾーンの三ツ池公園にある、花と緑に包まれた|天蓋大聖堂《カテドラル》『カテドラル・グロンバイン』を破壊する作戦だ。そこは合体ロボット『グロンバイン』という簒奪者の拠点だと言われており、厳重な武装と軍勢に守られているようだ。川崎市周辺で最も巨大なロボット工場であるここを破壊できれば、ゼーロットを飛び越えて、戦闘機械群全体に打撃を与えることができるだろう。なお、グロンバインは現在不在のようだ。
「どの作戦で進めるかは皆に任せるけど……相談し合って決めるのがうちはええと思うよ!道中危険や戦闘も沢山あるやろうけど、皆なら勝てるって信じてるからね!」
そう言って、茂音は√ウォーゾーンに繋がる道を案内するのだった。
第1章 ボス戦 『ケッ戦機アスォード』

●ケッして通してなるものか! いいや、通るね!
『ケツ意を持った者達がこちらに来たようだ』
そう言って『ケッ戦機アスォード』は√能力者達が通ってきた道の方を向いた。
『通ってきたその道、√EDENに繋がっているのだろう? 通さぬと言われても私はケッして諦めないぞ。さあ、通せ! 通すがよい!』
ケツから剣が光って伸びる。さあ、まずはこいつを片付け、ケッ定的な通行手段を確保しなければケッして川崎市のどこへも行けないだろう――!
――オーラム逆侵攻、ケッ行。
「汝に加速の極致を見せてやろう。ついて来れるか?」
蜚廉は即座に√能力《|穢導閃《エドウセン》》を発動し、疾走殻を軋ませ始める。
『ほう。ケツ意を見せたようだな、貴様!』
ケッ戦機アスォードは|尻《ケツ》に刺さるビームソードを巨大化させ、ゲーミングに輝く英雄豪|決《ケツ》死戦モードに変えていく。
『後悔するが良い!』
そう言ってケツのビームソードを降り下ろしたケッ戦機アスォードの動きを見て、【甲殻籠手】で弾き、【翅音板】から出る翅音で動きを鈍らせる蜚廉。
『ぐぬっ、何だこの音!』
「汝の動き、単調だな?」
徐々に早まっていく蜚廉の加速衝動がケッ戦機アスォードを捉えた。
素早く何遍も降り下ろされる虹色の剣が、蜚廉には当たらない。
『このっ!! このッ!!! 何故だ、何故当たらぬ! ケッして悪い動きでは無いというのに!!』
虹色の剣を素早く回避し、|尻《ケツ》の彼奴に向けてちょいちょいと指で挑発する蜚廉。
「もう見切った。……遅いな、尻の英雄」
『ッッッ!!!』
ケッ行から60秒。挑発に乗って誘発される尻の動きに向かって勢いよく加速し、質量さえもが融合した殻駆の一撃がケッ戦機アスォードを彼方へと吹き飛ばした。
『ガッッ……!!!』
項垂れるケッ戦機アスォード。尻から出ていた虹色の輝きは消え、元のサイズに戻るビームソード。さあ、まだ戦いはケッ行されたばかりだ――。
「いいや通さないね!」
――『通せ! 通すがよい!』と言ったケッ戦機アスォードに対するルシファーの返事である。
「僕ぁこれから羽田でゼーロット君を盛大に煽りに行くんだ! 君等はケツまくって大人しく帰んな!」
『何ィ!? ゼーロット様を!?』
動揺するケッ戦機アスォード。
「さもなくば……君等のケツに鉛の坐薬注入してやる!」
『……ほう、斬られたいようだな貴様!!』
怒りに任せ、|尻《ケツ》のビームソードが虹色の巨大剣と化す。
『うおぉおぉぉ!! 貴様はケッして許さん!! 許さんぞぉぉぉ!!!』
素早く尻から降り注がれる虹色の剣をブーストダッシュで躱すルシファー。
「移動速度はたしかに速いけど……図体がデカいから弾丸バラまきゃ当たるってね!」
√能力《|全武装無制限一斉射《オールウェポン・フルバースト》》を発動し、徹甲弾やミサイルを射出する。
「ケツの剣に全振りした分本体ががら空きだよ!」
『ぐあぁッ!!』
ケッ戦機アスォードの尻に各種弾丸とミサイルが被弾する。しかしケッして泣かない、だって尻で戦う者だもの――。
「はいどいたどいた!」
そしてすれ違いざまにタイキックもかますルシファー。抜かりがない。今、『全員 OUT』の文字が見えた気がする。
「待っててねぇゼーロット君!!」
『うぐぉおぉぉぉ……我が尻を侮辱したな貴様ァァァァ……』
悶えて悶えて、そんな事をしている間に虹色の剣は元のビームソードへと戻っていくのだった。
ケッ行から未だ数分、ケッ戦機アスォードの尻は既に限界点を迎え始めていた――尤も、この後もまだまだ攻撃が待ち受けているのであるが……。
「出たなケッ戦機アスォード! お前のケツ! 半分に割れるまでケッ飛ばしてやる!」
サンはケッ戦機アスォードをビシッと指差した。
『貴様もか!! 我が尻に何の恨みがあるんだ!!』
尻をプリッと見せて強調しながらケッ戦機アスォードは怒る。
「この先か、通らせて貰う! 錬成着装!」
【錬成外骨格|『魔狼』《ウルフヘジン》】を錬成着装し、魔導戦闘バイク|『太陽狼』《ソルヴァルグ》に騎乗して接敵するヴォルフガング。
「此方、ヴォルフガングだ。援護する!」
「√EDEN侵攻を企てているゼーロット氏を止めなきゃいけないね、人々の皆の者の命を守る為に!」
ユナはケッ戦機アスォードを発見し、驚愕した。
「――おっと、√EDENを狙う輩がもう一人……ってええっ! ケツに剣だって!? どこかの漫画に見たようなコミカルな方がお出ましだね〜。でも√EDENには行かせない! そのケツしばいて君の目的も締ケツさせてあげる★」
『ほう、やってみろ』
だがこの敵、威勢は良いが尻は既に傷物である。
「ヒャッハー! 今度の敵はどこかのジジィと同じ戦闘スタイルの変態機デスカァ。開発者の頭は良い感じに狂ってるデスネェ。一度会ってみたいものデース」
『誰が変態機だ、これは誉れだぞ』
真綾の言葉に、そうケッ戦機アスォードは真顔で自称した。尻は誉れ、古事記にもそう書いてある。いいね?
