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リーテンリュースの蛍夜
●|露花氷《ろかごおり》と|月響珠《クランペルラ》
冒険王国『カトルヴェア』――現れては消えていく四季の|夢《ダンジョン》を擁する王国の一角にある村『リュースエルヴ』に、今年も初夏がやってきた。
渓谷にひそりと佇むその場所は、この季節になると天気雨が多く降る。
雲なき空から零れ落ち、花弁を濡らし、水面を揺らし、地を打って静かに光りながら弾けて躍る雨粒たち。村の立地による気候や条件が重なって、ほかよりも一等眩く燦めくそれを、人々は『神の涙花』と呼び尊んだ。
雨は忌むべきものではなく、むしろ神の御業なのだと。
その奇跡を慈しみ親しみを込めて生まれた『リュースエルヴ』の名物のひとつが、『|露花氷《ろかごおり》』だ。
様々な果実から作られた氷蜜に、好きな花のフレーバーを加え、天気雨の雫を魔法で加工した仄かに耀くパウダーをまぶしたそのかき氷は、雨露に燦めく花のように、甘く香りながら鏤められた星屑めく光を纏う。
勿論、氷蜜やフレーバーは好きに選べる。ちいさな村ながら、様々な店がこぞって種類を取り揃えているから、あなた好みの露花氷もきっと作れるはずだ。
「しかも、村の至る処に|緑廊《パーゴラ》があって、天気雨が降るなか、満開の花を屋根代わりにかき氷を食べるのがお勧めの食べ方なんだそうですよ!」
そこまでの説明を終えたヴァロ・アアルト(Revontulet・h01627)が、興味津々に狐耳と尻尾をぱたぱたと揺らす。
花屋根に使われているのは、ブーゲンビリアやクレマチス、スタージャスミン、サンパラソル、テイカカズラ、バタフライピー、黄花藤などの、初夏に咲くつる性の花々。花の種類は勿論のこと、その色も多種多様だ。
店先や公園、丘などを彩る|緑廊《パーゴラ》のほかにも、街のあちらこちらにフラワーアーチ付きの2人掛けベンチもある。加えて、天気雨といっても小雨程度。好きな花の花屋根で、ふうわりと花の香りと燦めく雨粒を愉しみながら、自分好みの|露花氷《ろかごおり》を満喫してはどうだろう。
●白月の蛍夜
「――と、ここからが本題です。そんな長閑な村の外れに、ダンジョンが現れたんです」
しかも厄介なことに、村人が良く出入りしている森に酷似した様相なのだと、ヴァロはひとつ嘆息した。あまりにも似ているため、森を訪れてそのまま知らずにダンジョンへと迷い込んでしまう人が増えているのだ。
「村には緩やかな川が流れてて、その浅瀬で|月響珠《クランペルラ》って言う魔石が採れるんですけど……どうやらダンジョン内の水辺でも同じものが採れるらしくて」
しかもたくさん! と両手を大きく広げた娘は、困ったと言わんばかりに狐耳をぺしょりと伏せた。
村のもうひとつの名物――『|月響珠《クランペルラ》』。
淡い輝きを宿すそれは、月光の届く浅い水底に沈み、そっと息をひそめるように人知れず眠っている。そうして、水面を透いて注がれた月の魔力を宿したその石は、ささやかな“音”をひとつだけ記憶するという。
ダンジョン内の浅瀬や、岩が削れて自然に生まれた水盆の底にあるままの|月響珠《クランペルラ》をそのまま拾い上げれば、身近にある水の調べ――せせらぎや水滴の音、雨音など――を記憶する。耳に当てると、心地良い音色が聞こえてくるだろう。
そうではなく、水面へと“声”を発するか、記憶に在る“声”を想い描いてから手で掬い上げれば、その“声”を記憶する。
水音、雨音、想いを告げる誰かの声。
あるいは、もう二度と聞けぬと思っていた、過去の言葉。
どれも記憶できる時間はほんの数秒。それでも、それを活かして愛しい人へと声を届けたり、大切な人の声を想い出から汲み出さんとする人も少なくはない。
「まぁでも、そこで村人さんたちが引き返してくれれば良いんですが……森――つまりダンジョンの最奥には敵もいるんですよね……」
それはまさに、月へと願う人々の想いを糧とする、荘厳で幻想的な月の幻影。
ぽっかりと空いた森の上空に浮かぶその満月に、言葉も意志も、感情もありはしない。ただそこに在り、誰かの憂いが晴れるような願いをひとつ叶えると消えてゆく。
直接的な害意はないとはいえ、簒奪者であることは変わりない。放置したままよりも撤退させておくほうが安心だろう、とヴァロは添えた。
「ですが、急ぐこともありません。丁度今の時期は、そのあたりに蛍の群れが現れるそうですから、蛍観賞も愉しんできてはどうでしょう?」
ダンジョンの最奥にあるのは、清流の流れ込む静かな泉。
その畔で静かに語らったり、ちょっとした飲み物や食べ物を味わったり。
柔らかな水の響きのなか、月光を纏った雨粒のように、ぽつりぽつりと淡いひかりを夜に鏤めてくれる蛍たちを、ひとときばかり愉しんでも支障はないだろう。
――だって、お月様はそっと見守っているだけですから。
マスターより

こんにちは、西宮です。
初夏ならではのお出かけのお誘いです。
全章通してのんびりとひとときをお楽しみください。
🍧各章補足
<第1・2章共通>
・POW/SPD/WIZの選択肢は一例です。OPに添っていればご自由にお過ごし下さい。
・公序良俗に反する行為、未成年の飲酒喫煙、その他問題行為は描写しません。
<第1章🏠>
『リュースエルヴ』の村で、|露花氷《ろかごおり》を食べられます。
氷蜜(どんな果物か)とフレーバー(どんな花の香りか)はご自由に。
白玉や練乳など、一般的なかき氷に用いる食材も追加可能です。
花屋根orフラワーアーチ付きベンチ、およびそれらに咲く花のご指定もあればどうぞ。
<第2章⛺>
普通の森にしか見えないダンジョンの水辺で、|月響珠《クランペルラ》の採集。
|月響珠《クランペルラ》の仕様はOPの通りです。
敵は出てきませんので気兼ねなく満喫してくださいませ。
<第3章👿>
ボス章ですが敵は襲ってきませんので、蛍観賞をお楽しみください。
飲食物の持ち込みは可。ゆるりと過ごす雰囲気です。
※今回の敵は「この敵を撤退させたい」という願いを叶えた体で撤退するので、敵を撤退させるための願いに関するプレイングは不要です。
🌕プレイング補足
・受付期間は別途タグにてご連絡いたします。期間外のプレイングは一度お戻しとなりますのでご了承ください。
・各章のみの参加、途中参加も歓迎です。
・お一人でもグループでも、ご自由にご参加ください。プレイングに問題ない限り全採用いたします。
・複数名同伴でご参加の際は、冒頭に【IDとお名前】か【グループ名+人数】をご明記下さい。
※グループの人数制限は設けません。
※場合によっては再送をお願いする可能性もあります。
🔔ご参加の際は、お手数ですが都度MSページもご確認願います。
皆様のご参加をお待ちしております。
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第1章 日常 『花溢れる園』

POW
美しい花を愛でながら
SPD
漂う芳香に漂うように
WIZ
花びらの色に思いを寄せて
√ドラゴンファンタジー 普通5 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

忌むべきものじゃなくて感謝に値するもの、神の涙花
そうだよね雨は恵の雨なんて言ったりするしね。すてきな考え
氷蜜もフレーバーも想像してたよりもかなりたくさん種類があるんだね
選べる楽しさもあるけどうーーーーん迷う
氷は桃もいいかも。でもチェリーとか苺も捨てがたい
迷って最終的に選んだのは最初に目に入った桃!
フレーバーは気になる香りばかりででさらに迷う
特に気になった香りを確認させてもらって、薔薇を選んだ
華やかだけど派手過ぎず主張するだけじゃない、深みのある香り
ブーゲンビリアの花屋根の下で早速露花氷をいただく
ちょっとチャレンジの側面もあったセレクトだったけど美味しい
こんな雨と花と、氷菓の楽しみ方もいいね
●神の涙花零るる処
ひとつ深く呼吸すると、葉と花と、雨の匂いが胸を満たした。
葉や花びらにあたって弾けた雨粒が、白い石畳へと零れて更に跳ねる。初夏の陽を映して燦めきながら、神の涙花が人々へと無二のひかりを鏤めてゆく。
山間にあるリュースエルヴの村には、今日も天気雨が訪れていた。
優しく撫でるように吹き抜けていく風がからりとした心地良さを運び、蔓を彩る花々が靡くたびに、鮮やかな花片が舞い、ふうわりと甘い香りが鼻腔を擽る。それこそが、この村がこれまでも、そうしてこれからも一等慈しむ風景のひとつだ。
神の涙花――忌むべきものじゃなくて、感謝に値するもの。
「……そうだよね。雨は恵の雨、なんて言ったりするしね」
素敵な考え、と懐音・るい(明葬筺・h07383)が唇で弧を描く。確かに、雨は人に不自由を強いることもあるだろう。けれど、雨がなければまた、人は生きていけない。同じ事象でも、疎うより尊ぶほうが優しくなれそうな気がするのは、なにも自然に対してだけのことではないだろう。
「それにしても……」
傘を差すほどでもない雨粒を敢えて愉しみながら幾つかの店を巡ったるいは、「たっぷり悩むのがまた、愉しいもんさ。決まったらいつでも声をかけてくれ」と微笑む青年に促され、店先の花屋根の下で一度脚を止めた。
苺や桃、マンゴーなどの氷蜜はもちろんのこと、フレーバーも想い描いていたよりもかなりの種類があった。そのぶん、選ぶ愉しさがあると言えばそうだけれど、
(う――――ん……)
氷は桃も良いかもしれないが、けれどチェリーや苺も捨てがたい。かといって、幾つも食べると、それはそれでお腹を壊してしまいそうだ。
――そうして、ぽたぽたとどこか鼓を思わせる雨音の響くなか、熟考すること暫し。
「よし」
「お、決まったか?」
「うん、やっぱり桃!」
「フレーバーは何にする?」
「……更に迷うね……。じゃあ、これと、これと……そっち、試香させてもらってもいい?」
ゆるりふわりと眦を細めたるいに、勿論、と青年も笑う。並べられた小瓶のコルク栓をひとつずつ丁寧に開けて愉しんでから、「これを」とるいは薔薇の小瓶を見せた。
|緑廊《パーゴラ》の軒先から零れて揺れるブーゲンビリアが、まるで誘っているように見えて。雨粒を纏って耀く紅や紫を眺めながらベンチに腰を下ろして、受け取ったばかりの露花氷へと匙を入れた。
「ん、ちょっとチャレンジの側面もあったセレクトだったけど……美味しい」
ぱくりと食めば、華やかながら気品と奥行きのある薔薇の香りが鼻を抜け、とろりとした柔らかな桃の食感と甘味が口いっぱいに広がった。
雨と花と氷菓が、耳と躰と心をしっとり満たしてゆく。
そんな愉しみ方もまた、一興。
🔵🔵🔵 大成功

神の涙とは大した呼び名じゃないか
お稲荷さんとこの狐が嫁にでも行っちまったのかね
なら嬉しいやら淋しいやらで涙も出るってもんさ
そいつが恵みになっての花盛り
異国の彩だけでも浸るには十分だってのに
燦めく花々に出迎えられちゃ堪らないね
視線があちらにこちらにと忙しなくて困っちまうよ
名物一つとっても可愛いもんだ
さぁて迷うと氷が先に溶けちまう
今の頃なら梔子の香りを浴びたいところだね
あいつは香り高いからほんのりと
合わせるなら鬼灯の実なんてのはあるかねぇ
こいつもいい甘酸っぱさと香りがあってね
梔子と似合いか喧嘩になるかは、運試しさ
どうにも話が長くなっちまったね
それじゃ花に囲まれ花を味わう
魅惑のひとときと洒落込もうか
「……お稲荷さんとこの狐が、嫁にでも行っちまったのかね」
神の涙とは大した呼び名じゃないか、と独り言ちた姜・雪麗(絢淡花・h01491)の声を拾った店主の男が、からからと笑った。
「お。“狐の嫁入り”だっけか? 昔はまことしやかに言われてたらしいなぁ」
「可愛がってた子の嫁入りなら、嬉しいやら淋しいやらで涙も出るってもんさ」
そうだろう? と口端を上げてみせる雪麗に、「そりゃ違ぇねぇ」と店主も喉を鳴らす。緩やかな山の稜線。その奥に広がる、夏色を帯び始めた薄青の空。止め処なく零るる雨粒は白い石畳のうえで軽やかに踊り、花弁を伝う露が一層、花の香を高めてくれる。
あまり√妖怪百鬼夜行から出ることのない雪麗にとって、見慣れぬ異国の明媚なる景色というだけで魅入ってしまうというのに、そんな涙が恵みとなってもたらされたこれほどまでの万花に出迎えられたならば、劫を生きる雪麗とて落ち着いてなぞいられまい。あちらこちらへと巡らせた視線が幾つもの気になるものや場所を見つけているというのに、まずはこの愛らしい名物ひとつに足止めされてしまっている。
「それで、どうする?」
「あぁ、すまない。待たせてるね」
「いや、いってもんさ。こんだけありゃ迷うなって方が無理な話だろ?」
短く詫びた雪麗に、店主は人好きのする笑みを湛えた。雨をも受け入れる村の民は、どうやら皆、大らからしい。
「違いない。とはいえ、迷ってばかりじゃと氷が先に溶けちまうか。まずは香り……今のころなら、梔子の香りを浴びたいところだね。あるかい?」
「ああ、とびきり上等なのがな」
「それは僥倖だ。あいつは香り高いからね、ほんのりと加えておくれ。あとは氷密だが……合わせるなら“鬼灯の実”あたりかねぇ。こいつも、いい甘酸っぱさと香りがあってね」
「お客さん、かなりの通だな? なかなか出ないオーダーだから在庫は少ないが――ほらよ」
見るからに柔らかそうに削られた天然氷のうえに、甘く煮詰められ一層濃く橙に色づいた鬼灯の氷密がとろりと掛けられた。仕上げにフレーバースプレーを軽く吹きかければ、忽ち梔子の香が雨の匂いに混じって広がる。
「どうにも話が長くなっちまったね。有り難くいただいてくよ」
「ここいらのもんはみんな、話好きだから店やってるようなもんだ。にしても、その組み合わせは俺も初めて作った」
「おぉ、そうか。……さぁて、梔子と似合いか喧嘩になるか……運試しってもんさ」
受け取った硝子の器を片手に、空いた手をひらひらと振って踵を返すと、雪麗は店先を飾る花屋根の下の一席に腰かけた。
「それじゃ、魅惑のひとときと洒落込もうか」
一匙をすくい、期待のままに口へと運べば、程良く広がる甘酸っぱさと、ほろりと混ざり合うふたつの香。
柔く、柔く、幾重もの風が村を抜け、頬に触れて。
花々をふうわりとを揺らし、世界に彩と雨粒を鏤めていった。
🔵🔵🔵 大成功

惟人くん(h06870)と!
露花氷…(きらきら)
説明だけで気分が上がるね、惟人くん!
どれも美味しそうだけどせっかくだし夏のお花味!
やっぱり王道のヒマワリ×レモンかなあ
惟人くんはどれにする?
わ、春爛漫でステキ!
ちょうど惟人くんとまほろと同じ色だね
パゴラから差し込む陽の光を見上げてニコニコ
お天気雨ってお花もきらきらして見えるから素敵だね
ふと思い至って、器も持ち上げて光に透かしてみせて
見て、氷のキラキラがもっときらきらになったよ
宝石みたいでとってもかわいい!
……あ、溶けちゃう前に食べちゃわなきゃ!
はーいと返事してパクリ
うん、爽やか夏味!おいしー!
惟人くんの言う通り
四季をコンプリートしたくなっちゃうね

まほろ(h01075)と
花のフレーバー…
あぁ…とてもわくわくする、まほろ
まほろのは元気が出そうで良いな
私は苺の氷蜜と桜の花にしよう
氷蜜は苺が好きなんだ
桜と合わさると、どういう感じになるか楽しみ
陽の光も、雨の雫も、花も…何もかも綺麗で
思わず見惚れて尻尾が揺れる
沢山の好きなものに囲まれ緩みそうになる顔を押さえ
まほろの真似して透かしてみたら
本当だ、氷の粒ひとつひとつ光って…
ずっと見ていたくなるな
名残り惜しみつつ頂くとしよう
あ、急いで食べるとキーンとするかもしれない
気を付けてくれ
…美味しい
過ぎた春を感じる
味わうごとに尻尾が揺れてしまう
まほろは夏を感じられたか?
秋冬の組み合わせを考えるのも楽しそうだな
オーダーカウンターの隣にある、コルクボードに貼られたメニューをじっくり眺める花牟礼・まほろ(春とまぼろし・h01075)と結・惟人(桜竜・h06870)。
「露花氷……」
「花のフレーバー……」
「説明だけで気分が上がるね、惟人くん!」
「あぁ……とてもわくわくする、まほろ」
今日の雨粒のように緑の双眸を燦めかせたまほろに、惟人もまた、微かな歓びを滲ませた金の|眼《まなこ》を向けて頷く。花の香と果実の風味がどんな出逢いになるのか、選ぶのでさえ胸躍るほどに愉しくてついつい決めきれずに迷ってしまう。
「まほろは……決まったか?」
「うーん……どれも美味しそうだけど、やっぱり王道のヒマワリ×レモンかなあ。せっかくだし、夏のお花味! 惟人くんはどれにする?」
「その組み合わせ、元気が出そうで良いな。私は苺の氷蜜と桜の花にしよう。氷蜜は苺が好きなんだ」
「わ、春爛漫でステキ!」
ちょうど惟人くんとまほろと同じ色だね、と花笑みを浮かべるまほろに、つられて惟人の口許もちいさく綻ぶ。桜と苺――その巡り合わせがどんな幸せをもたらすのかを愉しみに、待つこと数分。ざりざりと天然氷を削る爽やかな音にあわせて、花を模した硝子の器に白く透いた山が生まれ、そうして互いの氷密と香りが丁寧にそれを包み込んだ。
お姉ちゃんお兄ちゃん毎度あり、です! と元気に手渡してくれた看板息子から受け取って、店先にある白木のガーデンベンチに並んで座る。
「お天気雨って、お花もきらきらして見えるから素敵だね」
「ああ……」
葉や花の間から細く長く注ぎ込むひかりへと微笑むまほろに、返した言葉は短かったけれど。陽を反射して石畳に弾ける雨だれも、小鼓を打つかのような軽やかな雨音も、風が穏やかに過ぎてゆくたびにひかりの欠片を花に鏤めてゆくちいさな雫たちさえも美しくて、惟人は見惚れながら知らずと緩みそうになる口許を掌で隠した。それでも、“好き”の詰まった風景は愛おしくて、ゆらりゆらりと長い尾が足許へと影躍らせる。
「ね、惟人くん。見て、氷のキラキラがもっときらきらになったよ!」
こんなにも燦めく世界に、この露花氷を映してみたら――ふいに過ぎって試してみれば、まほろに倣って器を陽に翳した惟人も一層眸を見開いた。
「本当だ、氷の粒ひとつひとつ光って……ずっと見ていたくなるな」
「うん。宝石みたいでとってもかわいい! ……あ、溶けちゃう前に食べちゃわなきゃ!」
「あ、急いで食べるとキーンとするかもしれない。気をつけてくれ」
「はーい。――うん、爽やか夏味! おいしー!」
匙を近づけただけで分かる、露を孕んでなお鮮やかな草葉を思わせる心地良い向日葵の香り。初夏の草原めく芳香に続くレモンの酸味と仄かな苦味が、じんわりと清涼な余韻を残してゆく。
ご機嫌に頬緩ませるまほろへと僅かに眸を細めると、名残惜しみながらも下ろした器へと惟人も匙を入れた。まず鼻腔を擽る桜の香、次いで甘酸っぱい苺の風味が裡をいっぱいに満たしてくれるから、一匙ごとに尾が揺れてしまうのはもう、仕方のないこと。
「……美味しい。過ぎた春を感じる」
舌のうえで蕩けるほどに柔らかな氷が運んでくれる、ひんやりとした涼の|気配《けわい》。
「まほろは夏を感じられたか?」
「うん! 惟人くんも?」
「ああ。今度は、秋冬の組み合わせを考えるのも楽しそうだな」
「それ素敵っ! 折角だし、四季をコンプリートしたくなっちゃうね」
店も、花も、香りも。ほかにもまだまだ選びきれぬほどにあるのならば、それもまた愉しそうだ。
なにせこの優しい天気雨は、もうしばらく続いてくれるのだから。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

