シナリオ

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不思議なたまごとイースター祭

#√ドラゴンファンタジー #シナリオ50♡

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 ぴょこん、ぴよぴよと、沢山の動物たちが春の訪れを喜ぶ冒険王国。
 そしてこの冒険王国が最も活気に溢れ、盛り上がる時期が今年もやってくる。
 春の訪れを祝う、イースターのお祭りの季節が。
 そんなイースターのお祭りの話題で、冒険王国は持ち切り。
 それに……不思議ないきものが生まれるかもしれない、魔法のたまごのうわさも。

 この冒険王国は、もふもふなうさぎやひよこが、街のそこかしこにいて。
 他にも様々な動物が生息している、自然豊かで長閑な王国。
 そしてこの王国では、うさぎやひよこを連想するイースター祭を、冒険者に配信して貰ったり、祭りを盛り上げて人を呼び込めればと、毎年催しているのだという。
 宗教的なものではなく、純粋に春の訪れを祝う趣旨の祭りだというが。
 様々な趣向が凝らされているこの王国のイースター祭は好評で、この祭りの様子が配信された動画は毎年沢山バズるほどなのだという。

 そんな祭りの内容の詳細は、参加者希望者へと後で送る紹介動画を見て欲しいが。
 エッグペイントにエッグロール、エッグハントなどのイースター定番のものや、巨大なイースターエッグ風巨大たまごを転がすこの祭りならではなものなど、様々なイベントに参加出来たりだとか。
 イースターパフェに、レモンひよこといちごうさぎのケーキ、ひよことうさぎのイースタープリン、ウサ耳付きクレープ、カラフルドーナツに、イースターエッグマカロンなどのイースターを思わせる映えスイーツだったり。
 デビルドエッグやローストラムやベイクドハム、スコッチエッグやホットクロスバンズなどのイースターメニューは勿論のこと。旬の具材たっぷりな春キッシュ、イースターオムライスに巣ごもりサラダなどの、映えフードもたくさん。
 飲み物も、ひよこミルクセーキやうさみみいちごスムージーにアニマルクリームソーダ、イースターにちなんだカクテルやモクテルも用意されているし、ホットエッグノッグもアルコールの有無や様々なカスタマイズができてほっこりイースター気分に。
 それにイースターらしい装いの人で街も華やかだから、うさ耳カチューシャや映えるボンネットを着用してもいいだろう。自前でもいいし、レンタルもしてくれる。

 そして、密かに噂になっている出店が、今年もこの祭りに現れるという。
 それは、不思議な魔法のたまごの店。
 様々な大きさや模様のものを選べるというが、何やら普通のたまごではないらしい。
 ある条件を満たせば――その持ち主ごとのいきものが生まれるたまごだという。
 それが本当かはわからないが、生まれた子は自分の相棒やペットにしてもいいし、この王国の人に託すこともできるらしい……という噂があるようだ。
 うまれるいきものも、普通の動物のような子から空想の生物っぽいものまで、まさにその人それぞれだという話だ。なのでもしも見つけてみたら、試してみるのも良いかもしれない。
 そして、もうひとつの魔法のたまごに関する噂。
 魔法のたまごの秘密が、王国の近くに出現したダンジョンにあるかもしれない、と。

●マジカルハッピーイースター!
「みんなは、イースターのこと知ってる? 春の訪れを祝うお祭りみたいだけど、うさぎとか、たまごとか……春っぽくてかわいいイメージだよね」
 そう皆を迎え入れるのは、物静かだけれど、ほわりと微か笑む少女。
 星読みである楪葉・望々(ノット・アローン・h03556)は観た内容を語り始める。
「今回、みんなに向かってもらうのは、√ドラゴンファンタジーのダンジョンだよ。でもまずはダンジョン最寄りの冒険王国を訪れて、冒険の準備を整えたりするのもいいんじゃないかなって。今ちょうど、この冒険王国の街では『イースター祭』がおこなわれていて、すごくバズってて盛り上がってるお祭りみたい。かわいくて美味しいものもいっぱい食べられそうだし、楽しそうなイベントがあったり、あと……うわさなんだけど、条件を満たせば、持ち主によってそれぞれ違ういきものがうまれる、魔法のたまごをもらえる出店もあるんだって。本当かわからないけど、ちょっと興味あるよね。それに住民の人からこのお祭りで、今回攻略するダンジョンについての噂話が聞けるかも」
 その『イースター祭』は、名前の通り、春の訪れを祝う祭りで。
 屋台グルメの定番から、ちょっぴり変わったもの、甘い物や映えるものまで。
 ダンジョン探索の前に立ち寄るにはうってつけの、楽しい祭りだという。
「それでね、すごく色々な屋台や催しがあるみたいなんだけど。『ドラファングルメちゃんねる』っていう人気チャンネルが、どんな屋台があってどんなメニューがあるのかとか、おすすめとか限定ものとか。あと、魔法のたまごのうわさとかも……この『イースター祭』の詳しい情報を配信してるみたいだから。あとでそのチャンネルをみんなにも教えておくから、必要ならチェックしてみて」

 そして祭りを楽しんだ後、向かってもらうダンジョンはというと。
「そのあたり、星詠みの内容もちょっとあやふやなのだけど……メインの道をいけば、そこは『天空航路』、精霊の力を借りて、空を飛んで進むダンジョンみたい。魔法のたまごの秘密も、このダンジョンにあるってうわさだよ。ダンジョン攻略のついでに、魔法のたまごを孵してみるのもいいかも。それでダンジョンの奥にいる敵を倒せば、ダンジョン攻略完了だよ」
 普通にダンジョンを攻略しに行くのもいいし。
 もしも、イースター祭でうわさの魔法のたまごをもらっていれば、それを孵す条件がこのダンジョンで満たされるかもしれない。

 そこまで説明を終えた後、皆を見回しながら。
「美味しいものも、楽しい遊びも、もふもふも、いっぱい楽しんで。魔法のたまごも気になるし、ダンジョン攻略も忘れずによろしくね」
 望々は例の『ドラファングルメちゃんねる』を共有しつつ、そう送り出すのだった。

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第1章 日常 『お祭りに行こう』


●ドラファングルメちゃんねる!
 腹が減ってはダンジョン探索もできぬ!
 ということで今回の配信は、今話題の『イースター祭』の情報盛りだくさんでお送りします!

 そもそもイースターとはどういうお祭りか?
 気になる人はいますぐ、「イースター」で検索!
 今回紹介する冒険王国の『イースター祭』は、春の訪れを祝う意味合いが強いから。
 春だーやったーわーい! イースターわくわく! の心で参加OK!

 ということで、まずは皆も気になるだろう、注目のイースターメニューをご紹介!
 イースターパフェは、これでもかとイースター要素を盛りまくった贅沢パフェで、カラフルなミニイースターエッグチョコにウサギさんアイス、ヒヨコミニプリン、お花デコがちりばめられたイースターてんこ盛り! サイズも選べて、超特大サイズにすればミニイースターエッグハントができるし、ちょっとずつのいいとこどりなミニサイズもあるし。お好みとお腹の具合で選んでみてください!
 可愛い見目のスイーツといえば、レモンひよこといちごうさぎのケーキに、カスタードひよことイチゴうさぎのイースタープリン……ひよこさんとうさぎさん、どっちがお好み?
 そして、クリームといちごがたっぷりのウサ耳付きクレープ、イースターエッグみたいな色々な模様をしたカラフルドーナツやイースターエッグマカロンなども、映えまくりスイーツ!

 それからやっぱり、腹が減ってはダンジョン探索もできぬ!
 イースターでよく食べられているメニューや、イースターモチーフのフードも紹介しちゃいます!
 まずは、イースターの時によく食べられる、ゆで卵の卵黄を味付けをして卵白に盛り付けるお洒落なデビルドエッグや、ゆで卵をひき肉の中に隠したスコッチエッグ、レーズンなどのドライフルーツが入った十字架模様の甘いパンであるホットクロスバンズ、オーブンでカリッと焼き上げるラム肉のローストやこんがり焼き上げるベイクドハムもイースター料理の定番。
 それに加えて、旬の具材たっぷりで春らしいエディブルフラワー咲かせた春キッシュに、ふわふわ半熟たまごが楽しめる白身の水玉模様がかわいいイースターオムライスに。レタスやカラフルな春野菜が敷き詰められた上に揚げ麺の巣、カリカリな巣の中には、たまごの親鶏とうずらの卵なひよこさんがいる巣ごもりサラダなど。イースターモチーフのフードも要チェック!

 飲み物も、定番で普通の飲み物は勿論のこと。
 ひよこミルクセーキやうさみみいちごスムージー、動物さんアイスが選べるしゅわりアニマルクリームソーダなど、キュートであがるドリンクだとか。成人していれば、アルコール類の用意もあります! たとえば、イースターエッグみたいにたまご型にくり抜かれた様々な冷え冷えシャリシャリ果物が入ったグラスに、アルコールを注いだカクテル「イースターポンチ」は好きな酒を注げるというし、酒の選択に迷うならシャンパンがおすすめとのこと! 勿論、アルコールをサイダーにしたノンアルコールでも楽しめるから、お酒が飲めない人も注文OK! それと当チャンネルが注目しているのが、牛乳、卵、砂糖を使って作る、少しとろみがついた甘いドリンク・ホットエッグノッグ! そのままで飲んでもとても美味しいし、シナモンを加えたり、大人風にラム酒やブランデーやコニャックなどの好みの洋酒もいれてみた大人のスパイシーエッグノッグに挑戦するのもまた良し、です!

 あとは、催し物関連も要チェック!
 イースターらしい装いの人で街も華やかだから、うさ耳カチューシャや映えるボンネットを着用して歩いてみるのも、きっと気分上がります! 自前のものでもOK、レンタルもあるから、気軽な気持ちでつけてみよう!
 それにイースターといえば、楽しめる遊びも盛り沢山!
 まずは、イースターエッグペイント。イースターには欠かせないイースターエッグを作れちゃいます! 好きに卵に絵を描いたり色を塗ったりして、あなたのオリジナルのイースターエッグを作ってみてくださいね。
 それから、イースターエッグロール。イースターエッグを割らないようにスプーンで転がしつつ、ゴールまで走る遊び。わいわい競って盛り上がること間違いなし。
 イースターエッグハントは、王国のそこかしこに隠されたエッグを探してゲットできます! 見つけたエッグをぱかりと割れば、出てくるものは、たまごごとにそれぞれ違うという話だから……何が出てくるかは、お楽しみに。
 そしてこの冒険王国ならではな注目の人気催しといえば、イースターエッグ風巨大たまごを坂の上から転がして、坂の下に並べられたピンを倒し、より高い点数を目指すたまご転がし――略して「たまころ」! 抱えるほどのカラフルなイースターエッグ風の巨大ボールを坂道の上から投げて、坂の下に並べられたうさぎさんピンを2投のチャレンジの合計でどれだけ倒せるか、というものらしい。ボールの大きさ選びもなかなか重要で、個体差があってたまご型だから結構難しいし、障害物などもあるからよく軌道を読んでみて!
 あとは、好きな模様のミニたまごのパーツに、花やうさぎやひよこなどなどのモチーフを加えたりもできる、オリジナルエッグチャーム作りなどのワークショップも、思い出作りやお土産に最適!

 それから……このドラファングルメちゃんねるの独占スクープ!
 今年も噂の「魔法のたまご」の店が、冒険王国にやってくるという情報をキャッチ!
 この魔法のたまごは、条件を満たせば、その人それぞれの不思議生物が孵る……何ていう噂が。
 そのいきものの姿は、普通の犬猫やウサギやひよこみたいな動物さんであったり、動物さんに羽が生えているなどの空想の世界の子だったりだとか、妖精さんみたいに小さな人型であったりなど……本当に人による、ということみたい。
 たまごの大きさや模様は様々だというから、ビビッときたたまごを貰って飾るだけでも思い出になるし。貰うだけ貰ってみるのも全然あり!
 何やら、この冒険王国の近くにあるダンジョンに、条件を満たす鍵があるのかも、という気になる噂も。
 もしも魔法のたまごを孵す方法がわかったら、是非当チャンネルのコメント欄で教えてくださいね!

 ということで、どうぞ良きイースターのひとときを!
 チャンネル登録も、是非ぽちっ♥と、よろしくお願いします!


<ドラファングルメちゃんねる、概要欄補足(マスターより)>
 オープニングや断章にある出店やメニュー以外にも、様々な店や物があるので。
 設定に余程無理がない限りは、お好きな出店やメニューを創作したり指定していただいても構いません。
 地元の人や偶然相席になった冒険者とも会話できたり、一期一会の出会いもOK。
 食べ歩きでも店内でも、この祭りをきっかけに出会いがはじまったり等々でも、ご自由に過ごしていただければと!
 魔法のたまごは、1章では手に入れるところまで、孵すのは2章になります。
 1章でたまごを貰う内容を入れなくても、2章で実はもらっていました、などもOKですので、臨機応変、どうぞお好きなように楽しんでください!
ルチア・リリースノウ
ルーチェ・モルフロテ

 イースターと言われても何の祭りなのか、これまではふんわりしか聞いたことなかったけれど。
 くるりと周囲を見回してみたルーチェ・モルフロテ(⬛︎⬛︎を喪失した天使・h01114)は、こう把握する。
「イースターってうさぎとタマゴの祭なんだな?」
 そんな彼女の言葉に、ふわふわのしっぽをゆうらり揺らしながら。
「ん〜、ちょっと違う気がするけどぉ、そんな感じかなぁ?」
 当たらずとも遠からず……いや、まぁちょっと違っても、大きくは間違ってはない気もするから。
 ルチア・リリースノウ(白雪のワルツ・h06795)はそう返しつつも、春色でいっぱいな冒険王国を、ルーチェと共に巡って……みようとした、その時。
 ふいに吹き抜けた風が纏う香りに誘われるように。
「ちょっ、美味そうなもんいっぱいじゃねーか! これは、食えるだけ食うしかねぇ!」
 何気なく祭りの様子を改めて眺めてみたルーチェはそう瞳を輝かせて、気合も十分。
 すかさず気になる屋台を、うきうき張り切って巡ってみれば。
「スコッチエッグってのとか、イースターオムライスは食うだろ? それから……肉も食いてぇ!」
「……って、ルーちゃんったらすごぉい。いっぱい食べるねぇ」
 そんなルーチェの勢いに、まぁるいお耳をぴこりとさせながら。
「それならルゥは春キッシュとぉ、巣ごもりサラダも美味しそ〜」
 ルチアは、ルーチェが買ってきた美味しそうなたくさんの戦利品に、さらにキッシュとサラダも追加してみる。
 いや、でも味わうのは勿論、イースターなごはんだけではなくて。
「スイーツはカラフルドーナツにうさ耳付きクレープ、イースターエッグマカロンってのも食おうぜ?」
「スイーツも可愛いねぇ。一緒に食べよぉ」
 イースタースイーツはやはり別腹、可愛くて美味しそうで、わくわく購入して。
 ルチアがふと持ち掛けるのは、こんな提案。
「スコッチエッグも食べたいからぁ、1口ちょーだい?」
「一口? 良いぜ、シェアも楽しいしな♪」
 だって交換こすれば、色々な種類のものを食べられるから!
 それから、食べ物とスイーツが揃えば。
「あとねぇ、ルゥはエッグノッグもぉ。クリームシェリーで甘ぁく作ってほしいなぁ」
 ルチアがほこほこと選んだ飲み物は、とろりと甘いクリームシェリー入りエッグノッグ。
 いっぱい美味しい物を買い回って、それからちょっと多くなった荷物を頑張ってパステルカラーのテーブルに並べて。
 たまご型の椅子に腰を落ち着ければ――いただきます!
 そしてルーチェははむはむと、あれもこれも逸るように、戦利品を色々と頬張っていけば。
「どれも美味すぎる♪ こういう祭は食べ歩かなきゃ損だよな♪」
「んふふ〜、ルーちゃんは美味しそうに食べるからぁ、見てて楽しいよぉ」
 たくさんあったはずのフードやスイーツも、難無くぺろりと完食!
 でも勿論まだ、ご馳走様ではなくて。
「あ、あっちにも美味そうなもんあんじゃん!」
 ルチアの手を引いて、目的のお店までついわくわくそわり、走り気味になっちゃうけれど。
 その足が止まって、今度はゆっくりとルーチェが歩き出した理由は。
「……わぁ、走ったら危ないってぇ。お祭りは逃げないからゆっくり歩こぉ?」
 そんなルチアの声と、繋いでいる手の指がからめられるのを、感じたから。
 そして所謂恋人握りをして、ルチアがルーチェのダッシュを無事に止めれば。
 ルーチェは、美味しそうな食べ物以外にも色々な屋台があることに気づく。
「あっちでエッグハント? とかもあるみたいだから、そっちも行こうぜ♪」
「ハント〜? 狩りってことかなぁ、それならルゥ負けないよぉ」
 例えばそう、冒険王国中でかくれんぼしているたまごたちを見つけるお楽しみ。
 そしてやる気漲らせるルーチェのお誘いに、同じくふわふわのしっぽをゆらりら。
 まぁるいお耳もぴこんと気合を入れて、ルチアもこくりと頷いて返す。
 狩りなら負けないし、それにお互い見つけたたまごに何が入っているのか――考えれば、わくわくしちゃうから。

