⚡オーラム最終決戦~本日はカレー曜日
⚡️最終決戦:通信網破壊戦

これは大規模シナリオの最終決戦です!
9/15朝8:30までの「戦勝数」に応じて、得られる結果が増えます!
戦勝数=作戦1〜5の成功シナリオ数÷2+最終決戦の成功シナリオ数
9/15朝8:30までの「戦勝数」に応じて、得られる結果が増えます!
戦勝数=作戦1〜5の成功シナリオ数÷2+最終決戦の成功シナリオ数
※つまり、現存する作戦1〜5を攻略する事も、勝利に貢献します!
※到達した戦勝数までの全結果を得られます。つまり戦勝数80なら、全ての結果をゲット!
※到達した戦勝数までの全結果を得られます。つまり戦勝数80なら、全ての結果をゲット!
結果表
戦勝数50:解放地域の拡大(闘技場新マップ「ビーチ」追加)。戦勝数58:オーラム以外のレリギオスに、逆侵攻の事実を伝達阻止。
戦勝数66:👾ナイチンゲール鹵獲。
戦勝数74:今後のウォーゾーン大規模全てに「内部撹乱作戦」を追加。
戦勝数82:各レリギオスが各々に蓄積した『|完全機械《インテグラル・アニムス》』の研究データを全て破棄
●毎週水曜日と金曜日はカレーの日
√ウォーゾーン、川崎市。
戦闘機械群が撤退した市街地の一角では、スパイシーな香りが漂っていた。
「さぁ、今週もカレー曜日がきたよー♪」
「はーい並んでくださーい、カレーはまだありますからねー!」
給仕タイプの|少女人形《レプリノイド》達が手際よく配給しているのは、何も凝ったところのない素朴な『具なしカレー』だ。だがそのどこか懐かしい味わいは地域の人々の心を癒し、この世界を生き抜く支えにもなっていた。
「あ、そろそろ備品がなくなりそう」
「じゃあ裏に行って取ってくるね」
元お弁当屋を修繕・再利用したそのカレー屋の裏には、大きな倉庫が佇んでいる。入口に鍵はついておらず、明かり取りの窓もないため中は真っ暗だ。恐らくはもう利用する者もいない倉庫なのだろう。……この世界ではよくある話である。
とはいえ黙って利用するのも気が引けて、その入口付近に少女分隊は配給のための備品を置かせてもらっていた。
「何だかちょっと不気味なんだよね、ここ……何に使ってたんだろう?」
「NP=シィ、まだー? 人手が足りなくなってきたよー」
「あ、はーい! 今行くー!」
店内からの呼び声に慌てて返答すると、少女人形は備品を抱え戻っていく。
——チカッ、チカッ。
その彼女らが踏み込まない倉庫の奥で、不自然に明滅する光があった。
●君はスパイスの香りに耐えられるか
√ウォーゾーンのとある前線拠点にて。
「みんな、カレーは好き?」
集まった面々へ大規模侵攻作戦への労いの言葉をかけると、坂堂・一(一楽椿・h05100)は笑顔でそんなことを言い出した。
「ぼくはチーズいっぱいかけるのが好き、だよ。まろやかで美味しい、よね」
おっと|その話題《トッピング論争》は白熱するぞ?