「私は通りすがりの女医さんよ」
クーベルメはナースモードで駆け付けた。
「……あれ、ナースだから女医じゃなくて看護婦か。あ、今は看護師って言わなきゃいけないんだっけ」
今のご時世、コンプライアンスに配慮するのも大変である。
「ケツをしばくお手伝い……ならばこれですね」
巳琥は√能力《|蜃気楼の分隊《ミラージュ・スカッド》》を発動し、12体の見た目を類似させた各素体を配備する。
「……その構え、知っていますよ」
ちるはが見据える先は|尻《ケツ》である。見知った尻の構え。そう、この敵はケツバトルの使い手であると。
――ここまで後続は7名の√能力者、先に戦った者含めて9名が集ケツした。
『……待て待て、後続多いぞオイ!!!』
「俺が呼んだからな」
ヴォルフガングが【魔導電脳篭手|『万物流転』《パンタ・レイ》】で呼んだのは主にクーベルメとサンとちるはの3人だが、それ以上に多くの仲間が彼奴の尻をズタボロにすべく集ケツしている。
そして最速最短で距離を詰めたサン。ただし、千鳥足で。
「うぃー……ひっく。これがわらひの酔いどれ八仙、千鳥足!」
√能力《|酔いどれ八仙、千鳥足《ドランクエルフ》》を発動したサンは謂わば酔拳状態である。
ケツバトルVS酔拳、今ここに極まれり!
『ぬっ、上手に避けるな貴様! その足取りのせいか! 私にはシリ得ぬ技よ……!』
ビームソードに切断されずに上手に躱し、タイキックを決めていくサン。またしても全員OUTの文字が見えた気がする。
『いてっ!!』
ヴォルフガングは【魔導機巧大盾|『天狼護星』《ズィーリオス》】でビームソードを弾きながら、【精霊拳銃|『赤雷』《レッドスプライト》】を剣の柄に当てて破壊していく。
「ちるは姉の弟分として少しだけ本気出すぜ。こんな所であまり消耗させたくないからな」
√能力《|雷纏瞬撃《ブリッツシュネル・ヴフト》》と《|迅狼連鎖撃《シュトルムヴォルフ・ケッテンアングリフ》》を同時発動したヴォルフガングは、|赤雷の精霊《エレクトラ・テスタロッサ》を纏いバイク搭載の魔導機関銃と、多重鎖にした【錬成影装|『変幻暗夜』《ヴァルプルギス》】による攻撃を、速度を上げていきながら放ち、更に雷纏瞬撃がケッ戦機アスォードの尻に突き刺さった。
『アゴァァァァァァァ!!!!』
痔になるレベルの衝撃が尻に|はシ《走》リ、悶えて動けぬケッ戦機アスォード。だが立ち上がってまだまだ動けるぞとばかりに尻を上下させる。
『か……覚……覚悟……!!!』
ビームソードを捌くケッ戦機アスォードを見てちるはは思考する。
「(無防備になりがちな背後すら強い隙のない剣術、そして即断の瞬発力……手強い)」
『貴様らの一人でも首を取れれば儲けものよ!!』
勢いよく尻を振りかぶるケッ戦機アスォードに対し、ちるはは√能力《|不忍術 陸之型《シノバズノロク》》を発動して尻を右掌でビンタし、切断を無効化する。
『あァ~~!?』
気が抜ける声を出しながらへにゃりと座り込むケッ戦機アスォード。
「……だってここにちょうど向かってくるケツがありますので」
『ぐぬ……またしても私のシリ得ぬ技を……!』
「残念ですね、私が知っているこの剣術を極めた御仁はもっと強いですよ」
ちるははとある好々爺の顔を思いながらケッ戦機アスォードへと伝えた。
『いてっ!!』
「相手が剣ならユナも剣で正々堂々勝負だ!」
『良いだろう……』
ゆらりと立つ尻が傷まみれのケッ戦機アスォード。ユナは大剣を構え、√能力《ドラゴン⭐︎ラッシュ》を発動して相手の尻の剣へと大剣をぶつけていく。砕いて、二回薙ぎ払ってからの、重量を載せ全力で尻の剣を叩き落とした。
『ガッハァッ……!!!』
口から吐ケツして座り込むケッ戦機アスォード。
「えへへ、ケッ着が付いたね★ユナの勝ち!」
『いてっ!!』
ちなみにその間、巳琥の12体の分隊はというと。実はケッ戦機アスォードの尻にさっきからずっと集中して射撃していたのである。先程から『いてっ!!』と言っていたのがソレである。
「私は特にケツをシバきたい訳でもないですが……武器のあるお尻に攻撃が集中するのは仕方ないですよね?」
『貴様かッ……さっきから鉛の座薬をずっと投入していた輩は……ッ』
尻から流ケツし始めたケッ戦機アスォード。
「鉛の座薬とは失礼な。ケツしばきのお手伝いをしているだけですよ?」
まだまだ銃弾は尻へと炸裂していく。
『いてっ!!! いい加減に……!!!』
「ヒャッハー!!!」
√能力《|神威殺し《サイズオブタナトス》》を発動した真綾は、事象や概念すらも断絶する神威の大鎌をケッ戦機アスォードの尻へと振りかざす。
『言うのは二度目だが、良いだろう……鎌如き!! 我が尻なら躱せる筈!!』
巨大化させて尻を照らすように虹色に輝き始めたビームソード、柄は既に折れ掛けているし切断能力ももう殆ど無い。
『言うのは二度目だが、覚悟ォォォォォ!!!』
しかし慈悲の無き大鎌の切断攻撃が巨大な虹色の剣をスパッと切断する。
『ガッ……ハァッ……!!!』
「そんなばっちそうな攻撃絶対当たりたくねぇデスネェ。全く狂ってやがるデース」
『貴様ら……そんなに私の尻が憎いか……。そんなに私の尻に恨みがあるかァァァァ!!!』
出血多量のせいか、興奮しているケッ戦機アスォード。誰も恨みは特に抱いていない。この先に通してさえくれればそれで良い事をケッ戦機アスォードはシリ得ない。
『これが私の最後の攻撃になるだろう……。そこの女医、いや看護婦、違うな、看護師! ええいこれだからコンプライアンスは面倒だ!! ともかく受けるが良い、我が最後の尻の煌めきを――』
「動くな!」
『えっ』
ケッ戦機アスォードが喋っている間にクーベルメの√能力《|言葉の拘束《スピーチロック》》が発動し、麻痺して動きが止まる。そして、ケッ戦機アスォードは焦った。
――うわっ……私の勝てる見込み、低すぎ……?