マレス・クレフィント
七夜・星斗
妹尾崎・リア

 やって来た冒険王国は、パステルカラーの彩りでいっぱい。
 だってこの王国で今、開催されているのは、そう!
 ――ハッピーイースター!
 そう声を揃えてうきうきと、妹尾崎・リア(きつねあめは晴れ間に降る・h01915)と七夜・星斗(願い星は夜空に煌めく・h04589)が叫んだように。
 春の訪れを祝うお祭り、イースター祭である。 
「凄いわねこんなにも素敵なお祭りがあるなんて!」
「美味しそうなものばかりだね!」
 そしてそうそれぞれ、興味の向くものへと視線を巡らせる二人に。
「『イースター祭』……綺麗なものばかりで楽しそうだ」
 マレス・クレフィント(妹尾崎・リアのAnkerの従者・h06283)も、カラフルで可愛くて洒落た雰囲気に、ひとつ頷きながらも。
 ふたりへとふと目を移せば、まずはこう言い放つ。
「おい二人とも「ハッピーイースター」って叫ぶのもいいがまずはボンネット選んで被らないとだろ?」
 それを聞けば、再びリアと星斗は仲良く一緒にきょとり。
「……マレス? ボンネット?」
「……何? マレス、ボンネット?」
 そして首を傾けて自分を見るふたりに、すかさず選んで差し出す。
「星斗はその星とうさ耳がついたやつとかどうだ? リアはこの花とリボンたっぷりのやつで」
 星斗には、煌めく星たちとうさぎさんのお耳が付いたボンネットを。
 リアには、カラフルな花たちと蝶々を思わせるようなリボンがたっぷりついた、お花畑のようなものを、それぞれに手渡せば。
「そうね! イースターお祝いするなら必要よね!」
「んーまぁ確かにこれ僕に似合いそうだから被るね」
 マレスのチョイスしたそれを、すちゃりとかぶってみるふたり。
 そして勿論、マレス自身も。
「俺はこの青い花々が彩られたのにするか……」
 そう手にしたボンネットを満を持してかぶり、置かれた鏡を見てみれば。
「自分に似合いすぎる、うん流石俺だ」
 相変わらずの感動するほどの自分の美しさに、とっても満足げ。
 そしてひょこり、リアもマレスと一緒に鏡を覗いてみて。
「……似合うかな?」
「リアもマレスも似合うじゃん!」
「うん二人もボンネット似合ってるわ!」
 星斗も一緒に3人ならべば、さらにわくわく高まるイースター気分!
 ということで装いもばっちり、ボンネットのうさ耳をぴこり揺らしながらも。
 今度は星斗が吟味して、皆の分も選ぶ番。
「よしじゃあ早速美味しいもの探すぞー!」
 王国に並ぶイースター屋台をぐるりと張り切って見て回って。
 確保した三人分の席のテーブルに、ずらりと並べてみせる。
「とりあえずラム肉のローストに春キッシュに巣ごもりサラダ! ひよこミルクセーキにイースタープリン!」
 ……第一陣はこんなもんかなー! なんて。
 主食にサラダ、飲み物とデザートまで、ばっちりバランスよく選んだ、美味しそうな戦利品を。
「星斗は相変わらず旨いもの見つけるのがうまいよな」
 マレスはそう感心したように口にしつつ、星斗が確保した席に座って。
 リアも勿論一緒に……と思いきや、姿が見えない?
 星斗が美味しいものを調達している間に。
「ご飯もそうだけど色んなものあるのね……ん? なんだかたまごがいっぱいの屋台……」
 ふと見つけた、カラフルなたまごがたくさんあるお店を見つけて、立ち寄っていたのだ。
 それから、ふたりの元へと戻って来れば。
「ほら皆の分買って席確保したから食べよ……ってリアどーしたのそれ?」
「ん? リアはどうした……魔法のたまご?」
 星斗とマレスは、彼女がいつの間にか抱いているたまごに気づいて。
「あっ星斗にマレス……そう魔法のたまご!」
 リアはこくりと頷いた後、ふたりにも、貰ったそのたまごを見せる。
 何となく興味をひかれて覗いてみたリアだったが、たくさんある中で、どうしても気になるたまごを見つけたのだ。
「なんかこの柄? 色? がね見た瞬間ときめき?心惹かれちゃって……買ってきちゃった」
 まるで雨のような雫柄のたまごを。
 それに、飾りとしても可愛いのだけれど。
「しかも運が良ければ何かが孵るらしいのよ」
 そんなリアの言葉に、マレスはこう言葉を向けるけれど。
「まぁ俺はいらないけどお前が気に入ったのなら貰っておけ……」
「イースターの魔法のたまご? ペットならマレスがいるじゃん」
 そんな言葉を聞けば、マレスとリアは彼へと目を向けて。
「……おい星斗、確かに俺は鴉の獣妖だがペットじゃねぇぞ」
「うーんマレスはペットじゃないし鴉や鳥系が孵るかもわからないし……」
 ……ってジョーダンだよ! なんて、ふたりに笑ってみせてから
 星斗はリアと一緒にいるたまごへと改めて見れば、こう笑みを咲かせる。
「ならたまごも一緒にイースター楽しもう!」
「うんそうねこのたまごもイースター楽しんでもらいましょうか!」
 ――それじゃイースターメニュー第一陣いただきます! って。
 たまごも一緒に、美味しそうなイースターフードを目一杯楽しんじゃいます!
 いや、これはあくまで、第一陣。
 美味しく完食すれば、そう。
「まぁなんにせよそのたまごから何が生まれてくるのかは楽しみだな、ほら行くぞもっと食い倒れするんだろ?」
「ご飯は生まれてからね、そうそうイースター食い倒れするんだからさ!」
 まだたまごの子は生まれるまでは食べられないけれど、勿論一緒に。
 第二陣のイースターな美味探しに、いざ皆で出発です!

香住・花鳥
入谷・飛彩

 訪れた冒険王国は、淡くて可愛らしい彩りでいっぱいで。
 くるりと早速、香住・花鳥(夕暮アストラル・h00644)は視線を巡らせてみて。
「春です! イースター! お祭り……!」
「イースター……兎とか卵のお祭りだっけ」
「早速遊びに行きましょう?」
 逸るようにそう、小さく首を傾けている入谷・飛彩(雨降る庭・h02314)へと促すように紡いで、うきうき。
 そしてそんな姿を見遣りながら、飛彩はそっと思うのだった。
 共に赴いた幼馴染の様子は、ぴょこりと跳ねる野ウサギみたいで。
(「いつになくテンション高めのような、危なっかしいような……」)
 浮足立っている様子に、ちょっぴりだけ心配に。
 だから、わ~いと冒険王国のイースター祭の風景をわくわく眺めつつも。
「何から見て行こうか?」
「はいはい、一緒に楽しみには行くから落ち着こうね」
 さり気なく宥める飛彩が自分の挙動に不安を覚えているなんて、露知らず。
 でも飛彩も、その気持ちはわかるのだ。
 春の訪れ祝うような華やかな街並みの様子は、1日あっても全部楽しむのは大変そうなくらい、色々なものが用意されていて賑やかで。
 足元にとてとてやってきた、もふもふなウサギもヒヨコも沢山可愛いくって。
 目移り迷って決められなさそうな……なんて、思っていた花鳥であったのだけれど。
「……!」
 ふと何かを見つけた屋台へと足を向けてみて。
「何から気になってる?」
 飛彩がそう訊ねつつも隣を見遣れば、思わずぱちりと一瞬だけ瞬いてしまう。
 花鳥の手には既にしっかりと、クリームと苺なウサ耳付きクレープが握られていたから。
「動きが素早いなぁ」
「今回はご飯を食べに行きましょう。甘いものは別腹カウントで……!」
「別腹なの…そっか」
 甘い物は別腹だと、ほくほくな花鳥と一緒に入ってみるのは、歩いている最中に見かけた店。
 扉を開いて足を踏みいれれば、店内も春らしい雰囲気で。
「色々お洒落なデビルドエッグも良いし、私も好きな春キッシュもメニューにあるから嬉しいな」
「俺もデビルドエッグは気になるかな。イースターオムライスってのも美味しそう」
 花鳥ご所望であったイースターメニューも頼めるみたいだから。
 飛彩も気になったものをいくつか選んでみて。
「前菜だけで足りなそうなら、サラダやベイクドハムも足してみる?
 ……お腹いっぱいになれそうな程、なんて。
 別腹なスイーツとごはんの順番が逆な気はするけれど、花鳥と共に、美味しいイースターを満喫することにして。
 花鳥も、飛彩とのんびりご飯タイムとお喋りを楽しんでいれば。
「……あとはホットエッグノッグと、噂の「魔法のたまご」も気になってて」
 ほっこり甘くてあたたかいホットエッグノッグも追加して。
 この後、噂の「魔法のたまご」を貰える店も、探してみることに。
 それからほわりと花鳥は笑み咲かせながら、彼へとこう告げれば。
「ふふ。春には楽しい事が沢山あるから、ヒイロ君も楽しんでくれてたら嬉しいな」
「楽しんでいるとも」
 飛彩はすぐに頷いて返して、こう続けるのだった。
 ――キミの表情を見ていると、なんて。
 だって、ぴょこりと跳ねるようにはしゃぐ姿は楽しそうで、飛彩も一緒に楽しい気持ちになるから。

ナターリヤ・アリーニン
ノー・ネィム

 春色の冒険王国の空に向かって、ぴこぴこ、ぴこり。
 仲良くふたりお揃いで揺らすのは、あたまのうえ。
 だって、ノー・ネィム(万有引力・h05491)もナターリヤ・アリーニン(夢魅入るクークラ・h05868)も、うきうき心が躍っちゃうから。
 そう、ちいさなうさぎさんのお耳がついてる、かわいいぼうし。
「おにあい。おそろいもね、うれし、です」
「うれしい、ね? まいごにならないように、手をつなぎましょ」
 はしゃぎすぎて迷子うさぎにならないように、おててをしっかりとつなげば。
 ぴょこりと跳ねるような足取りで、春色の王国をくるり巡ってみることに。
 今日の冒険王国は、春の訪れのお祝い――イースター祭りが開かれていて。
 ナターリヤがこの祭りの話を聞いて、気になっているのは。
「えと、たまごをね。もらえるところ。さがしたい、のですけど……」
 イースターといえば、たまご。
 そして何やら、魔法のたまごとやらをもらえるお店があるらしい……?
 けれど、そんな不思議なたまごも、もちろん気になるのだけれど。
 ネィムはふいに、きょとりと首を傾ける。
「我のおなか、ぐーぐー。なんのおと?」
 ふわり春風が運んでくる美味しそうな匂いに、正直に鳴るのはおなかのむしさん。
 そして、ナターリヤも同じで。
「クレープ、ドーナツ……ちょと、きになって」
 だからそろりと、こんな提案を。
「ぼうけん。おなかすいてたら、できない。ですし……いかが、でしょ?」
 まずはおなかのむしさんを落ち着かせるための、イースタースイーツタイム作戦です。
 そして、そんなナターリヤが気になっている屋台をネィムも一緒に覗いてみれば。
 くるり花束みたいに果物やクリームが包まれたものや、まんまる穴のあいた可愛いお菓子。
 わくわく、見たことないものがたくさんで。
「クレープ? たべる! ドーナツ? たべる! ぜんぶすき」
 ネィムはこくりとすぐに頷いて返して。
 ゆーわくおおいですから、あちらこちら、なんて。
 ナターリヤといっぱい楽しむのは、食べ歩き!
 そんな美味しいものがいっぱいなのも勿論のこと。
「いーすたー、いっしょはじめてうれしたのし」
 そんなはじめてを一緒に楽しめることが、ドキドキうきうき、うれしくて。
 クレープもドーナツも、当然両方買ってから、もぐもぐはむり。
 口にしては、顔を見合わせてほわほわ、おいしいねって笑み咲かせ合いながら。
 買ったおいしいものを食べつつも探してみるのはもちろん、魔法のたまごのおみせ。
 そしてちょっぴり道をまちがっちゃったり、お花が咲いた植木の下をひょこりとのぞいてみたりしていたら――。
「あ。たまご、ありました」
「たまご、たまご。こっちもあったのです」
 カラフルでかわいいたまご、発見です!
 これは果たして、探している魔法のたまご……?
 でも、聞いていた話では、お店でもらえるって言っていたような、なんて思っていれば。
 同じようにたまごを見つけている王国の子たちを見つけて。
 耳をそっと澄ましてみれば、聞こえてきたのはこんな言葉。
「イースターエッグハント?」
 そして首をちょこりと傾けるナターリヤに、ネィムはそわそわこう告げる。
「ね、ね。いっしょにわろ?」
 同じくたまごを見つけた人たちが、それを割っているのを見て。
 ということで――ぱかり。
 一緒に、せーので割ってみれば。
「わ。なになにですか? 我のは、きいろいふわふわ!」
「ふわふわ。ネィムさまと、おそろい……ピンクです」
 中から顔をみせたのは、色違いの手乗りふわふわひよこさんぬいぐるみ。
 それを見せ合えば、止まらないわくわく!
「ほかにも、あるのかも……! えとえと、ありそうなの……」
 だからふたり、きょろきょろとたまごを探してみるけれど。
 ナターリヤは顔を上げて、たたっと走り出す。
 だって、思い出したのだから。
「はっ……たまごさがすの。むちゅうでしたけど。おみせ、さがすのでした……!」
 エッグハントのたまごも、わくわくでドキドキだけれど。
 でも本当の目的は、たまごはたまごでも、魔法のたまごなのだから。
 そして、ふいにナターリヤにおててをひかれて。
「まって。まって。ナターリヤ!」
「ネィムさま、いそいで、さがしましょ……!」
 そう促されれば、ネィムもこくり。
 ふたりで並んで、うさぎさんのお耳をぴょこぴょこ揺らし、わぁわぁと駆ける。
 ――いそげ。いそげ。ふしぎなおみせ、たまご!
 そして、なんとかセーフ!
 たまごがいっぱい並ぶお店を見つければ、ナターリヤと顔を見合わせて。
 ふたりが選ぶ子は、そう。
「ほかのたまごよりおっきなたまご、ふたりで1つくーださい!」
 ふたりでひとつの、特別おっきなたまごです!

