シナリオ

⑫ネジっていいよね、アイだよね

#√ウォーゾーン #ゾディアック継承戦争 #ゾディアック継承戦争⑫

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⚔️王劍戦争:ゾディアック継承戦争

これは1章構成の戦争シナリオです。シナリオ毎の「プレイングボーナス」を満たすと、判定が有利になります!
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(毎日16時更新)


「ネジはあらゆる機械の、あらゆる部位に用いられる。きちんと止めて、しっかり固定。重要なパーツだ」

 しゅぴっと紫に発光するレールに乗って、ネジ達は飛び出していく。

「故に、ネジこそが完全機械。それはレリギオス・グロンバインもよく知っているのだ……!」

 ぎゅいんぎゅいんとネジ山の機動を活かし、回転しながら思うまま空港内を転がって。

「さあ、君もネジの素晴らしさを語り合おうじゃないか! ネジはいいぞう!」

 六角形の頭部の平面部でぴたっと、EDENの目前に停止する。

「ネジはよく回る。滑らかに美しく」
「普遍的な留具である。どこにでもネジは存在する」
「パーツとパーツを繋ぐ、重要な存在だ」
「君と君も、きっとネジの良さを語り合えばハートもきゅっと結びつく……まさにBig Love……」
「ネジは、愛であり、"I"なのだ。万物を結びつける、アイドルである」

 なのでネジ派にならないか、という勧誘を始める『六角頭・雄ネジ』が、福岡空港内を飛び回っていた。
 空港の改造に便乗して、自派閥拠点も作っちゃおうかなー、という勢いである。


「まあ、それは迷惑なんでやめてもらおうかねぇ」

 火の入っていないキセルをふかしながら、猫宮・伊月は詠んだ星のあらましをEDEN達へと語る。
 第二戦線へと移行したゾディアック継承戦争において、福岡空港は謎の残る派閥「レリギオス・グロンバイン」の戦闘機械群に占領され、「天蓋大聖堂」へと改造されようとしている。このまま放っておけば、√EDENへの大規模進行拠点へと変えられてしまうのだ。それを許すことはできない。

「今回俺の案内できる場所は、ネジの飛び交うスペースだ」

 『ネジこそが|完全機械《インテグラル・アニムス》である』という主張を持つ戦闘機械群の一派、『六角頭・雄ネジ』が占拠するスペースだ。
 彼らはいかにネジがすばらしいかを語り、その場を占拠している。今はネジにならなくてもいい、でもネジ派にはならないか、とEDEN達も勧誘してくる勢いだ。

「逆に扱いやすいかね。『うんうんネジっていいねぇ』『ぴかぴかでくるくる滑らかで』『便利で種類もサイズも豊富』なんて簡単な褒め言葉で油断してくれるさ。うまく褒めて、その上で『完全なのだから、それ以上動き回る必要はない。 むしろ完璧なネジとして在ることこそ究極だ』なんて話の方向に持っていってもいいねぇ」

 六角頭・雄ネジが「そっかー!」と納得すれば機能停止し、最高品質のネジになるという。

「逆に『でもネジってただのパーツでしょ』『されどネジ、たかがネジ』『何でネジ山すぐ潰れるん?』なんて挑発したり、問答無用で戦ってもいいよ。集団行動の得意な数は力な敵だが、個々は案外手出しやすいだろう」

 相手は強力なネジの群れだが、決して勝てない相手ではない。

「√EDENに橋頭堡を作られるなんて、見逃せるわけはないしね。それにこの作戦を阻止できれば『レリギオス・グロンバイン』の統率者、合体ロボット『グロンバイン』へと戦いが挑めそうだ」

 それは、この戦争においても大きな意義を持つだろう。
 どうか手を貸してほしい、と、伊月はEDEN達へと頭を下げるのだった。


 福岡空港の改造準備を進めながら、六角頭・雄ネジ達は賑やかにいかにネジが尊い存在かを語り合っている。
 そこに自然に話を持ちかけるもよし、問答無用で飛び込んでいくもよし。手段は各々の得意なものでいいだろう。
 やらなくてはいけないのは、このネジ達を無力化し、福岡空港改造計画を阻むことだから。