ケッ行開始から五分で、適正√能力やケツバトル基礎能力が分かる戦いの筈だったが、攻撃を与えた人は9人を突破し、ケッ果もすぐ分かった。
このケッ戦機アスォード、前座だという事を本人も今ようやく理解した!!
「こっちこそ通してもらうわ。この先で決着をつける為にね」
√能力《|秀逸ならざる執刀《ダイナミック・デブリードマン》》を発動し、尻へ向けて外科手術用バターナイフを光らせながら近づくクーベルメ。
「私たちで明日を掴むの――後ろを向いて戦うようなやつに負けてたまるもんですか」
『嫌だ……シリたくない……その痛みはシリたくない……!!』
麻痺しても頑張って声帯を動かして赦しを請いているケッ戦機アスォード。だが、残念だが彼奴のケツ末は既に確定しているのだ。
『シリたくなァァァァァい!!!』
クーベルメに思いっきり捌かれて倒された、ケッ戦機アスォード。最早、もう立ち上がれない。またしてもつまらぬ物を斬ったかのように外科手術用バターナイフを拭いて収納するクーベルメ。
「さあ、お通し頂きましょうか」
ちるはは倒れたケッ戦機アスォードを見つめた。――返事が無い。ただの尻のようだ。
「オロロロ……🌈」
サンは酔拳の後に思いっきり虹をキラキラさせていた。呑みすぎ注意である。
そしてようやくサンが立ち直った所で……。
――これにて、初戦はケッ★着!!!
そして、|それ《ケッ★着》と同時に先へ進む道のゲートが開いたようだ。ここから先のケツ断は√能力者達の相談次第だろう。
第2章 集団戦 『バトラクス』

●羽田空港へ向かえ! なお、今回ケツは関係ない
既に、統率官『ゼーロット』の所在は√ウォーゾーンの羽田空港に築かれた『カテドラル・ゼーロット』であることが判明していた。
今居る場所から羽田空港へ行くには、道中に守備防衛している戦闘機械群が居るが戦力の損傷を考えると全てを相手取る余裕は無い。可能な限り敵の群れを躱しつつ、羽田空港へ向かうのが良いだろう。
『ウィーン』
『ガシャン! ガシャン!』
今回はケツは関係ない無機質な機械のようだ。良い感じにしばこう。
……もう、ケツは狙わなくて大丈夫である。
「戦場に展開される敵の牽制、捕縛、突撃」
蜚廉は戦場で機銃を構えているバトラクスをふと見やった。
「いずれも正面から受ける愚は犯さぬ。こちらは転位により、軌道そのものを脱する」
√能力《|潜殻転位《ヨロイノイレカエ》》を発動すると、転位によって視界内のインビジブルと位置を入れ替えて機銃の掃射を回避する蜚廉。
『ミィィーーーン』
10秒毎に移動が可能なこの力は、透明な爆弾となって居た筈の場所へと近づくバトラクスにダメージを与える。
『ウィィン!!』
蜚廉は粘着性のある【斥殻紐】を放ってバトラクスの移動を阻害させる。【蟲煙袋】から出る土とフェロモンはジャミングとなり、バトラクスの追跡を困難にさせた。
『ウィーン……』
中々、蜚廉を見つけられないバトラクス。
『ビーッ!』
見つかったとしても、【甲殻籠手】で攻撃を逸らし、【殻喰鉤】の毒で反撃を喰らうだろう。そして、また転位し、【擬殻布】で周囲に溶け込み擬態する。
『ウィーン!!』
バトラクスは、じれったいと感じているようだ。
【翳嗅盤】で周囲の音を聞いて、掃射される前に駆け抜ける蜚廉。その翻弄する動き、まるで熟練の忍者かのよう。
そしてバトラクスが巡回モードに戻るまで、走っては転位しを繰り返して、撒ききった蜚廉は先へと進むのだった。
「ヒャッハー! 全くヒデェ前座だったデース!」
真綾は前座の|尻《ケツ》を思い出しながらバトラクスの群れを見つめる。
「ようやくまっとうなつまらねぇ玩具が出てきたデスネェ。ケツよりは全然ましデスガガラクタ遊びも趣味じゃねぇデスヨ」
