シナリオ

⑪無限の万世橋駅・梅田迷宮区

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⚔️王劍戦争:秋葉原荒覇吐戦

これは1章構成の戦争シナリオです。シナリオ毎の「プレイングボーナス」を満たすと、判定が有利になります!
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(毎日16時更新)

●万世橋駅に梅田地下迷宮を繋ぐ意味
 地上のJR大阪駅を出発点として様々な駅に接続されている梅田地下迷宮。それは二階相当の阪急梅田駅を筆頭に阪神梅田駅、御堂筋線梅田駅、谷町線東梅田駅、四つ橋線西梅田駅、そしてJR東西線北新地駅が存在する。これらの全ての駅は地下道からも移動可能でなおかつ様々な地下街を通る。その上に建つビルも多岐に渡る。もちろん百貨店も直接行き来出来る。
 一見便利に聞こえるものの、これだけの施設が重なっていると当然複雑に入り組むことになる。さらに地下街・ビル街はグルメに溢れていて、オタクの為の店もゲームセンターも、果てはハローワークまで地下道で移動出来てしまう。慣れた者にとっては天国のような場所だ。道にもグルメにも生活にも非常に迷う強力な迷宮なのである!
『ふふふ、ここは迷い苦しむ者の負の感情が多く渦巻く場所。怨天怪鳥”以津真天”を配すれば力も強まるだろう。』
『ところで、なぜわざわざ梅田地下街にしたのだ?』
『わしはここしか詳しくないからだ。』

●竜の少女は企んでる
「皆、地下街探索は得意?」
 コルネリア・ランメルツは尻尾をパタパタとちょっと楽しそうにしている。訳が分からない顔をしているEDENたちを他所に話を続ける。
「旧万世橋駅の遺構に無限の駅舎迷宮が出来たのは知ってるよね?その一部にね、大阪府の梅田地下街のエリアが作られたの。そこにも古妖が罠を張って待ち受けてるから退治してほしいの。わざわざ行かなくてもって顔してるね?放っておくと古妖たちの拠点になるし、一般人が迷い込むと危ないでしょう?」
 皆の心の中を見通してコルネリアが続ける。梅田地下街に繋がるあらゆる建物の到達しにくい所に怨天怪鳥”以津真天”を配置しているという。道に迷って疲れ苦しむ事で負の感情が溜まる梅田地下街の特徴を利用して強化、√能力者の選別、罠の3つを仕掛けたようだ。
「ただね、この迷宮出来たばかりで誰も立ち入ってないの。要するに、負の感情はほとんどない。そして、罠は”以津真天”が待ち受けてる場所周辺にしかない。だから、迷宮に入ってもそこまで行く必要はないよ。」
 首を傾げるEDENたち。先を促すとこういうことだ。
 地下街の各店舗や施設は土地の記憶によって運営されているので利用可能。迷うふりをして地下街探索を堪能して陽の感情を高めて”以津真天”力を弱める。いつまでも向かわないと業を煮やした”以津真天”の方からやってくるのでそれを倒す。
「という事で、戦争中の息抜きに少し遊んでいったらどうかな?」
 コルネリアもどこかで遊ぼうかなという顔をしているのがEDENたちにはよくわかった事だろう。

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第1章 ボス戦 『怨天怪鳥『以津真天』』


オーリン・オリーブ

●あなたの懐古にも寄り添うダンジョン
 オーリン・オリーブ(占いフクロウ・h05931)が降り立ったのは地下鉄谷町線の東梅田駅だった。少しばかりの懐かしさを感じながらオーリンは3番出口へと向かう。満を持して梅田地下街に躍り出るが違和感が拭えない。
「人がまるで居ないなんて調子狂うほ。でも考えようによっては歩きやすくていいほ。」
 と言う事で気を取り直して中崎町方面へと向かう。迷うつもりなら反対の大阪第4ビル地下に向かうのだが目的地には時間通りに付きたい理由があった。
「行き先は泉の広場ほ。映画館久しぶりほ。」
 と言う事で無人の梅田地下街をえっほえっほと歩き始める。少し進み右に曲がって曾根崎警察と心斎橋ミツヤの隣を通ってホワイティうめだイーストモールへと入っていく。ここは実のところほぼ一本道。色々誘惑されなければ泉の広場までは迷う事はない、と思う…。うん、直進しなければ大丈夫!
 ホワイティうめだ地下街のイーストモールはたくさんのカフェと飲食、物産から歯医者、スーパーまである。そんな街並みを眺めながらオーリンは歩き、イーストモールの最果て泉の広場へと到着する。しかし、そこはオーリンが知る場所では無くなっていた。
「噴水がないほ…。」
 ちょっとセンチメンタルに浸るオーリン。その時視界がぐにゃりと歪み思わず目を閉じる。少しして恐る恐る目を開けるとオーリンはタイムスリップしていた。地下の雰囲気がレトロ感を増し、広場の中央には噴水があった。
「ほほ。さすがダンジョンだほ。」
 これにはオーリンにっこり。そしていざ14番出口の階段を上がっていくと、あった。懐かしのランドマーク、梅田ピカデリー!ここも現在は映画館を廃業しライブハウスへと変わっているのだが、噴水が復活したのならここも映画館になっているはず!
 オーリンは足取り軽やかに映画館に入っていく。上映する映画は2011年代の物だった。その中からお気に入りの映画を選んでオーリンは堪能した。
「やっぱり大きなスクリーンに大音響で観る映画は格別だったほ。
 て、いにしえのセーブポイントを堪能したし次はどこいくほ?」
 とりあえず噴水の所まで降りながら考えるオーリン。唐突に見に行きたい場所が思い浮かんだ。
「ヨドバシ梅田絶対防衛ラインほ!」