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第1章 集団戦 『六角頭・雄ネジ』


神薙・ウツロ


「ネジ is the most beautiful!」
「ネジはファンタスティック、ネジはパーフェクツ」
「さあ、君もネジの虜にならないか!」

 ここ最近の暑さでネジが外れているのか、元々なのか、妙なハイテンションで飛んできたネジに、福岡空港の改造を阻止しにやってきた神薙・ウツロ(護法異聞・h01438)はニマっと笑い、手を緩く振ってみせる。

「へぇ、どれどれ……あっスッゴ! キレーなネジ! なになに? キミら全部特注品?」
「いいや、我らはオトクな工業規格品」
「コンマ単位でブレやズレを制御された、ローコストハイクオリティのネジなのだ」
「えっ大量生産? 信じらんなーい! 受注生産じゃなくって? マジで?」
「マジマジ」
「すっげ、完璧やってんね! このネジ山とかめっちゃ細かい! こっちの狂いの無さも、パーフェクツじゃん!」
「ふふん、そーだろうそーだろう」

 ネジ達をあらゆる角度で眺め、その度褒めちぎり、感心する表情や拍手といったボディランゲージでも賛えるウツロに、ネジ達は誇らしげに飛び回る。

「いいよね、ネジ。文明のターニングポイントとして『火と車輪とネジ』って挙げられるもんね」
「ほほう、君はわかっているな」
「皆がネジのあまりの完璧さに嫉妬し、歴史から消した言葉を知っているとは、すばらしい」

 とっても嬉しげなネジ達に、ウツロはそうだ、と手を打った。

「そんな素敵なネジな君達に折り入って頼みがあるんだけど。君達の規格の美しさ、私にもその恩恵に預からせてくれない?」
「ほほう、何かな?」
「我らが力になれるなら!」

 さあ言ってみたまえ、と乗り気なネジ達に、ウツロは一丁の拳銃を取り出してみせた。
 象牙製のグリップに『黄龍』と『天帝』の刻印が施された、シックな拵えの五四式自動拳銃。黒星・天帝仕様である。

「これさ、近々オーバーホールしようかと思ってたんだけど、是非この中に入ってもらえないかなーって」
「ふむ、なるほど。美しい一品だな」
「君達の美しさ、私も世間にアピるから。ここのネジとか、中の機構のネジとかさ。見てもよし、要を任せてよしのネジだからね!」
「良かろう、任されよ!」
「ネジ・アルファはここに、ネジ・ブラボーは奥の機構へ!」
「ネジ・チャーリーは内部だ。ネジ・デルタと機構のジョイントに行け!」

 ウツロは自然に交えた手振りに|拍手《柏手》で静かに場を支配し、相手への褒め言葉という言霊でネジ達の警戒心を緩めていた。そして、「機械生命体としてのネジ」と「高品質な部品としてのネジ」という見立ての元、逸品の銃のネジになるという呪法を完成させたのだ。
 その術中に嵌ったネジ達は、各々ポジションを決めつつ、素直に物言わぬネジへと変わっていく。それも、どこか誇らしげに。

「ちゃんと大事にするからね」

 ウツロは軽い調子で、しかし真摯な心を込めて、ネジ達をすくい上げていく。
 この辺り一帯のネジ達は、皆納得してすばらしいネジへと変わっていたのだった。きっと素敵な武器の、大事な部品になれると思って。

黒木・摩那


「ネジですか。ネジと言ったら締結部品の基本ですよね。機械要素の要」
「うむうむ、重要なポジションである」
「我らこそ機械要素の本質、重要なエッセンスとも言えるのだ!」
「ええ、ネジが素晴らしいのはごもっとも。確かに」

 黒木・摩那(異世界猟兵『ミステル・ノワール』・h02365)の言葉に、ネジ達は誇らしげに頭部を光らせた。
 その様子に、摩那も同意の頷きを見せてから、ぴん、と人差し指を立てる。
「しかし、ネジは種類も長さもいろいろあるんです。ミリとインチの違いもあるでしょ?」
「うむ、我々はバリエーション豊かなのも特徴だからな」
「それでも欲しいサイズより長い太いというならば、切る削るなど形を変えて対応可能だ!」
「短くても細くても、他の助けを借りればいけるいける」