翊・千羽
八卜・邏傳

 一面パステルカラーな冒険王国に、ぴよぴよひよこさんやふわふわうさぎさん。
 そこかしこに置かれているたまごのオブジェも、そのカラフルな色や模様はひとつひとつ違って。
「いーすたー、て可愛えね」
 八卜・邏傳(ハトでなし・h00142)は、やって来たイースター祭の風景をくるり見回してから。
 翊・千羽(コントレイル・h00734)へと、こんなお誘いを。
「千羽ちゃんうさ耳似合いそ! 可愛さ増し増ししませんかー?」
 そんなお誘いに、一緒に増し増しする? って。
「邏傳とはぴょんこもする仲だから、うさ耳ってぴったりかも」
 千羽が逆に、そうお誘いのお返しをすれば。
「俺も一緒に? 似合うかなぁ」
 早速、邏傳は手に取ったうさ耳を、すちゃ!
 なんて、ノリノリで装着すれば。
「邏傳、似合う。可愛い」
 千羽もおそろいのお耳を手に取って、ちょこり。
「千羽ちゃんこそ超らぶり〜♡」
 可愛くてらぶり~なうさぎさんコンビの爆誕です!
 それから、ふたりでうさぎさんのお耳をぴこぴこ揺らしながら。
「いっぱい美味しそでワクワクなんよ」
 やはり心を擽られるのは、春風がふわり纏う美味しそうな匂い。
 しかもイースター仕様なごはんは、どれも思わずじいと見つめちゃうくらい可愛くて。
「キッシュにお花咲いちょる〜! 綺麗で美味そ♡」
「食べられる花、綺麗」
 ふたり、気になるものを色々と頼んでみれば。
「こんなに可愛いのにデビルドエッグ」
「でびるどえっぐ? 名前いかついけど可愛いん」
「悪魔的に美味しいってこと?」
 悪魔的に可愛くて美味しいたまごに、そわ、としたりだとか。
「やぱイースターパフェは外せんのよ」
「パフェ、うさぎもたまごもいる」
 イースターパフェはやはり頼むべき、と頷きあった後。
 選ぶパフェのサイズは、勿論!
「超特大サイズ……いっちゃおか!」
「超特大――オレ、いける」
 やろう、という顔の、やる気満々なうさぎさんズ!
 そして勢いで頼んだ特大パフェに挑んで、ちょっぴりその強敵具合に悶えながらも。
 でも楽しくふたりで完食して、ついに特大パフェを倒せば。
 おなかもいっぱい、再びイースターな王国の冒険へ。
 美味しいものだけでなく、イースターならではなイベントもいっぱい催されているようだから。
「面白そなのいっぱい。何かやってみる?」
「たまころ、してみたい」
 千羽が見つけたのは、ひときわ盛り上がっている『たまころ』!
 そしてぐぐっと腕まくりをして、きりり。
 ……しよう、漢の戦いを、って。
 千羽が並々ならぬやる気をみせれば。
「お、漢の戦いとあっちゃ黙っちょれんね!」
 邏傳も張り切って、同じように腕まくりして。
 ――そーらぁい!
 ――よいしょ……えい。
 まずは、たまころという名の男の戦い、一投目です!
 千羽は額に手を当て眺めて、ころころぽこんっとピンを倒していく自分の投じたたまごの行方をみながらも。
「邏傳のたまご、頑張れ頑張れ」
 勝負を忘れて、邏傳のたまごの応援をしはじめて。
 ふたりで、がんばれがんばれ! って応援した甲斐があって、なかなか同じくらいの高スコア!
 そして満を持して、第二投目!
「千羽ちゃんの勇姿も目に焼き付けなぁね」
 またまた大きなたまごを抱えて、狙い澄まして投げてみれば。
「あっ」
「おもしろ〜!!」
 狙い澄ましたときに限って、まるでうさぎみたいに、ぴょこんと仲良くコースアウト。
 というわけで、ふたり揃ってお揃いの参加賞に終わったけれど。
 しょぼい景品を貰えば、思わず顔を見合わせては、ふたり笑いあっちゃう。
 それから賑やかな王国をふたり、色々と楽しく寄り道しながら歩いていれば。
「たまご。選んでみる?」
「魔法のたまご? 選びたーい」
 見つけたのは、色々な柄や大きさの不思議なたまごが並んだ、魔法のたまごやさん。
「色々なたまごちゃんいるん」
 そしてそうたまごたちを見つめる邏傳と一緒に、千羽もひとつひとつ真剣に眺めてみる。
 だって、魔法のたまごの話を聞いた時、そして実際にこうやって目の前にすれば、思ったから。
(「特別な条件、見つけて。中の子たちと、友達になりたい」)
 だから、どれがいいかなときょろきょろと視線を巡らせてみれば。
「あ。この子たち、同じ模様で色違いだ」
「ホントだ! お色違いのそっくりちゃん、一緒にくっついちょるんかわい」
 目に留まったのは、まるで雲が浮かぶ青空と翠空のような、同じマーブル模様の色違いの子たち。
 そしてふたり、自分の瞳に似た色の子のほうに、それぞれ手を伸ばして。
「俺たちとお友達なろ♡」
「もしかしたら、双子かもな」
 ……どんな子が孵るか、楽しみ、って。
 たまごの双子も、うさぎさんたちのイースターの冒険の仲間入り。

高城・時兎
古賀・聡士

 イースターといえば、イメージするのはやはり、たまごとかひよことか。
 それに何といっても、うさぎ。
 そして、古賀・聡士(月痕・h00259)は思わずちらり。
(「うさぎと聞くと……」)
 そう見つめるのは勿論、すぐ隣にいる彼女のこと。
 そんな聡士の瞳に映る高城・時兎(死人花・h00492)自身も、気合十分?
(「ウサギと聞いたら、参加せずにはいられない」)
 というわけで、きりりと聡士へと目を向ければ。
「ね、貸衣装着てみない?」
 まずはやはり、格好から!
(「時兎が衣装に興味を示すのは意外な気がするけれど」)
 聡士はそう一瞬、小さく首を傾けるも。
「貸衣装? いいよー」
 特に断る理由もないから、彼女の提案に頷いて返してそのままゴー。
 イースターっぽい衣装をそろえているという、貸衣装やさんへ足を運んでみれば。
「おれはスカート以外で見繕って欲しいな、あとはお任せで」
「僕もそれっぽい服で、全てお任せしようかな」
 それからお互いに着替えれば、お待ちかねのお披露目タイム。
「どう? 似合う?」
「聡士は……腹立つくらい何でも着こなすよね、あんた」
「時兎もいいじゃん、可愛らしくて」
「可愛らしいってなに、かっこいーでしょ」
「ほら、兎耳もつけようよ」
 ふたりが見立てて貰ったのは、アンティーク風な白黒うさぎコンビ。
 白うさぎな時兎も、格好良い路線でお願いしたのだけれど。
 黒うさぎ紳士な装いもさらっと着こなしている聡士に可愛いとにこにこ微笑まれれば、ぷくりと頬膨らませるも。
 素直にぴょこりと、お揃いのうさ耳を装着。
 準備ができれば、白黒うさぎ仲良く並んで、イースターな屋台巡りへと繰り出すことに。
 そして……ちょと、欲しい物ある、って。
 そうグッズを探す時兎と一緒に、聡士も並ぶ品々を見て回れば。
「お、縦ロールのお嬢様風立ち耳うさぎいるじゃん」
 それから、それをさくっと買って……はい、と時兎に手渡す聡士。
 だって、時兎のお目当ては、垂れ耳にシルクハットを被ったカイゼル髭の、紳士風白ウサギなのだから。
 そして今の自分にも似ている紳士ウサギを見つければ、うきうき購入して。
 聡士から渡された令嬢ウサギと一緒に、機嫌良く抱っこ。
 それから、賑やかでカラフルな冒険王国を色々見て回れば。
 ひときわギャラリーの多いイベントを発見。
「んじゃ、この後はたまころやってみる?」
「巨大たまご転がすのも楽しそ」
 それは、抱えるほど大きなたまごを転がしてピンを倒す、たまころ!
 勿論、ふたりも参加するつもりだけれど。
「ここでも勝負しようか」
「勝負、受けて立つ」
 またまたふたりで、今回はたまころ勝負です!
 でも、やっぱり忘れないうちに。
「その前に……仮装記念に、一緒、写真撮ろ、聡士」
「写真? 仕方ないなぁ、いいよ」
 ……ほら、写るようにもっと近づいて、って。
 聡士が、時兎を抱き寄せつつそう耳元で紡げば。
 不意に近付く距離に、照れた顔を少し隠して――スマ―トフォンのインカメラで、一枚パシャリ。
 多分自然と笑みも浮かぶ……のだけれど。
 でも、ちょっぴりまだどきどきもしちゃっている時兎は、聡士の策に既に嵌っている……のかも?

白・琥珀

 春の訪れを祝う祭りは、何かしらの形で、どの世界でもあるものかもしれないけれど。
 白・琥珀(一に焦がれ一を求めず・h00174)が今回赴いたのは、はじめての祭り。
「いーすたーというのはたしかEDENの方でも最近聞く祭りだな」
 そう、訪れた冒険王国で開催されているのは、イースター祭。
 参加したことはないのだけれど、でも琥珀はふんわりとは把握しているのだ。
「卵の祭だって言うのはしってるぞ」
 現に、カラフルなたまごのモチーフがたくさん冒険王国内を彩っていて。
 春らしいパステルカラーが、とても華やかなのだけれど。
 やはり、琥珀にとって、たまごといえば。
「卵料理は良い。菓子にもおかずにもつまみにもなる」
 美味しくいただくもの!
 ということで……なにがいいかなぁ、なんて。
 美味しそうな匂いが漂う沢山の屋台や店へと、目を向けて見れば。
(「さすがにしっかり重い肉料理は歳だし胃にもたれそうな気もするが」)
 いや……付喪神なのだから、実際その限りではないのだけれど。
 こういうのはそう、気持ちの問題というやつである。
 とはいえ、やはり、ちらちらっとどうしても気になってしまうのだ。
 ……でもやっぱり肉には耐えがたい魅力がっ、と。
 ということで。
「…………」
 注文する直前まで、ちょこっとだけ迷いをみせたものの。
「ラム肉のローストとベイクドハムを頼む、付け合わせのパンはお任せで」
 案の定、肉の魅力にさくっと負けました!
 でもまぁ、付喪神なので。
「んーうまい」
 頼んだからには、存分に美味しく味わっていただきます。
 いや、付喪神だからこそ、こういう時しみじみと思うのだ。
(「あまり年齢性別に囚われない付喪神で良かった」)
 だって、男なら肉料理、女なら甘味――それぞれで思いっきりどちらも味わえるのだから。
 それに、多分胃もたれもしないし、歯も弱くならない。付喪神万歳である。
 なので先程の葛藤は何だったのかというくらいに目一杯、肉と甘味の魅力を堪能することにして。
(「腹を満たしたら、探してみるか」)
 やはり気持ち的な問題で腹ごなしも兼ねて、琥珀は探してみることにする。
 不思議な生き物が生まれるかもしれないなんて噂の、魔法のたまごの店とやらを。

ネム・レム

 聞くところによれば、春の訪れを祝うためなのだという話なのだけれど。
 ふわふわぴよぴよ、うさぎやひよこもいっぱいで。
 冒険王国に満ちる色は、淡く優しいパステルカラー。
「なんやかいらしいお祭りやねぇ」
 ネム・レム(半人半妖の駄菓子屋店主・h02004)はそう興味深げに、イースター祭が行われている王国の風景を眺めながら。
 うさぎやひよこと一緒に並んで、ふわふわとてとて。
 ご機嫌に歩くハニーにも訊ねてみる。
「ハニーもぼんねっというんつけるー?」
 街の人たちがかぶっている、可愛い沢山の飾りや色合いの帽子――ボンネットをどうかと。
 そしてふりふりとふわふわ尻尾を降る様子を見れば、頭にちょこんとつけてあげて。
 こくこくと頷いて、ネムはとても満足げ。
「今日もお洒落さんやねぇ、よう似合とるよ」
 自前のふわふわお耳もあるのだけれど、今日は帽子についた長いうさ耳をぴこぴこ揺らして。
 隣をうきうき歩くハニーの姿を、微笑ましく眺めながら。
 それから今日は、王国に並ぶ屋台や店も、イースター限定仕様なのだというから。
「そうそう、ネムちゃんくれーぷいうん食べてみたかったんよ」
 ネムがそうわくわくとクレープを買ってみれば、ぴこり。
「見てみー、ハニー。ウサ耳付きやて、かいらしなぁ」
 クレープにも、うさぎさんのお耳が。
 だから今日はうさぎさんなハニーにも、ひとくちお裾分けして。
 ネムもはむりと口にしてみれば、思わずほわほわ。
「もちもち甘酸っぱーておいしいなぁ」
 口の中に広がるのは、クリームの甘さと絶妙に合っている、真っ赤なイチゴの春の味。
 そして、もちもちはむはむ、クレープをちょうど食べ終わった頃。
 何だかとても熱い視線を感じて、首を傾けながらも顔をあげてみれば。
「……どないしたんハニー? なんや気になるんあった?」
 なんだかそわそわしている様子のハニーに気づいて。
 こっち、と言わんばかりにとててっと駆け出すその後を追えば――。
「魔法のたまご……?」
 尻尾をぶんぶん振ってお座りしているハニーに連れてこられたのはそう、噂の魔法のたまごやさん。
 店先に並ぶ沢山のたまごたちを、一通りくるりとネムは見回してみてから。
「んー……せやねぇ……このコらは迷い子やなさそうやけど……」
 そう紡げば向けられるのは、くぅん、と甘えたような鳴き声とキラキラな眼差し。
 そして、そんなハニーにじいと見つめられれば。
「そないにキラキラなお顔されたら……なぁ」
 ……はいはい、抱っこやね、って。
 沢山あるたまごを前に、もふっと抱っこしてあげれば。
「ハニーが選ぶんはどの子やろねぇ。ん? ……その子か?」
 てしっとハニーがさしたのは、まるでさきほど食べたクレープみたいな、イチゴとクリーム色のマーブル模様のたまご。
 そして、選んだ子は毛ん中にでも……なんて思ったネムなのだけれど。
「……たまごにべったりさんやねぇ」
 ……まあ、このまま抱っこしとればええか、と。
 春の祭りの賑やかな空気を楽しみに、再び歩き出す。
 ゆらゆら腕の中で眠る子と、魔法のたまごを連れて。

氷薙月・静琉

 巡る季節の中でも、春におこなわれるイベントは特に華やかなものが多い気がするが。
 やはり、今回訪れた冒険王国の祭りもそう。
(「春は賑やかな催しが増える印象だな」)
 氷薙月・静琉(想雪・h04167)が足を運んだこのイースター祭とやらも、淡く優しく、賑やかな雰囲気で。
 ふわりと春空を行く静琉には、幽霊ゆえに実体こそないのだけれど。
 でも出来る事に限りはあるものの、好奇心を擽られたのだ。
 ……魔法のたまごなるものには少し興味がある、と。
 そして、そんな不思議な噂がある魔法のたまごのことも、勿論なのだけれど。
(「……いや、幽体で在るからと言って、食への関心は薄れたにせよ」)
 静琉は思わずゆうらり誘われる。
(「これだけ甘い香りばかりに当てられれば、多少の食指は動くというか……こほん」)
 春風に乗って運ばれてくる、美味しそうな匂いに。
 というわけで、静琉がやって来た店は。
「ドーナツを一つ、いただこう」
 甘やかなドーナツが並ぶ屋台。
 視認されずとも代金は当然しっかり置いておくつもりであったけれど。
 大きく首を傾けながらも、霊感が多少ある店員なのか、指定したドーナツを不思議顔で宙へと差し出してくれたから。
 引き換えに代金を渡して、無事にお買い上げ。
 それから、着物に零れぬ様にと注意しながらも、はむり。
 口に運んで食せば、狐尻尾がふいにぶんぶん。
 そう、護霊白狐の新月が欲しがる素振りを見せれば、細かく千切って口元へ。
「美味いか? ゆっくり食べるといい」
 そして嬉々として、はむはむ分けてあげたドーナツを食べる新月を見れば、静琉はふと思い出す。
 ……生きていた頃はよく甘い物も食べていたな、なんて。
 実体がなくなった今も、ドーナツをそっと頬張ってみながら。
 それから、新月と分けあいこしつつドーナツを食べ終われば、またふらり。
 春色やイースターモチーフでいっぱいの冒険王国を、気の向くまま彷徨っていれば。
「ふむ……これが魔法のたまご、か」
 見つけた店にずらりと並ぶのは、たくさんのたまごたち。
 そのカラフルさや、多種多様なる大きさや色柄に、思わず目が滑りそうになるも。
(「何かぴんとくるものがあれば良いが……」)
 そう思ったその時、ふと目に留まったのは、雪を思わせるような微か青みがかった、白い魔法のたまご。
 何だか自然と、静琉はそのたまごに手を伸ばしていたから。
 どんな子が孵化するかは、まだ今の段階では分からないけれど――そっと抱えて、祭り散策のお供に。