 ヨドバシ梅田絶対防衛ライン。それは地上での移動がとんでもなく不便な心理と道路交通法の結界。具体的には、大阪駅から行こうと思うと地下か空中回廊に上がるかの2択である。そこの現在を見に行く事にした。
 オーリンは再びえっほえっほと歩いて行く。梟なのだから地上を飛べと野暮な事を言ってはいけない。地下街を歩くからいいのだ!
 まずは元来た道を引き返す。そして広めの分岐通路まで戻ってくる。ここを左に行けば谷町線の駅だ。今回はそれを直進して通り抜ける。すると右手側に大きく開けた道がある。その先には大エスカレーターがある。阪急百貨店横にあり地下と地上を繋ぐ6台のエスカレーターが連なる名スポットで、そこを超えると”動く歩道”がある。
「やっぱり動く歩道は外せないほ。」
 エスカレーターで地上に上がり、真っ直ぐ進み、動く歩道に乗って阪急梅田駅方面へ。左手側に曲がったらすぐに上への階段がある。マクドナルド前のこの階段は割と質素なので分かりづらかったりする。それを昇ると阪急梅田駅と大阪駅御堂筋口と中央口を結ぶ空中回廊に出るのだ。
「うーん、こっち側は変わってないほ。グランフロント側はどうかほ?」
 実のところこの空中回廊がヨドバシカメラと繋がったのは8年ほど前。大阪駅側から上がってすぐの所に立派な歩道が掛けられたのだ。それもこれもグランフロントのお陰である。感謝。
 そこから真っ直ぐ大阪ステーションシティ・ノースゲートビルディングを突っ切って中央口方面まで歩き右手に曲がり、エスカレーターで降りる。
「一応、横断歩道はあるほ。でも、大阪駅高速バスターミナルでやっぱり地上からは行けないほ。」
 どうやら結界は健在だった。

『いつまで…、いつまで待てば…。』
 なんかげっそりした怨天怪鳥『以津真天』が飛んできた。映画を観て地下街の端から端と言ってもいい距離を歩いているのだからかれこれ4時間以上待っていた事になる。
「あー、忘れてたほ。とりあえず魔法でズドン!」
『いつまでー!!』
 一発で消し飛ぶ『以津真天』。余程弱っていたのかもしれない。
「よーし、今度は阪急三番街を回って帰ろうほ。」
 遊んで一仕事したら今度はご飯。オーリンは何を食べようかと思案しながらヨドバシカメラに入り、地下1階に向かうエスカレーターに乗り込んだ。

レイ・イクス・ドッペルノイン

●これが梅田迷宮マジック
『レイ、あんたバカぁ?ウメヨド直結の陸橋出来たのに何で地下街行くワケ?』
「ご、ごめん。て、敵は地下街にいるって聞いたし…それにここ完全な大阪梅田じゃな…」
『そっちは大阪駅前第三ビル行きだっての!天井低くなってるのに気付かないの?』
 |レイ・イクス・ドッペルノイン《RX-99》(人生という名のクソゲー・h02896)は通信の向こうから発せられる怒鳴り声に涙目になる。と言うのもAnkerである九十九・玲子のお使いを兼ねてヨドバシカメラ梅田に向かって大阪駅を出たところまでは良かった。言いつけ通り御堂筋口改札から出たのも間違っていない。失敗したのは地下鉄御堂筋線中央改札へと降りてしまった事だった。
 それは仕方ない。何せここは大阪梅田ではなく東京都千代田区神田なのである。土地勘が無くて当たり前だ。おまけに"無限の駅舎迷宮"の一部として古妖も配置されていてその退治に来ているのだ。地下に潜ってしまうのも道理と言うものだ。が、土地勘があるであろうAnkerはとにかく目的地に誘導する事に躍起になってしまっていた。
『で、今はどこ?』
「えっと、阪神百貨店横の通路?」
『待って、御堂筋線改札から移動してるのよね?そっちは大阪駅前ビル行きだっての!引き返して!』
 レイはオロオロと踵を返して元来た道を戻っていく。幸いにして通行人がいないので人混みで流されて方向を間違える事にはならなかった。なんとか南改札まで戻りそこから指示を受けて中央改札に、エスカレーターを昇って大阪駅御堂筋改札前まで戻ってくる。
「大阪駅を抜けて…、あ、正面にヨドバシカメラあったよ。」
『それじゃ、そこからなら大丈夫よね。』
 ホッとした様子の通信を聞きながら|地下に降りる《・・・・・・》エスカレーターに乗る。降りたらくるりと反転してずんずん進む。そこはルクア地下への入り口だった。

『えっ、まっすぐ行ったら昇りエスカレーターあったでしょう?わざわざ迂回してまた地下に潜ったの?なんでぇ??』
 姿が見えなくても頭を抱えているであろうAnkerの様子が浮かんでくる。ちょっと可愛い。
「でも、地下でも繋がってるんでしょう?なら、ここから右に曲がれば…」
『そっちはグランフロント!戻って!ハウス!』
「ハウスって…、どこまで戻るの?」
 くるりと踵を返して元来た道を戻る。なんだか同じ所を行ったり来たりしてばかりだ。とにかく指示通り突き当たりまで歩く。道なりに左に曲がって、
「あ、御堂筋線の梅田駅だ。」
 真っ直ぐ行けばヨドバシカメラなのだが、駅改札を見付けてしまって右に曲がる。レイの旅は終わらない。