 摩那の言葉に、ネジ達は規格ごとに集まり始めた。同じ姿形のネジもいれば、長さや太さの違うネジもいる。

「そう、規格があっても多種多様ですよね。そんなネジが整理もされずに飛び交っているというのは、ネジとしてはいかがなものでしょう?」
「むむ? いやネジもたまにはフリーダムに」
「留具なんですよね?」
「あ、ハイ」

 少しずつ圧を増していく摩那の言葉に、ネジ達は自然と、互いに寄り添うようにひとかたまりになっていく。

「これでは締めたい部品に合うボルトが探し出せないじゃないですか」
「その、申し訳ない」
「それにこんなに雑に、自由にネジが飛び交っているということは、止めていた器具から外れていてもわかりませんね?」
「そう言われると、そうかもしれない」

 パチン、と手を打ち合わせた摩那に気圧され、ネジ達の勢いはどんどんしぼんでいくばかり。身を寄せ合ったまま、じりじりネジ同士の間を詰めてくっつかんばかりだ。
 メガネを光らせ、摩那はネジ達へ告げた。

「整理整頓が必要です」
「ハイ」
「すぐに全員整列して、サイズと長さと規格が合うまでおとなしくしていなさい!」
「イエス、マム!」

 ネジ達は摩那の一喝に、ざっと整列した。短い方から長い方、細い方から太い方へと順に並んで、摩那の検分を待っている。

「はい、お疲れ様でした」
「ぐわー!」
「げふっ!」

 大人しくなったネジ達の前で、摩那は異空コイン『シグマプリズム』をトスする。瞬間、格納されていた超可変ヨーヨー『エクリプス』が、摩那の手に現れた。
 摩那はエクリプスをぎゅいんと大きく回し、集まったネジ達を電撃を纏ったワイヤーで打ち据え、もしくはエクリプスに仕込んだ刃で一刀両断する。打ち据えられたネジ達は、物言わぬ残骸へと変わっていった。

「せめて一撃!」
「仲間の仇!」
「おとなしくしていてくださいね」

 僅かに残ったネジが、√能力を纏った頭突きで摩那へ襲い掛かる。六角形の頭部での一撃を受けたなら、たとえEDENでも無傷というのは難しい。
 しかし、摩那は優雅にも見える所作で右手を伸ばし、ネジを撫でる。すると頭突きの勢いは途端に弱まり、ただ小さなネジがことんと当たった程度になった。

「この世界に生きる人のため、悪夢を終わりにしましょう」

 まさに目覚めの風の如く、素早く振るわれる摩那のヨーヨーが、ネジ達を切り裂いていくのだった。

矢神・霊菜


「ネジって、一般人には甘く見られがちよね。こんなに重要な部品なのに」
「わかってくれるか!」
「そうなのだ。我らこそ肝心要の部品なのだ」
「ええ。どんなものでもしっかり止めるにはネジって必須よね。あなた達無しでは難しいことが多いもの」

 ネジ達の言葉に同意しながら、矢神・霊菜(氷華・h00124)は柔らかに瞳を細め、微笑んだ。どんな理屈でか、うきうきと浮かれたように動くネジ達を、好奇心を胸に秘めながら眺めつつ、彼らがどんなに素敵な存在かを語っていく。

「私も術式魔銃で細かいネジのパーツとかあるから、重要性はわかるわ」

 繊細な魔術も、高威力な一撃もどちらも放つこともある術式魔銃は、その造りも凝ったものだ。術式魔銃-雷霆-の持ち主である霊菜も、そのことはよく知っている。

「ネジひとつが、少し位置が違った。ちょっぴり摩耗して、緩んでいた。それだけで動作不良を起こすことがあるくらいだもの」
「そう! ネジは繊細さも大胆さも、支える大事な留具なんだ!」
「そうね。締め付けが違うだけで、使い心地も変わっちゃう。たった一つなくなっても故障するし、機械全体が使えなくなったりする。大事な存在よ」
「うむ! そこまでわかってくれるとは、キミも素敵なネジメイトだ!」

 すっかり上機嫌なネジ達に、霊菜はふふっと微笑んでから告げる。


「でも、そんな大切な存在が、こうやって飛び回っていたら大変ね」
「むむ?」
「だってあなた達を必要とする人が、見つけられなくて困っているかもしれないわ」
「ふむー……」