『ウィーン!!』
『ガシャンガシャン!!』
どうやらガラクタ扱いされて怒っている模様のバトラクス。
「さっさとゴミは片付けて次に進むデース」
そう言って真綾は√能力《|驟雨の輝蛇《スコールブライトバイパー》》を発動し、レイン砲台である【エクスティンクションレイン】のレーザーの雨が周囲を焦土へと変えていく。
「光の雨に消えろデース!」
『ミギィィーーン!!!』
辺り一帯へと、殲滅の雨が降り注ぐ。
バトラクスは幾らでも降り止まる気配の無いレーザーに機銃を壊され、中には脳天の制御装置辺りを直撃してプスプスと煙を出す者も居た。
「ゴミはゴミに還れデース!」
『ギュイーーン!!!』
『ガシャン!! ガシャン!!!』
本気モードになったバトラクスは知らない。この後に大軍が押し寄せてくる事を……。
「ケツもシバいたし、後はゼーロットのとこに向かうだけか。にしても雑魚が邪魔だな……」
サンがぽつりと呟く。ヴォルフガングは、戦場を見つめて|雑魚《バトラクス》の数が多いと判断した。
「敵が多くキリが無い。錬金術と魔導工学の力よ、群狼を呼び寄せろ!」
【魔導戦闘バイク|『太陽狼』《ソルヴァルグ》】に騎乗し、サンへと手を伸ばした。
「サンちゃん、俺のバイクにタンデムで乗って暴れるか? 良ければ乗れ!」
「え? バイク? 乗る乗る!」
ヴォルフガングは√能力《|群狼招来《ウルフスルーデル・ベシュヴェールング》》を発動し、29体の魔導機巧獣|『群狼』《ウルフスルーデル》をちるはの護衛につけた。
「ありがとうございます」
護衛の群狼を一匹抱っこして撫でるちるは。
「ゼーロットの控える羽田空港へ突破ですね」
巳琥は√能力《相乗りウォーゾーン》及び《|過負荷機構解放《アプローブ・オーバーロード》》を発動してウォーゾーンを真紅に輝く決戦モードに変形させ、そこにちるはが乗り込んだ。
「ノーブレーキで行きましょう」
「了解です、足場は作りました。気を付けて操縦しますね」
巳琥のウォーゾーンがちるはの足場となる。振り落とす事は許されなかった。
「さーてとゼーロット君のいる羽田空港目指して頑張っていこう! こういう時は自前の脚で移動するに限るね! 健康的でしょ!」
ルシファーはホバー脚部と背部スラスターでまるで高速道路を走るお婆ちゃんのようにシュタタタタと高速で徒歩で移動する。或いは空想で車外に走らせる忍者か。
「パンツァー・フォー! 戦車、前へ!!」
クーベルメは√能力《|少女分隊《レプリノイド・スクワッド》》を発動して出した少女の分隊12名のうち7名を自らの【多砲塔戦車】に乗せ、残り5名をタンクデサントとして戦車の上に乗せて発進を開始した。
行進しながら発射される砲撃で後方支援をしながら前へと進むのだ。
「ゼーロット氏の所までもう少し……! うわっ、今度はメカメカしい輩がゾロゾロと来た!」
バトラクスを見てユナは驚愕するも。
「ケツはもう狙わなくても良さそうだね!」
普段する事の無い安堵をしたのち、少し思案する。
「(ドラゴンプロトコル・イグニッションで一気に倒したいけれど……)」
√能力《ドラゴン⭐︎ヴィジョン》を発動したユナは、青い炎がゆらめく炎製ドラゴンの分身「ブルー・ドラグーン」を召喚し、攻撃を指示した。
「消耗抑えつつ突破したいから、これを試しますか! さあ行くよ、ユナの分身! ヴィジョン!」
ブルー・ドラグーンは|熱核蒼炎息吹《アトミック・ブレス》で周囲のバトラクスを溶かしながらユナと共に突き進んでいく。
『ウィーンガガッ!?』
『ガガーン……』
バトラクス達が後ろに引く。そう、大軍とはこの事であった!