『ファントムビジョンにGPS道案内出して!』
 また迷ったレイにAnkerが呆れた声を上げる。御堂筋線来改札を抜けて阪急三番街に出てエスカレーターを下った所でまだ着かない事に疑問を持ったAnkerの呼びかけで道迷うが発覚した。もうダメだと思われたのかついにGPS道案内の力を借りる事になった。が、
「…で、梅田出口ってどこ。」
 階の表示の無いGPSの案内に惑わされたレイは気が付いたらホワイティうめだイーストモールの端っこ、泉の広場へと迷い込んでいた。
『梅田と名前がつく出口多いから建物で指定しているのに…。』
『いつまで…。』
 心底呆れたようなAnkerの台詞と共に聞き慣れない声が聞こえた。声の主はやつれた感じの鴉だった。怨天怪鳥『以津真天』だ。レイが迷いに迷っている間にすっかり弱っている。
「何あのカラス…。あ、これが敵か。さっさと倒してヨドウメに行かなくちゃ。物理演算バグ挙動に巻き込んでやろ。」
 泉の広場の噴水に変わる新たなシンボルウォーターツリーの制御系にアクセス、激しい明滅が起こる。その光に充てられた以津真天が激しい振動に見舞われ気を失って落ちた。
「敵はこれでいいけど、ちゃんと辿り着けるのかなぁ…。」
 再び地下迷宮に挑むレイがヨドバシカメラ梅田に辿り着けたのは、ここからまたかなり時間が経ってからであったという。

プレジデント・クロノス

●迷子のCEO、あなたのお気に入りはなんですか?
「ふむ、時間も丁度い良い。ランチと行こうか。」
 駅舎の中を歩きつつ時計を見たプレジデント・クロノス(PR会社オリュンポスの|最高経営責任者《CEO》・h01907)は何を食べようかと思案を巡らせる。この辺りは万世橋駅の遺構を活かしたエンターテイメント性溢れる商業施設なので、エンターテイメント系大企業、PR会社『オリュンポス』のCEOとして調査も兼ねてという腹積もりだ。
 なぜCEOがここに居るかというと、某イベント会社との取引を終えた帰り道の小休止と言った塩梅だ。とは言え時間は限られているのでキビキビ行動する。
「はて、何故か誰もいない。それに雰囲気も違うな。」
 周りを見ながら歩くクロノス。ちらっと見上げた先には"阪急三番街地下2階"の文字。
「ほう、大阪の地下街の再現をしているのか。エンターテイメント性が高いではないか。」
 ちょっと勘違いを発動したようだ。興味深げに眺めながら歩いていくと"変わりカツ丼"のキャッチコピーにメニュー写真が並んだ外装の店を見付ける。
「祭太鼓とな、ほう、面白い。」
 クロノスは店に入りカウンター席に腰掛ける。メニューには大きく6種類のカツ丼。本格・大根おろし・トマト・和風カレー・味噌。それぞれにチーズトッピングがあり、本格は卵2倍や塩とんかつ、大根おろしは梅おろしや冷製などバリエーション豊富。カツは並ロースか特ロース・ヘレを選べ、カツ2枚のダブルも選択可能。
「カツ丼だけでこの品揃い、ご飯大盛り無料とな。むむ、これは選ぶのに時間が掛かりそうだ。」
 悩みに悩んで選び出し注文を済ませる。特ロースご飯大盛りにする事も忘れない。そうしてやって来たカツ丼は、片手鍋のカツとご飯に分かれていた。
「食べ方も私の好みで良いと言う事か。店員の手間を減らしつつ個人の好みに合わせる工夫だな。では、頂きます。」
 サクサクのカツと出汁の利いたタレ、少し硬めのご飯が絶妙でとても美味しかった。クロノスは大満足して店を後にする。午後の仕事へのカツ力を補充出来た。
 地上に上がろと店の目の前にあるエスカレーターに乗る事にした。さて、クロノスはここを地下1階と勘違いしている。すなわち、地下1階へと|昇る《・・》エスカレーターに乗って地下1階で降りた事になる。
「ここはどこだ?…ふむ、どうやらいつもの事だが迷子になったようだ…ハハハ。」
 実はクロノスは方向音痴の気がある。特にこう言った地下街は苦手としている。が、クロノスはCEOを務める程の男だ。動じず騒がない。むしろ良い機会と受け取る。その後に秘書に小言を言われるまでがセットではあるが…。
 見た所、この近辺はファッションや雑貨店が多い。周り応えがありそうだ。
「勿論、遊びではないぞ。業界発展の為、後学を得ておくだけだとも。」
 誰にいうでも無い良い訳をしながらちょっと楽しげに地下街を歩き始めた。

「レディース向けの店舗が多いな。しかし、着物店まであるのか。」
 あちこちうろうろしていたクロノスに向かって飛んでくる鳥がいる。
『いつまで…。』
「む、なんだこのカラスの着ぐるみは?」
『いつまで…。』
 その鳥はふらふらしながらクロノスに纏わり付いて羽をバサバサバサバサさせる。力が入っていなくて攻撃にもならないくらい弱っている。その行動はクロノスの邪魔になっているので少しずつ鬱陶しくなる。
「えぇい、何だか分らんが離れろ!」
 ずむ、と掌底をその体に突き入れる。衝撃が体を貫通し怨天怪鳥『以津真天』は崩れ落ちた。見るからに一般人ではないのでクロノスは捨て置く事にして散策を再開する。
 少し歩いたところでスマホが鳴り画面を見る。そこには秘書の名前が映し出されていた。

見下・七三子
矢神・疾風
矢神・霊菜

●夫婦と戦闘員の休日
 地下鉄御堂筋線の南改札を出てその光景に唖然としているのは矢神・霊菜 (氷華・h00124)で、視界に何本も映る太い柱が迷宮感を醸し出していて思わず夫、矢神・疾風 (風駆ける者・h00095)の服の裾をキュッと握ってしまう。
「霊菜、大丈夫か?」
「うーん、迷宮が更に酷くなってて絶対迷いそう…。」
「確かになかなかの梅田ダンジョンっぷりだよなぁ。」
 不安そうな妻を気遣って明るく戯けた感じで喋りながら手を握る疾風。とても良い夫婦である。その様子を後ろから微笑ましく眺めている見下・七三子(使い捨ての戦闘員・h00338)は遠慮がちに2人に問い掛ける。
「あの、一緒にお仕事できるのは嬉しいですけど、本当にお邪魔じゃないです?」
 振り返ってキョトン顔の疾風と霊菜、同時に破顔して、
「えっ七三子、邪魔なんてそんな訳ないじゃないか!ほらおいでー。」
「全然、一緒でも問題ないわ。」
 その笑顔と手招きに嬉しそうにとててと近寄る七三子。
「えへへ。ありがとうございます!
 あっ、私のことは気にせず、存分にいちゃいちゃしていただいて……。ただ置き去りにされると割と真剣に迷うので、ついて行かせてください……。」
 急にぺこぺこ頭を下げまくる七三子。矢神夫婦はそれを汗汗としながら止めようとして、3人揃って大笑いしてしまった。

