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【王権決死戦】◆天使化事変◇第2章『崖を行く山羊』
「まーだ、本部からの連絡を待ってるの? フューリー」
「……」
薄暗い部屋の中で、アマランス・フューリーはとある羅紗を見つめていた。
太古の呪文が刻まれる毛織物は、様々な用途に応じて作り出される。それは、隔絶された場所との通信をも可能に出来る代物だった。
しかし、沈黙して数年。今やそれはただの布と変わり果てている。
それでも待ち続けている健気な女に、同僚は呆れたように笑いかけた。
「確か、塔主様が最後に言ったのは、『これから人類を統一する』だっけ?」
「ええ」
「もう、随分と経ってるけど。それって一体、どうやってするのかしらね?」
「……天使よ。きっと、天使が関係しているに違いないわ」
その星詠みは、幾度となく|予言《天使の出現》を観測した。だからこそそれが、今後の組織を保つために最も必要なものなのだと考え、執着的に行動してきた。
そんな風に頑なになっているから、多くの敗北を喫しているのではと同僚は思ってしまう。
「だといいわね」
とはいえ長い付き合いでもあるし、この場は同調してやった。
それからすぐに、ノックが飛び込み部屋の扉が開く。入ってきたのはまだ成人前の少女。強大な力を持つ二人を前にして、彼女は凛と報告を伝える。
「皆さんの準備が整ったそうです」
「そう。じゃあ急ぎましょう」
「お。ようやくヤツらを掃討するのねー」
三人は手短に言葉を交わすと、早々に部屋を出た。
そうして、羅紗の魔術塔が動き出す。
それは、これまで以上の最大規模。
「既に現場では200人程度が潜伏しています。加えて外周は、800人ほどで囲っている状況です」
「気合入ってるわねー」
「可能な限りに声をかけたわ。それに向こうはオルガノン・セラフィムとの戦いで疲弊しているはず。ここが最大の叩きどころよ」
「じゃ、負けるわけにはいかないね?」
顔を引き締め装備を検め、戦いの準備を着実に整えていく。
これまでの大敗をここで巻き返さんと。
そう息巻くアマランス・フューリーだったが、突然その足を止める。
「……っ」
何かに気付いたように振り返り、強張る表情に同僚たちは疑問を抱く。
「ん? どしたの?」
「どうかしましたか?」
その問いかけに対して、彼女は苦々しく伝えた。
「……|視ら《詠ま》れているわ」
●
瞳を返され、星詠みである二軒・アサガオは瞼を開けた。
「……それでも強行しますか」
強情な相手にため息をつく。とにかくこの危険を報せなければと、彼は早速手紙を綴った。
『羅紗の魔術塔が、そちらへ一斉攻撃を仕掛けようとしています。その数は1000人近い規模のようで、既に集まっているために戦闘は避けられないでしょう。当然、アマランス・フューリーを始めとした幹部連中もやってきます』
『彼女たちの目的は、皆さんの殲滅に合わせて天使たちを回収するつもりのようです。欲張りですね。まあ、向こうも後にひけない事情があるみたいなので、気を付けておいて下さい』
『それに、何か起きようとしているみたいですね? そちらの状況はあまり見れていないので詳しいアドバイスは出来ませんが、そのための対策もしておいた方が良いかもしれませんね』
『最後に、一応朗報ではありますが、皆さんが向かわれたその場所は【絶対死領域】ではないようです。なので、皆さんならば多少死ぬような目に遭っても大丈夫でしょう。とはいえ、状況がどう変わるかは分かりません。【死を覚悟する】ことはお忘れなきように』
『全てを解決するにはまだ時間がかかるかもしれませんが、どうか引き続き協力のほどよろしくお願いしますね』
それはまだ延長線。
けれど追われるだけだった山羊は、自ら歩もうとする。
多くを突き落す崖の先へと。
マスターより

引き続き王権決死戦シナリオを担当させて頂いています。落光ふたつです。
プレイング冒頭に【死を覚悟する】の記載がない場合は採用出来ませんのでお気を付けください。同行者がいる方は、【相手の名前】又は【合言葉】のご記入をお願いします。
展開していく内容によっては、頂いたプレイングに沿わないリプレイになるかもしれません。また、リプレイを返す順番もこちらの都合で決めてしまいますのでお待たせしてしまうかもしれません。ご了承ください。
王権決死戦とは:https://tw8.t-walker.jp/html/library/official/deadoralive.htm
それではどうか、よろしくお願いいたします。
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第1章 冒険 『強行突破せよ』

POW
物理でゴリ押し、強行突破だ!
SPD
こんな時こそ工夫のしどころ技巧を凝らして強行突破を為す!
WIZ
知恵をしぼってなんとかここを突破する。
√汎神解剖機関 普通7