【星測】2人 ◎アドリブ
本当に雲がないのに雨が降るんだ
ボク、天気雨は初めて
雲がかからない雨だなんて、びっくり!
この村夜空はどんなものなんだろうね
オルロイ、オルロイ
もう少しでお店だね
何にするか決めたかい?
ふふ、迷うよね
あ!そうだ!シェア、をするとふたつの味が楽しめるからやってみない?
約束だよ
わぁ!話には聞いていだが、綺麗だね
何処で…そうだね、あそこにしよう
それじゃあ、いただこうか
ボクはレモンにプルメリアにしてみたんだ
ふふふ、美味しい!
ね、そっちもちょーだい!
こっちも美味しいー
なんだか贅沢な時間だね
これからも美味しいものを食べて、色んな所を巡れるといいね
せっかくこの身体があるんだから

【星測】2人
アドリブ◎
実際に体験するものとではこうも違うのか
「私も初めてです。雨が降っても星は見えるのか…とても興味深い」
「スフィア、あまり急かさないでください」
と言いつつも自身も浮き足立つ
「まだ、決めていませんが…たくさんあるようで迷いますね。あなたがいいならいいですよ」
「見た目も楽しい、というやつですね。あぁ、あそこの花屋根にいきましょう」
近くの黄花藤を提案
白葡萄の蜜に紫陽花のフレーバー
柔らかい甘さと花の香に笑みが溢れる
「では、私も遠慮なく」
違う組み合わせも中々に美味
他も試したくなる美味しさ
「そうですね。出来るとこまで、やれるところまで。たくさん楽しみましょう」
小さな保護者に笑ってみせる
「見てよ、オルロイ!」
ちいさな背をくっと伸ばして、スフィア・リンク(.·˖*✩⡱ 導星 ˚. 𖥔 ݁ ᯓ★・h07513)が指さした先。夏の燦めきを纏って一層鮮やかに広がる青空を仰いだオルロイ・セレスティアル(星芒・h07614)は、その金の双眸を柔く細める。
「ボク、天気雨は初めて。本当に雲がないのに雨が降るんだ……雲がかからない雨だなんて、びっくり!」
「……私も、初めてです」
知識として知ったときも相応に驚いたとは思うけれど、実物を目の当たりにするとこれほどまでに心動かされるものなのか。そう思う気持ちは、スフィアもまた同じなのだろう。歩みとともに、娘の声も弾む。
「この村夜空はどんなものなんだろうね」
「ええ。雨が降っても星は見えるのか……とても興味深い」
雨露を浴びて陽に燦めく、緩やかに村のなかを走る白い石畳。広い庭を擁する住宅街を抜けたらもう、そこは村の中心部だ。円形の広場の周囲に、様々な店が建ち並ぶのが見える。
「オルロイ、オルロイ。もう少しでお店だね」
「スフィア、あまり急かさないでください」
急く気持ちが手に取るように分かる娘の足取りを追いながら、そういうオルロイも知らずと足早になっていた。そわそわと浮き足立つ心のままに、自然と|眼《まなこ》が店々を探す。
「どんな氷密も、どんな香りもあるって話じゃないか。何にするか決めたかい?」
「まだ、決めていませんが……たくさんあるようで迷いますね」
「ふふ、迷うよね。――あ! そうだ! シェア、をするとふたつの味が楽しめるからやってみない?」
「シェア、ですか? 勿論、あなたがいいならいいですよ」
快諾の声に、スフィアがくるりと身を反転させて「本当か?」と眸を燦めかせた。約束だよ、と零れた微笑みをふわりと風に乗った雨粒が彩って、星々のように耀かせる。その勢いのままに、あちらこちらの店へと赴いて、じっくり吟味して選んだお互いの一等を手に、再び広場の中央に立つ。
「わぁ……! 話には聞いていだが、本当に綺麗だね」
「見た目も愉しい、というやつですね」
「だな。――さてと、何処で食べよう?」
きょろりと見渡したスフィアの眸に、幾つもの花々が映る。華やかな紅や紫に染まるブーゲンビリアやサンパラソル、爽やかな青みを帯びたやクレマチスやバタフライピー、ちいさく清らかな白色のスタージャスミンやテイカカズラ――露を浴びた|彩《いろ》はどれも美しくて迷ってしまうけれど。
「あぁ、あそこの花屋根にいきましょう」
オルロイが視線を向けた先、広場の一角にあった|緑廊《パーゴラ》を見れば、見頃を迎え、ふさふさとした花を枝垂れさせた黄花藤が、優しく吹き抜けてゆく風に揺られていた。
そうだね、と娘が頷き、あそこにしよう、と嬉しそうに|咲《わら》う。そうして並んで白木のベンチに腰を下ろすと、「それじゃあ、いただこうか」と早速匙を手にしたスフィアに倣って、「では、私も遠慮なく」とオルロイも一口含んだ。
「ボクはレモンにプルメリアにしてみたんだ。――ふふふ、美味しい!」
しゃくしゃくとした氷とともに、甘酸っぱいレモンの風味が口いっぱいに広がった。それを包む華やかな芳香が、上品で甘い余韻を残して裡から幸せで満たしてくれる。
片やオルロイのほうは、ひんやりとふわふわな天然氷に染みゆく、白葡萄の柔く爽やかな甘味。後から続く、雨の香りを孕んだほんのりと甘い紫陽花の香りが、すうっと鼻から抜けていく。
「ね、そっちもちょーだい!」
自然と零れた笑みが、余程興味をそそったのだろうか。ボクのもあげるから! と強請られれば、断る理由なんてなくて、「構いませんよ」とオルロイは花を模した硝子の器を娘へと向けた。
「こっちも美味しいー」
「スフィアのも、中々に美味です」
これは確かに、ほかの組み合わせも試してみたくなるというもの。先程露花氷を買った店の主がちらりと零していた言葉の意味を察する青年の傍ら、娘もほう、と満足気な息を零す。
「なんだか贅沢な時間だね……これからも美味しいものを食べて、色んな所を巡れるといいね」
せっかく|この《動ける》身体があるんだから――そう花笑みを浮かべた小さな保護者へと、「そうですね」と弟分も口端を綻ばせる。
ふたり歩む路は、まだ始まったばかり。
できる処まで。やれる処まで、たくさん愉しもう。
――星の数ほどあるであろう、数多の世界の燦めきを。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

黒海さん(h04793)と一緒に
黒海さん、黒海さんご存知ですか?
世界にはたくさん可愛くて選べなくて美味しいものがあること!
空からの緩い雨雫を受けながら青い瞳は嬉しそうに瞬く
果実は何が好みかしら、お花は?
わたしは……うーん
いえ、今回は迷わないように決めてきたんです
マスカットと……バタフライピーかな
ふふ、はい
違うのだと倍楽しめますから
ドラゴン……強そうなものがお好きなんですね
それで、今日はですね
なんとわたし手持ちがありますから
お礼をさせてください
えっそれでは交換……ふふ交換です
わたしそんなに物足りない顔してましたか?
うう、恥ずかしい
素敵なものがいっぱいあって困ります
……遠慮なく三口程いただきます

物集さん(h01103)と
いえ、知りませんでした
あまり興味もないのだけれど
彼女がやけに楽しそうなので、それは言わずに
子ども1人で居るよりは
大人が側で見守った方が良いだろう
好きな果物…
暫し悩んで何となく浮かんだのは
…ドラゴンフルーツ…いや、パイナップル?
前者は無いですよね、きっと
花は…物集さんと同じので
…つまらないですか? じゃあ茉莉花を
奢る…
あの、財布の中身が心許ないような…
流石に心配なので物集さんの分は俺が奢ります
大丈夫ですよ
ここまで来たら付き合いますから
さっき迷うと言っていた様な
よかったら、先に俺の分少し食べますか?
まあ、全部食べてもいいんですけど
流石にお腹を壊されたら困るので…ほどほどに
こんなにも陽に耀く雫が毀れてきているのだもの。傘を差すのももったいないと、物集・にあ(わたつみのおとしもの・h01103)は艶やかな黒髪を靡かせながら、両の手を緩く広げた。
「黒海さん、黒海さんご存知ですか?」
まるで謎かけのような言葉と声音に、唐草・黒海(告解・h04793)は己が白い尾とともに微かに首を傾げる。
「世界には、たくさん可愛くて選べなくて美味しいものがあること!」
「いえ、知りませんでした」
こんなにも海のいろを映した眸を燦めかせた娘の前では、あまり興味もないのだけれど――と裡に過ぎった言葉を、青年はそのまま留め置く。
黒海としては、今回は付き添いのようなものだった。子供がひとりで居ると、何があるやも知れぬ。ならば誰か大人が傍で見守っていたほうが良いというものだろう。
「黒海さんは、果実は何が好みかしら?」
「好きな果物………ドラゴンフルーツ……いや、パイナップル?」
「ドラゴン……強そうなものがお好きなんですね」
暫し逡巡したのちに出した返事に、「前者は無いですよね、きっと」と何気なく黒海が続けた言葉を、近くの露花氷店の婆が拾った。
「ほっほっほ……そう思うじゃろう? じゃが、この村もまがいなりにも冒険王国の中じゃて。冒険者さんらが、いろんなもんを持ってきてくれるんじゃ」
ほれこれのことじゃろう? と差し出されたのは、とげとげとした濃いピンク色の楕円の果実。紛うことなき、ドラゴンフルーツそのものだった。「無論パイナップルもあるぞ?」と続けて差し出された実物を見て、黒海は赤の双眸を僅かに瞠る。
「なんでもあるというのは本当だったんですね! では、お花は?」
「物集さんと同じので――というのはつまらないですか? じゃあ……茉莉花を」
「ふふ、はい。違うのだと倍楽しめますから」
同じので、と言った直後、にあの眸に浮かんだ|彩《いろ》に気づいた黒海は、さり気なく言葉を付け足した。その答えに満足そうに微笑むと、にあは自身の露花氷へと思考を移す。
「わたしは……うーん……いえ、今回は迷わないように決めてきたんです。マスカットと……バタフライピーかな」
「あいよ。今作るでなぁ、ちょぉっと待っててな」
のんびりとした口調の婆と、穏やかに流れてゆく風と時間。
そんな長閑な空気のなか、きりりとした貌でにあが切り出す。
「それでですね、黒海さん」
「はい」
「今日は、なんとわたし手持ちがありますから。お礼をさせてください」
「お礼……奢ってくれる、ということですか?」
「はい!」
「……あの、財布の中身が心許ないような……」
「えっ」
そんなまさか――そう言いたそうに財布を取り出し確認するにあに、微かに眉尻を下げた黒海は、
「流石に心配なので物集さんの分は俺が奢ります。大丈夫ですよ、ここまで来たら付き合いますから」
「そっ、それでは交換……ふふ、交換です」
そう言って柔く容を緩ませる娘へと、ひとつちいさな苦笑を返した。
花屋根の下、風が吹くたびに、露を纏った花々があたりへとひかりを鏤めてゆく。
「――よかったら、先に俺の分少し食べますか?」
「えっ!? わたし、そんなに物足りない貌してましたか?」
貌というより、それはにあの様子を見ていれば容易く知れた。
さっぱりと甘いマスカットに、仄かな豆のようなバタフライピーの香りは、まさに大人の上品さを孕んでいてつい匙を動かす手が進んでしまう。だのに、それもすぐに急に動きが鈍ってきたのだ。食べるのが勿体ない――そう思っていると言っているようなものだろう。
さっき迷うと言っていたような、と心中で付け加えながら提案した黒海から一度視線を逸らすと、にあは花影のなかでちいさく俯く。
「うう、恥ずかしい……素敵なものがいっぱいあって困ります」
「まあ、全部食べてもいいんですけど」
「……では、遠慮なく三口ほどいただきます」
さらりとした甘味と風味に、茉莉花のフローラルな香りは屹度、食が進んでしまうだろうけれど。
「流石にお腹を壊されたら困るので……ほどほどに」
そう微かに口許を緩めた黒海は、花型の硝子器を差し出すのだった。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

おばあちゃん(エストレィラ・h01493)と!
おばあちゃん誘って、いざ氷スイーツ!
逸れないように手ェ繋いどこ。
……いや、おばあちゃん呼びしといてなんだけど、その|美少女フェイス《ビジュ》で若い頃とか言われてもピンと来ねぇのよ。
果物と花かァ。
したらアタシ、マンゴーと金木犀にしよっかな。
あー!おばあちゃん白玉山盛りにしてる!
アタシも!
何処で食べる?
あ、スタージャスミンの花屋根あるじゃん。
おばあちゃんフレーバーにしたやつでしょ?
あそこにしよ!
イエーイ乾杯!スイーツだけど!
冷たい!そんで美味しい!
金木犀も良い匂いする〜。
え、一口もらっていいの?
じゃあおばあちゃんもこっちどうぞー。
アッ!キーンてする!!

伽藍ちゃん(h01774)と
露花氷…何とも甘美な響きであるな!
かき氷を最後に食べたのはいつの頃だったか
若い頃に食べたきりだ
楽しみだぞ!
繋いだ手をぶんぶんする
わたくしはスターフルーツとスタージャスミン
白玉は大盛りがよいぞ!
伽藍ちゃんのは鮮やかで明るいな
おまえさまの明るさが顕れているようだ
とても愛い
美しい花を愛でながら
うむ、乾杯だ
しかし、どちらかと言えば花より団子である
口の中がひんやり心地良い
爽やかな甘さだ
伽藍ちゃん、婆のも一口如何であろうか?
ほれ、あーん、だ
差し出された一口には遠慮なく
こちらも美味である
伽藍ちゃんと食べるすいーつは、一等美味いなあ
笑いながらかき氷を咀嚼
…ぬぁっ!? 頭が軋む…!?
――いざ参らん、氷スイーツ!
そう意気揚々と村を訪れた一文字・伽藍(Qクイックシルバー・h01774)とエストレィラ・コンフェイト(きらきら星・h01493)は、村の中央にある広場に集う店々をぐるりと見渡した。
「おばあちゃん……見て、お店がたくさん……!」
「露花氷……なんとも甘美な響きであったが、実物は更に魅惑の氷菓のようだ……!」
「うんうん。話には聞いてたけど、これは選び甲斐あるね~」
はぐれぬように、と繋ぎ、道中も躍る心のままにぶんぶんと揺らしていた手は知らぬ間に静止して、かわりにふたりの眸が一層耀く。
「かき氷を最後に食べたのはいつのころだったか……あぁ、そうだ。若いころに食べたきりだ」
「……いや、おばあちゃん呼びしといてなんだけど、その美少女フェイスビジュで“若いころ”とか言われてもピンと来ねぇのよ」
苦笑を滲ませる伽藍に、そうか? と首を傾げるエストレィラは、愛らしい面立ちできょとんと瞬きながら、長く艶めく銀糸を揺らす。御年99歳には見えぬのも無理はない。
「果物と花かァ。どれが良いかなぁ……」
「わたくしはスターフルーツとスタージャスミン。白玉は大盛りがよいぞ!」
「したらアタシ、マンゴーと金木犀にしよっかな――って、おばあちゃん白玉山盛りにしてる! アタシも!」
そんな弾むような言葉のやり取りに、オーダーを聞いていた看板娘もつられてくすりと微笑んで。花型の硝子の器にたっぷりと白玉を入れると、そのうえからふんわりと刻んだ天然氷を入れ、それぞれの氷密もたっぷりとかけて、フレーバースプレーをシュッと一吹きしたらスペシャルな一品が完成だ。
ありがとうございました、とぺこり一礼する看板娘に見送られながら、「何処で食べる?」と伽藍があちらこちらへと視線を巡らせれば、ふうわりと風に乗って届く、優しく甘い香り。
「あ、スタージャスミンの花屋根あるじゃん。おばあちゃんフレーバーにしたやつでしょ? あそこにしよ!」
ここまで来ればはぐれることもないだろうけれど、浮き足立つ気持ちは一緒だから。再び手を繋いだふたりは、白く甘やかな芳香に包まれた|緑廊《パーゴラ》の裡にある白木のガーデンチェアへと腰を下ろした。テーブルへと置いた器をもう一度両の手で掲げて、笑顔を交す。
「イエーイ乾杯! スイーツだけど!」
「うむ、乾杯だ」
透いた氷の山へ、さくりと柔く匙を入れて一口食めば、口いっぱいに広がるのは滑らかな氷の舌触りと、程良い涼の気。
「冷たい! そんで美味しい! 金木犀も良い匂いする~」
「くふふ、口の中がひんやり心地良い。爽やかな甘さだ」
マンゴーのとろりとした甘さと、柔らかくもざくざくとした氷、そしてその中に潜むぷにぷにとした白玉。その食感の違いだけでも愉しいくて、嚥下したあとに残る金木犀の優しい香りがなんとも言えぬ幸せ心地を運んできてくれる。
「伽藍ちゃんのは、鮮やかで明るいな。おまえさまの明るさが顕れているようだ。とても愛い」
夏の陽を思わせる橙色へと眦を緩めながら、「婆のも一口如何であろうか?」と匙を差し出されたら、勿論伽藍も破顔して、
「え、一口もらっていいの? じゃあ、おばあちゃんもこっちどうぞー」
「なら、遠慮なくいただこうか。まずは伽藍ちゃんから――ほれ、あーん、だ」
ぱくりと頬張れば、しゃきしゃきとした食感のスターフルーツが氷に溶けて、一層優しくなった甘酸っぱさがじんわりと裡へと染みてゆく。
柔く甘い香りは、氷菓からか、はたまたふたりを包む花たちからだろうか。
「ん! おばあちゃんのも美味しい~! はい、アタシのもあーん」
「うむ、こちらも美味である。伽藍ちゃんと食べるすいーつは、一等美味いなあ」
ほくほくと滲む笑みのまま、ふと視線を上げれば露を燦めかせながら白い小花たちが風に揺れる。こちらもまた愛いものだ――どちらかと言えば、今は花より団子だけれど。
のんびりとした風が過ぎ去ってから、もう一匙を口へと運ぶ。
「アッ! キーンてする!!」
「……ぬぁっ!? 頭が軋む……!?」
そんな氷菓おなじみの出来事すらも、愉しくて。
ふたつの笑み声が軽やかに、天気雨へと溶けていった。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

【北斗七星+4名】
んにゅ……お誘い受けてもらえてありがとうなのです……
皆さんと食べる方が美味しいかなと思ったのです……
露花氷……氷蜜、かき氷なのです……甘味なのです……甘いものは、正義なのです……
色んな種類の、氷蜜を使いたい、ので……小分けにして、食べるのです……ふぁ……
いちごやメロン、さっぱりとしたレモンやブルーハワイ……お花の香りは、ラベンダーがいいのです……安眠効果なのです……
食べながらか食べ終えてうつらうつらしながらふら〜っと後方に倒れ込むかもなのです
その際に橙香さんの胸元でキャッチしてもらうかもしれないです
僕の背丈が100cmなので、一緒に地面に倒れることはない、はず……すぴー……

【北斗七星+4名】
暑くなってきましたしこの時期にはいいですね(なお服装はライダースーツで胸元を開けており1m超えの大きな北半球が覗いている)
「見た目も涼しげで華やかでいいですね」
メロンの氷蜜に薔薇のフレーバーでも試してみましょうか?
皆で食べているとやはり美味しいですね、甘みも良いですがフレーバーも合わさって凄い豪華です♪
ゆっくり食べながら休憩していると睡蓮くんが眠たくなったのかこちらに寄りかかってきましたね
「どうやら眠くなってしまったようですね、ゆっくり休んでください♪」
背丈の関係でメロンサイズの爆乳が枕のようの状態になりつつ過ごします
※ネタやアドリブはお任せします

【北斗七星+4名】アドリブOK
お誘いありがとうございます…暑くなってくる時期には良いお出かけ先です…
氷蜜は甘そうなマンゴーにしてみようと思います…
濃厚な甘さとアクセントを求めてフレーバーは練乳と白玉にしてみます…
あっ…とっても甘い練乳と白玉のモチモチ食感で美味しいです…
さっぱりフレーバーのマンゴー味も気になるのでお言葉に甘えて一口頂きます…
セイシィスさんに呼ばれて、やや上を見上げる様な体勢で膝の上に浅めに腰を掛けます…
お花の屋根の下で、露花氷に負けないくらい綺麗な天気雨と雨露の滴るお花の燦めきを楽しめてとっても素敵です…
(そして額の上あたりに乗ったセイシィスさんのお胸が結構視界に入っていたり)