そう思いきや、√能力者達が思い思いのカレーを語る前に少年は本題に入っていく。
「川崎市内のとある一角で、毎週決まった日にカレーを配給する、少女分隊がいるん、だ。もちろん、この世界じゃ具材たっぷりとはいかない、けど。野菜の皮や肉の切れ端、スジなんかを集めて、煮崩れてとろとろのルーになるまでじっくり煮込んだ、素朴で美味しいカレー、なんだって」
ここで味を想像した何人かが呻き声をあげたが、本題はそれではない。
「そのカレー屋さんの裏口に建ってる倉庫に、戦闘機械群の通信網の一部がこっそり敷設されてるみたい、なんだ。それを破壊してきてほしい、な」
ゾディアック・サインが示したその倉庫は、周辺の建物からwebカメラで監視されており、不用意に近付けばすぐさま敵がやってくるのだという。だがカレー屋の裏口から倉庫へ侵入する場合のみ、監視の死角を突くことが出来るようだ。
上空から倉庫ごと破壊する手段もあるが、その場合配給中の少女分隊や集まった人々への被害は避けられないだろう。
「配給目当てに来た人々を装ってもいいし、お手伝いや個人の運び屋として出入りするのも、いいと思う。とにかく監視の目に怪しまれないようにしつつ、裏口から倉庫へ出られれば、鍵もついてないから簡単に侵入できる、よ」
内部にさえ入ってしまえばこっちのもの。通信拠点となっている箇所を暴くのにそう苦労はしないだろう。
「あと、カレー食べたい人は配給貰ってもいいと、思う。みんながこれまで頑張った分、少し物資に余裕ができたみたい、だから。もし気が引けるなら、食材持ち込んだりして物々交換すれば、喜ばれるんじゃない、かな?」
そう付け加えると、少年は√能力者達を送り出したのだった。
マスターより

OP閲覧ありがとうございます、|瀬乃路《せのじ》と申します。
食事時は邪魔されず自由に、救われてなきゃダメですよね。
●🏠『おすすめのカレー屋さん』
カレー屋さんの裏にある倉庫に隠された、敵側の通信拠点を破壊する一話完結シナリオです。
マスターと同様に機械系が苦手な方もお気軽にご参加ください。
裏口から倉庫へと侵入さえ出来れば、破壊については自動成功となります。通信網が破壊されると敵側はこの倉庫を放棄しますので、敵の出現はありません。
ちなみにカレーを食べてからでも構いません。
『最終的に壊せばよかろうなのだ』の精神でおりますので、カレーに文字数の大部分割いてもOKです。
きっと誰かが壊してくれる。
●受付・採用について
受付期間は上部のタグとマスターページにてお知らせいたしますね。
今回は成功シナリオ数が必要とのことなので、👑の目途が経った時点で書きやすいものから順に書けるだけ、の予定です。
全採用は約束致しかねますことご了承くださいませ。
複数名での参加時は、【相手の名前とキャラID】か【グループ名】を明記の上、送信日を揃えるようお願いします。
不慣れゆえ、今回は2名までとさせてください。
場合によってはサポートの方を採用して完結させるかもしれません。
それでは皆様の(カレーに対する)熱いプレイングをお待ちしております。
13
第1章 日常 『おすすめのカレー屋さん』

POW
カレーを食すためにお腹を減らそう。何かを探すのなら脚で探せ。
SPD
カレーはスピード勝負。つまり、スパイシーな香りがする方向へ走れ。
WIZ
カレーとは神秘。直観を信じて!インド!
√ウォーゾーン 普通5 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

※温厚な優しい性格です。喋り方は上品なお嬢様言葉です。
お義母様から頼まれて、補給をかねてやって来ましたわ!わたしの育てた野菜が役に立つと嬉しいですわね。
メイド部隊と一緒に野菜の補給に来たのを装って来訪します。持ってきた野菜は家庭菜園で育てた自慢のものばかりですわ!夏野菜もありますから、いっぱい食べてほしいですわね。(お米もありますわよ。)
倉庫に野菜を運び込むのを伝えて、倉庫に行き、メイド部隊と分担して捜索、素早く通信網を破壊します。
終わったら、せっかくなので、カレーを頂きますわ。料理が趣味(20もありますが)なので、うまく煮込むコツなどを食べながら探ってみますわ。
ごちそうさま、美味しかったわ!

連携・アドリブ◎
倉庫に侵入できれば任務完了だね
さっさと終わらせようか
カレー?行きたい人は行けばいいんじゃないかな
僕はカレーはそこまd…この鼻をくすぐるスパイシーな香りは!
…任務の前に腹ごなしするのも良いか
配給目当ての人を装う
無料で貰うのは少々気がひけるのでその辺の店で買った野菜と交換する
ふむふむ見た目は普通のカレーだけれど…どれどれ
う、上手い!
これは配給のレベル超えてるだろ
ほどよく辛くそれでいて爽やか
スプーンが止まらない!
おかわりしたいけど配給だし
そこは我慢我慢…
いやー
美味しかったです
これお金取れますよ
お店を開かれてはどうですか?