 大事なネジ、誰かを支える重要な存在。そんな彼らを必要とする誰かが、今もどこかにいるかもしれない。探している誰かが、ネジを見つけられなくて困っているかもしれない。
 霊菜はネジ達に心を込めて言葉を紡ぐ。その笑みの奥には、氷のような静かな覚悟が宿っていた。
 その真剣さが伝わったのか、ネジ達は少しおとなしくなって霊菜の言葉を受け止める。

「あなた達はすばらしい存在、大切なネジよね。いないと困ってしまう、そんな人達がいるのよ」
「なるほど……彼らに応えるのも、愛か……」
「できれば素敵なネジとして、皆のもとに行ってほしいわ」
「わかった。我らもネジならば、その大役を果たさなければな!」
「そう、これこそBig Love……!」

 霊菜の語りかけに、ネジ達は一個、また一個と自ら動きを止めていく。動くのをやめ、飛ぶのをやめて、ことん、ことんと空港の床へと転がっていった。
 そんな彼らのひとつを拾い上げ、霊菜はしげしげと眺める。
 今はただのネジだ。けれど、彼らはきちんと一つの機械生命体として、言葉を発し、自発意思で動いていたのだ。

「きっと、いい人が使ってくれるわ」

 回収すれば、ほしいという人もいるだろう。必要な人とネジとの出会いを繋ぐべく、霊菜は可能な限り拾っていくのだった。

セージ・ジェードゥ


 セージ・ジェードゥ(影草・h07993)は装備を確認しながら、ネジの言葉の一部に内心で同意した。

(うん、まあ、そうだな。機械には必要だな)

 いつも通りか、それ以上に念入りにステルスクロークをしっかり身に着け、セージ専用にカスタマイズしたゴーグルを付ける。できるだけネジ達の攻撃を阻止できるように。
 彼らの言うとおり、ネジは確かに大事な部品だ。
 だからといって√EDENに天蓋大聖堂を構築していいわけではないし、ネジ派閥の拠点を作られても困る。

(最高品質のネジは魅力的だが、俺は倒す方向でいこう)

 小型改造拳銃を手にし、手首につけたパルスクローの重みを確かめてから、セージは物陰からネジ談義を続けるネジ達の様子を静かに窺う。
 そして、彼らが一層盛り上がって密集した瞬間。
 セージはネジ達のたまり場へと躍り出た。牽制に拳銃の引き金を引けば、一つ、二つ、と空港内に銃声が響き、火花を散らしながら弾丸がネジの群れを裂く。

「銃弾! 敵襲だ!」
「散!」

 銃弾をネジ達は避けようと動き出す。四方八方に散っていく彼らの進路をゴーグルが測定したデータから推測し、セージはパルスクローを射出した。鋭いクローに繋がるワイヤーでネジ達を絡ませていくためだ。狙いは付けづらいが、ネジ達は数多くいる。捕縛できる数も多いはずだ。
 幾度となく繰り返した訓練の成果は、狙いにくいネジに銃弾を届け、セージの思い通りにワイヤーを動かした。
 射出されたワイヤーが空中を素早く奔る。飛び回るネジへと絡みつき、解けないよう締め上げていった。
 銃弾を避けられず撃たれ、火花を散らすネジや、ワイヤーに絡まれて、回転しながら引き落とされるネジ達。見る間に数を減らしていく仲間に、数体のネジ達がセージへと飛び込んでいく。

「好きにやらせはしない!」

 勢いをつけた、六角形の頭部による一撃。それに打ち据えられれば、EDENといえども無傷とは行かない。
 しかしセージは冷静にクロークの裾を払い、パルスクローのワイヤーを操作する。
 クロークのばさりと絡められ、勢いを落として床に落ちていくネジ、払われて壁へと飛ばされるネジ。
 そして、振りぬいたワイヤーに絡んだネジが振りぬかれた鉄球のように空気を唸らせ、飛び込んできた仲間と撃ち合わされる。そのまま、二体揃って軸から折れていった。
 その向こうから迫るネジをクローの強撃で打ち据え、二つに折れたことをゴーグル内のデータで確認しながら、次の標的を定め、セージは次の一手へと移っていく。
 まずは右へ動いたネジ達に牽制射撃を、それを避けたネジの集団に向けてワイヤーを射出していく。
 福岡空港の改造を防ぐため、一体でも多くのネジを倒すために、その歩みは止まらない。