【北斗七星+4名】アドリブOK
「暑い時期にはやっぱり氷だよね~」
体温低めの雪女には暑さが応えるんだよ~(メロンのような北半球を手で仰ぎつつ)
「味はマンゴーにするとしてフレーバーはなにがいいかな~?」
できれば爽やかなのを選びつつ皆で座って食べるよ~
「甘くて美味しいね~♪」
味は同じだけどフレーバーの違いを知る為にお互い一口交換してもいいかもね~
しばらくすると橙香さんに寄りかかって睡蓮くんが眠っちゃったからこっちは色くんとゆっくりしようかな~
「色くんもこっちにおいで~」
色くんを膝の上に座らせつつ景色を楽しむよ~(なお身長の関係で橙香さんたちと変わって爆乳が枕よりも頭の上に乗りそうかな~?)
ぱらぱらと降る雨粒が|緑廊《パーゴラ》の屋根に弾んでひかりを散らす。
枝垂れた花々も雫を浴び、風に靡くたびに雨の気配を含んだ華やかな香りを運ぶ。白い石畳で跳ねる雨音は軽やかで、世界がどこまでも澄んで見えるよう。
「暑いときにはやっぱり氷だよね~」
「ええ、この時期にはいいですね」
白木のガーデンテーブルを囲むように座る『セプテントリオン』の面々のうち、のんびりとした声音のセイシィス・リィーア(橙にして琥珀・h06219)へと、鬼城・橙香(青にして橙火・h06413)もポニーテールを揺らしながら頷いた。「体温低めの雪女には暑さが応えるんだよ~」とぱたぱた手で上部がはだけ気味の胸許を仰ぐセイシィスの対面で、橙香もまたライダースーツの胸許を――ちなみにどちらも、形・大きさともに極上だ――開けて涼を得る。
「睡蓮さん、今回はお誘いありがとうございます……最近暑くなってきたので、丁度良いお出かけ先です……」
「んにゅ……お誘い受けてもらえてありがとうなのです……。皆さんと食べる方が、美味しいかなと思ったのです……」
ぽわぽわと柔らかな雰囲気の清緑・色(清き緑の龍・h06856)へ、頷きか船を漕いでいるのか、どちらにも見える仕草でこてりと|頭《こうべ》を下げた鬼灯・睡蓮(人間災厄「白昼夢」の護霊「カダス」・h07498)は、瞬間、視界に入ってきた自分の露花氷に気づいてどうにか眠気を堪えた。
「露花氷……氷蜜、かき氷なのです……甘味なのです……甘いものは、正義なのです……」
「見た目も涼しげで華やかでいいですね」
隣でゆらりゆらりと揺れる睡蓮へと微笑みながら、橙香も仲間たちに合わせて食べ始めた。さくり、と匙を入れて口許へと運べば、上品な薔薇の香りがふうわり漂い、とろりとした舌触りのメロンがたっぷりの甘味を届けてくれる。
並んで食べるセイシィスと色が選んだ氷密は、揃いのマンゴーだ。香りで違いを出せたら面白そうだ、と色は練乳、セイシィスは柑橘を選んだ。
「あっ……とっても甘い練乳と白玉のモチモチ食感で美味しいです……」
これぞ求めていた甘さの極――! 幸せいっぱいの笑顔を浮かべる色へと、セイシィスもつられて頬を緩ませて、
「ん~、甘くて美味しいね~♪ 色くんも一口どうぞ~」
「では、お言葉に甘えて一口頂きます……あっ、さっぱりフレーバーも美味しいです」
僕のもどうぞ、と差し出された匙へ、セイシィスもぱくり! マンゴーに練乳が加わって、舌に残る一層芳潤となった甘やかな余韻に暫し浸る。味は同じなのに、香りが違うだけでこんなにも愉しいなんて。皆と来たからこそ知る面白さに、もひとつ笑みが深くなる。
「皆で食べていると、やはり美味しいですね。甘みも良いですが、フレーバーも合わさって凄い豪華です♪」
「ふぁ……本当、そうなのです……」
ゆっくりと食べ進める橙香の隣、それ以上にのんびりと匙を運ぶ睡蓮は、苺、メロン、レモンに次いで、ようやくブルーハワイの蒼山を切り崩し始めていた。色々な種類の氷密があるならば、小分けにして食べれば良い――そう思いついた少年の前には、掌サイズの硝子の器が並んでいる。
ふわり柔く鼻孔を抜けてゆくのは、優しいラベンダーの香り。安眠効果を期待して選んだそれは、まさに効果抜群のようだ。
「――おや、どうやら眠くなってしまったようですね」
食べ終えて一休憩していた橙香の撓わな胸へとぽてり寄りかかってきた睡蓮へ、「ゆっくり休んでください♪」とちいさく声をかけて橙香が双眸を細めた。膝枕ならぬ胸枕と言えようか。
「すぴー……」
「ふふ、よく寝てますね~。色くんもこっちにおいで~」
「え? あ、はい……」
数度瞬いた色は、膝をぽんぽんと叩いて呼ばれるままに、セイシィスの膝へとちょこんと浅めに腰かけた。柔く後ろから抱き留められながら、燦めく雫と花たちが鏤められた風景をゆっくりと眺む。
「綺麗だね~」
「はい……露花氷に負けないくらい綺麗な天気雨と雨露の滴るお花の燦めきを楽しめて、とっても素敵です……」
そう言った色の視界の上半分ほど――すこしでも貌を上げると、それ以上に――は、セイシィスの胸影で隠れていたけれど。
ふうわりと香る花と舞い散る露の燦めきは、いつまでも皆を愉しませていた。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

【花雛】2
美しい村ね、花寿姫
くるりと花の香と心地よい風に身を任せ
天より零れる雨の気配に心を踊らせる
どんな露花氷を食べようかしら?
甘やかな桜蜜を氷に纏わせて
白雲のような練乳をかけて
春の暁空の露花氷を手にむふふと花咲み
ララのだいすきな空の色
お前はどんな花屋根がいい?
ララは真っ赤なブーゲンビリアがすきよ
燃えるような情熱と
あなたしかみえないと謳う魅力の花
ふふ
お前の言葉は露花氷より甘いわね
夏花の彩る緑廊腰掛ける
隣のお前はまるで躑躅の妖精のよう
お天気雨ね
煌め降る天の恵が心地いい
|迦楼羅《ララ》 も雨降りができるけど
今はこの地の神が降らせる恵と満開の花味を楽しむ
おすそ分け
アーンしてあげる
これがさいわいの味ね

【花雛】
穏やかな雰囲気の村で素敵
今日はおひめさま二人のデートですね、なんて
露花氷、私は苺の氷蜜に躑躅の花の香に白玉二つ
天の川の下に咲く躑躅の様
ララさんは好きな景色を氷に落として、とても綺麗です
私ですか?黄花藤も素敵ですが、ブーゲンビリアも好きですよ
どこか躑躅にも似た鮮やかさ
花言葉ですか?まるで今日の私みたい。今日は貴方のことしか見ていませんもの
花の天蓋美しい緑廊に二人腰掛けて
微笑む貴方は神の涙花のビジュー散りばめたドレス纏うお雛女様
甘い花の香、雨の匂い
ララさんにそのような力が?不思議な方です…でも今日は、この雨を楽しみましょう
では私もお返しにあーん、白玉一つもおまけです
分け合う幸いに零れる笑み
下ろしたての青を筆いっぱいに広げたような鮮やかな夏空遠く、透いた鳥の声が響き渡る。
頬を撫ぜる風は雨と花の香を運び、歩を進めるたび、雨粒が足許で宝石のように燦めいては弾けてゆく。すう、と大気を吸い込めば、雨の|気配《けわい》がじんわりと裡へ染みてゆく。
眸に映り、肌に触れるなにもかもが胸を躍らせるから、高らかな音色を奏でる心地のまま、ララ・キルシュネーテ(白虹迦楼羅・h00189)は足取り軽くくるりと舞った。
「美しい村ね、花寿姫」
「はい。穏やかな雰囲気の村で素敵……そんな場所で、今日はおひめさま二人のデートですね」
なんて、とひとつ笑み零す躑躅森・花寿姫(照らし進む万花の姫・h00076)へ、ララは一層笑みを深めた。どんな露花氷を食べようかしら? 花寿姫はどんな露花氷にするのかしら? そう馳せる想いに導かれるように、花寿姫とともに村の中心たる広場へと爪先を向ける。
幾つもの店をゆるりと巡って、漸く決めた氷密と香りを纏った露花氷を手にふたり、花と蜜を味わう|花屋根《特等席》を探す。
「お前はどんな花屋根がいい? ララは真っ赤なブーゲンビリアがすきよ」
「私ですか? 黄花藤も素敵ですが、ブーゲンビリアも好きですよ」
どこか躑躅にも似た鮮やかさがありますよね、と添える花寿姫へ、ララの唇が愉しげに弧を描く。
――燃えるような情熱と、あなたしかみえないと謳う魅力の花。
「花言葉ですか? まるで今日の私みたい。今日は、貴方のことしか見ていませんもの」
「ふふ。お前の言葉は、露花氷より甘いわね」
言って、ララがさくりと一匙、口へと運ぶ。春の暁空――特別に好きな空色を思わせる露花氷は、それだけで頬が緩んでしまうほどだけれど。食んだ途端に華やかに広がる桜蜜と、白雲を描いていた練乳の甘やかな風味が、むふふと|咲《わら》うララの笑みを一層幸せに染め上げる。
そんな花笑みは見惚れてしまうほどで、花寿姫もまた、歓びを裡に秘めながら花型の硝子器から一口をすくった。ふたつのうちひとつの白玉と、甘酸っぱい苺の氷蜜。それらが消えた後には、躑躅の上品な甘い香りが鼻孔に余韻を残してゆく。
――まるで天の川の下に咲く躑躅のよう。
ふと過ぎったその想いに、ララの声が重なった。
「お前はまるで、躑躅の妖精のようね」
そんなお前におすそ分け。アーンしてあげる、と一匙向けられれば、花寿姫は幸せそうにぱくりと食んだ。お返しに「あーん」と手向けた匙のうえには、ふわふわ天然氷と、氷蜜と――おまけの白玉ひとつ。
「これがさいわいの味ね」なんてララが笑ってくれるから、与え与えられ分け合った幸に、花寿姫も花の容を綻ばせる。
ああ、お天気雨ね――。そう眦を緩めて手を柔く差し出し掲げたララの横顔は、神の涙花のビジューを綺羅星のように鏤めたドレスを纏うお雛女様。夏花のはなびらから毀れた露たちが、白く滑らかなその掌へと零れてはひかりとなって弾けていく様に、ララは心地良さそうに笑みを湛える。
「|迦楼羅《ララ》も雨降りができるけど……」
「ララさんにそのような力が?」
不思議な方。そう浮かんだ言葉を知ってか知らずか、ララはすべてを抱擁するかのような眼差しに花寿姫を映した。
「ふふふ。……でも、今は」
「ええ、そうですね」
この地に住まう神がもたらす、恵みと満開の花味を。
――そして、心地良い雨音を奏でながら躍る雨を、存分に愉しもう。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

【星海】
雨が降る日は左脚が痛むから、嫌い…だったんだけど
ここの雨は平気みたいだ…
空いてる花屋根のベンチに腰を下ろし、俺は場所取り
そのうちにエリカが運んできた|露花氷《ろかごおり》を受け取る
こんな雰囲気のいい場所に、俺と来て良かったのか?
そう問うて帰ってきた答えに
間違ってないな…とぐうの音も出ない…
イチゴの氷蜜と蜂蜜のような花の香りを纏った露花氷に雨粒が落ちて煌めく様子を少しだけ味わったら、氷をそっと口に運ぶ
甘酸っぱいイチゴと鼻から抜ける蜂蜜のような桜っぽい香りに少し驚きながら
これ、何の花? 桜? って尋ねてみよう
アドリブ歓迎

【星海】
アカリを花屋根のベンチで待たせて、|露花氷《ろかごおり》調達はエリカの仕事
作ってもらった露花氷をアカリに手渡して
だってアカリ、エリカが連れ出さなきゃずーっと家にいるじゃない
引きこもりが祟ってアカリに何かあったら、お母さんに合わせる顔がないもの
って問いに返しながら、露花氷に雨粒を纏わせて、宝石のような輝きをしばらく堪能してから、いただきます
やっぱり氷はいちごよねぇ
それに、纏わせてるお花の香りも天才的にぴったり!
ハチミツと桜が混ざったような香りがするのも素敵
お花の種類?
残念。桜じゃないのよねぇ
答えは『エリカ』
だけど、アカリが当てるまで教えないの
アドリブ歓迎
雨の降る日は、嫌いだ。
それがたとえ小雨であっても、事故で膝から下を喪った左脚が痛んだ。だのに不思議と、今目の前で降り続ける雨は痛みの欠片すらもたらさなかった。葉に、花片に、愉しそうに跳ねては陽の燦めきを散らしながら雨音を奏でてゆく。
――露花氷はエリカが買ってくるから、アカリはここで待っててね。
その言葉のとおり、両手に露花氷を持ったエリカ・バールフリット(海と星の花・h01068)が、眼前の広場からぱたぱたと足早に駆けてきた。娘の纏う雨の|気配《けわい》で、花屋根から零るる花の香が、一層濃く甘く匂い立つ。
「はい、こっちがアカリの。苺の氷蜜に、蜂蜜の花の香りで良かったよね?」
「あぁ。手間かけたな。……にしても、こんな雰囲気のいい場所に、俺と来て良かったのか?」
何気ない、他愛のない、ふと浮かんだ唯の疑問。
だのに、エリカは迷いなく即答する。
「だってアカリ、エリカが連れ出さなきゃずーっと家にいるじゃない」
ばらりずんと容赦なく心を斬る言葉に、御嶽・明星(推定・暁の明星・h00689)の胸が思わず詰まる。事実だからまったく、1ミリも言い返せない。
「間違ってないな……」
「引きこもりが祟ってアカリに何かあったら、お母さんに合わせる顔がないもの」
言いながら、花影から硝子の器を外へと向けたエリカを真似て、明星もまた天気雨の下へと器を差し出した。
青空から疎らに零れては露花氷に落ちるたび、一層氷を煌めかせてくれる宝石めいたひかりの粒たち。それがあまりにも眩くて、ふたりは暫し、言葉なく露花氷を眺めていた。
「んー……やっぱり氷はいちごよねぇ。それに、纏わせてるお花の香りも天才的にぴったり!」
「――なぁ。これ、何の花? 桜?」
「残念。桜じゃないのよねぇ」
でも素敵な香りでしょ? そう言って|咲《わら》うエリカを横目に、もう一度匙を運ぶ。
ひんやりとした柔らかな天然氷と交わる、深く甘酸っぱい苺の味。それに続いて鼻から抜けてゆくのはやはり、蜂蜜のように甘く、桜のようなに柔らかな花の香。
けれど“違う”と言われてしまったから、その不思議な芳香への驚きを疑問へと変えながら、答えを探すようにじっくりと味わう明星をちらりと見ながら、エリカは気づかれぬようにそっと微笑む。
そうしてまた、一匙すくって静かに食めば、再び裡へと満ちる甘やかな香り。
――答えは“エリカ”だよ、アカリ。
それはちいさく可憐な、|花《娘》の名。
だけど――あなたが当てられるまでは、内緒。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

※アドリブ絡みお任せ
商い狸から教えて貰った花氷が食べたくて、いざゆかん♪
どこ辺りだろう?お店はどこかな?
花と雨の匂いを感じながら足取り軽く
『露花氷』をめざして、あたりを見ながら楽しみながら
あまい匂い、ちょっとひんにゃりする方にあるかな。
お店に小さな体をひょこり「一つください」
あれも、これも良いなと目移り
「おすすめください」間違いないね
花屋根の雨粒を溜める大きな花の下
雨の音がするし、たまった大きな雨粒がばしゃりと落ちる音が好き
身体も、こおりでひんやりすずしー♪
心地よさに気づけば『露花氷』をぺろり
なくなっちゃった。
お口に残った味で食べた所を思い出しながら、もう少しお花をみて
夏色を帯び始めた、鮮やかな空。
その境界線を描く稜線はあんなにも遠いのに、緩やかに伸びる裾野はこんなにも近くて、目・草(目・魄のAnkerの義子供・h00776)は黒く燦めく眸を一層まあるくした。
村外れの田園風景を抜けて、なおも足取り軽く白い石畳を往く。ほろほろと零れ続けるかみさまの涙は、服を濡らすほどでもなく、軽く、柔く肌を転げてあたりへとひかりを散らす。そのたびに雨の匂いに花の香が混じるような気がして、草はいつしかぱたぱたと駆け出していた。
(どの辺りだろう? お店はどこかな?)
――山間の村に、それはそれは旨い花氷がある。
商い狸から聞いた話を反芻しながら、視界に映った彩に惹かれるままに視線を巡らす。冒険王国『|四季の夢《カトルヴェア》』――その裡にあるリュースエルヴ村だからこそ、自然も、路も、家々も、なにもかもが鮮明に色づいて見えて、じっとしてなんていられない。
「あっ……! あれかな?」
のんびりとした歩調ながら、行き交う人々が増えてきたことに気づいた草は、ぴょんとひとつ跳ねて先を見た。露花氷の文字と、なによりも香ってくる一等甘い花の匂い。近づくたびに、空気はどこかひんやりと涼を帯び始める。
辿り着いた広場は、大きな円形に整えられていた。中央にはシンプルながらも美しい噴水があり、その周囲を囲うように、露花氷の店々と様々な花を戴くいくつもの|緑廊《パーゴラ》やフラワーアーチのベンチが並んでいる。
話には聞いていたけれど、こんなにたくさんのお店――どこに行こうかと悩んでいた草の視界の端で、ゆらゆらとなにかが揺れた。一瞬でそれが猫の尾だと気づくと、反射的にそちらへと貌を向ける。
「見ない顔だにゃん。観光客さんにゃ?」
「うん。えっと……花氷が食べられるって聞いて、来たの。一つください」
猫獣人さんだ、と裡でひそりと思いながら、カウンターの上へひょっこりと貌を覗かせた草はこくりと頷いた。黒猫又とも伽羅おじさんとも違う、髪の毛のあるちょっと大きめの二足立ちの猫。獣人階梯なるもので言うと何段階目なのかは良く分からないけれど、綺麗なサバトラ柄だとは容易に知れた。
「こちらがメニューになるにゃ」
どうぞ、と手渡された紙を背伸びしながら両の手で受け取ると、草は真剣な眼差しで文字を追う。氷蜜だけでも、桃、すもも、さくらんぼ、ブルーベリー、メロン、ライチ、マンゴー……幾つもの美味しそうな果実名が連なっているし、フレーバーともなればそれ以上あった。あれも良いな、でもこれも良いな、なんて逡巡すること暫し――幼子は一番確実な答えを導き出した。
「――あの、おすすめください」
緑と花の香に満ちた花屋根の下、白木のベンチにちょこんと座った草は、手の裡にある花型の硝子皿へと眼を細めた。
猫店員さん一押しだという、ブルーベリーの氷蜜とヘリオトロープのフレーバー。期待に胸を躍らせながら一匙食めば、ひんやりしゃくしゃくとした食感と、爽やかな甘酸っぱさ、そこにバニラのような甘い甘い匂いが重なって、一層笑みが深くなる。
ぽたぽた、ぱたた。葉やはなびらのうえで弾む雨音は愉しげで、時折、雫の重みで枝垂れた先からぱしゃりと零れる響きに、草の眦も嬉しそうに緩んだ。花影から洩れる陽は夏めく熱を帯びているけれど、
「身体も、こおりでひんやりすずしー♪ ……ってあれ、なくなっちゃった」
気づけばすっかり空っぽの器。
だけど、口のなかにはあの至福の味が残っているから。
草はその甘やかさを思い返しながらまた、仰ぎ見た露纏う花へとふわり微笑んだ。
🔵🔵🔵 大成功

時兎(h00492)と
かき氷か
僕はあまり好んで食べる方ではないけれど
露花氷はなかなか面白そうだね
僕は…どうしようかな
蜜はブルーベリー、フレーバーは…金木犀とか?
花は詳しくないから思いついたもので
うん?いいよ、あとで分けてあげる
時兎のも美味しそうだし楽しみだね
ははっ、違いない
わあ、出てくる名前が大衆ウケしなさそうなのばかりだ
そこは好みの問題かなぁ
フレーバーのある食べ物だし
ラフレシアみたいな強烈なのは避けたいね
あとは見た感じ、ラインナップは今が季節の花ばかりかな
ならスタージャスミンあたりはどう?
時兎にそっくりの白い花みたいだし
うん、冷たくて美味しいね
ほら時兎、あーん
でしょ?
ん、時兎のも美味しい

