シナリオ

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消音

#√汎神解剖機関 #ゾディアック・ミラー #二章:10/20(火)朝8:31~10/21(水)23:59 #プレイング受付中

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 #√汎神解剖機関
 #ゾディアック・ミラー
 #二章:10/20(火)朝8:31~10/21(水)23:59
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ゾディアック・ミラー

これは2章構成の期間限定シナリオです。10/25(日)16時頃までに完結したシナリオの結果により、宿敵の運命が変わります。
なお、期間中に宿敵主によって倒された場合、通常のルール通り宿敵は絶対死します。

 それを目にしたと理解した瞬間、音が消えた。
 誰のって、自分のだ。――心臓の音がしない。
 目にした怪異に心臓を盗られたのだと|警視庁異能捜査官《カミガリ》は直感的に理解する。そういうものとは縁深い職種だ。今更驚きも、取り乱しもしなかった。
 心臓を失った身体は、それでも難なく動く。息をしている。ただ、静かなだけだ。流石に生きたまま心臓を盗られたのは初めてのことだけれども。
 どうにも、空っぽだ。
 胸の奥にぽっかり空いた空虚を埋めようとするかのように、思考が巡る。余計なことを考えている自覚はあった。それでも止められない。まるで走馬灯を自ら覗いているようだった。心臓がないのだから、死んでいるのと同義と言えばそうだろう。お陰で、心音が隠していたものにまで気づいてしまう。忘れていたほうがいいことを思い出す。
 ああ、やめてくれ。そんな|心臓《ほんとう》に気づきたくなんかないのに。

●厄災
「不用意に思い出したくないことがある方は、今の時点でお帰りを勧めます」
 集まった面々を前にして、星詠みの焦香・飴(星喰・h01609)は穏やかな笑みと声音のままで告げる。それで、人によっては心を抉りかねない案件であると伝わっただろうか。
「……安心してください、|災厄《バケモノ》なりの善意です。忘れていたほうがいいことなんて、ごまんとありますからね」
 しかし此度の仕事場になる√汎神解剖機関の存在は、そういった心の隙間に入り込むものも多い。特に今回は殆ど避けようがないのだと飴は告げる。
「『ゾディアック・ミラー』によって怪異『荒魂ノ辻』のもたらす|厄災《・・》が捕捉されました。この怪異は見た者に厄災をもたらす能力を持っていて、被害は広範囲に及びます。ただ、この厄災を怪異自体も認識していない」
 無意識にばら撒かれる不幸――それは何であっても遠ざけておきたいものでしょう、と言いながら飴が資料を示す。そこには龍神とも思しき姿が記録されている。それを不幸な偶然によって見てしまった者に、厄災が否応なしに降りかかっているのだ。