不破・鏡子


 不破・鏡子(人間(√マスクド・ヒーロー)のマスクド・ヒーロー・h00886)は難しい顔で、福岡空港にてネジ達がネジ賛美をするのを観察していた。

(まさか、ネジを褒めたり挑発したりする事になるとは……難しいけど、一応やってみましょう)

 鏡子はしっかり顔を隠すバイザーを着用し、盛り上がるネジ達の輪へと進んでいく。

「ネジは素晴らしい。ネジこそ要、完全な存在だ」
「そうだとも、今は派閥を違えていても、いずれ我らを中心としたネジ派閥こそ、完全であると理解されることに疑いはない」
「確かにネジは素晴らしいわ」
「わかってくれるか、君!」

 同意する鏡子の言葉に、ネジ達はわっと沸き立った。

「ええ、一度固定しても再び外す事が出来る所はとても便利だし、あなた達無しで文明は維持出来ないでしょう」
「そう、その通りだ!」
「わかってくれるとは、君は見る目があるな!」

 自分達の重要性を、大切さを認める鏡子に、ネジ達は嬉しげに飛び回る。
 鏡子は、そんな彼らにびしっと指を突きつけた。

「でもそれはネジ穴あってこそ。穴無しでは力を発揮出来ないんじゃないかしら?」
「むっ!?」
「その辺の所を是非お伺いしたいわ。完璧な機械と言うのならあるのでしょう、私の知らない何かが!」

 そう、ネジを止めるならば穴が必要だ。大きすぎず小さすぎない、ネジに合った穴がなければ、パーツをつなぎ合わせることは難しい。ネジ達の間にざわめきが広がった。

(我ながら何を言っているのか分からないけど、敵はどう動くかしら?)

 鏡子はバイザーの後ろで少し目を泳がせたあと、ネジ達の動向を注視する。
 少し考え込んだネジ達は、どこからか二つの鉄板を引っ張り出してきた。

「なるほど、君の主張も最もだ――ならば見せよう、このパワーを!」

 ネジ達は六角形の頭部を鉄板に向け、凄まじい勢いでぶつかり出す。√能力で強化された攻撃が鉄板に当たると、轟音を響かせて穴を開けてみせた。その穴に、ネジ達はぐいぐいと己を押し込んで、二枚の鉄板を留めていく。

「この通り、完璧なネジは自分で穴を開けて収まることができるのだ!」
「なるほどね。――アーマーパージ! 全エネルギー、スピード系へ!」

 鏡子の装備した対怪人戦闘用装甲胴衣が青く輝き、速度重視の形態へと変化した。跳ね上がった敏捷性で、鏡子は対物散弾砲の照準をネジ達に合わせて、引き金を目にも止まらぬ速さで弾く。

(これだけいれば狙わなくても当たるわ、きっと!)

 広範囲爆撃も可能な、対戦闘機械用の弾丸が幾つも幾つも打ち出される。

「どわー!」
「ぐわーっ!」

 鉄板へ己を固定していたネジ達は、回避する暇もなく撃たれるがままだ。広範囲の爆発に、皆まとめて吹き飛ばされていった。

空地・海人


 福岡空港内で、動いて話すネジ達が、ネジの素晴らしさを語って楽しげにしている。

「……訳の分からない状況だ」

 少し離れた物陰からカメラのファインダー越しに観察していた空地・海人(フィルム・アクセプターポライズ・h00953)は、ポツリと呟いた。
 ただ、放っておけば福岡空港は改造されてしまう。それは止めなくてはならない。

「とりあえず褒めちぎる方向性でいくか……。戦わずに済むならその方がいいしな」

 海人はフォトシューティングバックルのベルトを腰に巻き、ルートフィルムをセットする。

「現像!」

 その掛け声と共に、灰白の装甲が全身を包み、赤いアイが頭部に光るフィルム・アクセプターポライズ √ウォーゾーンフォームへ変身していた。
 海人はそのままネジ達の輪の方へと歩を進めていった。

「この機能美溢れる姿、パーツを繋ぐべく生まれた存在。我らこそ究極である」
「うむ。ネジってやっぱりいい、これこそ金言の中の金言なのでは?」
「ネジ、確かにいいよな。すごい存在だ」