「さて、そろそろ探索しよう。まあ焦ってもなんだ、このまま進んでアクセサリーショップとかあったら入ってみないか?」
「梅田の地下街ってそんな所あったっけ?」
「ええっと、ディアモールって案内がありますね。」
 とりあえず歩き始める3人。矢神夫婦が前を歩き七三子が少し後ろを歩く形だ。幸い人通りはないのでよそ見しない限りは七三子も逸れて迷う事はないだろう。迷わないよね?うん、とりあえず阪神百貨店横を通り過ぎると道幅が広がり明るく雰囲気の違う通路が見える。そこからがディアモールだ。入ってすぐに早速ファッション・雑貨の店がある。
「ここはシューズやバックのお店ですね。ちょっとお値段がしそうです。」
「こういうのも良いんだけど荷物が嵩張っちゃうのよね。またの機会がいいかしら。」
「じゃぁ進むか。ちょっと先に広場があるみたいだし案内板もあるだろう。」
 主旨が違ったのでウィンドウショッピングのみで先に進む。そこは円形広場となっていて各方面への分岐点となっている。そしてその広場はディアモールの特徴を尤も反映した場所でもある。
「天井、すごいですね………。真ん丸になってます。」
「本当だ。床と言い作りと言いなんかハイセンスだな。」
「まるで外国の街並みね。」
 ディアモールの通路はイタリアミラノの|ガレリア《屋根のある商店街》を参考にしている。陽の光を取り入れる透明な高い屋根、石造りを思わせる床と壁、所々の床面に施されたモザイクアート。その作りを見ているだけでわくわくする事だろう。
 疾風は円形広場の中央にある像に目的の案内表示を見付ける。女神が担ぐ瓶に生けられた植物の葉っぱに道案内があったのだ。
「凝りすぎててすぐには気づけないって…。バラエティストリートって方に行ってみるか。」
 前方に二股で分かれた道の左側を指差して先導していく。手を引かれて霊菜が続き、七三子も着いていく。

 バラエティストリートはレディースファッション店やバッグ、サングラスなど色々取り揃えられている。ストリートの端も近くなってきた所でお目当てのアクセサリーショップが見つかる。早速入ってあれこれ見て回る事に。
 
「あっ2人とも、この繊細な装飾が綺麗なバレッタなんてどうだ?」
 疾風が霊菜と七三子を手招きする。手に取った物を2人に見せればそれは繊細な装飾が施され中央に石を遇ったバレッタだった。石の色は様々あって疾風が選び出したのは青と赤。
「赤い石の方は七三子、青い石の方は霊菜でお揃い!気に入ったならオレがプレゼントするよ!」
「まぁ、綺麗なバレッタ。ふふ、見下さんとお揃いね。」
「えっ、霊菜さんとお揃いのバレッタ!いいんでしょうか。」
 両手を顔の横で合わせて満面の笑みの霊菜と、嬉しさを隠しきれない表情でちょっと恐縮気味の七三子。2人の反応で気に入ってもらえたのを確信した疾風は購入を決定する。
「じゃあお返しになにかきらきら……。」
 ただもらうだけは申し訳ない七三子は小物の辺りに目を向ける。そしてきらきらの方が七三子を呼んだ。手に取ったのはジェダイトの羽飾りチャーム。改めてじっと眺めた七三子の脳裏に疾風と霊菜の愛娘さんの笑顔がフラッシュバックする。
「綺麗……。あの、私はこれを3つプレゼントしますので、ご家族でよろしければ!」
「羽飾りチャーム、娘の分まで!
 気を使わせてすまないな七三子、でもありがとう。娘が大喜びするよ!」
 思わぬお返しと娘へのお土産までと疾風こそが大喜び。その隣で霊菜もお礼をする。夫が贈り物して友人から家族全員への贈り物を返してもらった。そうなると俄然自分も贈り物をしたくて仕方が無くなる。
「羽飾りチャーム可愛い、ありがとう。
 それじゃ…私からも。見下さんにはこのポニーフックはどうかしら?」
 七三子の前に差し出されたのは薄桃色の二段リボンがついたポニーフックだ。実を言うと疾風に呼ばれる直前に見初めて持ってきていた。
「可愛いポニーフック!お返しのお返しまでしてもらってとても嬉しいです!」
 感極まる七三子、疾風は霊菜の隣でうんうん頷いて、
「良かったな七三子。良く似合う、さすが霊菜のセンスだ!」
「疾風にもあってね…、このバングルとかカッコ良さそうって思ったんだけど。」
 そう言って霊菜は燻し銀のバングルを夫の手首に当てた。これもまた店舗に入って真っ先に探して見付けていたのだった。
「えー!いつの間に!霊菜もサンキュ!こういうバングル憧れてたんだよ、よく分かってるなー!」
 妻の手に自分の手を添えてバングルを見た疾風の喜び様は限界を突破していた。