聡士(h00259)と
かき氷は苦手だったケド、天然氷の好きだから
このかき氷にも、ちょと、期待
聡士、フレーバーと蜜、どーする?
おれ、ラズベリーとジャスミン
白玉……は、これには合わないか
聡士の後で分けてほし
おれのもあげるから
緑廊…
花の屋根の下で、とか、おれたちにはメルヘンすぎ
何がい?
ドクダミ?ウツボカズラ?ラフレシア?
なに、かわいーでしょウツボカズラとか、八重のドクダミとか
頬膨らませるも、提案に頷いて
白い星の花の屋根の下
差し出されるままに、一口
聡士の、おいし
金木犀はお酒もおいしーもんね
はい、おれのもどーぞ
金木犀とジャスミンのシロップ、探して帰ろ
――かき氷。
あまり好んで食べる方ではない古賀・聡士(月痕・h00259)と、苦手ながら天然氷は好きな高城・時兎(死人花・h00492)。
どちらも、露花氷ならば、と仄かな期待を寄せながら、メニューを前に、店先のカウンターで頭を寄せる。
「聡士、フレーバーと蜜、どーする? おれ、ラズベリーとジャスミン。白玉……は、これには合わないか」
「僕は……どうしようかな。蜜はブルーベリー、フレーバーは…金木犀とか?」
生憎花にはとんと疎い聡士は、ふと思いついたちいさなオレンジの花を口にする。その組み合わせに興味を持ったのか、時兎はほんのり愉しげな視線を傍らへと投げる。
「聡士の、後で分けてほし。おれのもあげるから」
「うん? いいよ、あとで分けてあげる」
時兎のも美味しそうだし、楽しみだね。そう微笑む先で、心を映したかのように雨露が踊り、ひかりが弾けた。
ほどなくして、互いの手に収まった硝子皿。そこからでもふうわりと届く涼と花の香に、密やかに期待をそそられながら、時兎はきょろりと周囲を見渡した。
露花氷店の並ぶ此処は、村の広場なのだろう。白い石畳の敷き詰められたその中央には噴水が緩やかな弧を描き、それを囲うように幾つもの|緑廊《パーゴラ》が集っている。
「……花の屋根の下で、とか、おれたちにはメルヘンすぎ」
「ははっ、違いない」
「何がい? ドクダミ? ウツボカズラ? ラフレシア?」
「わあ、出てくる名前が大衆ウケしなさそうなのばかりだ」
「なに、かわいーでしょウツボカズラとか、八重のドクダミとか」
「そこは好みの問題かなぁ」
ぷくりと頬を膨らます時兎へと、聡士がくつくつと喉を鳴らす。
「フレーバーのある食べ物だし、ラフレシアみたいな強烈なのは避けたいね。あとは……見た感じ、ラインナップは今が季節の花ばかりかな。なら――あれ。あのスタージャスミンあたりはどう?」
時兎にそっくりの白い花みたいだし、と聡士が優しく眦を細めるものだから、ちょっと拗ねていた気持ちも何処へやら。時兎はひとつ頷くと、ふたり連れ立って白い星花の許へと一時の居を構えた。
「うん、冷たくて美味しいね」
片や青き氷は、さっぱりとした甘酸っぱさと豊かな甘さ。
片や紅き氷は、濃厚な甘酸っぱくも爽やかな甘さ。
己が匙を差し出したふたりは、その美味しさを比翼の番へとそっとお届け。
「ほら時兎、あーん」
「聡士の、おいし」
「でしょ?」
「金木犀はお酒もおいしーもんね。はい、おれのもどーぞ」
「――ん、時兎のも美味しい」
これまで縁のなかった氷菓が紡いだ、ふたつの芳香。
もうすこしだけでも、それに浸っていたいから。「
「金木犀とジャスミンのシロップ、探して帰ろ」
「それ良いね。――あ、そういやさっきの店にあったような……」
そうして暫し寄り添う影に、夏の陽を映した雨露が弾け、幾つものひかりを鏤めてゆく。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

【春雪】
かき氷…みたいな、もの?
首傾げ
俺、氷蜜はメロン、がいいな
今旬だし
フレーバーは…どうしよ
じーっと見つめるも
花の香り…よく分からない
しょげたように尾が垂れ
氷菜、おすすめの、花、ある?
…なるほど
それはあり、かも
氷菜、は?
どうする?
何を選ぶのか興味津々
ううん爽やかでおいしそう
氷菜のも、俺のも、きらきら…
早く、食べたい、けど
どこに、しよ?
いろんな花の、屋根…ある…
氷菜、どの花が好き?
2人掛けベンチに腰を下ろし
氷もきらきら、雨もきらきら
おいしそう
いただきます、と手を合わせ
んんっ…甘い
氷菜、氷菜
香り、正解
すごい、メロンと合ってる!
ぶんぶん尾が振られ
はい、氷菜も味見
ね?
氷菜のも思った通り
爽やかおいしい

【春雪】
そうね、不思議なかき氷みたい
色々選べるのね…
ん?と晧と垂れた尾を見て
私も詳しくは無いけど…
スマホで軽く調べて
ヘリオトロープっていうのがバニラに似た香りみたいよ
アイス乗せのメロンみたいにならない?
私の氷蜜は…梅が良いな
フレーバーは、蜜柑の花にしよう
甘酸っぱいと思うけど、良ければ晧も味見してね
ん-そうね…
自分の露花氷と晧の分の辺りに冷気を纏わせつつ
花屋根を眺めて
…青紫のクレマチスとか綺麗かも
ベンチに腰掛け
此処なら雨も楽しみながら氷も堪能出来るわね
手元と空の二つのきらきらを眺めて満足の後
いただきます
一口ぱくっ
ん…甘酸っぱくておいひい
晧の様子に和みつつ
味見で一口貰い
…うん、美味し
晧も私のどうぞ
村が一番賑わう季節というだけあって、リュースエルヴ村の広場には露花氷の店々が立ち並んでいた。呼び込みや笑い合う人々の賑わいが、初夏の夏空に溶けていく。
「露花氷……かき氷……みたいな、もの?」
オーダーカウンターの横にあるメニューを眺めながらこてりと首を傾げる空廼・皓(春の歌・h04840)へ、そうね、と白椛・氷菜(雪涙・h04711)も頷いた。不思議なかき氷――そう表現するのが分かりやすいだろう。
「氷蜜もフレーバーも、色々選べるのね……」
「俺、氷蜜はメロン、がいいな。今旬だし。フレーバーは……どうしよ」
ぱたぱた、ぱたりぱたり、ぺしょん。真剣にメニューへと向かいながら、逡巡する思考を現すかのように揺れていた狼の尾が萎れた様子に気づいて氷菜が見遣れば、無表情ながらどこか憂いを帯びたような皓の眼差しと交わった。
「花の香り……よく分からない。氷菜、おすすめの、花、ある?」
「私も詳しくはないけど……あ、ヘリオトロープっていうのがバニラに似た香りみたいよ」
調べ終えたスマホをしまいながら、「アイス乗せのメロンみたいにならない?」と提案してみせれば、なるほど、と皓が貌を上げた。「それはあり、かも」と、垂れた尾が再びそわそわと揺れ始める。
「氷菜、は? どうする?」
「そうね、私の氷蜜は……梅が良いな。フレーバーは、蜜柑の花にしよう。良ければ晧も味見してね」
甘酸っぱいと思うけど、と添えた言葉に、ううんと皓は首を振った。どんな組み合わせにするのか興味があったけれど、答えを聞けばなお一層、爽やかでおいしそうだ。
おまたせしましたー♪ と軽やかな店員の声とともにそれぞれの露花氷を受け取ったふたりは、広場の噴水の傍らで脚を止めた。
咲き誇る花を思わせる硝子皿に盛られた様は、どちらも陽に燦めいて宝石のよう。雨露に混じってふうわりと届く香りだけでも美味しそうで、皓の心もついつい急いてしまう。
「早く、食べたい、けど……どこに、しよ?」
悩んでいるうちに溶けてしまわぬようにと、氷菜がそっと器へと掌を掲げた。包み込むように冷気を纏わせてから、改めて周囲を見渡す。
「いろんな花の、屋根……ある……。氷菜、どの花が好き?」
「ん-そうね……クレマチスとか綺麗かも」
ふと目に留まったのは、こぶりの白い|緑廊《パーゴラ》だった。房を成す葉と、それを飾る青紫の花たちが風に揺れるたび、雨露がふわりと舞ってひかりの欠片を鏤めてゆく。
此処が今日の特等席。そう決めたふたりは並んでベンチに腰かけると、手許の露花氷と天高くより零るる雨の燦めきを揃って眺めた。視線を戻し、おいしそう、と洩らす皓が「いただきます」と手を合わせた様に倣って、氷菜も同じ言葉をなぞってから匙を入れる。
「ん……甘酸っぱくておいひい」
「んんっ……甘い。氷菜、氷菜。香り、正解。すごい、メロンと合ってる!」
淡々とした貌と声だのに、尻尾はぶんぶんとはしゃいでいて。和むままに眸を細めた氷菜は、「はい、氷菜も味見」と差し出された一口をぱくりと食む。
とろりと甘いメロンに混じる、夢のようなバニラの香り。それがふわふわの天然氷に溶けて消えてゆくから、またすぐにもう一匙が食べたくなる。
「……うん、美味し」
「ね?」
「晧も、私のどうぞ」
器を近づけただけで分かる、甘く爽やかな芳香。不思議と心凪ぐようなその香とともに含んだ梅の氷蜜は、不思議とどこかまろやかで。
「氷菜のも、思った通り……爽やかおいしい」
「そう? なら良かった」
互いの“好き”が、“素敵”だとわかる。
その優しい幸せに浸りながらふたり、雨音響くひとときを過ごしてゆく。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

【まよ4】
こりゃあまさに風光明媚ってなトコだな
露花氷はマンゴーに香りは橙
甘い中に柑橘の爽やかな香りが合いそうだ
雨が降らぬ内に散策すれば……へェ
こりゃあいいや
緑廊の下
絵画のような満開の水蓮――アルカンシエルを皆で楽しむ
そういや、こっちの世界じゃなんて名なのかね?
やっぱ虹に関した名前だったりするのか
村人さんを捕まえて聞いてみるか
露花氷をシェアして味を楽しみながら
雨はどうだ、と、ふと空を見上げれば
「ニンフォニア――水の妖精の加護かね?二つも虹が見れるとはよ」
そんな言葉を呟いて
三人の笑顔を見れば
ああ、納得だ
これだけ妖精が居るのなら、そりゃあ奇跡の一つも起こるだろう
虹を背景に妖精たちの写真をパシャリ

【まよ4】
※アドリブ、アレンジ歓迎
※年上には敬語、同年代以下にはタメ口
|露花氷《ろかごおり》はメロンの氷蜜、フレーバーはバニラを選択
皆と食べる場所を探していると不思議な|緑廊《パーゴラ》を発見。
「蔦と葉っぱだけ?…花はまだ咲いてないのかしら?」
近づいて見れば、緑廊とベンチ…その前には水連の咲き誇る池。
「…ここにしない?すっごい素敵なシチュエーション!」
舌鼓を打っていると、天気雨の中、空に虹が掛かるのを眼にする。
天國さんのセリフに
「ふふっ、確かにそうですね。どちらも綺麗…来ることが出来て良かった」
と虹を見て呟き。
きっとこの人達の心にも、この光景が残りますように…。
そう祈りながら。

【まよ4】
露花氷は苺。フレーバーは、
苺に合うものがわからず、店員さんのおすすめを聞く
「はやく食べないと、溶けちゃい、そう...」
と、いいながら、見つけた緑廊については
「綺麗...」と目を輝かせます
もちろん、ここで食べる、という提案には賛成を
食べる前に写真と、どのようなものかをメモ
食べ始めて雨が降り出せば、
それを眺めながら
「雨の中、外でこういうのを、食べるのも、悪くないね...」
とほほ笑んで。
虹がでれば慌てて露花氷を食べながら
「...食べ終わる前に消えちゃう、かな。写真撮りたいのに...」
と、虹を見上げながら少し残念そうにします
※珊瑚、プリエールにはため口
※アドリブ、アレンジ歓迎

【まよ4】
かき氷?よくわからないけれど珊瑚と翡翠がいくのならいくわ!
姉に似てる珊瑚には我儘
翡翠、巽には丁寧
ええと、氷菓子はよくしらないの
珊瑚に任せていいかしら?
食事時のマナーに反するので騒いだりはしないものの
その味を知れば目を輝かせて
緑廊や花
|城《いえ》でもよく過ごしたっけ
肩の力を抜いて静かに風の葉音を楽しむ
|時間《季節》を感じられるこの中で、
自分は止まってみせるこの瞬間はとても好き
永遠の中にある城でおぼえた|悪戯心《遊び》
巽は知識の泉ね。水源には何があるのか―て翡翠。
小動物みたい。保存していいかしら
え 虹ってあんなに大きの!?
初めて見る虹に興奮し
『虹の生えてるところ行ってみたい!』
天高く広がる空はこんなにも晴れ渡っているというのに、未だほろほろと降り続けては地で弾ける雨粒たち。それこそがまさに神の気紛れなのだから、ときに多めに、ときに少なく、その降り方も疎らになるのも頷けよう。
丁度、雨量が多めになってきた頃合いで店の軒先へと辿り着けた『まよひが』の4人は、一息吐きながら早速メニューを眺め始めた。
――『ふんわりと削り上げた天然氷に、あなた好みの氷蜜とフレーバーを合わせてスペシャルな一品を!』
「これがかき氷……露花氷?」
メニューの隣に掲示されていたポスターのキャッチコピーを読み上げたプリエール・カルンスタイン(天衣無縫の縛りプレイ・h00822)は、そう言って小首を傾げた。ちらりと、視線を隣の月島・珊瑚(憧れは水平線の彼方まで・h01461)へ向ける。
「だねー。一般的なのだと氷と氷蜜だけだけど、ここのウリはさらにフレーバーが選べるってことろ。――じゃあ、アタシはメロンの氷蜜にフレーバーはバニラでお願いします」
「俺は、マンゴーに橙の香りにするか。甘い中に柑橘の爽やかな香りが合いそうだ」
「え。珊瑚も、巽さんも、決めるの、早い……! えっと……じゃあ、私は苺の氷蜜と、フレーバーは……あの、おすすめあったら、それで」
さくっと注文し終えた珊瑚と天國・巽(同族殺し・h02437)に、わたわたと月島・翡翠(余燼の鉱石・h00337)も続く。「それなら菫はいかがでしょう?」と応える青年店員へとこくりと頷く様子を眺めていたプリエールも、なるほどと得心する。
「とは云っても、ええと……氷菓子はよくしらないの。珊瑚に任せていいかしら?」
元より、珊瑚と翡翠が行くのなら、と着いてきたのだ。ここは詳しい者に委ねるのが無難だろう。ついつい姉に似ている珊瑚のほうに|我儘を云いがちな《甘えてしまう》のはご愛敬だ。
「オッケー。んー……そうだなー。――店員さん。彼女のは、氷蜜は桃で、ラベンダーのフーレバーにしてもらえますか?」
「桃にラベンダーか。洒落てるな」
「なんかのコラボカフェで見かけた組み合わせですよ。企業監修の味なら間違いなさそうでしょう?」
「あ。プリエールのも、できたよ。はやく食べないと、溶けちゃい、そう……」
「んじゃ、食べる場所探しに行こうか」
気づけばまた薄くなり始めた雨の|気配《けわい》に乗じて、4人は店先の広場へと出た。
ここにも幾つかの花屋根があるが、道中にも様々な|緑廊《パーゴラ》を見かけた。探せばほかもあるだろう、と珊瑚を先頭にすこし歩けば、
「あれ? あの|緑廊《パーゴラ》……蔦と葉っぱだけ? ……花はまだ咲いてないのかしら?」
「見て、池もあるわ!」
「睡蓮も、咲いてるね……綺麗……」
「へェ、こりゃあまさに風光明媚ってなトコだな」
丁度おあつらえ向きのベンチとテーブルもあるしな、と口角を上げる巽に、珊瑚も声を弾ませた。
「……ここにしない? すっごい素敵なシチュエーション!」
「うん。すごく、良いと、思う……」
頷く翡翠に、勿論プリエールと巽も賛同する。ふうわりと吹き抜けた風の運ぶ、葉々の香りに誘われるように白木のガーデンテーブルを囲めば、ちょっとしたお茶会の始まりだ。
ぱたた、とととん。花屋根ならぬ葉屋根に零れては弾む露たちが、鼓を打つような軽やかな雨音を響かせる。ちいさな弧を描き、白い石畳へと落ちれば、弾けて消えていくたびに陽のひかりを鏤める。
ささやかなれど心地良いその音色と景色が、ゆったりとした刻にじんわりと染みてゆく。
こりゃあいいや、と独り言ちながら、巽は己が硝子皿から一匙を食んだ。ふうわりとした氷を包む、とろりと甘いマンゴーの風味。嚥下しながらも、橙の清涼な香りが裡に留まり得も言われぬ余韻を残してくれる。
その対面、自分の露花氷の写真を撮り、選んだ氷蜜とフレーバーなどのメモを取り終えた翡翠もまた、そうっと氷菓へ匙を入れた。途端、雨露を孕んで鼻孔を擽る菫の香り。ゆっくりと舌へ乗せれば、忽ちさらりと天然氷は溶け、苺の甘酸っぱさが口一杯に広がってゆく。
ふと移した視線の先にあるのは、降り続く雫が池へと幾つもの波紋を描き、睡蓮の花びらや葉で跳ねた陽の欠片が燦めく眩い景色。
「雨の中、外でこういうのを、食べるのも、悪くないね……」
「……私も、こうした瞬間はとても好きよ」
柔く微笑んだ翡翠へと双眸を細めながら、プリエールも静かに瞼を伏せる。肩から力をゆるりと抜き、凪ぐ心のままに風の葉音に耳を欹てる。
|城《いえ》でも、緑廊や花々に囲まれた場所で良く過ごしていた。|時間《季節》を感じられるなかで、自分はただその場に佇んでみせる――永遠の刻に在る城で覚えた、|悪戯心《遊び》とともに興じる初めての氷菓は、つるりと滑らかな舌触りの桃が、食むごとに柔らかな氷と混ざって深い甘さとなり、続くラベンダーの花の香がゆっくりと裡に染みて柔く解ける。心振わせるその味に、思わず静かに瞠目した眼に耀きが宿った。
「気に入ってもらえたようで良かった。――ん、アタシのチョイスも美味しい♪」
向かいのプリエールの様子にひとつ笑みながら、珊瑚ももう一匙を口へと運んだ。濃厚なメロンの甘味にバニラが加わり、一層甘やかに幸せに包まれる。一見くどくなりそうな味も、それに重なる氷がひんやりとした後味に整えてくれるから、幾ら食べても飽きがこない。
どの組み合わせも唯一ならば、その幸せをお裾分け。互いに一口を交換しあうなか、人心地着いた巽がちらりと視線を移した。
「それにしても、見事な|睡蓮《アルカンシエル》だ。まるで絵画のような……そういや、こっちの世界じゃなんて名なのかね?」
やはり、虹に因んだ名なのだろうか。後で村人さんに聞いてみよう、と零す巽へ、プリエールもくすりと笑う。
「本当、巽は知識の泉ね。その水源には何があるのか――」
「あ、虹……!」
「え、虹ってあんなに大きの!?」
食事時のマナーとしては、ほんの少し逸れてしまうかもしれないけれど。初めて見る万彩の架け橋はあまりにも鮮やかで、プリエールは思わず声を弾ませ、躰ごと視線を外へと向けた。
「あの根元……虹の生えてるところ行ってみたい! 行けるものなのかしら?」
「行ったことがある人がいる、とは聞いたことはあるなァ」
「あぁ……食べ終わる前に消えちゃう、かな。写真撮りたいのに……」
隣で響いた珊瑚の声に、反射的に貌を上げた翡翠も空に掛かる七色を見つけて、しょぼんと眉尻を下げた。
それでもまだ諦めはしないと、慌てて残る露花氷の山へと匙を入れる。ぱくぱく、ぱくぱく、味わいながらも急げ急げと食む、あまりにも愛らしいその様子に、
「――て翡翠。小動物みたい。保存していいかしら」
「えっ、今……!?」
苦笑を浮かべながらカメラのレンズを構えたプリエールに、益々わたわたとする翡翠。それが一層面白くて、くつくつと笑み声を立てる竜娘へと、つられて皆も口許を綻ばせる。
「ニンフォニア――水の妖精の加護かね? ここでふたつも虹が見れるとはよ」
「ふふっ、確かにそうですね。どちらも綺麗……来ることができて良かった」
優しい眼差しでぽつりと零した珊瑚の傍ら、
「こんなにはっきり見えるものなのね……あ、薄れてきたかしら」
「た、食べ、終わった……! 写真、撮る……!」
そう笑いながら、ふたりの娘も遥かなる青に描かれる天橋を仰ぐ。
――ああ、納得だ。
(これだけ妖精が居るのなら、そりゃあ奇跡のひとつも起こるだろう)
ひとつ笑みを深め、ファインダー越しに|3人《妖精たち》を映して静かにシャッターを切る巽に気づいた珊瑚もまた、微笑みを湛えたままに虹を見送る。
心に浮かぶ、ちいさな祈り。
――この人たちの心にも、この光景が残りますように。
いつまでも――きっと、ずっと。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

【rp】のお友達と
お天気なのに雨って不思議
こういう雨なら濡れても気にならないわ
どこも賑やかでつられてわくわく、お耳もぴこぴこ
人込みは平気よ!折角だから色々見ましょう
迷子にならないように、お手々を繋ぐ?
黒蜜のとろりとした甘さ、格別だものね
ネリーは白桃の氷蜜に、梅のフレーバーにするわ
爽やかだけど、これもとろんと甘いのよ
ミューちゃん、ソフィアちゃん、よければどうぞ!交換こしましょ!
屋根ができる程のお花はどこも壮観
このお星様みたいな白のお花の下はどう?いい香りがするの
紫のお花はお茶にもなるなんて不思議
ネモフィラはお空みたいな青の、あのお花?
おしゃべりしながら美味しい時間
もし虹が見られたら、更に素敵ね!

