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⚡️フォートレス・ツルミは燃えているか
●攻勢の隙を衝くべし
「――遂に、この刻が来ましたのね」
√ウォーゾーンの横浜市鶴見区。その幹線道路に建つ要塞フォートレス・ツルミの中で、ルージュ・フォン・シャッテンブルク(|影の城の主《ロード・オブ・シャッテンブルク》・h06128)は唇の端を吊り上げ、笑みを浮かべた。
この一帯を支配する派閥『レリギオス・オーラム』の動向を探るべく潜入していた彼女は、ようやく待ち望んでいた予知を得たのだ。
統率官『ゼーロット』が、√EDENに侵攻せんとしている、と。
(好機到来、ですわね。ゼーロットが√EDENに目を向けている間に、その足下を掬って差し上げましょう)
薄く笑みを浮かべたまま、ルージュは人知れずフォートレス・ツルミの地下へと向かった。
●フォートレス・ツルミを陥落させよ
フォートレス・ツルミの地下は牢獄になっており、そこには少なからぬ数の√能力者が囚われていた。ルージュは彼等を牢から解放すると、自らが視た予知について告げ、協力を要請する。
「ギブアンドテイク、と参りましょう。――如何ですか?」
「いいぜ。オレ達も意趣返しをしたいところだったしな。だが、具体的にはどうすればいい?」
「そうですわね。採れる手段は幾つかありますが、どれを選択するかはお任せ致しますわ。皆様で、よく相談して決めて下さいませね」
そう言って、ルージュは√能力者達に五つの選択肢を示した。
一つは、羽田空港の『カテドラル・ゼーロット』に向かい、ゼーロット麾下の戦力を削ること。
一つは、川崎市の中心部に向かい、そこにいる戦闘機械群の戦力を削ること。
一つは、√EDENへの通路となっている大黒ジャンクションに向かう戦闘機械群の進撃を遅滞させること。
一つは、此処以外で囚われている√能力者達を解放すること。
一つは、未知の簒奪者にして合体ロボットである『グロンバイン』の拠点、『カテドラル・グロンバイン』に破壊工作を仕掛けること。
「ですが、何れを採るにしても、皆様にはまずやって頂きたいことがありますわ。
それは、此処を警備する戦闘機械ターン・キーの撃破と、このフォートレス・ツルミの破壊・陥落」
「――陽動、と言う事か」
「察しがよろしいですわね。幹線道路を押さえる要衝である此処が落ちれば、戦闘機械共の目は釘付けになることでしょう。
本命の作戦を成功させるためにも、精々派手に此処を破壊して下さいませね」
ニィ、と邪悪さすら感じさせる笑みを浮かべながら、ルージュは√能力者達に一礼した。
これまでのお話
第1章 集団戦 『ターン・キー』
●近寄らせなければ、如何という事も無く
(ここが、フォートレス・ツルミですか……)
幼い外見の少女、アリス・ミッシングルート(不思議な√のアリス・h08025)は周囲を見回しながら、はぁ、と肩を落として嘆息した。
作戦行動中に近くを通りがかっただけのはずなのに、いつしか要塞の中に迷い込んでしまっていたからだ。そんな必要は無いのに、と自分を責めたくもなるのは無理からぬ所だった。
だが、アリスはすぐに思考を切り替えた。迷い込んでしまったのなら、いっそ内部から攻撃して陥落させてしまえばいいのだ。
ちょこちょこと要塞内をうろつきながら、アリスはせっせと要塞の各所に爆弾を仕込んでいく。
ドォン! ドォン! ドォン! 要塞内の各所で、仕掛けられた爆弾が起爆し、内部からダメージを与えていった。
そんなことをしていれば、当然異変に気付かれて警備の戦闘機械、ターン・キーが現れるのだが、アリスはその√能力の弱点を既に見切っていた。
(剣にエネルギーをチャージして、接近しなければならないようですね。それなら……)
ターン・キーが剣にエネルギーを集めている間に、アリスは後退しながら周囲の壁や床に爆弾を仕掛け、ターン・キーが接近しようとする瞬間に爆発させる。
「――!」
(せっかく溜めたエネルギーも、無駄のようですね)
爆風と瓦礫に足止めされている間に、ターン・キーが剣にチャージしているエネルギーが消失したのを確認すると、アリスはターン・キーから逃れて次々とフォートレス・ツルミの内部を爆破していくのだった。
●断ち切られた光熱剣
フォートレス・ツルミに潜入した√能力者の一人である|羽柴・美月《はしば・みつき》(冒険者・h04349)は、物陰から警備を担う戦闘機械、ターンキー達の様子を伺っていた。
この先、ターンキー達との戦闘は避けられない。そう、美月は判断している。
(単純なパワーだと、あのロボット達には敵わない――でも!)
自身の√能力『|武器狙い《ディザーム》』ならば、その差を覆して勝てる。そう確信して、美月はターンキー達の前へと躍り出た。
ターンキー達は、美月の姿を発見すると√能力を発動しながら、その手にした光熱剣で美月に斬りかかろうとする。
(させない! ここ!)