と給仕人形達に感謝の言葉を伝える
もちろん倉庫には忘れずに侵入する

【一仕事、その前に】
みんなの作戦、引きつける役も必要だよね。
配給の倉庫とは逆側にスペースを取り、√能力を開放して周囲の人の動きをさりげなく探査。
さぁ、今日は少しずつ良くなっていく日、だから、歌はドーン・コーラス、希望を告げるさえずりの歌、どうかゆったりとした気持ちでBGMとして……!
(A・カペラ音楽魔法陣による楽器演奏で響かせて、賑やかなカレーの日の始まり!)
この時に、すでに設備を壊せればOK。
そうでなければ、去り際にBGMを残して、潜入しようかしら。
終わったら、カレーをちょっとだけお裾分けしてもらって。
心のこもった優しい素朴さに、どこかホッとして、良い未来の予感を感じながら。

食べたくなった時がカレー曜日でいいではありませんか!
俺も好きです、カレーが
辛いけどホッとする味の
それにしても、ううん、具材が……(うーんと悩み)
せめてもう少し食材を持ってきても?野菜の皮とかではあまりにもなんです
√EDENの玉ねぎ、よーく炒めると甘くて美味しいのです、俺が母から教わったやつ
料理は真心が大事ってよくいいますし、それはどこの√でも同じはずです
あと変なアレンジしないで、レシピを遵守するの大事!
周囲にそれとなく警戒しつつ【Cloud cuckoo land】で妖精に様子を探りにいってもらい、裏口から倉庫の奥への安全なルートを教えてもらい、合間を見て侵入
もちろんドカーンと破壊も忘れず!

※アドリブ・連携歓迎
√EDENからカレーの具材になりそうなものをできるだけ沢山持って行って、少女分隊の人たちに渡しましょう。それで、その後は私もカレー作りをさせてもらえないか聞いてみるわ。
私も多少なら料理できるし、それに、ここで懸命に生きている人たちの助けになりたいから。
どういうものを作るかだけど…。野菜にお肉、スパイスに隠し味。具材だけでも色々アレンジはできるけど、やっぱり慣れ親しんだものの方が食べやすいわよね。そうなると彼女たちに教わるのが一番かしら。少女分隊の人たちに教わりながら作ることにしましょう。
それと、通信網の破壊も忘れないようにしないとね。一応、そっちが元々の目的だし。
●
元気に配給する|少女分隊《レプリカンド》を見遣り、ルスラン・ドラグノフ(лезгинка・h05808)はどこか眩しそうに青石英の目を眇めた。完全夜型の生活スタイルの彼にとって、今は眠気が残る時間なのだ。
「倉庫に侵入できれば任務完了だね。さっさと終わらせようか」
あくびを噛み殺し、手に持ったスマホで作戦を再確認すると、ルスランはカレー屋の奥に見える倉庫を見つめた。足元に一匹の黒猫をじゃれつかせながら、さてどう侵入しようかと周囲を確認すれば、思い思いの場所でカレーを頬張る人々の姿が。
「あぁ、そういえばカレー食べるのも有りって言ってたっけ」
「俺も好きです、カレーが。辛いけどホッとする味の」
ルスランの呟きに相槌を打つように、|大海原《わたのはら》・|藍生《あおい》(リメンバーミー・h02520)が嬉しそうな声を上げた。
「食べたくなった時がカレー曜日でいいではありませんか! そう思いません?」
本当にカレーが好きなのだろう。屈託のない笑顔でそう語った彼は、こう見えてフードファイター並みに食べる健啖家だったりする。
「まぁ行きたい人は行けばいいんじゃないかな。僕はカレーはそこま……で……」
藍生の勢いに素っ気なく——実のところコミュ障なだけらしいが——視線を外そうとした時だった。
「……この鼻をくすぐるスパイシーな香りは!」
香り自体は強く主張するものではない。だが複雑な配合で食欲を刺激してくるスパイスの香りに、ルスランは思わず手のひらをくるっと返し。
「……任務の前に腹ごなしするのも良いか」
言い訳のような言葉に同意すると、二人のお腹が小さく鳴ったのだった。