【rp】お友達と
空は晴れているのに、こちらは雨模様。不思議な天気ですね。
雨でも人気が多いのはこの雨が神の御業と親しまれているからでしょうか。
人混みは不慣れですので、手を繋いでいただけると心強いです。
はぐれないようにお供いたします。
わたくしはレモンの氷蜜にネモフィラのフレーバーを。
爽やかな酸味とさっぱりとした甘さが楽しめそうです。
ひとくち食べたら、皆様と分け合いましょう。
露花氷を楽しむのは花屋根の下で。
自分が選んだフレーバーのお花を探してみるのも良いやも。
ネリーさんの見つけたお花も、ミューさんが見つけたお花もとても綺麗。
雨の日に虹を見れると幸運が訪れるとか。
良い思い出になりますね。
*アドリブ歓迎

【rp】3人で
暑くないし雨でも寒くない!面白いお天気
お店が沢山で落ち着かなくてお耳がぴこぴこ
全部見たいけど戻れる自信がないにゃ
二人は人ごみだいじょうぶ?
お手々を繋ぐのいいね!
ミューはライチの氷蜜に金木犀のフレーバー
黒蜜も捨てがたいい
でも味がつよつよだから旅団おうちでのかき氷フレーバーに取って置こ!
ネリーちゃんは氷が甘めでフレーバーがさっぱり
ソフィアちゃんは氷がさっぱりでネモフィラが甘いのかにゃ?
一匙ずつ交換しようね
屋根になるお花って沢山あるんだね
白いお花はとても涼し気
紫色のお花はハーブティーで見たことある
後でお土産に買おっと
雨降り中でも虹は出るの?
帰る前に見られたらいいなー
遠く、遠く。
山の稜線へと旅立つように、初夏の風が吹き抜けた。空からの雫も連れてきたそれはさらりと爽やかで、淡く雨と花の匂いを運んでくる。
「暑くないし、雨でも寒くない! 面白いお天気!」
大好きな|永和《拾い主》と暮らす√EDENでは、今の時期の雨というとじっとり湿気を孕んで暑苦しいけれど、からりとした風に乗って舞う雨粒は心地良くて、ミューレン・ラダー(ご機嫌日和・h07427)は両手をいっぱいに広げて雨を受け止めた。
「そうね。お天気なのに雨って不思議……こういう雨なら、濡れても気にならないわ」
「ええ、本当に。雨でも人気が多いのは、この雨が神の御業と親しまれているからでしょうか」
ぱたたたっ、ぴちゃん。葉や花弁や、白く続く石畳に落ちた水滴がちいさな音を零すたび、形の良い耳をぴくりと揺らすネリー・トロイメライ(|音彩を綴る者《メロディテラー》・h07666)へと、ソフィア・テレーゼ(J-WL-P161164・h00112)も静かに頷く。
「ふたりは人ごみだいじょうぶ?」
「人込みは平気よ! 折角だから色々見ましょう。――そうだわ。迷子にならないように、お手々を繋ぐ?」
「お手々を繋ぐのいいね!」
「人混みは不慣れですので、そうしていただけると心強いです」
閃きと同時にぴこん! と耳を立てたネリーに続き、その素敵な提案にミューレンも揃って耳を立てた。葡萄石色の双眸に微かな不安を滲ませるソフィアの左右から、その手を柔く握る。
自分よりもほんのすこしちいさな手から伝わる、あたたかなぬくもり。
「ありがとうございます……はぐれないようにお供いたします」
そう言って、ソフィアは安堵を湛えた眸を淡く細めた。
よほど村人たちはこの神の涙花を待ちわびていたのだろう。
山間のこぢんまりとした村だということを忘れるほどに、リュースエルヴ村全体が祭のように賑わっていた。一等店の集った広場を中心に、四方へと走る路沿いにも、花壇や露花氷の店、花屋根やフラワーアーチが並んでいる。
そして、こんなにも店々があるというのに、傘屋はひとつもなかった。
確かに、今まさに娘たちが目移りするままに歩いていても、肌に落ちた雨はさらりと零れ落ち、服の布へと染みた滴も気持ちの良い風がすぐに乾かしてくれる。
絶え間なく降り続ける涙はきっと、嬉し涙。だから陽を映して、こんなにも燦めいているのだろう。
あちらこちらから聞こえてくる人々の笑み声や賑わいに、ネリーとミューレンのお耳もぴこぴこ。
「全部見たいけど、戻れる自信がないにゃ」
「まずは、一番お店が揃っていそうな広場から巡ってみてはどうでしょう」
「そうね。なら、あの店なんてどうかしら」
そう目に留まった1軒へと訪れてみれば、隣のお店も気になって。ついつい横にスライドしながら、気づけばぐるりと広場の店々を一通り見終えて、それぞれの選んだ露花氷を手に、三人娘は幸せそうに花笑みを浮かべる。
「さてと、空いている花屋根は……と。どの屋根の花も壮観ね」
「この広場だけでもたくさん……! 屋根になるお花って沢山あるんだね」
「そうですね。花壇もありましたし、自分が選んだフレーバーのお花を探してみるのも良いやも」
「それも素敵! ――あっ、あの紫色のお花はハーブティーで見たことある」
見知った|彩《いろ》をみつけたミューレンの尾が、ぱたぱたと歓びに揺れる。新緑の葉を美しく飾る、まるで蒼い蝶を思わせる愛らしいフォルム。後でお土産に買おっと、と新たな愉しみにご機嫌に笑う。
「あのお花、お茶にもなるのね。不思議……。ソフィアさんのフレーバーは、ネモフィラよね? お空みたいな青の、あのお花?」
「はい。薄青の……春に咲き誇る姿は、まさに空との境界線も分からなくなるほどで綺麗なんです」
「√EDENでも見られるかな? ――あれ……?」
ふと優しく鼻先を掠めた香りに、ミューレンがぴたりと脚を止めた。
「なんかすっごく甘くて、でも爽やかな匂いがする」
「あ、このお星様みたいな白のお花じゃないかしら? いい香りがするの」
ここはどう? とネリーの提案には、もちろんふたりも大賛成! そっと屋根下へと入れば、そこにあるのは、見目も涼しげなスタージャスミンと揃いの、白木で作られた4人掛けのガーデンテーブル。早速座って、それぞれの選んだとっておきの露花氷を味わい始める。
「んんっ! ライチの果汁たっぷりで、甘くて爽やかなの美味しい! 金木犀がふわって香るのもたまらないにゃー」
「そう言えばミューちゃん、黒蜜と悩んでたのよね」
「うん。でも、味がつよつよだから旅団おうちでのかき氷フレーバーに取って置こ! って思って」
「それは素敵ですね。和風のかき氷もお好きな方多いですし」
「ふふ。黒蜜のとろりとした甘さ、格別だものね」
ネリーの言葉に頷きながら、ソフィアは期待を胸に一匙を口へと運んだ。レモンの爽やかな酸味が、ふわふわに削られた天然氷と混ざってさらりと舌の上で溶けてゆく。後に残る、ネモフィラの澄んだ甘い花の香にひたり終えたころ、興味津々なミューレンの眼差しに気づいた。
「ソフィアちゃんのは、氷がさっぱりでネモフィラが甘いのかにゃ?」
「皆さま、一口食べてみませんか?」
「ありがとう。ミューちゃん、ソフィアちゃん、私のもよければどうぞ! 交換こしましょ!」
「わーい! みんなで一匙ずつ交換しよう!」
幸せをお裾分けしながら絶え間なく続く、朗らかな笑み声。
花屋根の葉と花弁のうえで躍った幾つもの雫がそれに混じり、心地良い響きを奏でてゆく。
「ネリーちゃんのは、氷が甘めでフレーバーがさっぱりだね」
「でしょう? 氷蜜の白桃に梅の香りを組み合わせたから、爽やかだけどとろんと甘いのよ」
「まさに、今の時期にぴったりですね。ほかにもまだまだ、素敵な組み合わせがありそうです」
「食べ終わったらまた、探しに行ってみる? お花見るだけでも愉しそうだにゃー」
「ネリーさんの見つけたこの花屋根のお花も、さっきミューさんが見つけたお花もとても綺麗でしたしね」
「そうね。まだまだ時間はあるし……もし虹が見られたら、更に素敵じゃない?」
ふと過ぎった可能性をネリーが口にすれば、ミューレンの尻尾も一層ぱたぱた揺らめいて、
「雨降り中でも虹は出るの? 帰る前に見られたらいいなー」
「雨の日に虹を見れると幸運が訪れるとか……あ、」
視界の端に映った七色に、真っ先に気づいたソフィアが花影から空を仰げば、ネリーとミューレンからも歓声が沸く。
夏の訪れを告げる空色に描かれた、なによりも華やかな自然のアーチ。
――これは良い思い出になりますね。
眸燦めかせて眺める友人たちの横顔と一緒に、ソフィアはその鮮やかな景色を大切に裡へと留めた。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

●大鍋3人
果実で作られた氷蜜…!
カナトさんとシキさんは、何の氷蜜にされますか?
たくさんお店がありますから、あれこれ巡って決めましょうか!
僕はやはり、名前からとってレモン…ではなく!
白桃にします
果肉やアイス、ソフトも乗せて…
最後には、爽やかな香りのレモンを添えて完成です!
カナトさんはぶどうがお好きですもんね
シキさんはグレープフルーツ!
どちらも美味しそうです
あっ、僕もレモン乗せて良いですか?
カナトさんのにも乗せましょうか、乗せますね、乗せました!
僕も花は好きですけど、詳しくはないんですよね…
…あっ!あれは知ってます!スタージャスミン!
宜しければ、あちらの緑廊でいかがです?
では早速…いただきます!

●大鍋3人
果実そのままってすごく贅沢ですね
グレープフルーツにネロリ
柑橘系同士だったら相性がいいのかなと思って無難に
実は甘い物は其処まで得意ではないので初夏らしくさっぱりとした味わいでいただきましょう
トッピングは…レモンやコーヒーゼリーがあったらのせてみたいな
あ、レモンさんものせますか?
カナトさん、葡萄お好きなんですね
白玉の食感も良いアクセントになりそうです
ところでスミレの香りってどんな香りだろう
花のことなんてあまり普段意識しないからな…
花屋根に咲く花の名前だってわからない
折角だから色んな花を覚えていきたいな
もしかしたら仕事の役に立つかもしれませんし
なるほど、あれがスタージャスミン
メモしておこう

●大鍋3人
名物のひとつが露花氷って言うんだね
果実から作られた氷蜜~
普通のカキ氷とも違って何だか面白そうだよねぇ
オレは葡萄味に、スミレの花の香り
ひんやり白玉でも添えちゃおうかな
ワインや砂糖漬けとはまた違った味わいで楽しい~
レモン君は白くて甘いもの好きそうな印象あったけど
白桃とレモンの香りは爽やか雰囲気もしていそうな
シキ君のは〜グレープフルーツにネロリの香り…!
何となくお日様とか柑橘系イメージあったなぁ
どっちも夏を涼しく過ごせそう
ちなみに好きなフルーツや花の香りだったり?
好きな物お裾分け聞ける時間も
オレは割と楽しめるからねぇ
花屋根に咲く初夏の花々風景も
目で味わっていってしまおうか
「名物のひとつが露花氷って言うんだね」
どおりで、こぢんまりとしたこの村の至るところで目にするわけだ――緇・カナト(hellhound・h02325)は、そう心中で独り言ちる。観光客目当てというより、これは完全に“推し活”だろう。村全体の“好き!!!”アピールが半端ない。
「良いねぇ、果実から作られた氷蜜~」
「果実そのままって、すごく贅沢ですね」
「ですよね。果実で作られた氷蜜……! はやく食べてみたいです」
便利になったそのぶんだけ人工物も溢れている世の中だ。市販の氷蜜では味わえない天然のかき氷に感嘆する史記守・陽(黎明・h04400)に続き、茶治・レモン(魔女代行・h00071)は淡々とした表情ながら期待に満ちた|気配《けわい》を纏っていた。それに気づいたカナトが口端を上げる。
「普通のカキ氷とも違って、なんだか面白そうだよねぇ」
「はい、どんな味なのか気になります。たくさんお店がありますから、あれこれ巡って決めましょうか!」
賑わいに惹かれるままに、たん、と踏み出したレモンの足許で雨露が弾けた。
天がもたらす神の涙花は、肌へ、服へと零れるけれど、ふわりと雫をさらった初夏の風が、からり心地の良い大気を運んできてくれる。花が、葉が露を纏って陽に燦めくなか、濡れた石畳にできたちいさな水たまりを避けながら、弾むようなみっつの足音を響かせて辿り着いたのは村一番の大広場だ。
ぐるり視線を一周して、広場の縁をなぞるように並ぶ露花氷の店々を前にどこへ行くかと悩んでいれば、くい、と陽の服を誰かが引っ張った。
「ん……?」
「おにいさんたち、うちの“ろかごおり”、いかがですかっ」
そう真剣な眼差しで問いかけてきたのは、ちいさなリスの耳ともふんとした尾を持った獣人の少女だった。レモンより頭ひとつほど低い背丈を見るに、まだ十にも満たない年頃だろうか。すこし大きめのエプロンの胸許にあるワンポイントのシルエットに気づいた陽は、ふと視線を上げた先に同じ形の看板を見つけて合点する。
「お嬢さんは、あちらのお店の店員さんですか?」
しゃがんで目線の高さを合わせて優しく尋ねれば、
「はっ! なんでわかったんですか!? たんていさんですか!?」
「ふふ、惜しい。おまわりさんです。――どうでしょう、レモンさん、カナトさん。こちらのお店にするのは」
「これもなにかの縁だ。オレは賛成~」
「僕も勿論、構いませんよ。可愛い店員さん、案内してもらっても良いですか?」
「ありがとうございます! こちらですっ!」
飛びはねん勢いで駆け出す、そのご機嫌に揺れる尾に続いて、大鍋堂の3人も歩き出した。
白い外壁に青い屋根の愛らしい店先で、木目のカウンターに置かれたメニューを覗き込む。
「僕はやはり、名前からとってレモン……ではなく! 白桃にします。果肉やアイス、ソフトも乗せて……最後にレモンのフレーバーを添えたら完璧です!」
シキさんとカナトさんは、何の氷蜜にされますか? と隣へと視線を遣れば、
「グレープフルーツにネロリにしてみます。無難ですが、柑橘系同士だったら相性が良さそうですし」
「オレは葡萄味に、菫の花の香り。ひんやり白玉でも添えちゃおうかな」
「カナトさん、ぶどうがお好きですもんね。シキさんはグレープフルーツ! どちらも美味しそうです」
「葡萄、お好きなんですね。白玉の食感も良いアクセントになりそうです」
「シキ君の好みは、柑橘系?」
そう尋ねるカナトへ、「いえ」と陽が眉尻を下げた。「実は、甘い物はそこまで得意ではないので……初夏らしく、さっぱりとした味わいでと思って」と添えながら、オーダーを続ける。
「トッピングは……レモンやコーヒーゼリーがあったらのせてみたいな。あ、レモンさんものせますか?」
「あっ、僕も乗せて良いですか? カナトさんのにも乗せましょうか、乗せますね、乗せました!」
「ねぇオレの意志は?? 承諾は???」
なんて言いつつも、割となんでも愉しめるのが特技のようなものだから。真っ先にくつくつと笑みを洩らし始めたカナトに続き、ふたつの笑み声も重なって。そのままリスの看板娘に見送られながら店を後にした3人は、きょろりと視線巡らせ花屋根を探す。
「さてと、どこにしようか」
「花のことなんてあまり普段意識しないからな……花屋根に咲く花の名前も、どれがなんだか……」
言いながらあたりを見渡せば、雨になお鮮やかな花の|彩《いろ》。この機にいろんな花の名を覚えていきたい。もしかしたら、仕事の役に立つかもしれない――そんな願いにも似た想いが陽の胸を過ぎる。
「僕も花は好きですけど、詳しくはないんですよね……あっ! あれは知ってます! スタージャスミン!」
「なるほど、あれがスタージャスミン。メモしておこう」
「宜しければ、あちらの緑廊でいかがです?」
レモンからのそんな素敵な提案を、断る理由なんて欠片もない。
ちょっと一息雨宿り、と花屋根の下に並んだ白いピール編みの籐椅子へと腰かければ、濃く甘く、けれど爽やかな香りに包まれる。
「では早速……いただきます!」
さくりと入れた匙でちいさな山をすくってぱくりと食めば、忽ちひんやりとした食感がレモンの裡へと染み渡った。アイスクリームとソフトクリーム、2種の異なる贅沢な甘さへ白桃の上品な風味も加わり、レモンの爽やかな香りがすうっと鼻孔を抜けてゆく。
「美味しそうに食べるねぇ。レモン君は白くて甘いもの好きそうな印象あったけど、白桃とレモンの香りは爽やか雰囲気もしていそうな」
「それ! それですよカナトさん。僕の選択に間違いはありませんでした」
どこか得意気なレモンにくすりと微笑むと、カナトも手許の硝子皿から一匙取った。その姿のように仄かに甘く香る菫に続いて、口いっぱいに満ちる芳潤な葡萄の味。程良い酸味の混じる甘さに、天然氷に包まれひんやりもちもちな白玉の食感がたまらない。
「これこれ! ワインや砂糖漬けとはまた違った味わいで楽しい~」
「そういえば、菫の香りってどんな香りなんでしょう?」
ふと零した陽へと、カナトが自身の器を差し出してみれば、漂う軽やかな甘い花の香り。ひとつ礼を添えた陽も、己が露花氷の硝子皿をふたりへと向けてみる。
「グレープフルーツにネロリの香り……! なんとなくお日様とか柑橘系イメージあったなぁ」
「こちらも、初夏の爽やかさがあって良いですね」
「うん。レモン君のもシキ君のも、どっちも夏を涼しく過ごせそう。――ちなみに、ふたりが選んだのは好きなフルーツや花の香りだったり?」
陽と雨を浴びて次々に咲き綻ぶ花のように、話題に尽きることなく咲き続ける会話の花。
互いの好きなものを知って、お裾分けして。ちらり視界に入ったスタージャスミンの白へと、カナトが眼を細めた。
雨に濡れる花弁。
ふうわりと香る、雨と花の柔らかな香。
ちいさく耀く幾つもの雫が、さらりと吹いた風に乗って、味わいきれぬ佳景に眩いまでのひかりを鏤めていった。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

【ジャン(h02072)】と
洒落た場所なぞさほど興味はなく
お目当ては今コイツが言った通り
だが素直に認めるのは癪だ
大人は難しい生き物だからな
……ガキが喜びそうだろ
お前こそ準備万端じゃねえか
ひひ、店選びは重要だ
道案内は任せたぞ、航海士殿
3つくらい食えるか
いや、あの頭痛に勝てる気がしねえな
絶望的な甘党であるからして
隣の子どもよりも随分と悩んだのはご愛敬
西瓜に、フレーバーにジャスミンを
さて、花より団子だ
溶ける前に食うぞ
やはり俺の選択は間違っていなかった
美味い
………コレ、如何にかして、持ち帰れねえか?
花の香りが良い仕事をする
ジャンの隙をみて
隣の氷もつまみ食いしてやる
うめー
ひひ、仕方ねえから食わしてやるか