神代・京介
ライラ・カメリア

 春という季節のイメージも、明るくて華やかな印象だけれど。
 訪れた√ドラゴンファンタジーの冒険王国の風景は、まさにその印象通りで。
「随分と賑やかな祭りなんだな」
 周囲を見回し歩きながらもそう紡ぐのは、神代・京介(くたびれた兵士・h03096)。
 今ちょうどこの冒険王国では、春の季節を祝う「イースター祭」が行なわれているが。
「√ウォーゾーンだとこんな季節の祭りをしている余裕なんて無かったし、こういう祭りは平和を実感できて良いもんだな」
 物心ついた時から戦場で生きてきた歴戦の兵士である京介にとって、季節の祭り自体、身を置いている√を思えば馴染みがないもので。
 今回はひょんな事でライラ・カメリア(白椿・h06574)と共にここに来ることになったわけであるが。
 ライラはそんな隣を行く京介の姿をちらりと見れば、そわそわしてしまう。
(「クールで大人なイメージの京介さんが、わたしのような小娘と遊んでくださるだなんて」)
 憧れのような気持ちを抱く優しい彼と一緒なのが嬉しくて、ついはしゃいじゃう。
 それに、くるりと視線を巡らせれば、心踊らずにはいられない……その上お祭りの可愛らしいこと! って。
 だから改めて京介へとキラキラと輝かせた瞳を向けて。
「京介さん、ご覧になって? うさぎと卵で溢れているわ!」
 そうわくわく伝えるけれど。
 自分を見つめる彼を見れば、はっとして口を噤む。
(「──わたし、はしゃぎすぎかしら!?」)
 だから、大人な京介と並んで歩くのにふさわしく、お淑やかにしないと……なんて思うのだけれど。
 イースターでいっぱいな屋台を一緒に巡れば、どれも可愛くてきょろりと目移りしてしまう。
 そして、そんな隣ではしゃぐ少女を見て可愛らしいなと思いながらも。
「誘ってくれたお礼だ、お代は俺が出すから、好きなだけ買っていいぞ」
 京介がそう伝えれば、すごく大人……! って。
 はわぁとキラキラ向けられるのは憧れの眼差し。
 それから心躍るまま、ライラが選んだのは、可愛くて美味しそうな一品。
「ふふっ、それではお言葉に甘えて。うさみみいちごスムージーが飲みたいですっ」
 表情には出さないけれど、そんな彼女の目線に内心照れながらも。
(「未成年と二人だし、俺も酒は控えてノンアルのカクテルとローストラムでも買うか」)
 京介は彼女の分のうさみみいちごスムージーと、そして自分の分も購入するのだけれど。
 自分のノンアルコールのカクテルにもぴょこりと、サービスで可愛いうさ耳がついていたのは、ちょっぴりだけ予想外であった。
 そして、誘ってくれたお礼にと買ったうさみみいちごスムージーを手渡されれば。
「まあ、お礼を言うのはわたしの方こそ! 今日は着いてきてくださってありがとう……!」
 だからライラも、そのお礼にと。
「京介さんにもうさ耳カチューシャを……」
 キュートなうさぎさんになれるお耳を彼にも……どうかと、思ったのだけれど。
 苦笑いしながら、うさ耳カチューシャはさすがに遠慮する京介。
 けれど……やっぱりいらないかしら、なんて。
 ぴょこりとうさ耳を揺らしながらこてりと首を傾ける少女へと。
「それを着けているライラはとても可愛らしいぞ」
 瞳を細めて告げれば、再びライラから向けられるのであった。
 思わずやはり心の中で照れてしまうような、煌めく憧れの視線や嬉しさいっぱいの笑顔を。

リチャード・マスクスフェル
蓬平・藍花

 足を運んだきっかけは、星詠みから聞いたダンジョン攻略のためなのだけれど。
 ダンジョンの最寄りにある冒険王国は今、春の訪れを祝う祭りで賑わっていて。
 リチャード・マスクスフェル(青薔薇・h06496)は、華やかな春の色に満ちる街を歩きながらも思う。
 誘いの声を掛けた友人、蓬平・藍花(彼誰行灯・h06110)とも一緒なのだから。
(「折角のイースター楽しみましょうか」)
 それから、優しい春風にワンピースの裾をふわりと揺らす彼女へと、向けたその瞳を細める。
「愛らしい格好ですね」
 そんな今日も紳士的な言葉や振る舞いの彼の袖を、藍花はふとギュッと握って。
「いっぱい楽しむ為にも……こうしてて、いい?」
 見上げるような視線を向けながら、こてりと首を傾けて訊いてみれば。
「ふふ、よろしいですよ」
 ……エスコートさせていただきますね? と返る微笑みに。
 今度はひとつ、藍花はこくりと頷いて。
 ぐ、と密かに気合も十分――よし、これで準備万端、って。
 リチャードだって、祭りでできることは、全て彼女と満喫するつもり。
 ――兎耳のカチューシャも、イースターポンチも、魔法の卵も、全部制覇してしまいましょう、と。
 というわけで早速、こんな提案を。
「兎耳のカチューシャをつけて、ダンジョンの話をイースターポンチを買うついできいてみませんか?」
 まずはお互い頭に、長くてもふもふな兎のお耳のカチューシャをぴょこりと着けてから。
 情報収集がてら次に向かうのは、イースター色溢れた様々な飲み物を提供してくれる店。
 ソフトドリンクからスイーツ系の飲み物、それに、アルコールもあるという話だから。
 折角だからと頼んでみるのは、店のマスターもお勧めのカクテル、シャンパン入りのイースターポンチ。
 街を彩るたまごたちみたいな果物が、しゅわりとシャンパンの中で踊って。
 一口飲んでみれば、藍花はほわり。
「……美味しい、ね……?」
 そうニコニコ顔になっちゃうのは、こうやって好きなお酒が楽しめて。
 口に運んだイースターポンチが美味しいのも、勿論なのだけれど。
(「……お揃い~……♪」)
 お互いの頭でぴょこんと揺れるウサ耳カチューシャに、こっそり喜んじゃう。
 そして、ダンジョンの話もさり気なく聞いてみれば。
 やはり出てくるのは、魔法のたまごの噂話。
 だから、その噂の真偽はともかく、気になるのも確かだから。 
「あとは魔法の卵を探すのに費やしましょうか」
 リチャードはそう告げつつも、再び彼女と共に歩き出して。
 冒険王国内を、ぐるりと巡ってみるつもりだけれど。
「ふふ、ダンジョンに行く前から大忙しですよ、藍花さん」
 ……つかれたら言ってくださいね? と気遣いの言葉をかけながらも。
 程なくして疲れている様子を察すれば、ちょっぴりひと休み。
「……うぅ、体力なくてゴメンねぇ……」
「休み休みいきましょう?」
 けれどふと、街の端に開かれた店に人が集まっていることに気づいて。
 体力も少し復活した頃、藍花はリチャードと共に見つける。探していた、魔法のたまごのお店を。
 それから、色々な大きさや色や柄がある、たくさんのたまごの中から。
「この子が、いい……」
 藍花がそうそっと手に取って大事に抱っこしたのは、向けた瞳とお揃いの色をした藍色の入った子。
 それからここでも、ダンジョンの話を訊いてみれば。
 魔法のたまごがダンジョンで孵るかもしれないという噂があることと。
 これから攻略しにいくダンジョンは、空のダンジョンであることを聞き出すけれど。
 藍花は再び、首をこてんと傾げて。
「……空、飛んでいくの……?」
 藍色のたまごを抱えたまま、ふと空を見上げてきょとりと不思議顔。

リニエル・グリューエン
レティシア・ムグラリス

 やって来た冒険王国で開かれているという、春の訪れを祝う祭り。
 レティシア・ムグラリス(シャリス教団聖女・h06646)はその賑わいに瞳を細めて。
「とても賑やかなお祭りですね、イースター祭り」
「イースター祭、たしかシャリス教とは違う宗教の聖人の復活祭だったと記憶してるわ」
 リニエル・グリューエン(シャリス教団教皇・h06433)も、そう思い返しつつ紡ぐのだけれど。
「人並みに謂れは知ってはいるものの、詳しい話は知りませんので、良ければ後学も兼ねてお勉強の機会と致しませんか、リニエル様?」
「本当は聖女様……じゃなかった、レティシア様と一緒に美味しいものを食べ歩きたかったけど」
 人の多い祭りで聖女様は恥ずかしい、と以前レティシアが言っていたことを思い出してそっと言い直しながらも。
 美味しそうなものが沢山並ぶ店の方を見遣って、そわりとリニエルは言ってみたものの。
「ぇ?食べ歩き? ……リニエル様、最近頂きすぎでは」
 年齢の割に妖艶な身体を見たレティシアにそう忠告されてしまって。
 一瞬しょぼんとするものの、それはそれとして。
「他の宗教の祭りの由来を聞くのもまた勉強なり、よね!」
 気を取り直してそう紡げば、レティシアとともに、この冒険王国の人に色々と話を聞いてみることに。
 それに勿論、シャリス教の信仰者が増えてくれれば、それは喜ばしいことなのだけれど。
(「流石にこの場で布教など空気を読まない行為はしないわ!」)
 この冒険王国のイースター祭は宗教的な意味合いは薄めだとはいえ、リニエルはきっちりその辺は弁えて。
「なるほど……そのような謂れが、本当に勉強になりました」
「ふむふむ……、説明もわかりやすいわ……」
 一通り、イースター祭の謂れやこの王国に伝わる話などを興味深く聞いてから。
「あとは、魔法のたまごですね。噂では、孵る生き物は様々で。大きかったり、もふもふだったりと、人によるようです」
「……って、魔法のたまごにもふもふですって!?」
「ありがとうござい……って、リニエル様!?」
 付け加えられた言葉に素早く大きく反応を示したリニエルの勢いに、レティシアは思わず瞳を瞬かせてしまうけれど。
「レ、レティシア様! は、はやく、魔法のたまご、たまご!」
「はい? 魔法のたまご?もふもふ……?」
 くるりと自分へと視線を向けては、逸るように続ける彼女の声に、再びきょとん。
 それからリニエルは一度深呼吸をして、昂る気持ちをちょこっとだけ落ち着かせてから。
 でもやはり、力強く勢いよく、こう紡ぐのだった。
 ――もふもふ、私達のもふもふを手に入れましょう! と。
 というわけで、次の目標は、もふもふ……いえ、魔法のたまごの入手です!
 そしてわくわくそわそわ、逸るように足早に向かわんとするリニエルに、レティシアはあたふた並んで。
「わ、わかりましたから、そんなに慌てないでぇ!?」
 もふもふに滾る彼女を宥めつつも、共にいざ向かうのは勿論、噂に聞いた魔法のたまごの店。

空廼・皓
白椛・氷菜

 やって来た冒険王国いっぱいに満ちる彩りは、優しいパステルカラー。
 けれど可愛らしくて淡いそんな色たちは、とても華やかで。
 そこかしこで目にするたまごの模様は、ひとつひとつ違うもの。
 そんなイースターエッグを模した沢山の飾りを目にすれば、空廼・皓(春の歌・h04840)のお耳もぴこり。
「イースターは、卵の、おまつり?」
「そうね……卵と兎と、何より春のお祭りみたい?」
「んん……卵と、うさぎ?」
 白椛・氷菜(雪涙・h04711)の言葉を聞きつつ、皓はこてりと首を傾けるけれど。
 でも、このイースター祭のことはふんわりしか把握していなくても。
 表情にこそ出ないけれど、聞いた話には興味深々。
「氷菜、俺魔法のたまご。探しに行きたい……」
「うん、私も魔法のたまごは気になってたわ」
 その人それぞれの不思議な生き物が孵るかもしれないという噂の、魔法のたまごのことは。
 というわけで、そんな魔法のたまごを探しに、いざ出発――。
「……の前にこれ」
 そう皓がそっと差し出すのは。
「……ん? え、私? 着けるの?」
「借りた。氷菜きっと、似合う」
 長いお耳がぴょこりと付いた、うさ耳カチューシャ。
 そして、期待にふりふりと尻尾を揺らしながら、彼女のことを見つめる皓。
 それから、そっと氷菜は受け取ったうさ耳を頭に着けてみるのだけれど。
「やっぱり可愛い」
 こくりと大きく皓は頷いているものの、でもやっぱり。
「……少し恥ずかしい……」
 ちょっぴり落ち着かない氷菜。
 でも、皓はくるりと周囲を見回してみて告げる。
「おまつりだしみんなしてる」
 そう、今日はお祭りなのだから大丈夫。
 だから皓も満を持して、うさ耳をすちゃりと装着……しようとしたのだが。
「俺もって思ったけど……耳とぶつかる……」
「ああ、晧は狼耳とぶつかりそう」
 何度か、えいえい、って試してはみたのだけれど。
 どうしてもぴこぴこ、自分の狼耳と当たってしまうから、断念してちょっぴりしょんぼり。
 けれどぺたりとする彼の耳や尻尾を見つつも、氷菜は思っていることを彼に告げる。
 ……でも、晧は自前の耳が素敵だから良いのよ、と。
 それに、ふたりで王国を歩いていれば、皓も沢山の素敵を見つけては少し気分も上がって。
「食べ物も色々ね」
「食べ物も卵と兎たくさん……氷菜何か食べる?」
 まずは腹ごしらえをすることに。
 屋台や店の数も多くて、イースターモチーフのフードやスイーツも目移りするくらい沢山あるのだけれど。
 皓は尻尾を揺らしながら、見つけた屋台に足を向けて。
「俺はクレープ」
 ……カチューシャ付けれないから代わり、って。
 自分のかわりにうさ耳がぴこんと付いた、クリームといちごがたっぷりのクレープを選べば。
「んー……私もクレープにしよう」
 氷菜も同じものにすることに。
 可愛すぎる動物さんのスイーツだったら、食べて崩すのは罪悪感があるのだけれど。
 でもうさ耳がついているだけならば、そういった気持ちにもならないし。
「あといちごたっぷり嬉しい」
「……ん、おいし」
「ね美味しい」
 傍から見れば、あまり表情を変えないふたりが黙々とクレープを食べているように見えるかもしれないけれど。
 皓の尻尾はゆらゆらご機嫌に揺れているし、氷菜もそっとクリームの甘さといちごの美味しさにほわり。
 それから美味しくクレープを食べ終わったら、探索再開。
 魔法のたまご屋さんを探して、王国を巡っていたのだけれど。
「ここたまご屋さん? すごい、ね……たまごたくさん」
「わ……聞いていたけど、本当に色々あるわね」
 祭り会場の端っこにあっても、とても目立つほど、カラフルなたまごがいっぱい並ぶお店を見つけて。
「氷菜は? 買う?」
 皓はそう訊ねながらも、真剣にたまごを物色してみて。
 ふいにお耳がピン、そっとその手を伸ばす。
「うーん……俺はこれ」
 空色のグラデーションに星がきらきら輝いているたまごを見つけて。
「晧のきらきらしていて綺麗。私は、どれにしよう……」
 そして氷菜も、沢山のたまごたちを眺めてみれば。
「……うん、この卵にする」
 優しく手に取ったのは、夜空色のグラデ-ションに星や雪の小さな模様が入ったたまご。
 落ち着いた色合いだが、ころんと手のひらサイズで可愛いし……それに何よりも。
「こちらも綺麗よ」
「とってもきれい。ちょっと似てる」
 ふたり選んだ子たちを並べてみればふたり、内心とてもそわそわしちゃう。
「どんな子達が生まれるのか、楽しみね」
「楽しみ、だね」
 でも、並べたふたつのたまごを改めて見れば、間違いないって確信する――きっと可愛くて綺麗な子達、って。