ヴォルフガングは|群狼《ウルフスルーデル》を指揮し、超感覚センサーで索敵をさせながら魔導機関銃でバトラクスを制圧していき、電磁クローでその鋼の身体を麻痺させていく。
『ERROR! ERROR!!』
『:-( 正常な起動に失敗しました。セーフモードで起動しますか?』
一部のバトラクスからは青色の警告文が漏れていた。
「へへへ、いい戦い方思い付いちゃった」
サンは√能力《|陽翼モード《ソーラーサンモード》》を発動してレベル分の空中移動を得、半径24mの敵を燃焼させる『太陽の翼』を装備した。
「これなら乗ってるだけで周囲の敵が勝手に燃えていくよね! ハッハァー! 汚物は消毒だー!」
ブルーなエラーを吐くまでもなく、ジュワッと溶けるバトラクス。
「……でもやっぱり自分で殴らなきゃ物足りない。ヴォルくん、ちょっと離れるよ!」
「分かった! 気をつけろ!」
「うん!」
近くに寄せ付ける間もなくバトラクスを殴り倒していくサンに対して離れる行動を見せるバトラクス。鉄塊に戻りたくはないのだろう。
『ジー……BOMB!!』
バトラクスも反撃する余裕がありそうな相手ならばと、巳琥の操縦するウォーゾーンへと爆破属性の砲弾を飛ばして反撃する。しかしこっちだって地形を利用して爆撃は躱していく。
「|地形情報《建物配置》は事前に情報収集済です」
どんどん爆撃を受けながら前へと進むウォーゾーン。躱す度に過ぎ去った所はもう地形が復活している。
「自動再生力のある戦闘機械都市は√EDENと違ってこういう時便利ですねぇ……」
巳琥が呟く中、ちるはは√能力《|不忍術 伍之型《シノバズノゴ》》を発動し、ナイフの【9月19日】やイオンスライサーの【3月26日】、ファミリアセントリーの【8月25日】それぞれで範囲攻撃を行いながら各種足場になりそうな戦車やウォーゾーンの上を移動し、攻撃を終えて帰って来た。
「皆さんも頑張ってー」
ちるはに手を振られた高速徒歩のルシファーは√能力《|ALL-RANGE ORBIT MANEUVER《オービットレギオンテンカイ》》を発動し、オービットレギオン「イエロージャケット」を放ち辺りのバトラクスを掃射していく。近くの敵はガトリングで攻撃し、機銃も体当たりもサッと躱す。
「こっちの方が機動力上だからね! オービットレギオンで他の人のカバーにも入るかな!」
ヴォルフガングのバイクにもオービットレギオンを派遣するルシファー。
「こういう時は助け合いだよ! 地道に徳を積んでいけば良いことあるでしょ! ギャハハハハハ!!」
そして眼をギラリと光らせ。
「――ゼーロット君首とか洗って待っててねぇ!! 今行くよぉ!!」
と高らかに叫んだ。何故だろう。今、どこかで寒気を感じた者が居た気がする。
そしてクーベルメの居る戦車の上では5体の少女分隊が粛々と突撃銃とレイン砲台で掃射活動を行っていた。
「左45度! 次、右40!」
少女分隊達は命令を従順にこなしながら砲弾を発射していく。そして、バトラクスが密集している地点へ√能力《決戦気象兵器「レイン」》を発動して、レーザーで一網打尽になっていくバトラクス。
『Booooomb!!』
『Namusan!!』
『:-(』
ユナの両手からは【ドラゴン⭐︎バスター】がバトラクスの攻撃を防いでいた。
「誰にもユナ達の邪魔はさせないZE★」
「みんな! カテドラル・ゼーロットまでもう少しだよ! 頑張ろう!」
サンがバトラクスを溶かして鉄塊にしながら周囲の皆へとエールを送り、そしてまたバイクに戻って来た。
「ただいま!」
***
√能力者達は戦場を走り抜け、数多のバトラクスを通過ついでに破壊した。
戦果としては、もちろん上々――いやそれどころか、周囲の敵は事前に焦土にされた分も含め壊滅的に鉄くず同然へと変わり果てていた。
この先にはゼーロットが某『叫び』の両手のポーズをしながら待ち受けている事だろう。もしかしたらケツの話題を振る事だって出来るかもしれない。だって前座にケツを用意する戦場である。ここのバトラクスが機械的である以上、もう話題を振れるのはゼーロット戦のみだろう。
***
「いよいよ着くな……『カテドラル・ゼーロット』に」
ヴォルフガングは魔導戦闘バイクから降りてそびえ立つカテドラルを見つめる。
「ちょっと溶かしすぎちゃったかな?」
サンが溶かした鉄塊で新たな鉄製品が生まれるぐらいには溶かしただろう。
「群狼、ありがとうございました。またね群狼さん」
ちるはは借り受けた群狼へ別れを告げ、群狼が帰っていくヴォルフガングの方を見つめた。
「ノーブレーキだと意外と短い道でしたね」
巳琥は、ちるはの作戦を信じてノーブレーキでここまで最速で辿り着いたのである。
「さて、ゼーロット君今頃どんな顔してるだろうねぇ?」
ルシファーが顎に手をやってカテドラル・ゼーロットを見やる。なおルシファーはとてもニヤニヤしていた。
「どうなるかしらね。まあ碌な司令官でない事は確かでしょうけど」
クーベルメの想像は当たっているのか。
「どんな敵であろうと、ユナ達は負けない! それだけだよ!」
ユナの目つきは真剣であった。
後ろの町々が元通りになっていく中、壊れたバトラクスか溶けた鉄塊だけが残った戦場を後にして。
√能力者達は決意し、カテドラル・ゼーロットへと逆侵攻を決め込む。
――どこかから声が聞こえる。これは、ゼーロットの声だ。
『フハハハ……貴様ら、よくこれだけの前線を突破してきたな! 褒めてやろう……えっ、バトラクスが溶けてる? ケツが切断されてる? 貴様ら何したらこうなるんだ? もしかして貴様ら蛮族か!? おー、こわ……戸締りしとこ……。え? まだマイクスイッチ入ってただと!?』
キィーーンと音が鳴る。暫しの間があり。
『……ゴホン。マイクテス、マイクテス。本日は晴天なり……さて、かかってくるがいい√能力者共! 吾輩は逃げも隠れもせぬぞぉおぉぉおぉ……!』
その声が激しめに震えている事は、明らかであった――。
第3章 ボス戦 『統率官『ゼーロット』』