【ザネリ(h01301)】と
防水性の地図を手に持って準備万端!
ザネリ。お前も偶にはこういうお洒落スポットが気になるんだな?
……いや分かった。どーせ気になるのは露花氷だろ
じゃあ、おいしー店を探そうぜ
ハイハイ、王様兼天才航海士に任せて
この奥の店が甘さ強めで美味しいって!
露花氷の氷蜜とフレーバーは、店先ですっごく時間をかけて悩み
悩み…
じゃあ味がマスカット
フレーバーはスズラン
練乳付きで!
よしザネリ、景色いいとこで食べるぞ!
…あ。あそこのベンチ空いてる。あっち!
!これ美味しい!匂いが良いな!?
シロップなら持って帰れるんだけどなあ、これが魔法の力か?
……あ!こら!子供みたいなことすんな!
お前のも一口寄越せ
冒険王国『|カトルヴェア《四季の夢》』――その王都で買い求めた地図上でしか知らなかったリュースエルヴ村は、山の谷間に広がる長閑な場所だった。
農業や牧畜の区画の間を走る白い石畳の両脇には野の花が咲き、緩やかなカーブを描きながら村のなかへと続いている。
「あとはこの路を真っ直ぐだな」
防水の魔法を施した地図へと落としていた視線を上げると、ジャン・ローデンバーグ(裸の王冠・h02072)はちいさく口角を上げた。
こうしている最中にも天気雨は降り続き、陽を映して燦めく雫が、地図のうえを滑りながら端へと零れていく。水気を孕みながらも、肌を撫ぜて吹き抜ける風はからりと軽く涼やかだ。
「それにしても、ザネリ。お前も偶にはこういうお洒落スポットが気になる……いや、分かった。どーせ気になるのは露花氷だろ」
云って、傍らを歩くひょろりと長身の男――七・ザネリ(夜探し・h01301)へと半眼を向ければ、絶望的な甘党たる当の本人は僅かな間をおいて薄笑いを浮かべる。
「……ガキが喜びそうだろ。お前こそ、準備万端じゃねえか」
まるで裡を覗かれたように言い当てられた心境を、素直に認めるのはどうにも癪で。大人は難しい生き物だからな、なんて脳裏で呟いているのすらお見通しなのかどうか、さして気にした様子もないジャンは地図を畳みながらザネリを見上げた。
「じゃあ、おいしー店を探そうぜ」
「ひひ、店選びは重要だ。道案内は任せたぞ、航海士殿」
「ハイハイ、王様兼天才航海士に任せて」
ほどなくして到着した村の、その中心にある広場へと向かうと、再びジャンは地図を広げた。裏面にある、詳細な店舗紹介――名づけて“露花氷攻略マップ”をじっくりと読む。
その傍らで、ザネリはぐるりと周囲を見遣る。あちらを見てもこちらを見ても、露花氷の店ばかり。文具や野菜のシルエットを象ったアイアンプレートを店先に吊り下げている様子を見るに、どうやら普段は違う品を扱う店まで露花氷を扱っているらしい。
「神の涙花ってのは、余程重宝されてるみてえだな……」
「ここが広場だから……なるほど。ザネリ、この奥の店が甘さ強めで美味しいって!」
「――お、良くやった。褒めてやる」
そうして訪れた店は、白壁を花蔦が彩る一軒家だった。大きく開かれた窓から迫り出したカウンターの脇にメニューがあり、目敏くそれを見つけたザネリが早速眺め始める。
「想像以上に種類があるな……3つくらい食えるか……? ……いや、あの頭痛に勝てる気がしねえな……」
「こんなにあるとは……葡萄だけでも3種類あるのか……フレーバーは……わ、もっとあるぞ……」
互いに中折のメニューを――途中で、店先にあった椅子を借りて座りながら――吟味すること暫し。先に立ち上がったジャンが、「じゃあ、味がマスカット。フレーバーはスズラン。練乳付きで!」と注文した。晴れ晴れとした顔で椅子へと戻ると、背を丸めてまだメニューを凝視するザネリに、ひとつ嘆息する。
「ザネリ。まだかかる――」
「――よし。店主! 注文だ。西瓜に、フレーバーはジャスミンを」
そんな、いつもの無愛想のなかにどこか熱を孕んだ男の声に、「あいよ!」と闊達な親父の声が店奥から返った。
「よしザネリ、景色いいとこで食べるぞ!」
「どこも似たようなもんだろ。さっさと決め――」
「……あ。あそこのベンチ空いてる。あっち!」
広場を背にすこし歩いた先、ちょっとした高台にある花屋根を見つけたジャンは、零さぬように花型の硝子の器を持ちながら足早に歩く。仕方ないと言いたげな顔でそれに続くザネリは、先に到着して座っていたジャンの隣へ気怠げに腰を下ろした。
「雨が降ってるからか? 枝垂れた花からも良い香りがするな。見晴らしが良くて、青空も綺麗で……」
「さて。花より団子だ、ジャン。溶ける前に食うぞ」
「……まったく。お前は情緒がないな……」
呆れ顔で傍らを一瞥してから、手許の露花氷をそっと匙ですくう。
ほんのりと淡い緑に染まる天然氷をしゃくりと食めば、忽ちふわりと爽やかで愛らしい甘い芳香が鼻腔を擽った。
「! これ美味しい! 匂いが良いな!?」
それと近しい、けれど深い甘味をもたらすマスカットの氷蜜はちいさな果肉入りで、食べているうちに薄れてしまいかねないそれらの味を、上質な練乳の甘さが最後まで引き立てていた。心が求めるままに幾度も匙をすくっては、ふわふわに削られ淡く雪のように溶けてゆく天然氷の舌触りと、氷蜜の甘さを満喫する。
「ザネリのほうはどうだ? 西瓜とジャスミンだったよな?」
「……やはり俺の選択は間違っていなかった……」
云いながら、男は再び匙を口許へと運んだ。ジューシーで濃厚な西瓜の甘さをたっぷりと含んだ、ひんやりと柔らかな天然氷が舌のうえで解けてゆくたびに、濃密なジャスミンの甘い香りが鼻を抜けながら極上の余韻を残してゆく。暫く食べ進めれば再び氷蜜の層が現れて、下層にいくほどに一層濃く深い甘味が愉しめることに気づいたザネリは、歓喜に心を震わせた。
「美味い……コレ、如何にかして、持ち帰れねえか? 花の香りが良い仕事をする……」
「シロップなら持って帰れるんだけどなあ、これが魔法の力か?」
「かもしれねえな。――っと、一口貰い。ん、うめー」
「……あ! こら! 子供みたいなことすんな! お前のも一口寄越せ!」
「ひひ、仕方ねえから食わしてやるか」
にまりと唇で弧を描いた男が、傍らへと器を向ける。
そこからすくった一匙を、美味しそうに食む少年を横目に――ザネリはひとつ、幸福に染む息を零すのだった。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

【櫻月】
神様の涙花…
はい!そうですね
雨は私や皆様にとって大変な恵みです!
迷子にならないようにと静琉様の横をちょこちょこ歩く
不思議と歩き易い?きっと歩幅を合わせ下さっている
時折痛そうにお顔を歪ませているのを見て心配するも
気にするなというように微笑む彼に甘えてしまう
はい!注文ですか?
私も花は桜しか知らなくて
でも折角なので違うお花をお任せで
フルーツ?ピンク色に惹かれ桃を
彼の横に腰掛け
頂きますと一口
ヒンヤリと溶けて甘い
美味しいですね
あっ、はい!はぅ、そちらも美味しいです
静琉様、こちらも一口どうぞ
屋敷から出た事の無い私を何度も外の世界へと導いて下さる優しい方
不思議と此処穏やかに幸せな気持ちになる

【櫻月】
神の涙花…か
陽に燦く天粒の神秘性を
言い得て妙だな
永い事独りでいたせいか
誰かと歩く感覚というのが
懐かしくも不思議と慣れない
小柄且つ和服の彼女の歩幅に合わせる
痛みを抑えつつ実体化
…耐性あっても多少は顔に出てしまい
気にするな…大丈夫だ
露花氷を注文
舞は、何にするんだ?
俺は…花にはあまり詳しくない
店主のすすめに任せよう
酸味が控えめで、甘いものを頼む
花の香りが心地好いベンチへと腰掛け
溶ける前に…いただきます
んむ…美味い
舌に乗せるとひんやり甘く、染み渡る
舞…俺のも食ってみるといい
未だ己の正体さえ知り得ぬ少女
神子である俺は
彼女が神の類だと察するに容易い
出逢った意味があるとすれば…
俺に、何が出来るだろう
からころと下駄の音を響かせながら、白い石畳をふたり往く。
「神の涙花……か。陽に燦く天粒の神秘性を言い得て妙だな」
「はい! そうですね。雨は、私や皆様にとって大変な恵みです!」
云って空を仰ぎ見た櫻・舞(桃櫻・h07474)の頬に、止め処なく降る雫のひとつが音無く落ちた。
ふわりと吹いた初夏の風は軽やかで、天からはらはらと零れる雨露を舞い上げては、陽の耀きを鏤めながら山間を駆け抜ける。空はどこまでも蒼く、時折、細く澄んだ鳥の聲が染みるように響いては消えてゆく。
他愛もない言葉を交しながら、気づけば不思議と歩きやすくて、舞は隣をちらりと見遣る。
(……きっと、歩幅を合わせ下さっているのだわ)
見知らぬ場所故、迷子にならぬようにと懸命に――小柄で和服故に、ちょこちょこと――歩いていたのだけれど、逆に気を遣わせてしまっていたのかと申し訳なく思いながらも、ちいさな嬉しさも滲む。
それを知らぬまま、歩調を合わせる静琉の裡に過ぎるのは、これまで過ごしてきた刻の長さだった。
とうに数えることを止めたほどの永きを独りでいたためか、誰かと肩を並べて歩く感覚がひどく懐かしい。昔は普通にできていたことなのに、今日とてもう随分とこうして歩いているのに、不思議と未だ慣れる気配がない。
そうしているうちに、気づけば村の広場へと着いていた。一層賑やかな人々の声が、花の香に混ざって響いている。
あちらのお店は如何でしょうか、と遠慮がちに云った舞に倣って視線を向ければ、広場の一角に白い小花の散る花屋根を擁した店があった。近づけばふうわりと漂うスタージャスミンの香りに、舞の口許が自然と緩んだ。
「そろそろ実体化しておくか……っ、……」
「大丈夫ですか、静琉様!」
「気にするな……大丈夫だ」
痛みを堪えるかのように柳眉を寄せる静琉へと、慌てて寄り添う舞。けれど気丈にも向けられる微笑みを前にしては、どうにも静琉に甘えてしまう。
「それより、露花氷を注文しよう。舞は、何にするんだ?」
「はい! 注文ですか?」
「俺は……生憎、花にはあまり詳しくない。――店主。酸味が控えめで、甘いものを頼む」
「私も、花は桜しか知らなくて……でも、折角なので違うお花をお任せで。フルーツ? は……では、桃を」
桜色の艶やかな果実を想い描きながら、そわりと胸高鳴らせて注文を終えると、暫くして花の形を模した硝子皿に盛られた天然氷が運ばれてきた。ひとつずつを盆に載せ、ふたりはスタージャスミンの花屋根の下にある白木のベンチに腰を下ろす。
「さあ、溶ける前に……いただきます」
「はい! ――頂きます」
「んむ……美味い。店主は確か、マンゴーの氷蜜と云っていたな。香りは……蝋梅だったか」
匙を運ぶたびに鼻腔を擽る、ふくよかで甘い芳香。それとともに口いっぱいに広がるとろりとしたマンゴーの甘味は、ひんやりと柔らかな氷が舌の上で蕩けたあとも確りとした満足感を残してくれる。
「私のも、ひんやりと甘いくて美味しいです」
つるりと喉越しの良い桃の果肉を食むたびに、上品な甘味が舌へと染みてゆく。沈丁花という花だと教えてもらった芳香は優雅で甘く、けれど新緑のような爽やかさもあって、不思議と心が穏やかな心地だ。
(……まるで、静琉様といるときのよう……)
自我が芽生える前も後も、屋敷から出たことのなかった私を、これまでに幾度も外へと連れ出してくれた優しいお方。
世界はこんなにも色づき、優しくあたたかいのだと教えてくれた。生を受けた意味を、存在する理由を知らぬ私を、いつだって導いてくれた。
一緒にいるだけで幸せで、穏やかな気持ちをもたらしてくれる。
「舞……俺のも食ってみるといい」
「あっ、はい! では、お言葉に甘えて……はぅ、美味しいです」
眦を緩めながら頬張った娘は、「こちらも一口どうぞ」と器を向けた。勧められるがままに一匙すくって、静かに食めば、優しい甘さがじんわりと裡に広がり染みてゆく。
――彼女は、神の類だ。
神子だからこそ容易く察することのできるその事実を、純粋に、幸せそうに微笑む娘は、まだ知らない。
幾度となく問いかけては、未だ答えの出ぬ問いかけが裡を過ぎる。
この出逢いになにか意味があるのならば――俺に、何ができるだろう。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

アドリブ可
かき氷♪かき氷♪(るんたっと歌って)
桃のかき氷あるかな!
僕の今日の気分は桃だよ!お花の香り?きっと甘いよね!
でも桃も負けてないと思うから
とっても素敵に混じった香りを楽しむよ
満開のお花って可愛いね
真っ白!なんて名前のお花かな?
白花の下でキラキラなかき氷を早速いただきます!
まず桃
うんま~!しあわせ~!さわやかあま~い!
次は氷と
しゃくしゃくの甘い氷と桃の瑞々しさを楽しむ
桃氷!
最高…!!
おかわりしてこよ!
果物だけならもって帰れないかな…
おみせのひとー!
僕の|友達《ペット》にもこの美味しい桃を食べさせてあげたいんだけど、お持ち帰りってできませんか?
おかわりを頼むついでにダメ元で聞いてみるね!
ひかりを纏って、ぱらぱらと舞うように降る雨は不思議と心地良くて、店々の並ぶ白い石畳をゆくリカ・ルノヴァ(Bezaubert・h00753)の足取りも軽やかに弾む。
「かき氷♪ かき氷♪」
露花氷なんてとびきりの話を聞いたのなら、もうじっとしてはいられない。
数多の氷蜜とフレーバーが生み出す無限の“おいしい”に胸躍らせながら唄を口ずさむ娘の頬を、からりとした風が吹き抜けた。夏の訪れを告げるような鮮やかな青空から零れ続けるちいさな雨粒たちは、ふわりと舞い上がり世界へとひかりを鏤めていく。
人々の賑わいに惹かれるまま歩を進めた先、ぱっと目についたのは華やかに|緑廊《パーゴラ》を彩る白い花たちだった。雨の|気配《けわい》に混じる甘やかな香りにつられて、リカはその花屋根を擁する露花氷の店へと吸い込まれる。
「満開のお花って可愛いね。真っ白! なんて名前のお花かな?」
「おやお嬢さん。うちの花に気づくとはお目が高いね。あれは“定家葛”っていう花さ」
香りが似ているから、よくジャスミンと間違われることもあるのだと添えた店主は、快活な笑み声を響かせた。聞けば、花の手入れも彼がやっているらしい。代々露花氷の店をやっているというから、恰幅の良い見目ながらも意外と繊細な仕事が向いているのかもしれない。
「さて、オーダーは決まってるかい?」
「勿論だよ! ――桃のかき氷あるかな! 僕の今日の気分は桃なんだ!」
「ああ、あるとも。フレーバーはなににする?」
「お花の香り? じゃあ、それはお任せするよ」
花ならばきっと、そちらもさぞ甘やかなのだろう。けれど、甘さならば桃だって負けてはいまい。そのふたつが、氷を介して混ざり合う――こうして考えているだけでも、わくわくそわそわと落ち着かない。
店主おすすめの、空がよく見える一等席に座って待つこと数分。
運ばれてきた露花氷を前に、リカは一層眸を燦めかせた。
「キラキラでとっても綺麗! あ、この硝子の器もお花の形だ……!」
ぱたたん、とととん。葉や花びらを叩く、どこか愉しげな滴の音色に包まれて、待ちに待った一匙をすくい――早速いただきます!
「うんま~! しあわせ~! さわやかあま~い!」
まずは、たっぷりと掛けられた氷蜜だけを食んでみれば、その濃厚な甘さとつるりとした食感に忽ち頬が緩んでしまう。
次いで氷と混ぜて2口目をぱくり!
ふんわりと刻まれた天然氷はそれだけでも仄かに甘く、桃の果肉や風味と合わさることで、ひんやりしゃくしゃくとした舌触りと甘味を存分に愉しませてくれる。氷と合わさることで程良く冷やされるからだろう、一層瑞々しさを増した桃をカモミールの華やかな香りが包み込み、“美味しい”を幾ら云っても足りないほど。
「桃氷! 最高……!! おかわりしてこよ!」
匙を繰る手が止まらずに、気づけば空になっていた器を手に、リカは再びカウンターへと赴いた。同じものを注文したのち、はたと思いつく。
「そうだ、果物だけならもって帰れないかな……おみせのひとー!」
「おう、どうしたお嬢さん。追加注文かい?」
「僕の友達ペットにもこの美味しい桃を食べさせてあげたいんだけど、お持ち帰りってできませんか?」
そう、駄目元いっぱい、期待をほんのり孕んだ青い双眸を向ければ、店主も快諾しながらサムズアップ!
「何個ありゃいい?」
「んー……いっぱい!」
「ははは、いっぱいか! よし、うちの店の一番デカい袋にたくさん詰めとくから、お嬢さんはゆっくり食べてな」
「ありがとー!」
軽やかにひとつ跳ねながら席へと戻ったリカは、そうして2杯目の露花氷一匙食んで。
また、幸せ色の笑みを零すのだった。
🔵🔵🔵 大成功

雨が綺麗な場所か。この初夏には丁度良さそうな場所だね。
ダンジョンもほっとく訳にはいかないし、のんびりと観光とか楽しみつつ向かうとしよう。
まずはゆっくり露花氷を堪能するね。
フレーバーは…分からないから何でもいいかな。氷蜜は桃で。
鼻が利けばもっとよかったんだろうけど無い物ねだりもよくないし、この綺麗な露花氷を見れて味わえるだけでも十分だ。
ひんやり甘味を味わうにはブーゲンビリアの花屋根の下でのんびりと。
花の下で天気雨の煌めきと氷の纏う星屑めいた煌めき…この時期だからこそ楽しめる空気に浸りながら甘味を一口、二口。
聴こえるのも雨音ばかり、たまにはこんな風に過ごすのも贅沢でいいよね。
※アドリブ絡み等お任せ
風が、ゆるやかに抜けていった。
空沢・黒曜(輪る平坦な現在・h00050)の毛並みに触れたのは、濡れていながらもからりと乾いた、初夏特有の軽い空気。肩に一滴、また一滴、舞い落ちた雨粒がひかりを纏って弾けていく。
空を仰げば、山の稜線の向こうに広がる薄青を深めゆく空。なのに、止め処なくほろほろと雫はこぼれてくる。神の涙花――この村の人々がそう呼ぶそれは、なるほどふしぎと肌に優しく、軽やかな雨だった。
「まさに、今の時期にはちょうどいい場所だね」
ぽつ、ぽつりと石畳に咲く水の紋。歩くたび、足許から小さな音が浮かんでは消えていく。通り沿いの|緑廊《パーゴラ》に蔓を伸ばすブーゲンビリアの花が、雨露をまとって鮮やかに咲いていた。軒先をひとつ借りるようにして腰を下ろせば、屋根の縁からきらりと一筋、ひかりの弧を描いて雫が足許へと落ちた。
手にした花型の硝子皿にふんわりと盛られた天然氷へと掛かるのは、桃色の氷蜜。選んだフレーバーは、字面でなんとなく気に入ったものだった。
匂いがわからないのは、もうずっと前からのこと。けれど、それを惜しむ気持ちは不思議と湧かない。目に見えるもの、肌に感じるもの、舌に広がる味。そういうものをひとつひとつ、丁寧に拾っていけばいいだけの話だ。
一口。氷の冷たさが、舌に触れた瞬間に甘さへと変わる。
ふた口目には、ほんの少しだけ果実の丸みが舌にほどけた。さく、しゃり、と静かな音とともに、喉の奥へと、染みてゆく甘味。頭が冴えるほどの冷たさではなく、暑さをほどよく引かせてくれる、ちょうどいい涼。星屑のような燦めきを食んでいると、どこかあのちいさなひかりを味わっている気にさえなってくる。
「……うん、美味しい」
視線を少しだけ上げた先で、ブーゲンビリアの花々が風に揺れていた。雫をまとった花びらが、陽のひかりを受けて淡く輝く。耳に届くのは、雨の落ちる音ばかり。しんとした静けさのなかに、音がふわりと滲む。さざめく葉、はずむ水、どこか遠くで響いた鳥の聲――すべてがこの村のひとときなのだと思う。
剣も鎚も、ツルハシも握らずに、ただ、雨の下で甘味を食べる――たまには、こんな贅沢な過ごし方も良いものだ。
天気雨はまだ止みそうにないけれど、それもまた、この風景のかけらとして。
ダンジョンへと続く路は、もうすこしだけ先に延ばしてもいい気がした。
🔵🔵🔵 大成功