「えへへ。いただいたアクセサリー、大事にしますね。」
 包装された小包を大事にポケットに仕舞って七三子がお礼を改めて述べた。疾風はバングルをすでに腕に嵌めて眺めてはニコニコ。喜ぶ2人に霊菜もニコニコ。
 3人はそのままファッショナブルストリートに出る。そこは屋根が高く透明で自然採光された地下なのに開放感が清々しい場所だった。
 次はどうしようと相談の為に設えられたベンチに向かう途中で七三子が気配に気が付く。
「霊菜さんと疾風さん、来たようです。」
 それを合図に強調の思念を2人と接続、その瞬間に夫婦が阿吽の呼吸で動き出す。
『いつま』
 疾風が振るった腕が風龍神の強風を放ち恨みがましい言葉と共に表れた怨天怪鳥『以津真天』の呪詛を遮る。その風がそのまま竜巻となって以津真天の動きを封じ、群青のトンファーが強かに打ち付けられて弾け飛び壁にぶつかって落ちる。
「これぞ疾風怒濤ってね!」
『いつまで…、いつまで…。』
 以津真天は1体では無かった。攻撃を終えた疾風の背に現われて呪詛を浴びせる。が、元々怨嗟が不足して弱っていた上に、もう一つの要因で疾風に呪詛は届かなかった。
 以津真天の背からアイスブルーに輝く雷刃を携えた霊菜がその背を断つ。斬り飛ばされた以津真天はプラズマで焼かれて焼失する。
「あら、本当に簡単に倒せちゃったわね。」
「後ろから見てても大分弱ってた感じでした。それにしてもお2人ともすごい火力でした。」
「七三子もバフサンキュー!さ、お仕事終わったし飲食店探そうぜ!」
 軽く埃を払って次の予定を相談が始まる。まだまだ今日という時間は残っているのだから、目一杯楽しもうじゃ無いか。
「今度は夫婦だけのデートでも来ようね。」
 目的の店を探して歩き始めた3人。霊菜は疾風にそっと耳打ちをした。

深見・音夢

●音夢の迷宮食い倒れ記
「秋葉原に来たはずが、本当にリアルダンジョンと悪名高い大阪梅田の地下街に!いやなんで地下に地上3階にある大阪梅田駅が?」
 深見・音夢(星灯りに手が届かなくても・h00525)は早速全てが荒唐無稽な"無限の駅舎迷宮"の洗礼を受ける。しかし折角の大阪で尚且つお店まで再現されたこの状況、楽しまない手は無い!
 と言う事で、音夢は改札を出る前に中央改札正面にある髙木鮮魚店へと入る。エキナカでお寿司が食べられる良スポットである。カウンターに腰掛けて音夢は2種類程握りを注文しじっくり味わった。
 大阪と言えばうどん、と言う事で改札を出てから地上1階に降りてそのまま新梅田食堂街に入っていく。昔ながらの店舗が並ぶ大阪らしいレトロな高架下にはそれはもう色々な飲食店がある。人が居ない狭い路地をスイスイ歩いて奥の方へ、そして目的の店舗、釜たけうどんがある。大阪発の老舗の味を堪能するのだ。
「まだまだ食い倒れるっすからぶっかけうどんと鶏天にしておくっす。」
 そう、まだまだ食い倒れ旅は始まったばかり。胃の容量とウォーキングでの消費のバランスを計算しなければならない!とは言えタレにレモンの爽やかさを加えた優しい味わいにしこしこつるつるのうどんの食感の波状攻撃に耐えられる精神を音夢は持ち合わせていない。
「こ、これは強敵っす!もっと食べたくなっちゃうっす~。」

「ふぅ、美味しかったっす。次は串カツが良いっすね。」
 音夢はるんるんと新梅田食堂街を出て大阪駅御堂筋口阪神方面口へ向かう。路線バス出口の信号を渡りすぐの階段を降りた所に目的の立ち串カツ屋があるのだ!
「な、ない!なぜ?」
 名物串カツ屋である松葉、梅田周辺に勤めるサラリーマンや通学返りの学生たちにも憩いの場であったが残念ながら御堂筋線改札周辺の補修および区画整理で閉店となって久しい。
 がっくり肩を落とす音夢だが串カツの口になったのでどうにか探す事にする。幸いそこからは大阪駅前ビルが近く、そちらに向かう事にする。
「うーん、色んな行き方があるっすけど、わかりやすさ重視が良いっすね、うん!」
 スマホで調べた店舗は大阪駅前第四ビルにある。今いる場所からはディアモールを通るのが近道だが駅前ビルへの接続は凄くわかりにくいところにひっそりある階段で移動となる為避ける事にする。
 と言う事で地下鉄谷町線東梅田駅改札を目指す。阪神百貨店沿いを進み左手の小階段を下って改札へ、そこから右に曲がって道なりに進みエスカレーターを登って左手が第四ビルだ。連絡扉を入ったら左手側にあるエスカレーターで地下二階へ降り、パチスロ店の右手通路を奥に進む。突き当たりが見えてきた辺りで目的の串カツ屋がある。
「あったっす、串カツ七福神!何を食べようかな♪」
 程よく歩いてお腹の準備はばっちり、まずはエビをソースでサク。メレンゲ入りのふわふわサクサク衣が絶品である。そしてメニューも豊富で食い倒れ泣かせな店でもある。
「えー、リンゴとかマグロとか気になる~。でもそんなに一杯は~…。」
 散々迷った音夢はリンゴ(シナモンシュガーで頂く)を食べて感動したのだった。

「いやー……時間と目的地が決まってる中だと苦になる迷宮もうろつき放題なら良いものっすね。」
 串カツを堪能した音夢は歩き疲れもあって休憩を取る事にする。そこで一度新梅田食堂街に戻ってきた。
 実はうどん屋に行くときに気になったカフェがある。梅田珈琲館ニューYC。外観からしてとてもレトロである。中に入ると更に昭和レトロを感じる狭い配置と調度品で構成されていて照明がセピア調だ。雰囲気バッチリなテーブルに案内されてメニューを見る。古き良きカフェレストランのメニュー構成でフード商品がとても美味しそうだ。とりあえずブレンドコーヒーを頼んでみる。
「歩き疲れたら喫茶店で優雅にティータイムっすよ。」
 音夢は運ばれてきたコーヒーに驚く。コーヒーが並々と注がれたカップが差し出されるまでは普通だ。その後にテーブルに置かれた物に驚いた。ポットと砂糖、ミルクの器がセットになったオシャレな食器が出てきた。
「はぇー、しゃれてるっすね。お代わりもあるなんて得した気分っす。デザートも頼んじゃおう♪」
 音夢のティータイムはとてもゆったりと過ぎていった。