配給目当ての人を装うのはいいが、無料で貰うのは少々気が引ける……そんな気遣いを見せて買った野菜と共に、改めて二人は配給所となったカレー屋へと向かった。
カウンターから見えるキッチンでは、大きい寸胴鍋で今まさにコトコト煮込まれているカレーが見える。
「それにしても、ううん、具材が……」
星詠みの少年から聞いていた通り、カレーの具材は真っ当な肉や野菜の他に、調理時に出た野菜の皮や肉の切れ端・筋なども一緒に煮込まれている。それが藍生にはあまりにも……と感じられたのだ。
他の√と違い、この世界は常に食料が不足している。
配給に来た人々に十分に行き渡る量を確保しようとすると、どうしても何らかの形で嵩を増す必要があると彼も分かっているのだが。
「せめてもう少し食材をと持ってきたのですよ。√EDENの玉ねぎ、よーく炒めると甘くて美味しいのです」
持参した玉ねぎを差し出しながら思い描いたカレーを語る。彼が母から教わったカレーは飴色玉ねぎがベースで、大きめのお肉がゴロゴロ入っているようだ。
「料理は真心が大事ってよく言いますし、それはどこの√でも同じはずです。あと変なアレンジしないで、レシピを遵守するの大事!」
「はい、その通りです! 少女分隊秘伝のレシピで、真心こめて作りますね」
自分でもカレーを作るという藍生が大人びた口調でそう語るのを、どこか微笑ましそうに|少女人形《レプリノイド》が同意した。見た目はまだまだ少年なのだ、それも仕方ないのかもしれない。
「うーん……僕ももう少し買ってこようかな?」
「それじゃ、私のも一緒に渡せば足しになるかしら」
カレー1杯分と引き換えなら十分であるものの、実際に現地で配給を見るとそんな考えが浮かんだらしい。悩むルスランの後ろから、若い女性の声がかかった。
「√EDENからカレーの具材になりそうなものを、できるだけ沢山持ってきたの」
手提げ袋を両手に、肩に、リュックにもパンパンに詰め。相当重かっただろうにそれを表情に出さず、|小明見《こあすみ》・|結《ゆい》(もう一度その手を掴むまで・h00177)は片方の手提げ袋を持ち上げてみせた。
「僕も持ちますよ。それと、協力の申し出ありがとうございます」
見るからに重そうな荷物を代わりに受け取り、ルスランが少女人形に声をかけ。大きなリュックを降ろして、漸くそこで結も一息つけたようだった。
だがそれも束の間、すぐさま結は少女人形たちへと向き直ると。
「皆さんお疲れ様です。私もカレー作りのお手伝い、させてもらえないかな? 多少なら料理できるから……」
「え、こんなにお野菜いただいただけでもありがたいのに、いいんですか!?」
「いいの。この街の人達の助けになりたいから」
そう頷く結は戦うこと自体に抵抗があるような、ごくごく普通の女子高生だ。普通に学校に通い、進路調査票を前に悩む……他の生徒と変わらない、一般的な女子高生だった。
そんな彼女が先の逆侵攻にて大黒ジャンクションを破壊し、今またここにいる。
それは|偏《ひとえ》に『ここで懸命に生きている人たちの助けになりたい』——その一心だけで彼女は動いているのだ。
結の強い意志のこもった言葉に、少女人形たちは深々と頭を下げ。
「本当にありがとうございます……あ、食材はこちらで」
運びますね、と続けようとした時だった。
一台のキッチンカーがカレー屋の前で止まった。
何だろう? と首を傾げる3人と同様に、店内の少女人形たちもそちらへ視線を向けると——運転席から出てきたのは一人のメイドで。
「え……メイド? なんでこんなところに」
外からも動揺の声が聞こえてくるが、メイドは顔色一つ変えず助手席へ向かうと恭しくそのドアを開ける。
初めに見えたのは赤い靴と、黒い薔薇が刺繍された黒いゴスロリドレス。
まるで高級車から降りてきたかのような幻覚を周囲に与えつつ、ルビナ・ローゼス(黒薔薇の吸血姫・h06457)が微笑みを浮かべやってきた。