初めて来たけれど素敵な村ね
お出掛けするには雨より晴れの方が好きだけど…
確かにこれは神の御業…自然ってやっぱりすごいわよね
お気に入りの傘を差して
この場所特有の天気雨を楽しみつつ
雨粒をまとった植物を観察しながら少し散策
さ、お楽しみはこれね
露花氷……たくさん種類があって迷うわね
じゃあ、わたしはキウイの氷蜜にミントのフレーバーで
どちらもさっぱりして爽やかでこの季節にぴったり
せっかくだからスタージャスミンの下でいただくわね
露花氷からも辺りからもいい香りが…
それに雨の日も特別な匂いがするのよね
ふふ、新作香水のインスピレーションが湧いてきそうだわ!
露花氷をゆっくりと味わいながら
季節の香りもめいっぱい楽しむわ
空はこんなにも晴れ渡っているのに、けれど雫は今もまだ降り続いていた。
柔らかく、不思議と軽やかに――まるで空のどこかで誰かが、摘みたての雫を手のひらからこぼしているような天気雨のなかを、アニス・ルヴェリエ(夢見る調香師・h01122)はお気に入りの傘を傾けてゆっくりと歩く。開いた傘へと落ちた雫が、ととん、たたん、と布地にあたってノックする。
「初めて来たけれど素敵な村ね」
視線の先では、葉が、花が柔らかに濡れ、雨粒がひとしずく、花弁を伝ってまたひとつ石畳へと滑り落ちた。
傘越しに見える空は、淡く透けた青。せっかく出かけるならば晴れているほうが好きだけれど、まさに神の御業といえる自然の素晴らしさが、アニスの裡を静かに満たす。
鼻腔をくすぐるのは、濡れた草の匂い。そして雨に触れて立ちのぼる、初夏の大地の|気配《けわい》。
「この匂い……ちょっと土っぽくて、でも青くて……うん、覚えておこう」
そうしてぶらりと散策して、お目当ての露花氷も手にすれば、ふわりと口許に笑みが浮かぶ。
スタージャスミンが枝垂れる花屋根のもとへと足を運び、ひとつ息を吐く。風に揺れた白い花びらが、露に燦めきながらそっと白木のベンチを彩った。
硝子の器に盛られた天然氷へと、淡い黄緑と白の涼やかな層を描く氷蜜。ひとひら、飾りのように添えられたミントの葉も愛らしい。
露花氷――名を呼ぶだけで甘やかな冷たさが胸にほどけるようで、アニスは目を輝かせて花型の硝子皿を手に取った。キウイの氷蜜にミントの香り。澄んだ季節にふさわしい、さっぱりと爽やかな組み合わせだ。
「待ちに待ったお楽しみ……ふふ、いただきます」
スプーンを差し入れて、ひと口。
しゃり、と舌に触れた氷が、すぐさま甘酸っぱさを帯びてとろけていった。キウイの清涼な果実感が喉の奥をやさしく撫でたあと、ふわりと広がったミントが涼を残したまま消えていく。
陽を含んで煌めいて、まるで香水瓶を透かしたような優しいひかりの粒が、空から絶え間なく舞い落ちる。雨音を響かせながら、スタージャスミンの花もまた、露をうけて香り立つ。細く清らかで、雨を孕んだまろやかな匂い。
「この香り……新作香水のインスピレーションが湧いてきそうだわ!」
もうひと口、氷をすくって頬張る。冷たさが舌をくすぐり、胸の奥でゆっくりと花が咲くように味が広がってゆく。
穏やかな風が吹く。雨と、花と、氷蜜と――いくつもの香りが重なって、ひとつの風景となる。
雨の日も、悪くない。
むしろ、こんなにも多くの香りと、静かな時間に出逢えるのなら。
「……ふふ、なんて贅沢なひとときかしら」
アニスはちいさく口許を綻ばせながら、硝子の器を静かに傾けた。
🔵🔵🔵 大成功

夏にキラキラしたカフェで最高にフォトジェニックなスイーツを映え写真に盛って自らを演出する乙女!
まさに女子力!
そんな感じの最高にキラキラしてる女子が女子力全開な感じでスイーツを堪能する様子をお願いします
シュネーはフェミニンでガーリィなゆるふわ女子です
夏!な感じの白キャミサマードレスにレースの日傘持って清楚なお嬢様な感じで!
√能力で女子力的なものが2倍になります
他の√能力者に迷惑をかける行為はしません
また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません
あとはお任せ
よろしくおねがいします!
アドリブ歓迎
耳へと響く、レースの日傘を優しく叩く雨音を愉しみながら、シュネー・リースリング(受付の可愛いお姉さん・h06135)はしとやかに足を運ぶ。
白いレースをあしらったサマードレスの裾が陽に透けてやわらかに揺れ、ふわりと吹き抜けた風に舞い上がった雫が、キャミソールから出た白腕を伝い零れてゆく。日傘の裡は薄く金を帯び、その燦めきに紫の双眸を薄く細める。
「さてと。どのお店にしようかしら――あら、」
白い石畳沿いに咲きこぼれるテイカカズラの|緑廊《パーゴラ》。その陰に飾られていたスイーツ屋台のひとつに目をとめ、シュネーはするりとそちらへ足を向けた。
村の名物スイーツたる『露花氷』を見た瞬間から、娘はあるひとつの可能性に気づいていた。
――これはもっと可愛くできる、と。
そうしてメニューに並ぶ文字を一通り追うと、さらさらと淀みなくオーダーを告げて。期待以上の見栄えに仕上がった一品を手に、胸躍らせながら――けれどあくまでも仕草は楚々と、シュネーはテイカカズラの花屋根を潜った。崩れぬようにそうっと露花氷をテーブルへと置くと、自身も白木の椅子へと腰を下ろす。
透明の花型の器に美しく盛られたのは、果実と花を閉じ込めた“露花氷のフロート仕立て”。紫の葡萄の氷蜜をベースに、上には白桃のジェラートとラベンダーの砂糖漬け、仕上げに練乳をふんわりと注ぎ、パステルカラーのおいりを散らした贅沢な一品。見目が華やかだから、フレーバーはくどくならないよう、トッピングにも使ったラベンダーの香りを選んだ。
「ん~~……最高に可愛いわ……!」
歓喜に胸を震わせながら、スマートフォンを取り出し、カメラアプリを立ち上げる。光源の角度、露花氷の向き、背景の風景――すべてが完璧な構図になるまで微調整を重ねて数枚写真に収めたら、お待ちかねのひとときだ。
「崩すのは勿体ないけど……でも、溶けちゃうのはもっと勿体ないし。ふふ、いただきます」
ふわりと鼻先に触れる、優しいラベンダーの香り。一匙すくえば、ひんやりとした氷蜜が舌に乗り、桃の柔らかな甘みに続き、それよりも濃く甘やかな葡萄と白桃の風味が広がってゆく。氷に混じり薄まりそうな味に練乳がほどけて、最後まで幸せな甘さが裡に残る。
ふと外を見遣れば、軒先の枝垂れた葉先から零れたひとしずくが、白い石畳にちいさな光の輪を描いた。風がそよぎ、ちいさく柔らかな花の香が胸を満たしていく。
――こんな穏やかな昼下がりが、きっと世界にはもっと必要よね。
たとえ闘いがなくならずとも。哀しみが消えることがなくても。こうして笑って過ごせる刻の大切さを、シュネーもまた、知っている。
露花氷に煌めく雫のパウダーが、ほんのりと光に透ける。
ゆっくりとしたこのひとときを彩る雨音は、しばらくの間続いていた。
🔵🔵🔵 大成功

【寄る辺 2人】
アドリブ歓迎
露花氷…というの。雫が星みたいね。
あら、りりの目もキラキラ。楽しみで仕方がないのね。
それじゃあ、座る場所を決めておきましょ。
ねえ、あのフラワーアーチの椅子はどう?ブランコみたいで可愛いわ。
りり、あなたブランコ好きでしょ?
あら、ワタシも好きなのよ。子供のだけの物じゃないわ。
揺れて遊んで、お花に囲まれて甘いものなんて。ね、オトナの遊び方よ。
あら、乗ってくれる?じゃあ、お互い露花氷を持って集合にしましょ。
ワタシのはスモモの氷蜜にしたの。バラのフーレバーよ。
華やかにして貰えたみたい。
りりのは、トッピングがたくさん。すごいわ。
ふふ、でも足りないの?
おかわり買いに行きましょ。

【寄る辺2人】
アドリブ歓迎
とってもきらきらできれい
お名前もかわいいですよね、露花氷!
ブランコは好きですしかわいいですけど…こどもっぽいかなって…
おとなの遊びかた…!ここにしましょうっ
なにを買ってくるかおたのしみですね?いってきます!
わぁっベルちゃんらしさが出てますね!
わたしはパイナップルとジャスミンですっ
…アイスと白玉だけって思っていたら種類がいっぱいでまよってしまって…
ここからここまでくださいってしてきました!(詳細お任せ)
くだもののお味もしっかりしますし、お花の香りでとってもはなやかになりますね
組み合わせによって印象が変わりそう!
他のお味も気になっちゃいますね
…おかわりしてもいいですか?
村のなかを抜けてゆく白い石畳を往けば、広場の賑わいが近づいてきた。
あたりに満ちた、濡れた花の香を仄かに含んだ雨の匂いにつられて、ひとつ深く呼吸する。からりと心地良い風に混じる、ひんやりと微かに甘い空気が、どこか夏の入口を思わせて、ベルナデッタ・ドラクロワ(今際無きパルロン・h03161)と廻里・りり(綴・h01760)の口許もふわり綻ぶ。
家々の庭や花屋根を飾る、新緑や花びらへと零れては消えてゆく雨露たち。躍るように軽やかに弾ける様はどこか眩くて、ふと細めた眸をゆるり映せば、あちらこちらの花屋根でくつろぐ人々の手に彩り華やかな露花氷が見えた。
「あれが露花氷……というの。まるで雫が星みたいね」
「とってもきらきらできれい。お名前もかわいいですよね、露花氷!」
「あら、りりの眼もキラキラ」
愛らしい様子に、楽しみで仕方がないのね、と笑みを深めたベルナデッタは、「それじゃあ、先に座る場所を決めておきましょ」とひとつ提案を口にする。
一緒に選ぶのも愉しそうだけれど、折角ならばそれぞれで買い求めてからの見せ合いっこ。
互いの裡にある、宝物のような“好き”を教え合う――それは娘たちのちいさな内緒話のよう。
「ねえ、あのフラワーアーチの椅子はどう? ブランコみたいで可愛いわ」
りり、あなたブランコ好きでしょ? と問いかけるも、りりはちょっと思案顔。
「ブランコは好きですしかわいいですけど……こどもっぽいかなって……」
「あら、ワタシも好きなのよ。子供のだけの物じゃないわ。揺れて遊んで、お花に囲まれて甘いものなんて。ね、オトナの遊び方よ」
そう云って、少女のようなあどけなさを残しながらベルナデッタが淡い薔薇色の双眸を艶やかに細めれば、りりの透いた眸の青が一等大きく見開かれ、期待に染まる。
「おとなの遊びかた……! ここにしましょうっ」
「あら、乗ってくれる? じゃあ、お互い露花氷を持ってここに集合にしましょ」
「わかりました。なにを買ってくるかおたのしみですね?」
ぴこん! とまあるい耳を立てて、いっぱいに微笑んで。
――いってきます!
天気雨の下、そう云って駆けてゆくりりの足許で、雨粒が星のように燦めきながら弾んだ。
公園の一角にある白いフラワーアーチへ戻ってふたりで座れば、崩れぬようにと大切に運んできた互いの“一等”のお披露目会の始まりだ。
「ワタシのはスモモの氷蜜にしたの。バラのフーレバーよ。華やかにして貰えたみたい」
「わぁっベルちゃんらしさが出てますね! わたしはパイナップルとジャスミンですっ」
「りりのは、トッピングがたくさん。すごいわ」
「……アイスと白玉だけって思っていたら、種類がいっぱいでまよってしまって……“ここからここまでください”ってしてきました!」
白玉とパイナップルゼリーが、交互に縁取る硝子皿に、ふんわりと盛られた天然氷。夏の陽の色めく鮮やかなパイナップルの氷蜜にはチョコレートソースで縞が描かれ、カラースプレーが鏤められた柔らかなメレンゲが帽子のように乗り、頂には白と黄のちいさなアイスが並んでいる。
その圧巻の一品を前に、どこから匙を入れようかと手を彷徨わせるりりにちいさく微笑むと、ベルナデッタは手許の露花氷を一口すくった。華やかな薔薇の香とともに裡に満ちる、爽やかな甘酸っぱさ。果実味がふんだんのスモモの風味は、夏めいてきた気温にひとときの涼を運んでくれる。
「ん、おいしいです。くだもののお味もしっかりしますし、お花の香りでとってもはなやかになりますね。組み合わせによって印象が変わりそう!」
漸く切り口を決めて口へと運んだりりは、アイスとメレンゲ、氷蜜の、それぞれ違った甘さをいっぱいに堪能していた。どこか南国を思わせる甘味と酸味にチョコレートが加わり、一層味に深みが増しているよう。柔らかく弾力のある白玉と、すぐにほろりと崩れるゼリーの食感もリズミカルで、食めば食むほどに愉しさが増してゆく。
「こんなにおいしいと、ほかのお味も気になっちゃいますね……」
「ふふ、足りないの?」
「……おかわりしてもいいですか?」
なんて、愛らしく尋ねるりりへと、ベルナデッタも快く頷いて、
「ええ。食べ終えたら買いに行きましょ」
交したふたつの笑顔が、頬に触れながら渡ってゆく初夏の風に淡く溶けていった。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

律(h02767)と
律、涼みに行かないか?
綺麗な花の氷が食えるらしい
夏は得意じゃねぇ代わり
こういう機会に楽しみ作っておこうかと
氷蜜とフレーバー…洒落てるな
律はどれにする
店主のおすすめも聞きたいところ
俺は柑橘系があれば其れを
選んでいれば、ぽつと額に雫が落ち
小雨降ってきたな
折角だ、縁廊で食おうか?
雨露に濡れて滴り一際目を惹いた花屋根
紫のクレマチスが彩る縁廊を目指し
少し濡れたな…律は大丈夫か?
髪伝う雫を指先でかき上げ
ハンカチ、悪い。使うの勿体無ぇな
花の馨り、露花氷を眺め
……美味しそうだな
良かったらこっちも食えよ
じゃあ律の甘い方も貰う
雨音を聴きながらお前と美味いもんを楽しめるなら
不快だった雨も悪くない

夜鷹様(h00864)と
素敵なお誘いありがとうございます
ぜひご一緒させてくださいまし
わたくしはお店の方のお勧めをいただこうかしら
甘いフレーバーの組み合わせをお願いいたします
雨露に濡れるクレマチスの縁廊を見上げて
花と雨露は趣深いものですが、夜鷹様も濡れてしまわれたようですわね
どうぞ、このハンカチをお使いくださいまし
よろしいのですか?
でしたらこちらもどうぞ
つい甘いものを選んでしまったのですが…
そういえば夜鷹様は甘いものをあまり召し上がらないのに
此度もきっとわたくしのためにお誘いくださったのでしょう
その優しさは胸に秘めて、
雨は嫌いではないのですが、今年はより好きになれそうです
またお誘いくださいましね
――律、涼みに行かないか? 綺麗な花の氷が食えるらしい。
そんな夢言葉のような夜鷹・芥(stray・h00864)からの誘いに、冬薔薇・律(銀花・h02767)は嫋やかなる笑みを湛えた。
――素敵なお誘いありがとうございます。ぜひご一緒させてくださいまし。
訪れた村の石畳を漫ろ歩きながら視線を上げると、高らかな空に夏色が広がっていた。
まだ淡さを残す青から、幾つもの涙がはらはらと零れては燦めきを描く。遠くで鳴く鳥の声に混じり、耳を愉しませてくれる雨音と葉擦れの音。ひとつ腕に触れた雨粒はすぐに風にさらわれ、仄かな花の香を残してゆく。
村の広場でゆるり辺りを見渡したふたりは、仲の良さそうな夫婦の営む店へと立ち寄った。路に面したカウンターに並び、メニューを覗く。
「氷蜜とフレーバー……洒落てるな。律はどれにする」
「わたくしはお店の方のお勧めをいただこうかしら。――あの、甘いフレーバーの組み合わせをお願いいたします」
「俺は柑橘系があればそれを。店のおすすめも聞いておきたい」
ふたりの注文に喜んで応えると、夫婦はひとつずつ、花型の硝子皿に盛られた露花氷を手渡した。受け取れば忽ち、ふうわりと花の香が鼻先を擽る。
「――ん? ……ああ、小雨降ってきたな。折角だ、|緑廊《パーゴラ》で食おうか?」
額の滴を拭いながら傍らへと視線を落とせば、律も柔く眦を緩めて頷いた。店を後にして歩き出した先、雨露を纏い、滴が零れては燦めきを増す花屋根に目が留まる。|緑廊《パーゴラ》を彩る紫のクレマチスへと惹かれるままに近づくにつれ、愈々甘く蕩ける匂いが香ってくる。
花影へと入り、ひとまず白木のベンチへと硝子皿を置いた芥は、露滴る黒髪を指先で掻き上げた。
「少し濡れたな……律は大丈夫か?」
「ええ。――夜鷹様。どうぞ、このハンカチをお使いくださいまし」
「悪い。使うの勿体ねぇな」
雨は然程好きではなかった。不快と云っても良いだろう。それが、得意でもない夏に在るなら尚更だ。
それでも、愉しみをひとつ程度持つのも悪くはない。だからこそ此度、芥は律を誘った。素顔も感情も薄い男ではあるが、誰かと――それが顔なじみなら尚のこと――ともに食するひとときの愉しさは知っていた。
一息吐きながらベンチへと並んで座ったふたりは、手を添えながら膝に乗せた露花氷へと早速匙を入れてみる。
ひだまり色の氷蜜から漂うのは、明るく爽やかなネロリの香り。一口含めば、ひんやりとした蜜柑の甘酸っぱさが広がり、ふんわりと柔らかな食感の氷が忽ち舌のうえで溶けてゆく。時折混じる、つるりとした蜜柑ゼリーの喉越しも心地良い。
無表情ながら静かに舌鼓を打ってた芥は、隣から流れてくる甘やかな芳香に気づいて眸を向けた。
美味しそうだと感じるのは、その香か、氷菓の見目か、はたまた幸せそうに食むその横顔か。
「……良かったらこっちも食えよ」
「よろしいのですか? でしたらこちらもどうぞ。つい、甘いものを選んでしまったのですが……」
「じゃあ、律のも貰う」
そう云って互いの一匙を交換した後、律は改めて手許の一山をそっと食んだ。
真白な氷に掛けられた淡黄は、口に含めば芳醇な甘味をもたらす梨だと分かる。上品な甘味を含んだしゃくしゃくと柔らかな天然氷は忽ちほどけ、甘く艶やかな梔子の香がふうわりと鼻を抜け得も言われぬ満足感を残してゆく。
鼓を打つような音をまばらに響かせながら、白い石畳へと波紋を描く雨粒たち。
「雨音を聴きながら、お前と美味いもんを楽しめるなら……雨も悪くない」
「わたくしも……雨は嫌いではないのですが、今年はより好きになれそうです」
男があまり甘いものを好いてはいないことを知る娘は、己がために誘ってくれたその優しさをそっと裡に抱いて。
――またお誘いくださいましね、と。
趣深い雨と露を眺めながら、穏やかな花笑みを浮かべた。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