「俺が予知した厄災は、『心臓を盗られること』です」

 心臓。幾人かが半ば無意識に己の胸に触れた。血肉の通った存在であればまず、そこにあるはずのもの。無ければ生きてはいられないもの。
「怪異を目撃した|警視庁異能捜査官《カミガリ》たちは皆、心臓を盗られています。けれど、生きている。おそらく怪異としても無意識下で、盗ったつもりさえないのでしょう。そのせいかはわかりませんが、『忘れていたほうがいいことを思い出す』『無意識に抱いていた感情が表面化する』『涙が止まらなくなる』などの現象が確認されています」
 心臓を盗られてなお生きている。それだけでも奇特だが、生まれた空虚を記憶や感情が埋めようとする――結果として、望まぬ記憶を掘り起こされたり、自覚していなかった感情が綻ぶらしい。
「心臓を盗られることは防ぎようがありません。何せ最終的な目的は原因となっている怪異の討伐です。皆さんはどうあっても、それを見なければならない。仮に心臓がなかったとしても、現象には見舞われるでしょう」
 在り方として心臓というものがない、そういう者たちもいるのが能力者だ。けれども厄災は等しく降りかかる。
「……ただ、盗られたカミガリたちについては、放っておいて構いません」
 現場には、不幸にも居合わせたカミガリたちが数人いる。いずれも心臓を盗られているが、カミガリであるがゆえにある程度の現象には慣れてもいる。彼らを守ることも仕事の一部ではあるが、それよりは、自身の記憶や感情と向き合ったほうが、余程有意義だと星詠みはあっさり告げた。
「俺もカミガリですから、同僚の立場ではありますけど……まあ、良くも悪くも慣れてますから。ある意味それは、皆さんもそうかもしれませんが」
 だとしても、心臓を握られ、無意識を引っかき回されるなんて、気分がよくはないだろう。こういうこと頼むの多くてすみません、と星詠みは眉を下げて。
「向かうなら、自分を取り戻せるだけの思い入れのあるものを持って行くといいかもしれません。もしも思い当たるものがなければ――これを」
 飴が差し出したのは小さなポプリだ。中には、柔らかな金色の星のような花。金木犀です、と告げるそれからは、甘く、どこか懐かしさを思わせる、秋の香りがする。
「金木犀の花言葉に『真実』というものがあるそうです。香りは一番記憶に残るとも言うし。皆さんの気付け代わりになれば」
 やわらかく甘い香りと共に、行き道は示される。

 薄暗い路地から√を越えて辿り着くのは、紅葉の鮮やかな山道。茫然自失の有様で座り込むカミガリたち。
 緩い上り坂のその先に、薄色の厄災が見えると同時――その心音は消えている。
これまでのお話

第2章 ボス戦 『荒魂ノ辻』


POW 地変
【大地を揺らす事】による牽制、【液状化現象】による捕縛、【土石流】による強撃の連続攻撃を与える。
SPD 天変
【暴風】による牽制、【竜巻】による捕縛、【落雷】による強撃の連続攻撃を与える。
WIZ 水難
【間欠冷泉】による牽制、【渦潮】による捕縛、【大瀑布】による強撃の連続攻撃を与える。
イラスト らぎ
√汎神解剖機関 普通11

●選択
 鮮やかな紅葉の並木を抜けて、銀杏の金色の絨毯を踏みしめ、金木犀の香りを辿る。
 思い出してしまったこと、気づかぬふりをしていたこと、止まぬ涙をそのままに、EDENたちはそれでも歩みを止めはしない。山道を進んでいけば、次第に傾斜は強くなり、山頂へと至った。
 やわらかい秋の陽射しが、冷たい秋風とともに青空から吹き降りてくる。それと同時に降りてくるものこそ――件の厄災『荒魂ノ辻』だった。
 荒魂ノ辻はいまだ、心臓を盗ったことにすら気づいていない。けれどもそれは、心臓を当然に己のものにしているということでもある。

 ――どくん。

 荒魂ノ辻が近づけばそれぞれの耳に己の『心音』が響いてくる。けれど見えないのは、荒魂ノ辻の裡にそれが仕舞われているからだ。返せと言って聞くわけもない。荒魂ノ辻にとっては『いつの間にか集まった』最上の贄なのだから。
 取り戻すなら、厄災そのものを倒し、打ち砕くしかない。空虚が埋まり、心臓が戻るとき、EDENたちは選択を迫られるだろう。
 思い知ったことを|覚えている《・・・・・》か、|忘れる《・・・》か。
 在りようによっては選ぶ余地のない者もいるかもしれない。それでも手放す瞬間くらいは、選べる。厄災に己の最後の一撃を見舞うときだ。そしてこれは選択を迫られる誰もに共通することでもある。
 荒魂ノ辻の力は天災に等しい。天が、地が、水が牙を剥くなかで戦うのは、ままならぬ宿命に立ち向かうようなものだ。ただ敵を打ち砕くだけではなく、よく考えながら戦うべきだろう。
 今自分の胸の虚にあるものを抱えてゆくか否か――天地水が問い質すように、山の頂は荒れはじめる。