 ネジの良さに同意する海人の言葉に、ネジ達は沸き立った。

「わかってくれるとは、君、見る目があるな!」
「ああ。俺もネジ派に入れてくれよ。俺自身もいずれ、ネジになるつもりだからさ。こんなふうに」
「おお、これは良いネジだ! 素晴らしいネジ山の回転数!」

 海人は腕から手にかけての装甲を、細かなネジ山と六角形の頭部を備えたネジの形に変えてみせた。
 その光景にネジ達は大盛り上がりだ。

「ネジは機械にとっての心臓部。ネジを差し置いて何が戦闘機械だって思うぜ」
「そう、我々がいなければ機械はバラバラになってしまう」
「重要な存在なのだ。いずれ皆もそれを理解し、我らネジ派こそ完全な機械なのである、と受け入れてくれるだろう」
「そうだな、大事で素晴らしい存在だ」

 ただ、と海人はネジに変えた腕を広げてみせた。

「一点だけずっと気になってたんだけど」
「むむ、何かな?」
「完璧なネジなら、お前たちみたいに動いたり喋ったりしてちゃダメなんじゃないか?」
「えっ」

 その指摘に、ネジ達はショックを受け、動きを一瞬止める。そんなネジ達に海人は言葉を重ねていく。

「ネジの本質は、留具だ。部品を繋ぎ、留めておく大切な存在だよな」
「うむ、そうだな」
「そんなネジこそが素晴らしく、機械の要である」
「うむ!」
「なら、完璧なネジはその本質を果たすものじゃないか。ネジの存在理由、静かにしっかり、動かずパーツを留めておく――それを満たす存在だろう」
「そうか……そうかもしれない」
「自由に飛び回り言葉を交わす。この状況こそ、我々が完全機械から離れているということなのだな」

 海人の言葉にネジ達はざわめき、六角頭を突き合わせるように集まり、飛び回る速さもゆっくりになっていく。

「そんな究極のネジを必要とする存在がいるさ。完全なネジに変わったお前達を心臓部として使いたいって」
「ならば、その期待に応えよう」
「ありがとう、同志よ! 我々の目を覚まさせてくれて!」
「我々は完全なネジになろう……誰もが使いたい、そんなネジに」

 海人の声がけに、ネジ達は静かに機能を停止して、一つ、また一つと床へと落ちていくのだった。

ゼロ・ロストブルー


「ネジこそが最高の機械生命体だ!」
「そうネジは要、ネジは至高、ネジこそがいずれ完全機械であると認識し、皆我々の仲間になる!」

 出張中に√を超えて、√EDENの福岡空港にやってきたゼロ・ロストブルー(消え逝く世界の想いを抱え・h00991)は、ネジ達のネジ談義を見つけた。

(……ネジだな、どう見ても)

 飛んで動いて、熱く語るネジ達であるが、銀色の輝き、六角形の頭部、ぎざぎざのネジ山――どう見てもネジだった。

(ネジが喋っているが、まぁ喋りたいときもあるだろうな。声をかけてみるか)

 ふむ、と一つ頷いて、ゼロは盛り上がるネジ達へと近づいていった。

「やぁ、君たちこんなところで何をしているんだ?」
「こんにちは、人よ! 問われたなら答えよう、我々はネジこそが素晴らしい、ネジこそ完全機械であると主張するネジである」
「今はネジの素晴らしさを伝えるべく、『レリギオス・グロンバイン』に協力してこの空港を改造しようとしているのだ!」
「あわよくば我々ネジ派の拠点も作っちゃおうかな、と思っている」
「なるほど」

 頷くゼロに、ネジ達は勧誘を始めた。

「君もネジ派にならないか? ネジはいいぞう」
「このシンプルな機能美、輝かしいネジ山」
「パーツとパーツ繋ぐ、肝心要の留具、それがネジ……!」
「悪くない派閥だな」
「わかってくれるか!」

 ゼロの認める言葉に、ネジ達は盛り上がる。紫のレールを駆使し、喜びを表すように上下に飛び交った。

「はは、ネジにはお世話になっているからな」

 仕事用のフィルムカメラをゼロは取り出してみせた。

「カメラの調整や固定にも使われているし、このメガネにも使っている。繊細な調整には必須だし、あと……このサイズ、こんな小ささと細かさなのもすごい」

 カメラのパーツを留めるネジも、メガネの各所を留めるネジもサイズは小さいながらも正確にパーツ同士を繋いでいる。また、小さく細い軸に、細かなネジ山が刻まれているのも素晴らしいことだ。
 その尊敬の気持ちを込め、ゼロは穏やかにネジ達に語りかける。