「ごきげんよう、少女分隊の皆様。お義母様から頼まれて、補給をかねてやって来ましたわ! うちの家庭菜園で育てた自慢の野菜、是非ご賞味くださいませ」
その言葉と共に彼女の【|ローゼス家精鋭メイド部隊《メイドソルジャーズ》】がキッチンカーの出入り口を開けると、中には様々な野菜……夏野菜やお米など、カレーにぴったりのものが積み込まれていて。
(「わたしの育てた野菜が役に立つと嬉しいですわ。配給を待つ方々には是非いっぱい食べてほしいですわね」)
ところで、黒薔薇のゴスロリ服を着こなすお嬢様然とした少女が農作業。
ガーデニングの一環なのかもしれないが、『力を奪われ祖国を失った令嬢が片田舎でスローライフ始めました』という壮大な物語が地の文の頭を過ったとしても仕方ないと主張させてください。
閑話休題。
「あ……ありがとうございます!! それでは食材はこちらで受け取りますね」
「それには及びませんわ、食材はうちのメイド達に運ばせますので。どうか皆様は配給に集中してくださいませ」
「重ね重ね感謝いたします、ではこちらから裏の倉庫にご案内しますね」
色々インパクトが強かったのか、僅かな時間フリーズしていた少女人形も我に返ったようで。裏口へと案内する彼女に続いて、ルビナ率いるメイド達も野菜の入った段ボールを抱えて歩いていき。
「……僕たちも行きましょうか」
「そうね。倉庫に行くチャンスだもの」
ルスランと結も持参した食材を手にメイドの列の最後尾に加わった。藍生もまたそれに続こうとして、——ふと聞こえてきた歌声に立ち止まる。
「この歌……なんて綺麗で、明るくて……」
その声に誘われるよう店を出ると、いつの間にか先程より多くの人々が集まっていた。
●
少し時間は遡り、ルビナとメイド達が店内へと向かった頃。
その後姿を眺めながら、捧・あいか(いのち短し弾けよポップスタア・h03017)は「よし」、と力強く頷いた
「みんなの作戦、引きつける役も必要だよね。私は私のやり方で……!」
そう言ってあいかが向かった先は、倉庫があるお店とは逆方向で。
道路を挟んだ向かいにある閉店した店舗の外階段を上り、踊り場に立って大きく息を吸い込んだ。
「皆さん、こんにちはー!!」
明るい呼びかけに、配給を待つ間下を向いていた人々が何事かと顔を上げる。その視線に応え、あいかは百点満点の笑顔を浮かべた。
「私はあいか! 今日は皆さんに|歌《希望》を届けに来ました!」
——明るい歌を、希望を、恋を、願いを声の限り歌いたい。そして自分の歌声で誰かを勇気づけ、夢を与えたい。だって夢や希望は明日を生きる力になるから——だからこそ届けたい。
希望を失わないように。
夢を忘れてしまわないように。
「この街の中心部のオーラム派機械群は壊滅したの。残った敵も今、人類側の勢力が倒してくれてるわ。今日は少しずつ良くなっていく日、だから、歌は【|朝明け駆る、真白き翼《ドーン・コーラス》】!!」
様々な花文様に千鳥飛ぶブギウギフォンからオーケストラの演奏が流れる。それは内蔵されたA・カペラ音楽魔法陣を通し、辺り一帯に音を広げ響かせていき——。
「♪あまねく光の中を、何処までも飛んで行くよ」
——鳥が、羽搏いた。
あいかの天真爛漫な歌声に合わせ、美しい眞白の翼を持つ小鳥たちが空を舞う。彼女や聴衆の願いを乗せて。
そのまばゆいほどの白は機械群の監視カメラの視線を釘付けにして離さない。
(「希望を告げるさえずりの歌、どうかゆったりとした気持ちでBGMとして……!」)
始めはどこかぼんやりとしていた者たちも、その明るい旋律とあいかの歌声に静かに耳を傾けて。
「すごい……」
歌声に惹かれ外へ出てきた藍生が、興奮で頬を染めながらそう呟いた。
元歌手の母親からレッスンを受けているからこそ分かる。あいかの歌に対する思いや、歌にこめたあたたかな心が。
それは他人の痛みを理解し思いやり、優しくなれる強さだった。
辺りを見回せば、人々はみな穏やかな表情を浮かべていて。
(「俺にも出来るかな……」)