『いつまで……。』
「そう言えばお仕事だったっすね。……あ、もちろん忘れてないっすよ。」
 げっそりして今にも消えそうな怨天怪鳥『以津真天』にごめんごめんとする音夢。かわいそうになるくらい疲弊している様子なので、腹ごなしにどーんして供養する。
「あっさり終わっちゃったっす。うーん、それじゃ食い倒れ再開っすね!」
 次は何を食べようかな。阪急三番街やルクア、グランフロント地下やリンクス梅田など、まだ立ち入ってもいないグルメエリアは山のようにあるのだ!

シリウス・ローゼンハイム

●スイーツハンターは地下街を進む
「何故この辺りは関西になっているのだ…。おまけにここは西梅田駅か。」
 シリウス・ローゼンハイム(吸血鬼の警視庁異能捜査官カミガリ・h03123)はさっきまで確かに旧万世橋駅周辺を散策していたはずだった。しかし、今自分が居る場所はどう見ても遠く大阪は梅田の地下鉄改札前。
 シリウスは髪の毛をがしがし掻いて深く息を吐き出す。
「折角だから探索するか。土産も何か良い物があるだろうし。」
 思い立ったらとりあえず移動する。南改札から左手に見える大阪駅前第1ビルにとりあえず向かう。地下1階エリアを適当にぶらぶら。
「飲み屋が多いな。ふむ、甘味巡りと行きたい所なのだが。」
 そのまま第2ビル、第3ビルと回るもやはり飲み屋ばかり。見付けたカフェも甘味と言うよりは食事処といった趣。そんな折、先程からいくつもあったカフェが気になった。通路に対して壁の無いオープンな店内、白基調の清潔感。そして最大の特徴は、巨大な水出しコーヒーメイカーが並べられたカウンターだ。
「ダッチコーヒー、ホリーズカフェ。面白そうだ。少し覗いてみるか。」
 このホリーズカフェは関西圏のみのチェーン店らしく、ダッチコーヒーの飲める珍しい店だ。お湯では無く水で8時間も掛けて抽出するダッチコーヒーは苦みや酸味が少なくコク深くて香りが濃い。興味が湧いてきたシリウスは一服する事に決める。
 オーダーはダッチクリームコーヒー。アイスコーヒーの上にソフトクリームを乗せたもので人気商品なのだそうだ。
「ふむ、ソフトはミルクの風味が利いた甘さ、コーヒーのさっぱりした苦みと良い相性だ。」
 初手としては上々だったのでは無いだろうか。さて、コーヒーを飲んだ後は第4ビルに入っていく。少し気紛れを起こして地下二階へと降りる。そうして歩いていると"くだものだもの"という店名が見える。ここはジューススタンドの様だ。覗いてみると中々可愛らしい店構え。券売機には多種なフルーツジュース名がある。提示されている物を見るに、どうやら透明な缶状の蓋のある器で提供してくれるようだ。そして付け合わせのケーキがおにぎりのような形で販売されている。
「さっそく土産に良さそうだな。」
 シリウスはお土産を渡す相手、弟の顔を思い浮かべながら好みのジュースを購入する。少し待って出てきた商品は、
「熊の器だ…。」
 ジュースの色に染まった可愛らしい器に思わず笑みがこぼれた。

 大阪駅前第4ビルの端っこに到着した。さてここからどうするかと思案する。正直お土産も買えたのでさっさと帰りたい。が、怨天怪鳥『以津真天』はまだ姿を現していない。そうなればもう少し散策する必要がある。
「地上に出てみるか?いや、そのまま地上で迷いかねないほうが心配だ。駅の迷宮は地上のほうが難易度が高いと、俺の勘が言っている。」
 と言う事で地下散策を続ける。そのまま地下鉄谷町線東梅田駅の方へ移動し、ホワイティうめだノースモールへと入っていく。ビルの案内図やらスマホ検索やらは敢えてせずに気の向くままに歩いて行く。迷ってるように見えるだろうとの考えではあるが、正直目的地を設定してないので只単にぶらぶらしているだけだ。が、それが地下迷宮を探索するにはちょうど良いかもしれない。
 しかも選んだ道ですぐにカフェに出会えたのはシリウスにとって僥倖だったかもしれない。KIEFELと英國屋という関西圏チェーン店でそれぞれ自慢の甘味を堪能して更に奥へと進む。
『いつまで……。』
「やっとご登場か。」
 諦めと疲れが滲む声を聞いたシリウスは即座に血漆錬成槍を生み出す。地下道というロケーションでの長柄武器は効果絶大。待ちくたびれて怨嗟も薄れて弱っている以津真天など物の数秒で貫いてしまう。
「出てきたら出てきたであっという間に終わってしまったか…。
 この先は阪急三番街に繋がっている様だな。よし、もう少しだけ散策させてもらおうか。」
 さっきまでは帰りたいと思っていたが、連続してカフェで甘味を食して調子が出てきた所だ。まだ見ぬ大阪の甘味を求めてシリウスは地下道を歩いて行く。

ユリア・ソダンキュラ

●駆け付け一杯、景気づけに一杯、仕事上がりに一杯
「成程、迷ったふりをして敵をおびき出すというやり方ですね。
 敵の習性を利用するというのは実に理に適ったやり方です。」
 ユリア・ソダンキュラ(静かなる霹靂・h07381)キリッと眼鏡のズレを正して絶品ミックスジュースを呷る。ここは阪神大阪梅田駅東口出てすぐの元祖大阪梅田ミックスジュース前である。券売機近くのこのジューススタンドのミックスジュースは爆速提供で大変美味しいと人気なのだ。