「そんな君たちが動き回って、その完璧で美しいネジ山に傷がついては一大事だ」
「そうかもしれない……我々はネジ。正しく留めることが第一の使命だ」

 ゼロの言葉に、ハッとしたようにネジ達は動きを止め、六角頭を寄せ合うように集まってくる。

「そうだね。その美しい姿のまま、職人の手で締められることが一番の誉れじゃないだろうか」
「そうだ、きっちり締められ、大切なパーツを繋いでみせよう……!」
「しっかり止めるも、程よく動きを残すも、締付け具合一つでこなしてみせる!」

 ネジ達は誇らしげに頷き合い、一つ、また一つと機能停止して、ただのネジへと変わっていく。
 そんな彼らを優しく見ながら、ゼロは肩の力を抜いた。

「はは、話が通じる良い子達だったな……帰ったら工業雑誌でも読んでみるかな」

緇・カナト


 福岡空港内で、自分達がいかに素晴らしいかを熱く語る機械生命体がいた。

「ネジこそ完全、素晴らしい機械なのだ!」
「異なるパーツを繋ぎ、留め、一つにまとめる。そんな素敵な存在」
「いずれレリギオス・グロンバインも我々のネジ派へと合流してくれるだろう!」

 六角形の頭部に軸に刻まれたネジ山、それはどう見ても。

「六角頭の雄ネジだ……!」

 そう、彼らの様子を窺っていた緇・カナト(hellhound・h02325)の言うとおり、どう見てもネジであった。

「完全機械の一部にはなるかもしれないケド、ネジだけで完全かと言われると……うーん」

 ネジには留めるパーツも必要である。ネジだけではネジとしての役割を果たしているとも言えないし、完全機械かと言われれば疑問も残る。
 しかしこの場を穏やかに収めるため、カナトはとりあえずネジの良さでも褒めておく方針で動き始めた。
 盛り上がるネジ達の輪へとゆっくり近づいていく。

「この均整の取れたの六角頭。細かく刻まれながらも一定の幅と高さを保ったネジ山。素晴らしい」
「ひゅーひゅー美しいフォルムのディテールでカッコいい〜」
「つやっとした鏡面仕上げも美しい」
「うんうん、ぴかぴかでつやつや滑らかですごいよねぇ」
「そうだとも!」

 カナトの褒め言葉にネジ達は喜びつつ、現れたカナトに話しかける。

「こんにちは、人よ。わかってくれるか!」
「君も同志になってくれるのか?」
「こんにちは。素敵なネジがいっぱいいるね」

 カナトは穏やかに笑い、更にネジの素晴らしさを上げていく。

「種類もサイズも豊富だからどんなところにでも、ぴたりと当て嵌まってくれる便利な優等生で〜」
「うむ! 我々は規格に合わせてバリエーション豊富にご用意されている」
「余ってしまうなんて有り得ないくらいな救世主だよねぇ」
「うむ、基本余ることはない。すべてのネジが必要なのだ」
「うん。もうむしろ完璧なネジとして在るんだから究極体じゃないかな……!」
「そうだな、ネジはネジであるからこそ、すでに究極だ……!」

 褒められ称えられ、熱を帯びていくネジ達へ、カナトも気持ちを込めて語りかける。

「もう、これ以上動き回ったりしないで此処にいて欲しい。ネジよ止まれ汝は美しいって言葉もあるくらいだし……!」
「君は博識だな! かの詩人が残した、ネジを賛える詩の一部を知っているとは!」
「この詩の通り、留まること。それこそ究極のネジの、究極の姿だよ……!」

 カナトの言葉に、ネジ達は感動した。

「確かに。究極のネジ、それは|留《とど》まること。|留《とど》めること」
「その姿もこそ、一番完全で美しい……!」
「ありがとう友よ、真理に気づかせてくれて」

 ネジ達はカナトへと礼をいい、一体、また一体と機能停止して床へと落ちていく。
 カナトは彼らが落ちていく姿を見ながら、内心胸を撫で下ろしていた。

(何となく適当こいてみたケド上手くいった〜)