その思いをささやきに変え、藍生は【|Cloud cuckoo land《オトギノクニ》】を語る。
「夢の国」や「おとぎの国」に伝わる歌を、希望に満ちた物語を。
(「そんな国どこにもないけれど……きっと今必要なのは、そんな夢を語れる力だ」)
「♪ルルル……」
藍生の語りに気付いたあいかが、急遽スキャットでその物語を演出する。そんな器用な立ち回りは、きっと地方巡業で培われたものなのだろう。
チラリとあいかを見ると、彼女はマイク片手に歌いながら指でハートを作ってくれた。
伸びやかなスキャットをBGMに語られるそのおとぎ話は、人々に紛れて聞いていたインビジブルを|小妖精《ピクシー》に変え。姿を得た小妖精が嬉しそうに上空へ飛び上がり、眞白の小鳥たちと共に踊るように頭上を旋回するのを、皆が微笑み眺めている。
(「そういえば倉庫のほうはどうなってるのかな」)
藍生がそう思い指示すると、小妖精は任せろと言わんばかりに手を振り飛んでいって。
やがて戻ってきた小妖精が作戦の成功を告げるようにくるくると円を描く頃。
賑やかなカレーの日のはじまりを告げ、二人はそっと人々の意識の外へと捌けていくのだった。
●
そんな倉庫のほうはといえば。
「この倉庫なんですけど、実は所有者が分からなくて中は使ってなかったんです」
そう言って少女人形に通された先にあったのは件の廃倉庫で。
彼女の言葉通り、皿やスプーンなどの配給用の備品入り段ボールが倉庫入口脇に積まれている。それを避けながら野菜を倉庫に運び入れようとする中、突如ルスランが慌て始めた。
「あれ……すみません、うちの猫見かけませんでした?」
「へ? 猫ちゃんですか?」
「さっきまで居たんですけど、まさか……大変申し訳ないんですが倉庫内を探しても?」
「どうぞどうぞ! 早く見つけてあげてください!!」
ぺこぺこと頭を下げるルスランだが、迷子の猫など本当は存在しない。常に召喚している黒猫をただ戻しただけだった。
「ではうちのメイド達にも探させましょう。この暑さでは心配ですわ」
もっともらしい理由で倉庫内作業の時間を確保した二人に、残る結は申し訳なさそうに断りを入れる。
「ごめんなさい、私はカレー作りを手伝うから猫さん探しは……」
「猫の毛をキッチンに持ち込むわけにはいきませんものね。こちらは気になさらず」
(「一応破壊音が聞こえないよう、私の精霊にお願いしておくわね」)
(「助かりますわ」)
小声でそうやり取りすると、結は少女人形が一足先に店内へ戻ったのを確認して。
「小さな風でも、数の力できっとできるはず……お願い、中の音を掻き消してあげて」
【|稲穂ゆらし《イナホユラシ》】の風の精霊を呼んでお願いすると、急いでその後を追いかけた。
そうしてルスランとルビナ達が倉庫へと侵入後、複数の小さな竜巻が倉庫を包み……結の願い通り、風の障壁となって内部の音が漏れないよう遮断する。
これで準備は万端だ。
「さて——今度こそ、さっさと終わらせようか」
ざわり、と暗闇から複数の気配。一斉に呼び出された【|昔気質の地主たち《ムカシキシツノジヌシタチ》】こと使い魔の黒猫たちが、暗い倉庫内をキャットタワーで遊ぶかのように駆け回った。同じくメイド部隊もまた分担して通信拠点を捜索し。
「……見つけた、これですね?」
「そのようですわね……では、補給ついでに倉庫内も|清掃《・・》いたしましょうか」
薔薇の意匠が施されたハチェットを握り締めるルビナと、ナイフ片手にその損傷個所をさらに抉る気満々のルスラン。
その二人がニヤリと笑い、暗闇の中で赤と青石英の瞳を輝かせて——倉庫内に敷設されていた全ての通信網は、あっという間に破壊されたのだった。
●
その頃店内では、皆に野菜を振舞おうと少女人形たちが忙しなく動き回っていた。
(「野菜にお肉、スパイスに隠し味。具材だけでも色々アレンジはできるけど、やっぱり慣れ親しんだものの方が食べやすいわよね」)