●正直そこまで強い司令官ではない
『それにしても貴様らそこまで殲滅してからやってくるなんて正気か? ともかく、昇進の為に忙しい吾輩の邪魔だけはしてくれるなよ!』
統率官『ゼーロット』は昇進の為ならばどんな手でも使ってくるのだろう。
……はっきり言うと、この統率官『ゼーロット』、強い敵ではない。
圧倒的不利になる事はまず無いだろうし、この人数なら圧勝になりかねる。
それでも言いたい事があるなら対話してから倒すのもアリだろう。例えば、前座のケツの話とか――。
「(ヒャッハー! ようやく指揮官に会えたデスガなんかスゲェ小物くせぇデース。折角ここまで来たんだから真綾ちゃんを愉しませろデース!)」
統率官『ゼーロット』を見て真綾は即座に感じた。コイツは小物の臭いがプンプンすると。
「真綾ちゃん、もっと手の込んだ歓迎が嬉しかったデスネェ。がっかりさせた分お前が補えデース」
『はぁ? 何を言っている? そもそも吾輩は逆侵攻される事自体望んでしている事ではないんだが、補えと?』
統率官『ゼーロット』は嫌げな態度を見せた。
真綾は√能力《|殲滅する白光蛇の牙《エリミネートバイパーズファング》》を発動し、イオンスライサーの【フォトンシザーズ】を真夏の太陽の様に激烈に輝く|超過機動状態《オーバードライブモード》に変形させて統率官『ゼーロット』の喉元に突っ込んだ。
「自慢の新兵装とやらの力を見せてみろデース。くだらない粗品なら突っ返して代わりにその首頂くデース」
『そうか見たいか! 見せてやろう、吾輩の昇進をかけた新兵装――ツヴァイマウンテンボンバーを!』
と言って取り出されたのは、|二つに割れた山《ケツ》のような爆弾。
「ツヴァイだけドイツ語だしどう見てもケツデース! やっぱコイツケツ野郎の上司なだけありやがるデース!!!」
即座にツヴァイマウンテンボンバーを叩き切った真綾。
『な……我が新兵装がいとも簡単に!?』
「昇進昇進うるせぇデスネェ。そんなに昇進したいなら真綾ちゃん手伝ってやるデスヨ。2階級特進とか超昇進させてやるデース」
『うわぁぁぁ!!!』
2階級特進、即ち死である。|新兵装《ケツ》が割れて逃げ回る統率官『ゼーロット』は、真綾により胴体をスパッと斬られて腹を抑えるのだった。
腹が裂けそうになった統率官『ゼーロット』の前に現れた蜚廉は、√能力《|蠢影《シュンエイ》》を発動し、殻潰れる度に増える分体を69体召喚する。
『うわぁぁぁぁ!!?』
統率官『ゼーロット』は火花散る腹を抑えながら思わず後ろに引いた――が、後ろにも蜚廉の分体が待機していた。
「……数は力だ。群れぬ我であっても、必要とあらば幾千幾万の足で踏み荒らすまで」
69に本人足して70人の蜚廉が【甲殻籠手】で統率官『ゼーロット』の関節を固定し、【跳爪鉤】と【殻突刃】でザスザス刺すように装甲を攻撃し、【殻喰鉤】でパーツをもぎ取っていく。
『や……やめろォ……!!!』
70人の攻撃はまだまだ止まらない。【蟲煙袋】の土とフェロモンで感覚を鈍り曇らせ、【斥殻紐】を駆動部に絡ませ縛って動きを奪った。
『吾輩を辱めるなァァァアァ!!!』
必死の叫びも70体の暴力には届かず。腹の装置からビームを撃つ暇も無かった統率官『ゼーロット』は、蜚廉に蹂躙されていく。
「装甲も武器も、砕けばただの屑鉄だ」
この後、更に鉄塊以下の存在になるとは、ゼーロット本人ですら予想出来なかった。
怒涛の√能力者による攻撃は止まらない。
「この程度か? 戦力100倍用意して来いよ。手加減したんだぞ? ヘタレクソ雑魚指揮官とか、王劍貰えないからケツに尻光剣を挟んだとか、剣先がケツ穴確定で刺さったとか噂流れてるけど。マジ?」
ヴォルフガングの言葉に口を濁らせる統率官『ゼーロット』。いや、口も先ほど蹂躙されたので発音が難しくなっているのかもしれないが。
『……そこまで言うなら、吾輩が発明した|ツヴァイマウンテンボンバー《ケツだけ爆弾》を見たいという事で良いか……?』
「うわマジでケツみたいな新兵装作ってたぞこいつ……」
ヴォルフガングにとって今の言葉はただの煽りだったが、先ほど斬られた残骸のツヴァイマウンテンボンバーを見てケツとしか思えなかった。ドン引きしていたが、更にドン引きした。
「あー!! いたいたゼーロット君!!!」
ルシファーは統率官『ゼーロット』を指差す。
『……ん? 吾輩そんなに有名人だったか? いやぁ照れるな……』
だが、その指差しは嘲笑である事に即座に気づく羽目になる。
「ポンコツが雁首揃えていることで有名な|人類抹殺派閥《レリギオス・オーラム》で政治闘争ばっかりやってるアッパラパーのゼーロット君じゃないか!!」
『誰がアッパラパーだ……!!!』
嘲笑われた事に気づき、わなわなと震える統率官『ゼーロット』。
「元気? 僕が|スーパーロボット派閥《レリギオス・リュクルゴス》にいた頃からずーっと変わってないねぇ君! 何度かちょっかいかけてきたけど返り討ちにしたんだっけ!」
『ハッ、そんなの覚えて無いですぅー!』
程度の低い返しをするゼーロットもゼーロットである。
「で、まだ不毛な権力闘争続けてんの? そんなことしてるうちに本丸攻められちゃってるじゃん! 大丈夫!? ギャハハハハハハハハ!! あ、そうそう……君www王劍www貰wえwてwなwいwんwだwっwけwww」
ルシファーの口撃は止まらない。
『ハァーー!!? 貴様如きに言われたく無いんですがァーー!!? 吾輩の昇進が可能な能力が分からないとか貴様の目は節穴ァァー!!? オーイ目ン玉入ってますかァァーーー!!?』
段々子供の喧嘩めいてきた。
「もしかして転売品でワンチャンとか考えてる? やめときなってボラれた挙げ句箱だけ届くのがオチだよ。しかし今回の手勢もひどいもんだねぇ、ケツから剣生やしたやつにいつものポンコツバトラクスでしょ? まともな人材どこいったんだか!」
『まともな人材ならここに居ますぅーー!! そう! 吾輩!!!!』
口撃はルシファーの勝ちだろう。そして第二ラウンド、ユナのターン!