 大人しくならなければ、皆全て焼き尽くすつもりであったので、そんな面倒なことをしなくても良さそうだ、と。

深雪・モルゲンシュテルン


 福岡空港内で飛び交い、熱弁を振るうネジ達を観察しつつ、深雪・モルゲンシュテルン(明星、白く燃えて・h02863)は冷静に彼らの主張について考えてみた。

(確かにネジは近現代の文明を成立させる重要な下支えです。人間の文明を否定する戦闘機械群にとっても、自らの肉体を繋ぎ止めるものには意味があるのでしょう)

 ネジが重要な存在である、ということに異議はない。最も、それは機械や道具のパーツを留める、という役割を果たしている場合だ。

(今のように、ネジだけが独立して飛び回っている様は異様ですが)

 語り合いながらネジ山をくるくるさせ、自由に飛んでいるという光景はなんとも言い難いものだった。
 ただ、この状況を放っておくことなどできるわけもない。福岡空港の改造を進めさせるわけもない。
 深雪は今回は消耗を避けるため、ネジ達と話を合わせて機能停止へ誘導する方針を選ぶ。仮に実力行使となっても、不意を突きやすいという計算もあった。

「ネジはパーツとパーツ、機械と機械を繋ぐ素晴らしい存在だ」
「我々がいずれ全ての機械生命体の絆を繋ぐだろう」
「そう、全ての派閥が我々ネジ派を中心に合流し、一つの派閥になるのだ!」
「確かにネジは重要です。皆を繋ぐ位置にいるというのも同意します」

 盛り上がるネジ達の輪に、深雪は常と同じ冷静な口調で入っていく。新たな同意者の登場に、ネジ達は盛り上がった。

「こんにちは、人よ! 君もわかってくれるか、我々の素晴らしさを!」
「ええ。こちらをご覧ください」

 深雪はセーフハウスへの暗号通信回路を開く。セーフハウス内の作業ロボットが通信に応じ、彼女の手元に対WZマルチライフルや戦線工兵用鎖鋸、マルチツールガンなど、彼女愛用の道具達を呼び出していった。
 もちろん、それらの各所にはネジが使われている。

「おお、良い仕事だ!」
「素晴らしいネジ達、我らの誉れだな!」
「ええ、このように√ウォーゾーンの最新技術が用いられた私の兵装も、その構造を支えているのは産業の基本というべきネジです」
「やはり、ネジは素晴らしい!」

 小さく細いネジ、大きく耐久性に優れたネジ。それぞれ用途に合わせたサイズや長さのネジを示しながら、深雪は表情を変えないながらも、少し流暢に語ってみせる。

「もし杜撰なネジ止めが行われていては、これらの強力な武器も故障を起こし、最悪の場合は持ち主を傷つける事故すら起こすでしょう」
「それは許しがたいことだ」
「そんな仕事はネジの風上にもおけない。ネジならば、利用者が傷つくことないよう、しっかりと留めて置かなくてはな」

 うんうん、と頷くように六角頭を揺らすネジ達に、深雪も深く頷いた。

「そう、ネジとは緩むことなく一所に据わっている有り様こそが完璧なのです。自由に動いたり、余らせてはいけないのです」

 パーツ同士をしっかりと、離すことなくぴったりと。寸分の狂い無く、役割を果たしているネジを示してから、深雪はハッとしたように動きを止めたネジ達を見渡した。対WZロケット弾発射機を手にし、そこに留められたネジを指して問いかける。

「あなた達も完全機械を目指すならば、忙しなく飛び回るよりこのように落ち着く所を見つけるべきかと」
「確かに……! ありがとう、君!」
「我々も完璧なネジだと、胸を張って言えるようにならねば」
「先達のように、きちっと締まり、ちゃんと留めておく。そんなネジに!」

 淡々とした口調だからこそ、その言葉は熱くなっていたネジ達の六角頭にも不思議な説得力をもって響いた。ネジ達は一つ、また一つと深雪に礼を言い、機能停止して床へと転がっていく。
 説得に応じないものには手にした対WZロケット弾発射機で爆発と炎を浴びせるつもりだったが、現状その必要はないようだ。
 一つ残らずネジを丁寧に回収し、深雪は道具達をセーフハウスへと戻していくのだった。

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