どういうものを作ろうか考えたときに、真っ先に食べる人のことを考える。それが結の持つやさしさの形なのだろう。
少女人形たちに教わりながら、野菜の下ごしらえや素揚げを丁寧に進めていく。
「そういえばどうして野菜の皮を?」
「嵩増しというのもあるんですが……皮は栄養も旨みも豊富なことが多くて。全部美味しく食べてもらおうと、『ベジブロス』というコンソメを参考にしてるんです」
配給を待つ人たちに、少ない材料でも栄養もあって美味しいものを。
その考え方が好ましく思え、気づけば結は微笑んでいた。
「じゃあ、今日はたくさん美味しく食べてもらおうね」
そんなあたたかな結の言葉と笑顔に、少女人形たちもまた笑って頷いて。
「うちの猫居ました、すみませんお騒がせしちゃって」
流石にキッチン内に猫は連れ込めないので、とパーカー内でもごもご動く黒猫を抱えてルスランが裏から店の前へ歩いていく。監視カメラも最早意味はなく、どこを通っても問題はない。ついでに外の能力者たちに作戦終了を伝えるのだろう。
「全て運び終えましたわ。あら、いい匂い」
「ありがとうございました! お礼にもなりませんけど、是非カレーを召し上がっていってください!!」
「お野菜たっぷりで美味しくできたと思うよ」
そんな会話をしていると、ルスランと共に藍生とあいかもカウンターへやってきて。
「貴方がたも是非! お二人のおかげで皆さん安らいで食事を楽しめたと思うので」
「うわあ、野菜ゴロゴロカレーなのです!!」
「ありがとう、ずっとこの香り気になってたの」
それぞれにカレーが行き渡れば、お待ちかねの実食タイムです!!
外の長椅子に座って、5人は『いただきます』と声を揃えて。
元の具なしカレーとは違って、今は角切りの野菜も煮込まれている。更に素揚げされた夏野菜も乗っており、皆が持ってきた野菜が大事に調理されているのが一目で分かった。
「お肉もいいけど、これもすっごく美味しいのです!!」
真っ先に口に入れたのはカレーが大好物の藍生だ。彼のアドバイス通り、じっくり炒められた玉ねぎの甘さが感じられた。
結も自分の揚げた野菜が気になって、ルーと共にひと掬い。
「……うん、いい感じに揚がってる。良かった、美味しい」
素揚げ野菜の香ばしさとカレーの辛みがマッチして、いくらでも食べられそうな気がしてくる。
ルビナは上手く煮込む秘訣を探ろうと、じっくりルーだけをまずは味わう。
(「スパイスは少女分隊秘伝の配合とのことですが……」)
溶けやすいよう丁寧に小さく刻まれた野菜。暑さに負けず付きっきりで灰汁取りし、弱火でコトコト煮込んだであろうスープ。特別なことはほとんどしていない、ただその丁寧な仕事こそが難しいのだと料理が|趣味《20》のルビナは知っている。
「これは素晴らしいですわ……」
「……どれどれ」
カレーはそこまで、と言っていたルスランもお手並み拝借とばかりに一口。
その瞬間、彼の背景に稲光が走った。
(「う、うまい! ほどよく辛くそれでいて爽やか……」)
「これは配給のレベル超えてるだろ……」
思わず漏れ出た心の声に、少女分隊が嬉しそうに笑ったのも気付かぬほど美味しくて。スプーンが、咀嚼する口が止まらない!
「おかわりしたいけど我慢だな……」
ポツリと寂しそうに空の皿を見つめる姿に、藍生が深く深く頷いた。
「ふふ、本当に美味しいね。しあわせの味がするね」
あいかも夏色ソーダの瞳を緩めながら、口一杯に広がる心のこもった優しい素朴さに、どこかホッとして。
「ごちそうさま、美味しかったわ!」
「いやー美味しかったです。これお金取れますよ、お店を開かれてはどうですか?」
「お褒めいただきありがとうございます! そうですね、いつか……いつか平和になったら、その時は皆さんをご招待して……!」
隣で交わされる会話に、良い未来の予感を感じながら——。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功