雪願・リューリア
夢衣・李桜

 √ドラゴンファンタジーの世界でも、春がくれば皆わくわく心が躍って。
 お祭りとなれば、楽しそうな声でいっぱいに溢れる。
 それに加えて今日は、春らしいパステルカラーや可愛いうさぎやたまごのモチーフでいっぱい。
 そんな、イースター祭りが開催されている冒険王国を歩きながら。
「そういえばこうして李桜と一緒にお祭りに参加するのは初めてだったかな」
 雪願・リューリア(願い届けし者・h01522)は、ふと隣を歩く夢衣・李桜(ドラゴン・ドリーム・h04291)と目を向けて。
「神聖竜でアイドルをしている儂とのデート、ありがたく思うのじゃ」
「一応、女の子のでいる間はアイドルをしているみたいだけど、そんな可愛い服装でバレたりしないのだろうか?」
 小さく首を傾けつつ、思った疑問を口にしてみる。
「っていきなり失礼な事を聞いてくるのじゃな」
 李桜はその声に、ちょっぴりむぅと返すも。
 ダンジョン攻略の前に食べ歩きをしておこう、と周囲を見回しながらも、リューリアは続ける。
「なんだかんだで李桜にはお世話になっているし、好きなのを選んでもらおうかな」
 そしてそんな、好きな物を食べていいという言葉を聞けば、機嫌を取り戻してうきうき。
「お言葉に甘えさせてもらうのじゃ」
 李桜は早速、気になるものをあれもこれもと調達する。
 お洒落なデビルドエッグにベイクドハムといったイースター定番料理から、イースターパフェやパンケーキのイースターデザートまで。
 そう、楽しむのは、イースターメニューフルコース!
 リューリアもキュートなひよこミルクセーキやエッグサンドを食べて腹ごしらえしながらも。
 沢山食べている李桜を見ては、つい目移りしてしまうけど。
「リューはあまり食べていないようじゃが大丈夫かの?」
「食べ過ぎないようには注意だぞ」
 李桜に告げつつも、自分に言い聞かせるように、そう口にした後。
 再びリューリアは、ふと思った疑問を口にしてみるも。
「そういえば竜である李桜も卵から生まれたのか?」
「ん、儂が卵から生まれたかじゃと?」
 李桜は、はむはむと美味しくて可愛い料理やスイーツを食べながらも紡ぐ……やっぱり失礼じゃな、なんて。
 それからリューリアが気がかりなことといえば、もうひとつ。
「魔法のたまごから何が生まれるのか、気になるけれど、どこで手に入るのだったかな?」
 そしてそんな言葉を聞けば、李桜は呆れたように溜息をついてみせるも、えっへん得意気に返す。
「魔法のたまごも手に入れ方もわからないようじゃし、リューは儂が居ないと駄目なようじゃ」
 リューリアも、李桜に魔法のたまご入手のための探索は託して。
「うん、任せたぞ」
「……うむあっちに気配を感じるぞ」
 李桜の所望するものをその行く足で何気に買い足しながら――いざ向かうは勿論、魔法のたまごの店。

茶治・レモン

 訪れた冒険王国が賑やかなのは、今日は春を祝う祭り――イースター祭の日だから。
 そしてそんなお祭りにやって来た茶治・レモン(魔女代行・h00071)なのだけれど。
 ふいに、ひょこりとしゃがんで。
 ショート丈のズボンから見える膝小僧に両手を添えた格好で、じいと見つめ合う。
「うぅ、うさぎもヒヨコも可愛い……!」
 王国をぴょこぴょこお散歩している、うさぎやヒヨコたちと。
 でもそんな動物たちは気侭にお散歩しているくらいだから、人には良く慣れていて。
 見つめ合った後、レモンへと近寄ってきてくれたから。
「ふふ、悔いのない様にいっぱい愛でて帰りましょう」
 周囲の王国の人に予め聞いてみたら、触られるのが好きな子ばかりだというので。
 ……ふわふわ、もふもふ、可愛いなぁ。
 なでなでしてあげれば、とても喜んでいるみたい。
 だから、いっそのこと。
「連れて帰……かえ……う、ぐぐ、我慢です!」
 いえ……せめて、今だけでも、悔いなく戯れます!
 そして傍から見れば、少年がもふもふたちと戯れているという尊い絵が出来上がっていたのである。
 それからもふもふたちとわかれ、途中店の人に渡されるまま、丸い頭にちょこりとウサ耳カチューシャを着けてから。
「折角のお祭りですから、美味しい物も食べないと、ですね!」
 並ぶ店をくるり見てみれば、沢山のものが目移りするほど――。
「えっ……レモンひよこといちごうさぎのケーキ……?」
 ……いえ、目移りすることなどなく、レモンは即決定する。
「レモンは僕の名前だし、ひよこも苺もうさぎもケーキも好きです」
 ――素敵な出会い! 是非いただきましょう! って。
 それから食べることが好きなレモンは、レモンひよこといちごうさぎシリーズのスイーツとの出会いに、表情は変わらないけれどほくほくしながらも。
「……あれ、ここは何のお店ですか?」
 ふと再び足を止めたのは、たまごがずらりと並ぶ店の前。
 それから、思い出す。
「「魔法のたまご」……そう言えば、『ドラグル』で聞いた気がします!」
 あくまで噂かと思っていたけれど。
 まさか本当にあるとは……と、瞳をぱちり瞬かせてから。
「あの、僕も選んで良いですか?」
 早速、たまごたちに目を向けてみて。
 連れて帰りたいので、掌サイズのたまごにしましょう――なんて思った、その時。
「あ……これ」
 レモン色の瞳に飛び込んできたのは、白色に、色とりどりの花模様が咲いた子。
 そのたまごをそっと手に取って、可愛いらしいですね、ってこくり頷いた後。
「あの、この子下さい!」
 大事に手のひらで包んで、歩き出す。
 また新たな素敵な出会いに、わくわくな気持ちで――これからの冒険は、この子も一緒に。

伏見・那奈璃

 春の訪れを祝うお祭り、イースター祭。
 √ドラゴンファンタジーの冒険王国で催されるという春の祭典は、毎年話題のようで。
 星詠みの話を聞いた後、伏見・那奈璃(九尾狐の巫女さん霊剣士。・h01501)もばっちり事前にチェック。
「ふむふむ、色々と楽しそうですね」
 思わずこくこくと小さく頷きながらも、ゆらりと沢山の尻尾を揺らしつつ呟いて。
 そんな那奈璃が眺めているのは勿論、この祭りの情報満載だという「ドラファングルメちゃんねる」の配信。
 イースターの祭りということもあって、パステルカラーの春らしい彩りだとか。
 ふわふわもふもふした、うさぎさんやひよこさんだとか。
 イースターならではな楽しそうな参加型のイベントや催しなども盛り沢山のようだけれど。
 でも――やはり、那奈璃の興味関心が大きいのは、イースタースイーツ!
 スイーツとひとことにいっても、イースターモチーフの可愛い甘味はたくさんで。
 どれにしようか、目移りしちゃうほどなのだけれど。
 でも、実は今でさえ既に何件かお店を回っている那奈璃であるが。
 相変わらずの健啖家ぶりで、はむはむもぐもぐ。
 勿論スイーツを中心にペロリと平らげては、また別な場所へと美味しい物を求めて、見に行ってみたり。
 それから、新たにイースターパフェを超特大で注文すれば、提供を待っている間に、店員や他の人にも訊いてみることに。
「「魔法のたまご」の噂やこの王国の近くにあるダンジョンの話を聞いたのですが」
「ああ、魔法のたまごはこの先の店で貰えるよ」
「不思議な生き物が孵るって噂だが、本当かねぇ」
「この王国の近くにある「空のダンジョン」で孵った、って聞いたことあるな」
 そう、スイーツや食事が気になるのは勿論なのだけれど。
 不思議な「魔法のたまご」のことも気になるし、攻略対象のダンジョンの噂も聞いておきたいって、那奈璃は思ったから。
 他にも、イースターごはんを買った店でだったり、新しく見つけたスイーツの店でも、ダンジョンや魔法のたまごについてのことを訪ねてみて。
 勿論自分でも、那奈璃は探して歩いてみる。
 だって特に「魔法のたまご」は、スイーツ以上に実物を手にしてみたいと思ってるのだから。
 というわけで、最優先にたまごの店を探す……のは勿論なのだけれど。
(「ただ、最優先なのですが……」)
 目の前のスイーツの誘惑には勝てるはずも無く、たまごの店に向かう道すがらも。
 心擽るも美味しそうなものを見つけては買ってみて――もぐもぐと食べながらの捜索です!

白・とわ
祭那・ラムネ
兎沢・深琴
シルヴァ・ベル
千桜・コノハ
七・ザネリ
メグル・シグナス
ジャン・ローデンバーグ
戀ヶ仲・くるり

 吹き抜ける風もすっかりあたたかくて、晴空から降る陽もぽかぽかと春めいているけれど。
 その冒険王国に足を踏み入れれば、どこもかしこも春色でいっぱい。
 そして、ジャン・ローデンバーグ(裸の王冠・h02072)が、眩くひかる翠の瞳をさらにキラキラと輝かせているのは。
 王様として、皆が楽しそうで幸せそうだからであって、無邪気にはしゃいでいるわけでは――。
「わー! すげえ、めっちゃ風船とか飛んでる! 本当にパレードって感じだな」
 ええ、たまごみたいな風船が空いっぱいに浮かんでいるのを見れば、わくわくそわそわ!
 何せ今日は、春の訪れを祝うお祭りの日。
「此処ではイースターをこんなに大々的にお祝いするんですのね」
「ふーん、これがイースターか。初めて参加するけど皆浮かれてるね」
 お互いきょろりと視線を巡らせるシルヴァ・ベル(店番妖精・h04263)や千桜・コノハ(宵鴉・h00358)の言うように、イースター祭が行われているのだ。
 七・ザネリ(夜探し・h01301)も、賑やかな街をぴょこりと跳ねるように歩く、楽し気な人々を見遣って。
「……至る所で皆耳が生えてやがる。盛況じゃねえか」
「はなやかですね!」
 メグル・シグナス(恵‪ㇽ‬白鳥座・h00484)もそわり、皆とともにイースターで盛り上がる街を歩く
 ……お友達とあそぶのもはじめてで、どきどき、って。
 そんな浮足立つ皆よりも少し後方を歩くのは、祭那・ラムネ(アフター・ザ・レイン・h06527)。
 お祭りの冒険王国は人も沢山だから、迷子が出ないようにと、兄として生きてきた癖で。
「すごい人……皆いる?」
「おい、逸れるなよ。迷ったらデカいのについてけ。俺じゃねえ、深琴だ」
「付いていくなら、私よりザネリさんの方が目立つと思うけどな」
 兎沢・深琴(星華夢想・h00008)は皆が逸れていないか確認しつつも、それこそ背高な七・ザネリ(夜探し・h01301)を見上げてお願いを。
「年上側として卵組の引率よろしくね」
 これからは一旦、二手に分かれてお祭りを楽しむ予定なのだけれど。
 でも――その前に。
 白・とわ(一足らず・h02033)はくるりと周囲を見回して、こんな提案を。
「みなさませっかくですのでご一緒に着けませんか?」
 とわが見つめる先にあるのはそう、うさ耳カチューシャ。
「恰好から入るのも大事……」
「えぇ、深琴さま! こういうのはカタチからが大事!」
 深琴の声にこくりと頷けば、提案者としてまず、白いウサ耳帽子を選んで。
「引っ張ると耳が動くのです……楽しい」
 ぴこぴこ動く長いお耳にほわり和みながら、すちゃりとかぶって。
「みんなのウサ耳……いい……」
 戀ヶ仲・くるり(Rolling days・h01025)は、とわの提案にそう呟くも。
 自分がかぶるとなれば、それはまた別――。
「私はやめと……うわとわちゃんかわいいつけますぅ!」
 かと思ったけれど、ぴこぴこウサ耳のとわを見れば、お揃いで即着けます!
 深琴も、提案に乗ってうさ耳カチューシャをぴょこりと装着。
「お祭り気分が増してきたかも」
「着けるか耳。とわ、カッコいい王冠ついてる奴ある?」
「ジャンさま! 王冠付きのございましたよ」
 そしてやはりジャンは、うさぎはうさぎでも、堂々たるうさぎの王様に。
「お耳もつけるのですか? ふわふわのがいいですわ」
「人形用のものもあるかしら」
 メグルは一等ふわもふのものを、シルヴァもつけられる人形サイズだって勿論あります。
 そして皆が着々とそれぞれ、イースターウサギになっていく中。
「うさ耳!? 迦楼羅としてのアイデンティティが……」
 本当はウサギさんではなく、鳥さんなのだけれど……し、仕方ないなぁ、と。
 今日だけ、迦楼羅ウサギになるコノハ。
 そんな皆のウサ耳姿を見れば、とわはこくりとひとつ頷いて。
「愛らしいうさぎさまがたくさんですね」
「カチューシャ? お、可愛い。折角だから写真撮ろうぜ」
「ラムネさま写真を撮ってくださるの?」
「写真も撮るの!?」
 そう思わず瞳を見開くコノハの、迦楼羅としてのアイデンティティが……いえ、撮りますけれど!
 何せ、今日のコノハは既にもうウサギなのだから。
 それに……あ? 耳なんざぜってえ付けねえ、とウサ耳は拒否したザネリだって。
「では、みなさまではいピース」
「……記念だからな」
 まあ、ピースはしますし。
 くるりも皆と一緒に、ピース!
 ぱしゃりとシャッターを切って、コノハは皆と撮れた画像を確認しつつも、そっと思う。
「……まあ悪くないか」
 ちょっぴり面映ゆいものの、でもウサギさんも悪くないって。