「あ! 君がゼーロット氏? 蛮族って√EDENの皆の者を巻き込んだ侵攻をしている君の方が蛮族じゃないの? そんなのユナ達が許すわけないじゃん!」
『√EDENの名の由来を知らないのかァ?』
引き続きアドレナリンビンビンで煽っている統率官『ゼーロット』。
「それに統率者でありながら戸締りとか昇進とか……ハリボテ被った小物じゃないの? そもそもケツ戦機とか尚更小物感あるよね〜★ 統率者としてOUTだよね? 恥ずかしいよね?」
『OUTじゃ無いし!!! 皆で寄って集って吾輩の事虐めやがってもう許さないぞ!!?』
統率官『ゼーロット』に血管が通っていればピキピキ浮き出ていただろう。
「出たなゼーロット! お前のケツをシバきに来た! え? なんでケツを狙うのかって? ……大体全部アスォードが悪い! 恨むならアスォードを恨むがいい! 覚悟!」
『くっそォォ……誰だ前線にアイツ配置した奴……!! あっ吾輩じゃん!! くそっ吾輩のバカバカバカ!!!! それはそれとして貴様らの侮辱行為の限り、絶ッッッ対吾輩は許さんぞ!!!』
サンの言葉にまだワナワナ震えているゼーロット。もはやケツの統率官とあだ名がつきそうである。
「追い詰めたわよ、ゼーロット。首を洗って……いえ、お尻を洗って待ってなさい!」
『嫌だァァ!! よってたかって!!! 貴様も吾輩の尻を狙う気なんだァァァァ!!!』
クーベルメの言葉に発狂しかける統率官『ゼーロット』。
「ゼーロットさんってほんとよく喋りますね……というか、皆さん口撃が上手ですね」
ちるはは傍観しながら頷く。
『ハァ、ハァ……。よく喋るのの8割ぐらいは大体貴様らのせいだからな?』
統率官『ゼーロット』は、息が上がっていた。
「でも差し向けた部下?センスは認めます。叩きがいのある尻、1体頂きたいぐらい丸くてかわいいメカ:-) とてもよきでしたありがとうございます」
『貴様だけだよ吾輩を褒めてくれる√能力者は……ぐすっ』
思わずオイルを拭く統率官『ゼーロット』。
飴と鞭、その飴がようやく来た……と思いきや、巳琥がトドメを刺す。
「過去にゼーロットさんに対峙した時に鹵獲した|部下達《ハッタ・ラーケ》の愚痴を聞きましたがそれはもう評判が悪かったようなのです」
『えっ……本当か?』
部下に告発されるほど嫌な事をした覚えがあったのか、オイルの滝汗がだらだら垂れてくる。
巳琥の√能力《|白き鳥の指揮者《コンダクター・オブ・シマエナガ》》発動でシマエナガビットが72体飛び、録音した機材から聞こえるブラック現場からの嘆きが場に響く。『プライバシー保護の為、[暗号作成]で音声を変えております』という札を備えて部下の嘆きがゼーロットのオフィス中に響き渡る。
『正直最悪でしたよもう。ケツ野郎ですよケツ野郎』
『アイツの尻ぬぐいするぐらいだったら爆発四散した方がマシです!』
『ここだけの話、ツヴァイマウンテンボンバーは力作だとか……全然分からないですよもう、どうしろっていうんですか俺たち』
告発される部下の愚痴と嘆きに汗が地面を濡らした。
『ア……アァ……』
頭を抱える統率官『ゼーロット』。
「こんなのにトップを任せたらロクなことにならないのですよ!」
その|言葉《口撃》を皮切りに、一斉攻撃が始まった。
「サンちゃん、【雷化】で強化してやるから好きに暴れな!」
ヴォルフガングが【精霊拳銃|『赤雷』《レッドスプライト》】を構え、√能力《|赫霆覇道《ローター・ブリッツ・ドミナンツ》》を発動しながらケツに麻痺の射撃を叩き込む。雷の暴風がゼーロットのケツを痛めつける。
『ガッハァ!!!』
装甲がほぼ無い今、とんでもない痛みを覚えた統率官『ゼーロット』。シマエナガビット72体は連携して射撃を叩き込んだ。
『ウヴォァア!!! こん畜生!!! 昇進の邪魔するなァァァァ!!!』
統率官『ゼーロット』はやけくそになってツヴァイマウンテンボンバーと腹からビーム攻撃を繰り出すも、ヴォルフガングは【魔導機巧大盾|『天狼護星』《ズィーリオス
》】を構えて自動回避し、ルシファーはスラスターを吹かしてダッシュして回避し、サンが雷化で強化された動きでサッと躱して接敵する。
「そんなにケツに挟んだり刺したりするのが好きなら、お望み通りにしてやるぜ! 皆タイミング合わせるぞ!」
『だからァァァ!!! 違う!! ケツ野郎じゃない断じて!!!』
ヴォルフガングによる風評被害がゼーロットのメンタルを傷つけていく。
「どこ狙ってるの? 攻撃ってのはこうやるんだよ!」
サンは√能力《サン式コンボアーツ》を発動し、飛び蹴りを喰らわせ、ワンツーパンチによる牽制と震脚による範囲攻撃を与え、内部に響く打撃による捕縛攻撃で装甲破壊済みのゼーロットをボコボコに痛めつける。
「ま、そんじゃあちょっと遊ぼうかぁ」
ルシファーは愉しそうに笑った。
『うわっコイツ明らかに下に見てやがる』
√能力《|全武装無制限一斉射《オールウェポン・フルバースト》》で発射される多数の弾幕を避けようと統率官『ゼーロット』はインビジブルと交代し、それを見計らったかのように√能力《|COUNTER ORBIT LEGION《カウンターオービットレギオン》》が放電を学習して放電を以て返す。