「さて、迷ったふりをしながら『以津真天』とやらをおびき出すとしましょう。」
 ダストボックスに紙コップを捨てていざ出発!エスカレーターで昇って斜め右へ。乱立する太い柱を横目に広い通路を真っ直ぐ進んでいく。迷ったふりをすると言いながらその足取りに迷いは無い。行き先は決まっているのだ。
 まずは真っ直ぐホワイティうめだ地下街に入りイーストモールを爆進、泉の広場にやってくる。
「参りました、行き止まりに来てしまうとは。どうしましょう。少し休憩しながら考えるとしましょう。」
 見事な棒読みの独り言を呟いて左手奥に見えた徳田酒店の暖簾に向かってツカツカ歩き躊躇無く中に入る。地元の老舗酒屋が経営する酒場で、酒肴にぴったりな料理と豊富な日本酒が特徴だ。
「日本酒3種飲み比べとこれとこれを。」
 ユリアは無駄なく隙無く品定めして注文する。あくまでもここには休憩に入っただけであって長居をするわけにはいかない。すなわち、じっくり選んで更に追加したくなってはいけないのだ。
 運ばれてきた日本酒3種と刺身盛り合わせに早速手を付ける。刺身は流石大阪の商人、鮮度が良い。そしてそこに日本酒を…。
「ふむ、良い取り合わせです。こちらのお酒は…。」

「良い休憩、良い景気づけでした。では参りましょう。」
 心なしか少し機嫌が良さそうなユリアは泉の広場を右に曲がって元来た道を引き返していく。そして蕎麦屋を超えた所にある階段を上って徐に地上に出る。出た先には東梅田お初天神創作串カツ専門店縁日が目の前にある。
「あー、地上に間違えて出てしまいました。何が悪かったのでしょう。とりあえずこのお店の人に尋ねてみましょう。」
 次のターゲットは串カツでビール、と言った所だろうか。
 この調子でユリアはホワイティうめだの地下街周辺の立ち呑みや串カツ店にふらりと迷い込んでは景気づけして歩く。あれだけ呑んでいてまるで顔色にも足取りにも出てきていないのが末恐ろしい…。
『いつまで…。』
 ざくっ!
 酔っ払ってると踏んで早々に出てきた怨天怪鳥『以津真天』の脳天に無慈悲にハチェットを叩き込んで何事も無かったように歩き去るユリアであった。

 そんなユリアは三番街も堪能して地下鉄御堂筋線梅田駅北改札前を通過する。そこを右に曲がればヨドバシカメラ梅田がある。それを通り過ぎた先にはリンクス梅田地下街があって、ユリアの目的はそこなのだ。
 沖縄県のアンテナショップを見付けて泡盛&レトルトラフテー(豚の角煮)を購入し内心ほくほくしながら同階にある"うまいもん横丁"に入っていく。その奥にある"HUB LINKS UMEDA店"というイングリッシュパブに入る。
「ハブエールをハーフパイントで。」
 慣れた様子で注文をしてなんとはなしにサッカーを放送しているモニターを見る。するとすぐにハブエールが運ばれてくる。それをモニターに向けて軽く掲げ呷る。
「ふぅ、仕事終わりの一杯は格別ですね。」
 苦みとコクの素晴らしいエールを呷りながらその日の仕事を締めたのだった。

シンシア・ウォーカー

●|梅田の流離い人《真性の迷子》
 シンシア・ウォーカー(放浪淑女・h01919)は見慣れない光景に困惑していた。旧万世橋駅近辺を歩いていたはずだがここはどこだろう?
「困りました、新宿駅要素なら多少はわかるのですが。」
 頬に手を当てて周囲を見回すと"大阪駅"の文字。知らないうちに星詠みに伝えられていた梅田迷宮区画に入り込んでいたようだ。とりあえず大阪駅に行ってからどうするかをシンシアは考えて案内図を探すが、
「えっ、無い?同じ駅?えっ??」
 さて、シンシアがいるのはJR大阪駅連絡橋口改札出て右手の北インフォメーション。駅3階に当たる場所で大阪駅であって大阪駅では無い場所だ。すなわち、すでにスタート地点にいたと言う事だ。ならばこの後にどうしようかこの場で決めるしか無い。
「……とりあえず美味しいものでも食べてから考えるとしましょう!」
 結論は先送りする事にした。いや、これも目的と言えるだろう!

 と言うわけでインフォメーション右手にあったルクアに入っていく。ここは地上7階の様で、更なる上階にルクアダイニングというグルメエリアがあるようだ。不安が少しわくわくに変わってきて、今日は味の濃いもの、折角だから関西っぽいものを食べたいなぁと思いながらエレベーターで10階に。
 エレベーターから降りたら一度フロアを回ってみる事にする。イタリアンに韓国料理に麺に寿司、果てはもんじゃ焼き。そして鉄板の串カツ。
「どれもいいですね…。」
 迷いつつ串カツかなと考えつつ、まだ見ていない御堂筋側エレベーター方面へ向かう。そこにその店はあった。"大阪生野 桃太郎"、お好み焼きである。さっきまでの考えを投げ捨ててシンシアは店の暖簾を潜った。
 香ばしいソースと鰹節の香りが漂う店内、すっかり食欲が刺激されたシンシアは席に着いてメニューを見る。
「飲みたい…、でもまだお仕事中…。」
 梅田迷宮区に迷い込んでから悩みっぱなしのシンシアは定番の豚玉を注文して待つ。まだかなとそわそわしていると焼き上がった物が運ばれてきてテーブルの鉄板に置かれてじゅぅ~っと美味しそうな音が響く。
 シンシアは早速、ヘラ(コテ・テコとも言われるが諸説あり)で切り分けてふーふー吹き冷ましてアチアチを一口頬張る。
「ん~、美味しいです!」
 本場関西の粉モンに舌鼓を打ったのだった。
「…………、ビール飲みたいですぅ…。」