 というわけで、二手にわかれて、たまごを探しに行った面々を見送ってから。
「女性だけっていうのも心配だからな! 王様が同行してやろう、パフェに!」
 とわ、くるり、深琴、シルヴァについていくことにするジャン。
 いや、彼女たちが、パフェを食べに行くということは聞いていたし。
 同行と言いながらも、美味しそうで可愛いイースターパフェに、密かにわくわくしちゃうジャンであったのだけれど。
 だが彼女達の目的は――パフェはパフェでも、ただのパフェではない。
「私達の戦いはでっかいパフェ! これは浪漫!」
「イースターパフェは超特大サイズ、浪漫でございます」
「目指すは超巨大パフェ。大きなパフェには夢が詰まっている」
「折角人数が集まったのです。挑んでみましょう――超特大パフェに」
「……え? 超巨大?」
 超巨大イースターパフェです!
 これから始まるのはそう、戦い。
 そんなくるりの言葉に深く頷きつつも、とわが皆と楽しくはじめるのは、甘くて美味しいエッグハント!
 そして嬉々と注文して暫し開戦までそわりと待てば、どんっとテーブルに置かれる超特大イースターパフェ。
「シルヴァちゃんと並ぶとパフェの存在感が際立つのね」
 深琴はそう、超特大パフェとシルヴァを見て、その大きさをより実感しながらも。
「甘いものはいける口よ。王様もくるりさんも頼りにしてるから」
「深琴さんは甘いの好きですか? そっかぁ! はい、私も食べます!」
 くるりも聳え立つ超特大パフェを前に、気合十分。
 それからジャンは改めて、じいと超特大イースターパフェを眺めてみて。
「シルヴァの背丈以上あるぞ、このパフェ。つーかプリンだけで背丈以上ある。パフェにケーキ類もチョコエッグも乗ってる……」
 確かにイースターモチーフいっぱいで、キュートなのだけれど。
 いちいちどれもやたら大きかったり、盛り盛りだったり……いや、超特大なのだから、当然のこと。
 それに、パフェの中にはイースターエッグが隠されているとのことだから。
「……まあ、じゃあ、先にパフェエッグハントでもするか」
「今日のとわはエッグハンターですゆえ」
 すちゃりと、スプーン片手にいざ!
 そうやる気満々なとわに続いて、くるりと深琴もスプーンを手にして。
「……エッグハンターとわちゃん!」
「とわさんも気合十分ね、頼もしいな」
 早速、いただきます! ……の前に。
「こんなに愛らしいと食べてしまうのがすこし可哀想ですけれど……」
 シルヴァはパフェを見上げつつ、首を小さく傾けるも。
 ひらめいたのは、こんな名案。
「そうだわ、写真に残しておきましょう」
 ということで、念動力でスマートフォンを動かして。
 全員が入る画角で――ぱしゃり!
 そして食べ始めた後も、思い出にとシャッターを切っていって。
「わぁいピース!」
 くるりと一緒に、ジャンも中に入っていたミルクティ味のアイスを摘まみながら、スマートフォンに向けて王様ピース!
 そして勿論、エッグハントな戦いだって白熱して。
 深琴はエッグチョコを探しつつ、アイスにプリンと飽きないように場所を変えて楽しむ作戦。
 皆も嬉々と、スプーンという得物で超特大パフェの牙城を崩さんと食べ進めていって。
 ――さてたまごは誰の手に!?
 というのも、非常に気になるところなのだけれど。
「なんかしょっぱいもの食べたくなってきた」
 早速、しょっぱいものが恋しくなってしまうジャン。
 皆の気合も十分で、パフェもすごくかわいくて美味しいものの。
 とはいえ、限界はくるもの……の、はずなのだけれど。
「小さなカラトリーとシルヴァさま! あまりにも愛らしい……」
「このパフェとシルヴァさんの組み合わせ、とてもいい……あれ、食べるの早くない?」
「気付けば一番小さい人が一番食べてるような……」
 使用しているその人形用食器のキュートさも、さることながら。
 皆の視線が自然と向くのは、シルヴァ。
 そう……何せ彼女は「実は:大食い」。
 それを、今こそ発揮するときが来たようである!
 いえ、可愛らしい人形用食器でも、食べるペースが皆とかわらないことはもうバレているようであるが。
 そこはそれ――なんでも美味しく頂きます!

 一方同じ頃、メグル、ラムネ、ザネリ、コノハが向かうのは。
 この祭りに出ているのだという、噂で聞いた不思議な店。
 沢山の屋台が並ぶ賑やかな祭りの風景の中、魔法のたまごがもらえるという店を探してみるのだけれど。
「かわいいクレープ……」
 メグルの足がふと止まったのは、クレープ屋さん。
 そんな様子に気づいたラムネは、彼の視線を追いかけてみれば。
「メグル、クレープ気になる? うさ耳付きだって、かわいいな」
 逸れないようにと手を差し出す。一緒に食べに行こう、って。
 その言葉を聞けば、ほわっと嬉しさを咲かせて。
「ラムネ、ごいっしょしてくださるの?」
 差し出された手を取って、一緒にクレープを買いに、嬉しくて楽しい寄り道を。
 それから、手にしたクリームとイチゴたっぷりなうさぎさんのクレープをきらきら眺めながらも。
 メグルはふと、あるお店を見つける。
 そしてザネリへと、こう言葉と視線を向ける。
「お酒を使ったスイーツもあるみたいですわ、ザネリ、いかが?」
 ……ほんもののお酒のほうが良いかしら、なんて。
 自分もクレープを買って嬉しいから、好きなものをみんなも買って食べたらきっと嬉しいだろうって。
 そして、そんな提案を聞けば。
「さて、メグル、良い案だ」
 大きくこくりと頷き、隙あらば酒を――と言いたいところなのだけれど。
 ザネリは何気に興味津々な様子で、こう紡ぐ。
「まずはたまごだ」
 けれどそう苦労せずとも、お目当てのお店は見つかるのだった。
「みんな卵気になるんだね」
「不思議な卵屋さん、さすがに大盛況ですわね」
「つか普通に屋台で売ってんのがすげー」
 祭り会場の端にひっそりとある店に関わらず。
 噂を聞いた人たちなのか、様々なたまごがずらりと並ぶ屋台は人気で、人だかりができていたから。
 そしてザネリは見つけた店へと足を運びながらも、今度は逆にコノハへと目を向けて。
「で、コノハちゃんはどいつを選ぶんだ?」
「だーかーらーコノハくんね?」
 返る言葉に楽し気に笑ってみせつつも、こう告げる。
「あー。俺に子守は向いてねえ、んで。お前らが悩んでるのを後ろで眺めてるとしよう」
 それから――面白、なんて。
 ラムネは楽しそうな彼を見た後、コノハへと視線を移して。
「……だってさ、コノハ」
 ……ザネリさん、面倒見良さそうなのに、なんて思っていれば。
「ザネリってなんだかんだ面倒見良さそうなのにね。じゃあ僕たちで卵選ぼうか」
 コノハも全く同じことを思ったようだけれど。
 沢山並ぶたまごたちへと、ラムネも改めて目を向ければ――ふと見たのは、隅にある真夜中色のたまご。
 そしてその子へと、自然と手を伸ばさんとしたのだけれど。
 刹那、ハッと我に返ったのは、皆の思いの声をきいたから。
 メグルはたまごを眺めながらも、こうコノハへと訊ねる。
「もし、孵す方法が分かっても……コノハは、育てようと思います?」
 ……こどものわたくしたちでも、大丈夫でしょうか、なんて。
 どのような生き物がうまれるかわからないから。
 世話をしなくてもいいような生き物かもしれないし、逆に世話がとても必要な子かもしれない。
 その際、孵したはいいけれど……きちんと育てられるのか。
 冒険王国に引き取って育てて貰えることもできるようだけれど、でもやはり。
「……メグルの気持ちもわかる」
 コノハはそう紡ぎながらも、でもそれでも。
 眼前のたまごを見つめるのは――不安よりも好奇心が勝っているからで。
 だから、優しいゆえに迷うメグルへとこう返すのだった。 
「じゃあ孵ったら一緒に育てようよ。それならなんとかなるかも」
 そして一見、面白がっている風であるけれど。
「まあ、子育ての手伝いぐらいならしてやる」
 でもやはりそう続けるザネリは、何気に面倒見が良いのかもしれない。
 ラムネも、そんな彼らの会話を横で聴きながら。
「この子が誰かに選ばれるならそれでいい」
 色々と思うことはあるけれど。
 改めて、真夜中色のたまごを見つめて口にする。
「けど一人ぼっちなら、……それは寂しいよな」
 だからもう迷わずに、その子を手にして。
「ラムネはその卵にするの?」
 コノハも、見つけた心惹かれるたまごに同じように手を伸ばす。
 メグルもそんな返事に頷いてから。
 不安ながらも、でもやっぱり皆と同じ気持ちだから――好奇心のままに、その手を伸ばす。
 それから、それぞれのたまごを手にすれば。
「ふふ、どんな子が孵るか楽しみだね」
「ヒヒ、何が孵るか、早く見てえな」 
 瞳を細めてたまごを見つめるコノハや皆に、ザネリも笑み宿す。
 一体何が生まれるのか、わくわくしながら。

 というわけで、魔法のたまごを探していた面々もそれぞれの子を手に出来たから。
 パフェを食べると言っていたスイーツ組と合流するべく、足を向けるのだけれど。
「おいしいけど……これ食べきれる……?」
 くるりはまだまだ底が見えない超特大パフェをちまちま口にしながらも、思わずそう呟きを落とす。
 けれど、此方へと向かってくるたまご組の姿を見つければ、手を振って。
「あっ! ザネリさん達だ! 不思議なたまご見つかりました?」
「ん? パフェ食ってたんじゃねーのか、くるり」
「お、丁度たまご組も帰ってきたか」
「たまごを探しはいかがでしたでしょう。良き、巡り合わせがあつたでしょうか?」
 ジャンととわも、ザネリや皆へと目を向けて。
 深琴はすかさず、合流した皆に勧める。
「卵組はおかえりなさい、丁度いいタイミング」
 ……疲れた身体に甘いものはどう、って。
 その言葉に、くるりも全力で頷いて。
「ね、いっぱい歩いたよね?お腹空いたよね? ね? 食べてください!」
 そんなパフェ組の姿を見れば、ザネリは状況を察するのだった。
「……ヒヒ、計画性がねえって言われるだろ」
 そしてテーブルに聳える超特大イースターパフェを見て。
「わっ、どんだけ大きいパフェ食べてるのさ!?」
「まあ、大きなパフェのお出迎えですね。どの部分がおいしかったですか?」
 コノハとメグルは、こうも続ける。
「まあ、甘いものは気になるし少しなら」
「たくさんは食べれなさそうですが、気になります」
 そんな言葉を聞けば、ひとりペースが変わらずに食べつつも、嬉々と紡ぐシルヴァ。
「合流した皆様ともご一緒に食べれば、メニュー全制覇も夢ではありませんわよね!」
「じゃあ早速他のも頼もうぜ!」
 ジャンもすかさずそう賛成するのは、やっとしょっぱいものが食べられそうだから……なのだけれど。
「え? まだパフェもある? 細かいこと言うなよ」
 パフェがまだ残っていますので、ええ。
 そんなふたりの言葉に、くるりはぱちりと瞳を瞬かせて。
「さらに追加するの!? 胃袋わんぱくかな!?」
「ていうかまだ食べるの?」
 ちょこっとずつパフェを貰いつつ、コノハもそう首を傾けるも。
「仕方ねえな」
 そう言うザネリは、本当は面倒見が良い……かもしれないから。
「行け、らむらむ。男魅せて来い」
 ラムネに丸投げします。
 でも、助っ人が参戦してくれたら大助かりだから。
「えーんラムネちゃん頼む! メグルちゃんもコノハくんも手伝ってぇ!」
「パフェ、俺が混じって大丈夫か……?」
 くるりのお願いに、女性陣へ確認とりつつも最大限の配慮をしながら、加勢に入るラムネ。
 コノハとメグルも、可愛くて美味しくて超特大なパフェを口に運んで。
 そんな超特大パフェに再び挑む皆の様子に笑いながら、ザネリはきょろり。
 ……さて、酒はどこだ、なんて。
 先程見かけた酒の屋台へと向かうべく、ふらり逃亡を。

アリス・アストレアハート
ミルフィ・タイムラヴィット

 訪れた冒険王国は、まさに春色爛漫。
 パステルカラーの彩りで満ち溢れていて、うさぎやたまごなどの可愛いモチーフでいっぱい。
 そう、やって来た王国で開かれているのは、春の訪れを祝うお祭り。
「わあ♪ ……とってもにぎやかで、楽しそうなイースターのお祭りですね……♪」
「これは……何とも賑やかで盛大なイースター祭ですわね♪ アリス姫様♪」
 イースター祭に心躍らせるアリス・アストレアハート(不思議の国の天司神姫アリス・h00831)の弾む声に、ミルフィ・タイムラヴィット(ストライダー白兎ホワイトラビット・h01077)も頷いて返して。
 賑やかな街を歩けば、まずはふたりで参加してみることにする。
 イベントも沢山催されているけれど、その中で選んだのは。
 イースターエッグを割らないようにスプーンで転がしつつ、ゴールまで走る遊び――『エッグロール』!
 どきどきわくわく、スプーンの上にちょこんとたまごを乗せてから。
 いざ、エッグロールのスタートです!
 そしてスタートと同時に、勢いよく駆けるミルフィの姿に、アリスは瞳をぱちりと瞬かせて。
「ミルフィ、とっても速いです……☆」
「アリス姫様、わたくしに追い付いてみて下さいまし…♪」
 その身体能力を存分に発揮し、ぐんぐんスピードをあげていくのだけれど。
 ちょっぴり張り切りすぎて――途中で足がもつれてしまって。
「って……ひょえええ!?」
 たまごと一緒に、すごい勢いで転がり落ちるミルフィ!?
 そんな姿を見れば、アリスは尚、びっくりしちゃうけれど。
「大変ですっ! だ、大丈夫ですか……!?」
 慌てて追いかけて、ようやく転がり終えたミルフィに追いついてから。
「全てのものを……あるべき姿、あるべき状態、あるべき光景に――その理を……!」
 ラウムツァイトプリンセス・キュアを発動して、お手当てを。
 それからホッとしつつも、ふと見れば、アリスはこてりと首を傾ける。
「あそこのお店って……」
 付近に見つけたのは、見なれない建物――噂で聞いた、不思議な魔法のたまごの店。
 だからふたり、顔を見合わせて頷き合えば。
 噂が本当かはわからないけれど、遠めからでもカラフルなたまごたちは可愛くて。
 一緒にお店へと向かってみれば、それぞれ、気になった魔法のたまごを貰ってみる。
 そして遊んだり、たまごを貰いに行ったりしていたら、おなかもすいてきたから。
 次は、イースターメニューのお食事を楽しむことにして。
 イースター定番のラムのローストに、ミルフィはデビルドエッグ、アリスもイースターパフェを注文して。
 飲物はふたり一緒に、ぷかりと可愛いうさぎさんが浮かぶ、お揃いのアニマルクリームソーダに。
 そんな可愛くて美味しいごはんを堪能しながらも。
「とってもおいしいですねミルフィ♪」
 ほわりと笑むアリスを見れば、ミルフィは思わず微笑んじゃう。
「あらあら姫様、お口にクリームが……♪」
 甘やかに飾られた、お姫様の口元に。