『学習……しただと……!!』
√能力《|ALL-RANGE ORBIT MANEUVER《オービットレギオンテンカイ》》を使って更に射撃を追加していく。
『やめろッ、おいやめろ……ッ!!!』
クーベルメは√能力《|Einzelkampf《アインツェルカンプ》》を発動し、戦いで死んでいった者たちの思念を纏って【軍用シャベル】を構える。
「いつも武器として使ってきたシャベルの本来の使い方を思い出したの。これは掘るための道具なんだって……!」
『き、貴様まさか……!!』
嫌な予感がしつつ統率官『ゼーロット』は腹からビームを放つも、√能力《|シャベル格闘術《スミヤカニ・ジンチヘンカン・セヨ》》を発動したクーベルメは軍用シャベルでケツの装甲を掘っていく。
「……全然鍛えてないお尻ね! ケッ戦機アスォードのほうが立派だったわ、シャベルで掘られて一人前のお尻になりなさい!」
『尊厳破壊!! 尊厳破壊ィィィィィィィ!!!!!』
尊厳はそりゃあもう――とっくに破壊されているのである。
そこにサンが、24回のラッシュパンチを尊厳破壊ついでに喰らわせていく。
「弱尻めッ! アスォードさんのケツはもっと硬かった! こんなケツで王劍が挟めると思ってるの!?」
『貴様ら……名誉も破壊しやがって……!?』
そろそろプッツンとキレそうである。お尻が。
「焼きを入れちゃおうかな〜?言葉通りドラゴンの「炎」でね!」
ユナは√能力《ドラゴンプロトコル・イグニッション》発動により|真竜《トゥルードラゴン》へと変身し、灼熱のブレスを放っていく。
「抵抗したってどんな攻撃も干渉も効かないから無駄だからね! ガオーッ!!」
『熱い暑いアツい!!! やめろ!!! バトラクスみたいにドロドロの鉄塊にするつもりかァ!!!』
鉄塊状態で残っていれば良いのだが――。
「トドメは任せた!」
√能力《|赫霆薔薇蹴《ローゼ・ミョルニル》》を発動したヴォルフガングは、チャージを終えた【錬成外骨格|『魔狼』《ウルフヘジン》】に内蔵した賢者の石の力で威力18倍の円錐状に渦巻く薔薇色の赤雷を纏う飛び蹴りを放ち、統率官『ゼーロット』をルシファーの方角へ向けてぶっ飛ばす。
『うわぁぁぁ!?』
そして飛んでいく統率官『ゼーロット』にちるはが√能力《|不忍術 陸之型《シノバズノロク》》でちょこっと右掌で触れればゼーロットの√能力は無効化され、もう転位して避けるなども出来ない。
「オッケー、ヴォルフガング君いい位置だよー!」
気づけばルシファーはバッターボックスに立っていた。√能力《|TITAN'S HAMMER《スベテヲタタキツブスボウリョク》》発動でどこからともなく出現した巨大な建築資材を振る、4番DHのルシファー・アーク選手。見事ホームラン!
「羽田発転落人生行きのゼーロット君はただいま離陸しました! 目的地まで快適な空の旅をお楽しみくださぁい!! ギャハハハハハハハ!!」
そしてホームラン先、外野のもっと外でサンがアッパーを決め込む。
「これにて|決《ケッ》着!」
「そんなに昇進したいの? 残念だったわね、あなたは所詮ここまで……椅子を尻で磨くだけの男で終わりよっ!」
クーベルメがそう言うと、最後に統率官『ゼーロット』に向けて放たれたのは巳琥による√能力《|インビジブル解放弾《リリース・インビジブル》》。武装からインビジブルを活性化させる薬弾を放ち、ホームラン先の統率官『ゼーロット』のケツに命中。体力がとっくに3割を切っていた統率官『ゼーロット』は体内のインビジブルが暴発し、ハイクを詠むまでもなく汚ねぇ花火となって爆発四散した。ナムアミダブツ!
「二階級特進おめでとうってところかしら!」
クーベルメが死の花火へ向かって拍手する。
「……レリギオス・オーラムにそういう制度があるかどうかは知らないけどね」
「みなさんおつかれさまでした」
羽田ドライブが出来たのでちるははとても満足かつご満悦であった。
それにしてもひでぇ戦いであった――ともかく、これで彼の影響下にあった部下達ややられた√能力者達も浮かばれるだろう。
というかこれがリプレイとして公式に永遠と残るのが恐らくゼーロット本人にとって恐ろしいのであろう。名誉のケツとして、√EDEN運営史に名を刻むのだと。
「というか、煽ったら本当にケツ型武装作ってるとは思わなかったな……」
ヴォルフガングが溜息を吐いた。
「ケツ野郎の評判は本当だったみたいですね」
巳琥が頷く。
「いやぁ愉快愉快! 転落人生じゃ済まないかもねぇ!!!」
ルシファーは凄く愉しそうに笑っていた。
「みんなお疲れ様、それじゃあ試合終了って事で帰ろうか!」
「ええ、そうね」
「帰ろ帰ろー!」
サンがそういうと、クーベルメとユナも頷いた。
「帰るまでが逆侵攻ですよ」
ちるはがそう言って最後にゼーロットが居たオフィスを後にした。
ゼーロット ケツの統率官としてここに眠る――R.I.P🍑