一方で美月もまた、『|武器狙い《ディザーム》』を発動。レイピアで光熱剣を受け流しにかかる。
ターンキー達の光熱剣に比べれば、レイピアの刀身は細く、力負けして折られそうに思える。実際、先頭に立って美月を攻撃した機体は、力押しでレイピアを折り、そのまま美月を斬れると確信していた。
だが、ターンキー達が目にしたのは、彼等にとって信じられない光景だった。
レイピアの刀身が、光熱剣の刀身を断ち切ったのだ。
「――!?」
「隙あり!」
ターンキー達が困惑した隙を衝いて、大きく横に跳んで仕掛けてきた機体の側面に回り込んだ美月が、横からその胴体を貫く。胴体が機能不全に陥ったその機体は、ガシャリ、と崩れ落ちて行動不能に陥った。
美月からすれば、これは当然の結果だ。|武器狙い《ディザーム》は、レイピアが命中した部位を切断するか、一定時間使用不能にする。
つまり、レイピアが光熱剣を受け流した瞬間、光熱剣は切断される運命にあったのだ。そして、ターンキーの√能力は光熱剣の使用が条件であるため、光熱剣が切断された瞬間、いくら二回攻撃が出来たとしても意味を成さなくなる。
あとは、攻撃手段を失ったターンキーの頭部なり胴体なりを突いて、ロボットとしての機能を殺すまでだ。
もっとも、ターンキー達の数は多く、こればかりは|武器狙い《ディザーム》では対処しきれるものではない。だが、元よりスピードやテクニックに長じた美月は、逃げる振りからの不意の反転攻勢や、狭隘な通路への誘導などの手段を駆使して包囲されるのを回避し、一体、また一体と確実にターンキー達を戦闘不能へと追い込んでいった。
●|尽《ことごと》く敵を灼くは焔の波
(戦闘機械、ね――どんな仕組みで造られ、動いているのか、興味は尽きないところだけど)
|黄昏・剱《たそかれ・つるぎ》(鋼焔の後継・h09087)は、立ちはだかるターンキーの群れを見遣った。鍛冶師にして技術者を自認する剱にとって、戦闘機械は興味深い相手ではある。
だが、剱にとって優先すべきは、この場のターンキーの殲滅だ。故に、剱は焔を纏う両刃の大剣の柄を握り直し、いざターンキー達に仕掛けようとしたのだが。
(……うん?)
眼前の光景に、剱は我が目を疑った。ターンキーの数が大幅に増え、密度が上がったように見えたからだ。
(そう言う√能力、かな? でも――)
要塞内では、その数は十全には活かしきれない。そう判断した剱は、ターンキー達に向かって駆け出した。ターンキー達も、剱めがけて突撃する。
「燃やし尽くそう――薙ぎ払う!」
先頭にいるターンキーの一体が斬りかかってくるよりも速く、剱は大剣を大きく横に薙ぎながら、√能力『|焔の波濤《フレイム・ウェーブ》』を発動。
大剣を覆う焔が、波の如く拡がってターンキー達を灼いていく。最初の焔に耐えたターンキーも、再度繰り出された焔の波には耐えきれずに残らず爆散した。かくして、剱の周囲54メートル以内のターンキーは残らず撃破。
その後も、同様に数を頼んで接近してきたターンキーを次々と焔の波で灼き払いながら、剱はフォートレス・ツルミの中を進撃していった。
●戦闘機械を穿つ令嬢の拳
(ふむ、まだ戦いが残っている地域が? 念の為、回っていて正解でしたわね)
フォートレス・ツルミで未だ戦闘が続いていることを識ったリーリエ・エーデルシュタイン(アンダー・ザ・ローズ・h05074)は、その内部へと潜入を試みた。
そこでリーリエは、警備のターンキー達と遭遇。
(……潜入したようで遭遇戦、運がいいのか悪いのか)
ふぅ、とリーリエは嘆息する。何処かの令嬢、と言っても通用するであろう、長い黒髪に、黒をベースとしたドレス姿のリーリエがそうする様はとても絵になる――のだが。
その全体像には似つかわしくない、黒いオープンフィンガーグローブ「闇裂く花びら」を着けた手を握り、やることは一つだと言わんばかりにリーリエはつぶやいた。
「壊していいなら、壊してしまいましょう」
リーリエの存在と戦意を察したターンキー達は、√能力を発動してその数を10倍にまで増やす。だが。
「ふふ、お馬鹿さんですこと」
リーリエは、それを見て|嘲笑《わら》う。野外ならば、ターンキーがその√能力を使うのも理解出来なくはない。だが、フォートレス・ツルミの内部と言う屋内での戦闘においては、一度に戦える数が限られる以上、十全に数を活かせない悪手と言えた。
「エーデルシュタインの百合は、華麗で陽気で、荒々しいのよ!」
高らかに叫びながら、リーリエは√能力『|花の嵐《テンペスト》』を発動。
「――鋼玉甲拳《コランダム》!」
かぐわしい花の香りを纏ったリーリエが、瞬時に、と錯覚するかのような速度で、ターンキーとの距離を詰める。次の瞬間には、リーリエの拳が防御も回避もままならないターンキーの胴部を貫通していた。
ようやく得物を構えたターンキー達が反撃しようとするが、リーリエは圧倒的な速度で後退してから再び距離を詰めると、また別のターンキーを戦闘不能に陥れる。
さらなる反撃は、次の標的にしたターンキーの懐に入って回避し、そのボディをブチ|貫《ぬ》いて仕留める。
「ふふ、楽しい。有象無象がいくら増えても、全部殴って終わるなら簡単ですし?」
愉悦の笑みを浮かべるリーリエがそう評したとおり、ターンキー達はリーリエに全く傷を負わせられずに壊滅に至る。
その後リーリエは、損害を拡大させて戦闘機械群の注意を此処に引き付けるべく隔壁を破壊しながら、フォートレス・ツルミの内部から離脱していった。
第2章 冒険 『警戒網を突破せよ』