坂堂・鈴
坂堂・一

 春のおでかけは、ぽかぽかでうきうきで。
 それに、やって来た冒険王国は、カラフルな彩りでいっぱい。
 だって今この王国では、春の訪れを祝う祭りが開かれているのだから。
(「いーすたーのお祭りも、すぅちゃんとお出かけも、楽しみ、やね」)
 賑やかな街をきょろりと見回しつつ、坂堂・一(一楽椿・h05100)がほわほわな心地で歩いていれば。
「お祭り大好きー!!」
 隣から聞こえるのは、わくわく元気に心躍らせている、坂堂・鈴(鈴鹿山椿・h05098)の声。
 そして、くるりと鈴の視線が向いたかと思えば。
「うちらもうさ耳つけよ、はーちゃんは垂れ耳な♪」
「わっ」
 すちゃりとかぶせられたのは、長くたれたうさぎさんのお耳。
 そんな鈴からうさ耳をつけられて、一は思わずびっくりしちゃうけれど。
 でも、そのお返しにと。
「あ、ほんなら椿にゃんこと、お揃いにしたげる、ね」
 鈴のうさ耳に椿飾りをちょこんと咲かせて添えてあげる。
 そしてふたりでお揃いのうさぎさんになったなら、ぴょこんと跳ねるように楽し気に。
「今日はいっぱい遊んで食べるでー!」
 春のお祭りを目一杯、存分に楽しむつもり。
 というわけで、まずやってみるのは。
「えっぐぺいんと……やりたい」
 たまごに好きな色で模様を描いてイースターエッグを作る、エッグペイント!
 一は、たまごをそっと手にしてから、慎重に作業を進めていって。
「空と、桜と、うさぎさんと椿にゃんこ……」
「卵に絵ぇ描くの、むずかし……むむむ、はみでるっ」
 鈴は苦戦しつつも、大胆な手際……!?
 それから一生懸命、たまごに筆を走らせれば。
「でーけたっ☆ うちのはお日さんとうさぎさん!」
 鈴は、豪快なタッチの絵柄のイースターエッグを完成させて。
 それから一のたまごへと目を遣れば、思わず声を上げてしまう。
「え、はーちゃんウマっ!? こういうの大好きやもんなぁ、ほぇー……」
「えへへ……ありがと、すぅちゃんのは元気いっぱい、やね♪」
 一のたまごはさすが、とても綺麗な出来映えで。
 それから一は鈴に、こんな提案を。
「あ、記念にぼくのと、換えこと、しよ?」
「あ、ええね! 換えことしよしよ♪」
 ということで、ふたりの作ったたまごを仲良く交換こ。
 それから頑張って作業をしたからか、ちょっぴり小腹がすいたから。
「ちょっとお腹空いたし、おやつ食べよ?」
「おやつ、ええね♪」
 イースタースイーツでおやつタイム……にしようかと思ったのだけれど。
 鈴は思わず、並ぶ屋台や店へと視線を巡らせては、きょろきょろ。
「うわわわ何これめっちゃ可愛いのいっぱい! どうしよどうしよ……」
 あれもこれもそれも美味しそうで、迷っては目移りしてしまう。
 でも、一が口にするのは、その悩みも解決の名案。
「んっと……好きなん選んで、分けっこしたら、いっぱい食べれる、かな?」
「そっか、ほな分けっこ♪」
 ふたりで頼んで交換こすれば、少しずついっぱい食べられるだろうから。
 だからそれぞれ、気になったイースタースイーツを選んでみて。
「うちはイースターパフェ! お子様ランチみたいで豪華やんねぇ」
「ぼくは、レモンひよこといちごうさぎのケーキ。すぅちゃん可愛いの好き、やろ?」
 その味は勿論、見た目もとびきりかわいい、パフェとケーキにしてみてから。
 ふたりで仲良く分け合いこしながら、もぐもぐはむり。
「全部かわいー! おいひー!!」
「お花デコ、きれい……みんなおいし♪」
 かわいくて、きれいで、美味しくて――ほんわか、幸せ満開。
 それからふたりでイースター祭を楽しんでいれば、ふと聞こえたのは。
「魔法のたまご……?」
 不思議な生き物が孵るかもしれないという、魔法のたまごの噂。
 それが本当の話なのかは、わからないのだけれど。
「へぇ、どんな子が孵るかわくわくすんね」
「孵ったら、家族増えて嬉しい、ね。どこで貰えるん、かな?」
 折角だから、魔法のたまご屋さんを探してみることに。
 というわけで。
「よっし、次は魔法のたまご探しにしゅっぱーつ!」
「ん、しゅっぱーつ♪」
 ふたりうきうき、魔法のたまごを求めて――いざ、探索開始です!

隠岐・結羽

 やって来た冒険王国に満ちるのは、人々の賑やかな声とカラフルなパステルの色たち。
 並ぶ屋台は賑やかで、街は活気に溢れていて。
 隠岐・結羽(人間(√EDEN)のサイコメトラー・h04927)はそんな祭りの風景を眺めて歩きながら、瞳を思わずぱちくり。
(「こんなに大きいお祭りがあったなんて……。能力者になってから驚きでいっぱいです」)
 その賑やかさと盛り上がりに少しびっくりするも、でも気合を密かに入れて。
 ……この異世界を、いっぱい楽しまないと!
 どこから回ろうかと、わくわく視線を巡らせてみる。
 というわけで、結羽が楽しむと決めたのは。
(「今日は楽しい露店巡りー♪」)
 美味しそうなイースターメニューがいっぱいだという、露店巡り!
 その味はもちろん、イースターモチーフに飾られた限定のものも沢山だというから。
 うきうきと早速、お目当ての店へと足を運んでみる結羽。
 いや、目移りするほどたくさんのメニューがあるのだけれど。
(「狙いはもちろんドラファングルメちゃんねるで見たあのイースターパフェ!」 )
 この祭りのことを詳しく紹介していた配信を見た時に、一番気になったもの。
「一目見た時から美味しそうで、絶対食べに来たいって……えへへ」
 それに、それぞれの好みやお腹の具合にあわせて、サイズも選べるという話だから。
 もちろんサイズは超特大!!
(「……は流石に無理なので、普通サイズです」)
 いえ、超特大に心惹かれるも……どう見ても食べられる量では到底なさそうだから。
 ここは無理せず美味しくいただけそうな、普通サイズを選択。
 そして、いただきます! の、その前に。
 すちゃっと取り出すのは、スマートフォン。
 そして、ぱしゃぱしゃと色々な角度からパフェを激写する結羽。
(「写真をいっぱい撮って、後でお友達に美味しかったって伝えるんです」)
 それから、その中でも映えているものを数枚ピックアップして。
 ――もちろんSNSにも上げます、抜かりはありません、と。
 気合を入れて、しゅっと投稿完了!
 早速反応があるのをみれば、嬉しい気持ちになりながら。
 満を持して、いただきます!
 そして美味しく食べ終われば、またまた配信で気になっていたお店へ。
 賑やかな街を歩いて探してみるのはそう、噂の魔法のたまご屋さん。
 不思議なたまごの話は、配信でも噂だと言っていたから。
(「見つかるかわかりませんが、会えたらラッキー」)
 そんな宝探しみたいな気持ちで、気軽に歩いていれば。
 何やら祭り会場の端に、人が集まっている店を見つけ、わくわく結羽は足を向けてみる。
 ……一期一会を楽しみましょう、って。

古出水・潤
天使・夜宵
古出水・蒔生
リーガル・ハワード

 カラフルなパステルカラーに、キュートなたまごやうさぎやヒヨコ。
 春の訪れを祝う祭りというだけあり、訪れた冒険王国は明るく華やかな雰囲気や彩りに溢れていて。
 うさ耳やお花いっぱいのカチューシャやボンネットをつけた人たちが街を闊歩していて賑やか。
 そんな、イースター祭で盛り上がっている王国の風景を見遣りながらも。
「すっげぇ華やか……なんか場違い感がする」
 天使・夜宵(熱血を失った警官・h06264)はそう、華やかキュートな雰囲気に落ち着かない様子ではあるものの。
 皆と共にやってきたのは、このイースター祭ならではなイベントが行われている会場。
 古出水・蒔生(Flow-ov-er・h00725)は、兄の術が掛かった手袋をきゅっと嵌めて。
(「……これなら触っても錆させずに済むはず」)
 そう小さくひとつ頷いた後、視線を向けるのは。
「たまごの形状であるのなら、転がす時も闇雲ではなくある程度コツが……」
 じいと他者の様子を眺め、たまごをじっくり観察しているリーガル・ハワード(イヴリスの|炁物《きぶつ》・h00539)の姿。
 だって、彼とは、これから挑む戦い――たまご転がしこと「たまころ」のチームメイトなのだから。
 というわけで、よいしょと大きくてカラフルなたまごを抱えて。
「よし! 勝つよリーガルさん!」
 そう蒔生が気合を入れるのは、こんな目論見や思惑があるから。
「夜宵さんには悪いけど、兄貴もうさ耳付けたら流石に恥ずかしがるかもしれないし!」
「そうだな。男二人にうさ耳というファンシーアイテムを装備させる絶好の機会だ」
 リーガルもこくりと頷いて、翼をばさりと何気に気合十分。
 そして、蒔生の手袋に術をかけつつも。
「タマゴ転がし? しかも罰ゲーム付き……勝つしかねぇか」
 今回のたまころの相棒である夜宵の反応を見聞きして、古出水・潤(夜辺・h01309)はようやく察するのだった。
(「何故蒔生達がそうもやる気なのかと思っていましたが……」)
「潤、勝ちに行くぞ。うさ耳付けるなんざ、流石に遠慮したいんでな」
(「成程、うさぎの耳を付けるというのは一般的に受け入れ難い行為なのですね?」)
 そう――今回のたまころ勝負は、罰ゲーム付き!
 負けた方がうさぎさんのお耳をつける、ということになっていて。
 夜宵が珍しく勝ちにいくというくらいには、そんな罰ゲームをどうしても何としても回避したいのが窺えるから。
「ならば是非とも勝利せねば」
 潤もこくりと頷いて紡いだ後、夜宵へと目を向けて続ける。
「ご安心ください、卵の扱いには一日の長がありますので」
「たまごの扱いに慣れてんなら頼りにするぞ」
 とはいえ、リーガルだって無策ではない。
 巨大たまごの適切な転がし方は、じいと色々観察して分析済み。
 だから、早速張り切って一投目を投じようとする蒔生に、すかさずアドバイス……していたのだけれど。
「蒔生、もう少し右側を押した方が」
「右側……こんな感じ?」
「そうそう。このまま――うわあ!?」
「あっ!?」
 勢い余って、狙いを定める真にごろんごろんと転がっていくたまごは、障害物にぶつかって。
 ぴょんっと跳ねては、コースアウトのガーターに!?
 それから二投目こそ慎重にと転がせば、今度はこてんとピンを倒したものの。
 堅実に狙いすぎて、微妙な本数しか倒れなかったのである。
 一方、たまごの扱いに慣れているらしい潤と、どうしても負けられない夜宵は、スペアにストライクにと、なかなかの高スコア!
 ――というわけで。
「ふむ……実際に身に付けている所を見れば思った以上に愛らしい」
 楽しそうにまじまじと、うさぎさんになった二人の姿や反応を眺めつつ。
 潤はすちゃりと、記念撮影を撮ろうとカメラを構えて。
「とてもお似合いです、二人とも。もう少し寄って、笑ってください」
「うぐ……兄貴うるさいっ!」
「可愛くない! 言われても嬉しくない! 見るな!」
 潤の言葉に、悔しそうな様子の蒔生とかつてないほど不機嫌顔なリーガルを見遣りながら。
 夜宵はうさ耳をつけたふたりの姿を前に、改めて思うのだった。
「俺はただ罰ゲーム回避したかっただけだしな。それにアンタらのが似合う」
 ……大人げねぇ、なんて言われたとて知った事じゃない、と。
 うさぎさんにならないといけなかった罰ゲームを見事に免れたことを。
 そして、兄を恥ずかしがらせることは失敗したし、そもそも実際にうさ耳をつけたところで、潤が恥ずかしがるかと言えば甚だ疑問であるが。
 実を言えば、ちょっぴりうさ耳をつけてもみたかったし。
「だから、可愛くない! 見るな!」
 まだ不機嫌マックスな様子で、むぅとグレンデルをぽふりと頭に乗せて。
 潰れた耳先のみ辛うじて見える状態なリーガルウサギさんを、何気にちらりと見れば。
(「でも……ちょっとうさ耳付けてみたかったし、リーガルさんも可愛いし……役得だったかも」)
 密かにそうも思う蒔生であった。
 それに、夜宵のこんな言葉を聞けば。
「とはいえ、せっかく来たしな。飯に関しては全員に奢る、量も遠慮せず好きなのを選べよ」
「え、奢ってくれるの!? やった!」
 頭につけた長いお耳もゆらりぴこり。
 たまころチャレンジの次は、美味しいご飯タイム。
「わたしオムライスとクリームソーダ! 猫ちゃんのやつ!」
「俺は……ローストラムにしとくか」
「はいはい、幾らでも。私はスコッチエッグとキッシュを」
 潤は、そう自分のものと、夜宵と蒔生の注文を店員に伝えれば。
 ちらりと見遣るのは、リーガルの姿。
 そして嫌がらせのように、こう告げるリーガル。
「僕は一番高い食べ物とひよこミルクセーキにする」
 それから、そんな注文にほくそ笑んでいれば――。
「お待たせしましたぁ! 超特大イースターパフェと肉盛りセット、ミルクセーキです!」
「凄いのが来た……みんなで食べよう」
 どどんとテーブルに置かれた、一番高い盛り盛り増し増しなセットメニューを皆と分け合いっこして。
 それから潤は抜かりなくぱしゃりと、わいわい楽しく笑い合う皆の様子を自撮りに収めては満足気に頷いて。
「その画像、わたしもほしいんだけど……印刷ってできる?」
 蒔生は写真を撮る兄に、何気にそう訊いてみる。
 満更でもなさそうに、ぴょこんとカチューシャのうさぎさんのお耳を揺らしながら。

矢神・霊菜
矢神・零

 キュートな春色パステルに満ちたお出かけは、やっぱり女子同士で。
「わーい、きょうはお母さんとお出かけだよぉ~~!」
 そうはしゃぐ矢神・零(矢神家の愛娘・h03025)に、矢神・霊菜(氷華・h00124)は笑んで返しながら。
(「ふふ、今日は夫を置いて零と2人でお出かけね」)
 母子水入らずで、今日はお祭りを楽しむべく、この冒険王国にやって来たのだ。
 だって今日は、春の訪れを祝うイースター祭だから。
「見てお母さん! うさぎさんがいっぱい!!」
 そう、イースターといえば、零も好きなうさぎさんやうさぎモチーフがいっぱい。
「零はウサギが好きだから、イースターのお祭りがあってよかったわ」
 だから……さあ、今日は色々巡って沢山楽しみましょう、って。
 霊菜はそう、うさぎさんみたいにぴょこんとはしゃぐ姿に微笑みながらも。
 わくわくして、ぱっと駆け出そうとした零の小さな手を取って、こうも続ける。
「でもその前に、はぐれない様にお母さんと手を繋ぎましょうか」
 そんな手の感触と耳に届いた言葉に、零はハッとして。
 きゅっと手を握り返せば、元気にこくりと頷いて返す。
「そうだねお母さん、アタシまいごにならないように、ちゃんとおててつなぎする~~!」
 しっかりこうやってふたりでおててをつないでいれば、迷子になんてならないから。
 そしてうきうきな零とともに、賑やかな街を歩きながらも。
「先ずはどこから行こうか」
 霊菜は周囲を見回してみるも、色々なお店がたくさん。
 あれもこれも楽しそうだから。
「選べないならブラブラ歩いて、目についたところを覗いてみる?」
 ふたり手を繋いだまま、しばらく歩いてみることにして。
 ふと、見つけたのは。
「あ、イースターエッグ作りだって。絵を描くのが好きな零にピッタリじゃない?」
「絵をかくの大好き! お母さん、イースターエッグ作りしてみたい~~!」
「やってみたい? ふふ、もちろんOKよ」
 そう――たまごに色や柄を描く、イースターエッグ作りに挑戦です!
 霊菜は、パステルイエローのたまごに、ぱっと向日葵を咲かせたり、ゆうらり波線模様を描いていって。
 零も早速、きりりと大真面目に制作に取りかかる。
 それから、絵を描いていきながらも、ふと首を傾けて訊いてみる。
「ねえお母さん、なんでイースターエッグって和風のものがないんだろぉ?」
 くるりと見てみたイースターエッグたちの色や柄は、確かに和風のものはなさそうであるが。
 でも、零は気合を入れて、絵筆をしゃきんっ。
「アタシが作っちゃおっかな~~」
 その才能を存分に迸らせながら、鳥獣戯画風の兎さんや富嶽三十六景の波っぽいものを楽しく描いていって。
(「上手くできたら疾風へのお土産にしようかしら」)
 そう思っていた霊菜は、思わず笑み零れてしまう。
 大波に乗っている家族の皆の姿を、やはり秀逸なタッチでさらりと。
 零がたまごに、るんるん描き加えたのを見て。