 お腹を満たしたシンシアはエレベーターで地下に降りる。思えば何故地下迷宮に地上10階の建物があるのか疑問に感じるのだ。とまれ、地下1階に着いたシンシアはグランフロントへの地下道を進んで行く。なんとなく分かりやすい建物名の案内表示に従って歩いているだけだったりするのだが、お土産を探すのもついでだ。
「地ビールと肴で晩酌、素敵ですよね♪」
 ビールを飲まなかったのが効いているらしい。うめきた広場から南館に入り一通り見て回るがお土産に良さそうな物が見つからない。
「北館もある、のですね。そっちも見てみましょう。」
 北館へは地上に出て道を横断する必要があったがすんなりと移動、また地下に降りるがそこで衝撃の出会いをする。
「せ、世界のビール博物館!」
 そこはヨーロッパ風のビアホール。たくさんのテーブル席に、イギリス・ドイツ・チェコ・ベルギー・アメリカ・アジアをイメージした6つのカウンター席を誇るレストランである。ここでシンシアの我慢は限界に達した。

「ホフブロイラガーで。」
 誘惑の多いカウンターは避けて一杯だけ飲む事にしたシンシア。ビールを待つ間になんとなくカウンターの方を見る。すると、鶏を丸ごとローストするマシンが見えた。吊り下げられた鶏肉がマシンの中に消え、ローストされて出てきて再び入っていく。その光景が食欲をそそってくる。
「あの…、ローストチキンも…。」
 我慢は体に毒だからね、仕方ないね。

「あぁ、昼間から、それもお仕事中に…。」
 軽く罪悪感を感じつつもドイツビールとローストチキンの味に満足のシンシア。上機嫌で大阪駅の方へと戻っていく、と…
『いつまで……。』
 怨天怪鳥『以津真天』が疲れ切った声を掛けつつ出現する。弱々しい姿には哀愁を感じてしまうがほろ酔いのシンシアは無慈悲である。
「現われましたね、以津真天。ローストチキンにして差し上げます。」
 さっきの事が忘れられなかったようだ。スラッとレイピアを引き抜いて鋭いステップで踏み込み羽毛を切り落とし一瞬で捌き斬る。残念ながら倒した以津真天は消えてしまったのでローストマシンに吊す事は出来なかった。少しホッとした。

「いつの間にかお仕事も終わってしまいましたね。それならこのダンジョンをもう少し回ってお土産を見繕いましょう。
 晩酌のお供と缶ビール♪」
 足取りが軽くなって、シンシアは意気揚々とこの梅田迷宮区を楽しむ事にした。宛てのないままに。

シリウス・アッシュフォード

●ヨドバシはどこだ?
 シリウス・アッシュフォード(眠れる天狼・h09102)は駅構内を歩いている。今回、梅田地下迷宮が旧万世橋駅近辺に出来たと言う事で、古妖たちの企みを挫く為に出張ってきたのだ。旧万世橋駅近辺は平時でもどこかしらを拡張工事しているので、慣れている者は新しく出来たエリアと認識して簡単に迷ってしまう事だろう。それは近辺の住民と言えども同じかもしれない。ならば未然に防ぐ必要があるだろう。
「それはともかく、ここはあの家電量販店近くの改札じゃなかったのか!」
 シリウスは改札を出てから致命的なミスに気が付いた。

「なに?ここからは直接向かえない?
 改札の通り抜けはできないから一度地上に出る必要がある…だと??」
 天井から下げられている案内表示を見ながら現在の自分の位置関係を把握しようとする。本来出るべきは北改札だったのだが、今シリウスがいる場所は南改札。真逆なのだ。おまけに、ここから目的の店舗に行こうと思うと地下だけでは一直線に繋がっていない。
 中央改札まで移動してエスカレーターを昇り、そのまま大阪駅を突っ切って駅舎から出るのが最寄りのルートなのだが…、
「ええい、どうしてここはこうも上ったり下りたり行ったり来たりとややこしいのだ?」
 JR大阪駅駅舎を抜けたところで空中回廊に登れば良かったのだが、あろうことかそのエスカレーターをスルーしてさらに進み地下行のエスカレーターに乗ってしまったのだ。おまけに御堂筋線梅田駅北改札方向ではなくルクアの方へと歩いてしまったから大混乱。歩けど辿り着かないわ案内表示はないわ何度も上り下りさせられるわストレスマックス!
 ともあれ、どこに進めばいいのか思案して地上1階に上ることにした。だがルクアから1階に出てしまうと…、
「あー!向こう側に渡れない!」
 そこは大阪駅高速バス乗り場となっていて、バス停への移動はともかくとして、その奥の通路へは通じていない。地上通路を戻ろうと振り返るがバスターミナルの安全性優先の為かヨドバシ側に渡れる場所がないのだ。
 シリウスは仕方なくルクアに戻り2階に上がり連絡橋に出た。そこにはようやく待ち望んでいたヨドバシカメラ梅田の案内表示がある。謎の感動で胸をジーンとさせながらヨドバシカメラ梅田に到着することが出来た。

『いつまで……。』
 ヨドバシカメラに入ってすぐの所でぐったりげっそりしている怨天怪鳥『以津真天』が待ち受けていた。シリウスは時計を確認すると、梅田迷宮区に迷い込んですでに3時間ほど経っている。しれっと迷いすぎたかな?
「あー、えーと、まぁ、お疲れってことで?」
 以津真天の頭を右手で掴んで√能力を封じ、左手のスターライト・ブリンガーで斬り捨てる。あっけなく以津真天は真っ二つになって消えていった。
「さてさて、やっとゲームとプラモを物色出来る♪」
 るんるんと軽い足取りで登りエスカレーターに乗ったシリウスは、数分後に目的の売り場が地下にある事に気が付くだろう。シリウスの迷子は続く。

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挿絵イラスト