スー(h00710)と共に
屋根の花お任せ
どうした、スー
ここの話を聞いて目を輝かせていたではないか
ふむ、仕方なし
ならば我がお前の分まで燥ぐとしようかのう
好物の桃の氷蜜に桃の花香
鼻先を擽られながら跳ねる早足で先に花屋根の下へ
ほれ、早う場所を決めねば
溶けて消えてしまうやもしれぬぞ
ふふふ、楽しまねば損というものよ
んむ美味い、それに良き香だ
透ける花葉の下、儚く溶けるキンと冷えた氷に
熱気もしだいに鎮められてゆくよう
花に集う蝶にでもなった心地だの
これ、何ぞ言うたか
ふふふ、お前が気に入ってくれたら
我はそれが一番嬉しいよ
氷の上に、花屋根から舞い落ちた花一輪見つけ
――おや
向こうから来てくれたようだの

ツェイ(h00224)と
は、はしゃぐほど子供じゃないですよ
――って、え?
そんな風にされると
逆に落ち着いてる方が格好悪く思えてしまって
わ、わかりましたから待ってください、もう
メロンの氷蜜と、花は詳しくなくてお店のひとにお任せしたけど
花も、氷も、香もぜんぶ煌めいて目に見えるみたいだ
追いついたらそわそわ腰を下ろす
……いただきます
つめたい
あまい、美味しい……
すぐに溶けて消えてしまうから
もうひと口が止まらない
そうですね、似てますよ
ふらふら飛んでて、強風でどっか行きそうなとこ
いえ、なんでもないです
……。えっと、ありがとうございます
つれて、来てくれて
涼しくなったはずなのに、またちょっと顔が熱くなる
ふと掌を翳してみれば、細い雨がさらりと指の間を抜け、潤んだ匂いだけを残していった。
どこまでも鮮やかな青を湛えた空からほろほろと毀れては、白い石畳へと波紋を描く幾つもの雫たち。一歩、一歩、靴裏で柔らかくひかりを返しながら、ツェイ・ユン・ルシャーガ(御伽騙・h00224)とスス・アクタ(黑狐・h00710)は村の中央へと続く路を往く。
「どうした、スー。ここの話を聞いて、眼を輝かせていたではないか」
「は、はしゃぐほど子供じゃないですよ」
肩越しに振り返り、すこしだけ後れて着いてくる狐面の少年を見遣ると、どこかぎこちない|気配《けわい》が返ってきた。ふむ、とひとつ息を吐くと、ツェイは再び軽やかに歩き出す。
「仕方なし。ならば、我がお前の分まで燥ぐとしようかのう」
「――って、え?」
思いも寄らぬ言葉に、つい声が上擦った。愉しいものを愉しいと受け入れる。それを体現されてしまうと、落ち着いているほうが逆に格好悪く思えて、
「わ、わかりましたから待ってください、もう」
くすり、と微笑んだツェイには気づかぬまま。
ススはどこか慌てた調子で、けれど確かに歩調を早めてその背を追いかけた。
辿り着いた広場は、多くの人々で賑わっていた。
あちらこちらに見える、露花氷の看板。それと同じか、それ以上に溢れている花屋根は雨露が燦めき、山々の緑と空の青が相俟って遠目で見るだけでも美しい。
目星をつけた店で思い思いの品を買い求めてから再び広場へと戻れば、花壇に咲く色とりどりの花々が、露に映したひかりを鏤めながら風に揺れていた。そのたびにふうわりと漂う花の香に、いよいよツェイの胸も躍り出す。
「ほれ、早う場所を決めねば。溶けて消えてしまうやもしれぬぞ」
「ま、待ってくださいってば」
「ふふふ、楽しまねば損というものよ」
背丈の差なぞお構いなしにツェイが飄々と軽やかに歩んでゆくものだから、ススは小走りで駆け寄った。初夏になお一層鮮やかな紅に染まる、サンパラソルの花屋根の下に佇むベンチを見つけて、ふたり並んで腰を落とす。
硝子の中で氷蜜がわずかに溶け、淡く色づいた桃の香りが胸を撫でる。
「さて、スー。いただくとするかの」
そのまま匙ですくって食み始めたツェイを横目に、ススはそわそわと尾をゆらしながら硝子の器をしばし眺めた。
景色に揺れる紅の花も、手の裡にある氷も。ふうわりと漂う甘やかな香りさえ、なにもかもがひかりを纏って煌めいて見えて思わず静かに息を飲む。世界はただ静かに揺蕩っていて、それに声という匙を入れてしまうのが勿体ないように思えて、ススはちいさく呟いた。
「……いただきます」
音無くすくって、口許へと運ぶ。途端、甘く華やかな香りが鼻を抜けて喉を伝った。花には詳しくないのだと告げたススに店主が選んだのは、確かジャスミンのフレーバーだと云っていたか。瑞々しいメロンの氷蜜とともに柔らかな氷は淡雪のように忽ち溶けていってしまうから、匙を動かす手が止められない。
「つめたい。あまい、美味しい……」
「んむ美味い、それに良き香だ」
花影を透いて届く、薄い陽のひかりに包まれながら味わう露花氷は、儚いながらも凛とした涼を孕んでいて、初夏の熱にあてられた躰をゆっくりと鎮めてくれるよう。
「花に集う蝶にでもなった心地だの」
「そうですね、似てますよ。……ふらふら飛んでて、強風でどっか行きそうなとこ」
「――これ、何ぞ言うたか」
「いえ、なんでもないです」
知らぬ顔でそんなことを云うススに、ツェイが愉しげに眦を緩ませる。はしゃぐようなことをせぬ子ではあるけれど、どれだけ愉しんでくれているかは、残り僅かとなったその皿を見れば一目で知れた。
「……。えっと、ありがとうございます。つれて、来てくれて」
「ふふふ。お前が気に入ってくれたら、我はそれが一番嬉しいよ」
狐面の下の貌は見えぬものの、その声色にはどこか火照りが滲んでいて。一層笑みを深めたツェイの眼前をひらりと過ぎった一輪の紅が、氷のうえへと舞い落ちる。
「――おや。向こうから来てくれたようだの」
世界を彩る、そのひとひらへと笑み零しながら。
雨を透いて柔く届くひかりが、ふたりの時間へとそっと溶けてゆく。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

【紅蒼】2名
呼び方
兄さま
露花氷!
いいわね!あたしはとにかく真っ赤に染め上げるわ!
兄さま?その目はなあに?別に兄さまのためにトマトのかき氷とか頼まないから安心して!
果物はダークチェリー!花の香りは赤い薔薇ね!
ブーゲンビリアの花屋根の下で優雅にベンチに腰掛けるわ!
ふうん、ブーゲンビリアって香りがしないわね?ちまたで売ってるブーゲンビリアの香りって何かしら?謎ね!
兄さま?
兄のかき氷をずびしっと指さし
何そのクリーム?美味しそう!
そしてクリームをちょっとつまんで舐める確定ロール
ぺろり!これはチーズね!
いいじゃない減るものじゃないし!
あたしのかき氷にもなにか追加してもらおうかしら?白玉とか!

【紅蒼】2名
妹のことはリューダと呼ぶ
天気雨とはいえ折角の露花氷が濡れるといけない
屋根があるところがいいだろう
リューダ
好きな花を選んでいいぞ
そこで食べよう
ブーゲンビリアは品種によっては甘い香りがするんだよ
基本は無臭だけど
香りが混ざってよくわからなくなるよりはいいんじゃないかな
…赤だろうが白だろうがバラの香りは変わらないのでは?
氷蜜は無花果
フレーバーはクチナシ
氷の上には輪切りの果実とマスカルポーネの生クリームがかかってる
いいね、うまそうだ
無花果が用いられているけど香りがクチナシなのも不思議だ
この村独自の技法なのかな
おいこら勝手に食べるなって
いや、食べたら減るんだよ!
いいんじゃないか?白玉も旨そうだ
足許の白い石畳に、ちいさな水紋が広がった。
そのすぐ隣に、もうひとつ。重なるように、またひとつ。その連なりを追ううちに、雨が降っているのだと気づく。傘がいらぬほどの、淡く優しい涙の花。
視線を上げれば、村の屋根越しに遠くの山々が見えた。かすかに青く滲む、緩やかな稜線。呼吸のたびに、雨の匂いと濡れた緑の香がじんわりと裡に染みてゆく。
「露花氷! いいわね! あたしはとにかく真っ赤に染め上げるわ!」
「……」
今日も太陽のように元気な妹だな、とルスラン・ドラグノフ(лезгинка・h05808)は胸中で独り言ちた。ゴシック風の装いながら、けれど表情は晴天のように明るく、八重歯を覗かせて笑うたびに吸血鬼という肩書きを忘れてしまいそうになる。
「兄さま? その目はなあに? 別に、兄さまのためにトマトのかき氷とか頼まないから安心して!」
「……頼まれても食べないからな、そんなの……」
訪れた露花氷店の店主を前に、あまり軽妙なやり取りを繰り広げるわけにもいかない。ルスランは手短に自分のぶんをオーダーすると、傍らの妹――リュドミーラ・ドラグノフ(Людмила Драгунова.・h02800)の様子を眺め見る。
「決めたわ! 果物はダークチェリー! 花の香りは赤い薔薇ね!」
「……赤だろうが白だろうが、薔薇の香りは変わらないのでは?」
あまり軽妙なやり取りを云々、と思った矢先ではなかったか。
自分へも裡でそんなツッコミをしてしまったけれど、こればかりはもう仕方がない。どこか諦観めいた一瞥を妹へとくれてやると、ルスランはちいさく息を吐いた。
店を後にした双子は、そのまま村の広場へと脚を向けた。
雨足はさほど強くないとはいえ、せっかくの露花氷を濡らしてしまっては勿体ない。幸い、花屋根なら視界のなかだけでも幾つもある。どこか屋根の下を拝借しようと、ぐるり視線を巡らせる。
「色々な花屋根があるんだな。……リューダ、好きな花を選んでいいぞ。そこで食べよう」
「なら、あのブーゲンビリアが良いわ!」
自身が選んでもなにか云いそうだからと妹へと委ねれば、赤を好む妹らしい、予想通りの答えが返ってくる。氷を崩さぬように慎重に歩きながら近づけば、花へと貌を近づけたリュドミーラが小首を傾げた。
「ふうん、ブーゲンビリアって香りがしないわね? ちまたで売ってるブーゲンビリアの香りって何かしら? 謎ね!」
「ブーゲンビリアは、品種によっては甘い香りがするんだよ。基本は無臭だけど」
香りが混ざってよくわからなくなるよりはいいんじゃないかな、と返しながら、ルスランは花屋根の真下にあった白木のベンチへと座った。それに続いて、リュドミーラも優雅に腰かける。
初夏の陽に煌めく姿は思わず魅入ってしまうほどだけれど、はたと気づいた娘は上品に匙ですくいはじめた。芳しい薔薇の香とともに、口いっぱいに満ちるダークチェリーの濃厚な甘味と酸味。氷の上だけではなく、その裡にも幾つか入っている果実そのものも、食めばじゅわりと果汁が広がって味に深みを与えてくれる。
どうやら満足のいく味だった様子の妹をちらりと見ると、ルスランは淡く色づいたクチナシ香の露花氷へと視線を戻した。選んだ氷蜜は無花果。上にはマスカルポーネのクリームが緩くかかり、輪切りの赤い果実が添えられている。
「いいね、うまそうだ」
程良く熟れた果実を使っているのだろう。酸味よりも甘味の強い上品な味が氷へと蕩け、舌の上でさらりと溶けてゆく。輪切りの果肉の歯応えを愉しみながら、梔子の甘やかな芳香が最後まで余韻を残す。
無花果が用いられているけど、香りがクチナシなのも不思議だ。この村独自の技法なのかな――なんて巡り始めた思考を、リュドミーラの声が遮った。
「兄さま? 何そのクリーム? 美味しそう!」
「え」
ずびし! と指さしたかと思えば、間髪を容れずにクリームをちょっと摘まんでぺろり!
「――ん! これはチーズね!」
「おいこら勝手に食べるなって」
「いいじゃない減るものじゃないし!」
「いや、食べたら減るんだよ!」
ド正論を返しながら、嘆息ひとつ。「あたしのかき氷にも、なにか追加してもらおうかしら? 白玉とか!」と浮き足立つ妹へ、「いいんじゃないか? 旨そうだ」とすべてを受け入れながら。
ルスランがそっと見上げた先、紅を伝って石畳に落ちた雫が、ちいさな輪を描いては光を散らした。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

絶奈ちゃん(h00674)と
ここの景色、気になってたんだよね~。今日は付き合ってくれてありがとお。
…ふふ、勿論分かってるよお。絶奈ちゃんの浪漫溢れる物言いには、いつだって心揺さぶられてるんだから。
嘘劇の共犯者同士、互いの領域を侵さぬままに、軽口を交わしながら和やかに歩を進める。
目的地は定家葛を絡めた花屋根の下、勿忘草で囲まれた噴水。ベンチもあり、その足元にも勿忘草。
道中、雨が降ったら傘をひとつだけ開いて、自然と絶奈側に傾ける。
言いかけたのにすぐ言葉を止めちゃうだなんて…まったく、興味を唆るのが上手いなあ~、ふふ。好きな花、あって良かったねえ。
露花氷も楽しみだなあ。ね、絶奈ちゃんはどんな味にする?
露花氷:蝶豆の氷露+ソフトクリーム+パチパチキャンディー+定家葛のフレーバー
見てみて~、クラッシュキャンディ乗っけてもらっちゃったあ。こういうの、映え、っていうのかなあ?
ふふ。絶奈ちゃんのは、僕とは正反対の色合だね~。とっても綺麗だよ。
僕のも食べてみる? それじゃ…はい、どーぞ。(露花氷を口元へ)

ルメルさん(h01485)と同行
お洒落なお誘いありがと。お洒落ポイントをあげる。最近暑いし露花氷が楽しみだね
……いや?花屋根とか噴水とかも当然楽しみだよ?私は文化人だからね
さ、行こうか。あの嘘劇の続きにね。このひとときを楽しもう
(小雨が降ったら傾けられた傘に身を預ける)
ありがとルメルさん。小雨、風情があっていいね。よく空が泣いてるって言われるけど
これに関してはなんか悪戯っぽく笑ってる気がするんだよね
定家葛も勿忘草も綺麗だ。私さ、勿忘草って凄く好きなんだ。理由は……いや、何でもない。私は秘密の多い女だからね
私の方こそこんな良い場所に誘って貰えて良かったよ。で、ついに露花氷だね。さて、どうしたものかな
露花氷、実は初めてだからお任せしようかな。ああ、でもイチゴシロップだけは欠かせないね。
うわ、ルメルさんの色々欲張りセットでいいな。映えソムリエの私が評価するよ。確かに私のとは正反対だ
あ、食べてもいいの?それじゃ、ありがたく。せっかくだから私のも分けてあげるよ。
雨の|気配《けわい》は、肌が覚えている。
渓谷に佇むリュースエルヴを、ほんのりと水気を帯びた大気が吹き抜けた。それだけで舞い上がるほどのちいさな雨粒たちに混じる、濡れた草と土の匂い。そこに花の香が加わり始めたことに気づいたルメル・グリザイユ(寂滅を抱く影・h01485)が、つと貌を上げた。
「――ああ、あそこ。店がたくさんあるみたいだよお」
「本当だ。花屋根らしきものもあちこち見えるな」
男に倣って遠くを見遣った贄波・絶奈(|星寂《せいじゃく》・h00674)が、その赤い双眸を細めた。離れたここからでも分かるのは、ブーゲンビリアやサンパラソルだろうか。夏色を帯び始めた青空に、華やかな赤が良く映えている。
「話に聞いてた通り……いや、それ以上の絶景だ。ここの景色、気になってたんだよね~。今日は付き合ってくれてありがとお」
「こちらこそ、お洒落なお誘いありがと。お洒落ポイントをあげる」
最近暑いし露花氷が楽しみだね、と続けた矢先、隣から視線を感じてそちらを見れば、愉しげな、そしてどこか意を孕んだルメルの笑みがあった。
「……いや? 花屋根とか噴水とかも、当然楽しみだよ? 私は文化人だからね」
「……ふふ、勿論分かってるよお。絶奈ちゃんの浪漫溢れる物言いには、いつだって心揺さぶられてるんだから」
まだ肌寒さの残る春先に、いつもよりすこしだけ長く語らったあのときもそうだった。まるで恋人めいたやり取りを交えた娘はもう、“共犯者”と云って良いだろう。上辺だけともまた違う、“ほんとう”を伝えながらも互いの領域は侵さない――そんな関係。
「さ、行こうか。あの嘘劇の続きにね。このひとときを楽しもう」
そう微かに口端を上げた絶奈へとひとつ笑みを深めると、ルメルは手にした傘のネームバンドを外して広げ、ゆるく傍らへと傾けた。
たとえ偽りだろうとて、興味深いひとときでもあったことは確かだから。今日もまた、あの続きに興ずるのも愉しそうだ。
柔く飄々とした足取りのルメルの足許で、ひかりを鏤めながら雨花が咲く。
幾つもの水の波紋が描かれ、陽に煌めきながら村を過ぎる白い石畳をゆけば、見晴らしの良い円形の広場に出た。中央にある噴水が心地良い音を響かせ、その周囲をぐるりと花屋根や店々が彩っている。視線を先へと遣ると、その奥には公園もあるようだった。
青い屋根の店が眼に留まり、軒下へと入って。互いに注文した露花氷を受け取ると、ふたたび肩を並べてぶらりと歩き出す。
路を挟んだ先の公園の一角で、ふとルメルが瞠目した。ジャスミンを思わせる、けれどどこか新緑を孕んだ花の香り。惹かれるままに見遣れば、噴水と、|緑廊《パーゴラ》を柔く包む、定家葛の白が見えた。
「あの花屋根はどお? ベンチもあるし」
「ああ、構わないよ。綺麗な定家葛だ――あ、」
「ん? わあ、青い花がいっぱいだねえ。これは……勿忘草かなあ」
近づいてみれば、ちいさく可憐な青があたりを満たしていた。絶奈が微かに唇を開き、そっと零す。
「私さ、勿忘草って凄く好きなんだ。理由は……いや、何でもない」
「言いかけたのにすぐ言葉を止めちゃうだなんて…まったく、興味を唆るのが上手いなあ~」
「私は秘密の多い女だからね
「ふふ。好きな花、あって良かったねえ」
ちらりと見た横顔は、いつもと変わらぬダウナーな|影《いろ》を纏っていたけれど、その口端が仄かに綻んでいるように見えて、ルメルも眦を淡く緩めた。白木のベンチへと並んで座り、手にしていた花型の硝子皿を両の手で持ち上げる。
「見てみて~、クラッシュキャンディ乗っけてもらっちゃったあ。こういうの、映え、っていうのかなあ?」
愉しみにしていた露花氷は、バタフライピーの氷蜜とソフトクリームに、パチパチキャンディーを鏤めた華やかな見目だった。ふうわりと香るのは、この花屋根と同じ定家葛だ。
「うわ、ルメルさんの色々欲張りセットでいいな。映えソムリエの私が評価するよ」
「ありがとお。ね、絶奈ちゃんはどんな味にしたの?」
「私は、実は初めてだったからお任せにしたんだ。苺シロップだけは指定してね」
「ふふ。僕とは正反対の色合だね~。とっても綺麗だよ」
確かに、と頷きながら視線を戻した硝子の器からは、薔薇に似たピオニーの華やかな芳香。早速ひとくち――と匙を手に取った絶奈へと、傍らから声が続く。
「僕の、食べてみる?」
「あ、いいの? ――それじゃ、ありがたく」
「はい、どーぞ」
あの嘘劇のときと同じように、自然と娘の口許へと一匙を向けて。ぱくりと食めば、ソフトクリームのひんやりとした甘さのなかに、ほんのりと広がる豆のような風味。パチパチキャンディーが歯応えと甘さのアクセントを加えながら、濃く甘い香りが鼻を抜けてゆく。
「美味しい……。ありがと。せっかくだから、私のも分けてあげるよ」
云って、差し出された匙へと貌を近づけ、ルメルも一口。薔薇めいた華やかな香を含みながら、ふうわりと柔らかな天然氷に溶ける苺の甘さを堪能する。
そうして続く、他愛もない会話。
変わらずに在る、葉や花びらをたたく雨露の音色と、陽を纏って燦めきながら毀れてゆく雫たち。
「小雨、風情があっていいね」
よく空が泣いてるって言われるけど、これに関してはなんか悪戯っぽく笑ってる気がするんだよね。そう続けた絶奈へと、ルメルも柔く微笑みを返す。
「こんな良い場所に誘って貰えて良かったよ」
ありがと、と。
そう云った娘の貌には、星のようにささやかに、けれど確かな歓びが滲んでいたから。
男もまた、ひとつ口許を緩めるのだった。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功