在間・夜市
ナギ・オルファンジア

 イースターといえば、たまごモチーフであったり。
 あとは、やって来たこの冒険王国にもたくさんいる、うさぎやひよこ。
 そして、今この王国で開かれているイースター祭には、こんな噂があると聞いたのだ。
 不思議な生き物が孵るかもしれない、魔法のたまごとやらが貰える店がある、と。
 ということで。
「ナギだけの卵を探しに来ました」
 その噂を耳にしたナギ・オルファンジア(■からの|堕慧仔《オトシゴ》・h05496)の目的のひとつは、この魔法のたまご。
 聞いたところによれば、生まれる子はひとそれぞれというから、こんな期待をナギはしているのだ。
「基本的に私の周りは爬虫類と両生類だらけ」
 だから――不思議な魔法のたまごならきっと……! って。
 そんな気合い入りまくりなナギの言葉を聞いて。
「卵食いにきたんかと思ったわぁ。孵すほうね、りょーかい」
 在間・夜市(茎之妙・h06010)はこくりとひとつ頷いてみせる。
 いや、魔法のたまごは食べないけれど、たまご料理だっていっぱいあります!
「ぅ、おいしそうなものがたくさんあるよ」
 あくまで魔法のたまごもちゃんと貰うつもりだけれど。
 それはそれとして、ナギも美味しそうな匂いにつられ、ぐるりと視線を巡らせて。
「でも誘惑に負けてはいけませ、」
 瞬間、夜市を振り返ってぎょっとしてしまう。
「クレープに春キッシュ、ローストラムうまそぉ! 飲み物も買ぉ〜」
 適当にいっぱい、すでにあれもこれもと色々買っちゃっているその様子に。
 いえ、それだけではなく。
「君、いつの間にそんなに買って、」
「ナギちゃん、これ持っててぇ」
 さらにどさどさ戦利品をナギに持たせる夜市。
 それから、屋台をさらにうきうき巡る彼を見遣りつつも――もぐもぐ。
「……おいしい」
 持たされた、クリームといちごがたっぷりのウサ耳付きクレープにちょっぴりご満悦。
 そして夜市は、色々と買うついでに、店員さんたちに訊ねてみる。
「魔法の卵屋さんしらねぇ?」
「……ん? ああ、それなら、そこの道を行った会場の端にあるわ。特別な店だから……あまり他言しないでね」
 そう小声で教えてくれながらも、さり気なく渡したチップをちゃっかり受け取る店員。
 そんな明確に教えてくれた店員さんに、夜市は投げちゅ〜してから。
「ナギちゃん、お店見っけたから早く食いなぁ」
「は、? 今お店の場所聞いてきたって言いました?」
 はむりとクレープをちょうど食べきったナギは、思わず瞳をぱちりと瞬かせて。
「くっ、これだから愛嬌があって要領が良くて顔の良い人は!」
「あっはは、それ一個も悪口じゃねぇなぁ」
 またもや抜かりなく渡されたひよこミルクセーキや、新たなる美味しそうな戦利品を手にしつつ、むぅ。
 有能すぎる様にやたら腹が立つけれど、でも食べ物とミルクセーキに罪はなく……。
 なんて、じいとミルクセーキのひよこさんと見つめ合っていれば。
「てかひよこミルクセーキ似合ってんねぇ、うけるぅ」
 肉うまぁ〜と嬉々ともぐもぐしている夜市に、ナギは告げる。
「釈然としないけれど、卵を選ぼうね」
「卵ねぇ。俺はあんま興味ねぇんだけど、死人が生き物飼うってどーなん?」
 夜市は教えて貰った道をナギと歩きつつ、そう首を傾けるのだけれど。
 情報通り、祭り会場の最奥にそっと佇んでいるにもかかわらず、噂を聞きつけた人たちで賑わっている店へとやって来れば。
「……ま、いっか。んじゃ、このこにしよ」
 とりあえず目についたたまごをひとつ、ひょいと夜市は手にしてみて。
「……両手に乗る位の大きさのこにしようか」
 ――雲の流れる空のような色の、君がいい、って。
 ナギはその子をそっと両手で手にしながらも、思う。
(「ナギと一緒に生きてほしいな」)
 それから、早々とたまごを選んだ様子の夜市の手元を覗き込んで。
「夜君は? どんな卵にしたのかな……あ、綺麗」
 自分の選んだ子と、ナギは並べてみる。
 同じ空は空でも――彼の名の様な、夜空のようなたまごと。

神楽・更紗
ガザミ・ロクモン

 寒い冬が終わり、ぽかぽかあたたかな春がやって来れば、人々の心もわくわく浮足立って。
「ふむ、春の祝いか。この賑わい悪くない」
 今日の冒険王国が一等楽し気な声で溢れているのは、神楽・更紗(深淵の獄・h04673)の言うように、イースター祭の真っ最中だから。
 季節の祭りは、他の√でもよく行われているけれど。 
 でも、更紗は興味深げにきょろり。
「珍しい装いの人々が多いな。本当に人を見てるだけで飽きない」
「こちらの世界の服装は僕らの世界と異なっていて、ずっと眺めていられますね」
 そんな親しい友人の言葉に、ガザミ・ロクモン(葬河の渡し・h02950)もこくりと頷いて。
 ふたりでこれから楽しむのは、イースター祭ぶらり旅。
 長いウサギのお耳や沢山のお花が咲いた、カチューシャやボンネットはイースターならではで。
 道行くふたりにも、ひとつどうだい? って声がかかる。
 そんな呼び込みに、更紗はふと足を止めて。
「ほう、帽子屋か。おんりーわんわん? 世界で唯一か」
 それから、帽子や頭の装飾品などが並ぶ店を見てみるも。
「欲しくなるが、この服に合う帽子など……」
「それなら、服もお揃いのコーデにしちゃいましょう!」
「……帽子に服を合わせればいい? あ、隣、服屋だ」
 そして、あれはどうですか、こちらもお似合いです、それは今年の新作で――なんて、完全につかまってしまって。
「この商売上手どもが、ガザミ!」
 ちらりとそう、彼に何気に出すのは――タスケテ、というヘルプ!
 ……なのだけれど。
「売り切れちゃいますよ~」
 そうにこにこと更紗を一押ししてから、屋台の席と食事を確保に向かってしまうガザミ。
 そんな姿を見送りながらも、更紗はひとつ小さく頷いた後。
 帽子屋と服屋にこうお願いするのだった。
「店主、あいつの息の根を止められる帽子と服を頼む」
 要約すれば、可愛いをギュッと濃縮した悩殺コーデを、と!
 そして更紗の所望する通り、店主たちが腕によりをかけて可愛すぎるコーデを真剣に吟味している間に。
(「更紗さんの味覚は特別なので、本日は香りも美味しい香草を使った料理」)
 更紗の特殊な味覚と食欲のことを考えつつも、ガザミは選んでいく。
(「香草を使ったラム肉のロースト。僕の好物。数種類のハーブとベーコンとチーズを包んだオムレツ。完コピしたい」)
 それから、店主の作る手際や技を盗むように見つめながらも。
「料理に合うアルコールとモクテルもお願いします」
 そうお願いして、飲み物もゲット。
 それから、ばっちり春らしく全身コーデしてもらった更紗と合流すれば。
「春色のかわいい服がお似合いですね。明るい感じが素敵で、ぶわ!」
「こっち見るな。恥ずかしいだろ」
 にこにこ見つめていれば、顔に帽子をばふっと押し付けられて。
「帽子? 似合います?」
「妾より似合うのではないか?」
「じゃあ、お借りしますね」
 ガザミも今日は、長いお耳のイースターウサギさんの仲間入り。
 それから、確保した場所で戦利品を並べて。
「妾を気にせず食事は好きに食えばよいものを」
 そのラインナップを見れば、更紗はそう言いつつも――卵を一口、ぱくり。
「ん、これは美味い」
 それから、ふと彼にも差し出してあげる。
「肉はガザミの好物だったな。口に運んでやろう」
 勿論、喜んで口元まで運ばれてきた肉を、パックン。
 美味しそうに食べる姿を見れば、更紗も満足げに頷く。
「おまえといると食事が美味くて困る」
 彼の選んでくれた料理は美味しいと感じるし、蟹の餌付けは趣味なのだから。
 そして、料理に合わせて選んでもらった、たまご酒とノンアルコールのエッグノックで乾杯した後。
 ほわほわ幸せいっぱい、ガザミはイースターごはんを堪能しながら。
 次はどこに行くか、更紗と楽しくふたりで作戦会議。

道明・玻縷霞

 カラフルなパステルカラーに、たまごやうさぎのモチーフ。
 それは春になれば、他の√でも見かけることもあるもので。
 道明・玻縷霞(黒狗・h01642)は、沢山の人が訪れている冒険王国を歩きながら、周囲を見回してみる。
(「イースターの催しはこの√にもあるのですね」)
 そう、今日この地で行われているのは、イースター祭。
(「さすが王国規模でやっているのもあり、何処も賑やかです」)
 美味しそうな食べ物やスイーツが並ぶ屋台に、うさ耳やボンネットなどの貸衣装等々、祭りは盛り上がりをみせているし。
 配信動画で色々とこの祭りの情報を確認している際、気になるものもあったのだけれど。
 でもまずは、イースターならではな催し物に参加してみることにする。
 というわけで、玻縷霞が挑戦してみるのは、イースターエッグハント。
(「探し物は仕事柄得意なもので、何らか見つけられるでしょう」)
 何せ彼は、黒の走狗「黒狗」と呼ばれているほど。
 家の屋根や店の装飾、建造物同士の隙間等を抜かりなく手際良く探してみて。
「たまにはこうした遊びも良いものですね」
 その両手には戦利品――沢山のイースターエッグが。
 それをぱかりと試しに開けてみれば、中身はふわもこウサギやひよこのミニぬいぐるみ、マトリョーシカのように連なったエッグチョコ、謎に光るたまご型ライトなど様々で。
 そんなエッグの中身はお土産として持ち帰ることにする。
 それから、エッグハントで良い具合に時間を潰せば、次に向かうのは気になっていた店。
「孵る条件は現時点で不明、孵る生物も不明……なかなか興味深いものです」
 そう、人によってそれぞれ異なる、不思議ないきものがうまれるかもしれないというたまごが貰えるらしい、魔法のたまごの店。
 玻縷霞はくるりとまずは一通り、たくさんのたまごを見回してみつつ。
(「人によるのなら、個々の生命力に影響するとか」)
 聞いた話を思い返しては、そう思考を巡らせてみたりもするけれど。
 条件は後々調べるとして……と。
 玻縷霞はその手をそっと伸ばしてみる――ふと目に留まった、魔法のたまごへと。

イリス・レーゲングランツ

 春色の冒険王国をお散歩中のうさぎさんと一緒に、尻尾やお耳をぴこぴこ。
 春風が纏う美味しそうな甘い匂いは、やはり惹かれちゃうし。
 イースターならではな催しも、とても楽しそう。
 でも――そんなスイーツもイベントも、とても気になりつつも。
(「一番気になるのは、やっぱり魔法のたまご!」)
 イリス・レーゲングランツ(搏景の迷い子・h04975)が一番興味を惹かれたのは、不思議な魔法のたまご。
「地元の√世界じゃ見られないから、どんなのがあるか楽しみっ」
 ばっちりと、うさ耳カチューシャだって着けたし。
 気合も十分、わくわくでいっぱいな気持ちで――エッグハント気分でお店にれっつごー!
 そんなたまごは、ひとつひとつ、大きさも色も柄も違うのだという。
 どれにしようか迷ってしまいそうだけれど、でも、様々な大きさや模様の違いを見比べるのも楽しそうだから、アレコレいっぱい見て回りたいって、イリスは思うし。
「やっぱり、こういう時は自分のお気に入りを見つけて帰りたいよねっ」
 知る人ぞ知るお店だから、会場のわかりにくいところにあったにも変わらず、噂を聞きつけた人で盛況で。
 ひとつたまごを貰いにきたのだという人たちと、一緒にたまごをさがしてみる。
 そんなイリスが選ぶ、魔法のたまごは。
「私はせっかくドラファンに来たし、パステルカラーでとびっきりファンタジーな模様の、かわいい見た目のたまご探してみよっ」
 そして、ぱっと瞳に飛び込んできた、まさに探していた通りの色柄の子を見つけて。
 そのたまごを貰えば、どんな子が生まれるんだろ、と改めて見つめてみれば、尻尾もそわそわゆらゆら。
 春のようにふわり、笑みも咲き零れちゃう――今からワクワクが止まらない♪ って。

ボーア・シー

 季節ごとの祭りは、他の√でも行われているし、沢山の人で賑わうものであるが。
 これから訪れる冒険王国でも、今、春の訪れを祝う祭りが開催されていると聞いたから。
「お祭りね……ガキの頃の縁日以来か」
 ボーア・シー(ValiantOnemanREbelCyborg・h06389)は、その脳に蘇る風景を思い返しながらも。
「せっかくの休暇旅行だ。楽しませてもらおう」
『では、目立たないように身なりを整えますか』
 宣言するのは、|イッツマイライフ《アイアンマン》。
 その身を鎧のような見た目に改造して、いざ祭りに参加することに。
 王国内には沢山の店が並んでいて、美味しいと評判のイースターメニューもたくさん。
 でもボーアは飲食は出来ないから、それらは味わうことはできないのだけれど。
 イースター祭は、他にも楽しめることがいっぱいあるから。
(「仕事以外で物を作るのも久しぶりですしね」)
 事前にチェックした配信動画の宣伝で見た、ワークショップへと行ってみることにする。
 それから、どういうものを作ろうかと考えてみて。
(「イースターですしウサギや、時節に合わせて桜を彫りましょう」)
 手元に完成させるのは、イースターでいっぱいな満開の春。
 そしてワークショップで物作りを満喫すれば、再び王国内を歩いてみつつ。
 ふと思い返すのは、配信でも言っていた、噂話のこと。
 ということで。
(「後は情報にあった噂の魔法のたまご屋、探してみますか」)
 噂で聞いた店――不思議な魔法のたまごがもらえる店を、ボーアは探してみることにしたのだけれど。
「おや、あちらで歌と踊りの催しですか」
 楽しそうな音楽イベントを見かければ……では、ミュージックスタート、と。
 飛び入り参加して披露するのは、十八番のダンシング・マシーンダンス!
 魔法のたまごの店へ向かう道すがら――楽しい寄り道も勿論、たくさんいっぱい、楽しむつもり。

千木良・玖音

 賑やかな冒険王国をそわりと心躍らせ歩くのは、春の彩りを纏う少女。
 だって、千木良・玖音(九契・h01131)は、優しいお花の香りがたくさんの春が大好きだから。
 春をお祝いするお祭りがあるって聞けば、わくわくいてもたってもいられない。
 それに、イースター祭には、きれいなお花たちだけではなくて。
(「うさぎさんやひよこさんをイメージしたものがたくさんあるみたい」)
 ふわふわキュートなうさぎさんやひよこさんもいっぱい、っていう話だから。
 ストロベリーブロンドを躍らせながら、逸るように街を歩く……きっととっても可愛くて目移りしちゃいそう、って。
 そしてカラフルな彩りで溢れる景色の中、まず目が向いちゃうのは。
(「……お耳のカチューシャ、かわいいなあ」)
 道行く人たちがぴこりとつけている、うさぎさんのお耳のカチューシャ。
 それから、チェリーピンクの色をきょろりと巡らせてみて。
(「今日はうさぎさんになってみるのもいいかも……?」)
 とててっと駆け寄るのは、お耳を貸してくれるレンタル屋さん。
 そして、お耳のカチューシャをちょこんとつけて、晴れてイースターうさぎさんの仲間入りをすれば。
 次に見つけたのは、うさぎはうさぎでも、甘やかなうさぎさん。
 甘くて可愛いお揃いお耳のクレープを買って、はむりと頬張れば、ほわっと笑みも咲いて。
 大好きな甘いものに幸せ気分いっぱいになりながらも、玖音は思うのだった。
(「いつか誰かと一緒に食べ歩きしたり遊んでみたいな」)
 なんて、未来への希望も少し抱えながら。
 だから今日はその予行練習、ひとりの大冒険!
 それからぴょこりと跳ねるように向かうのは、一番気になっているお店。
(「肩に乗ってくれたりする人懐こい子だったりしたらいいなぁ」)
 ……お友達も増えたら、きっと楽しい、って。
 春色の王国で探してみるのはそう、不思議な生き物が孵るかもしれないという噂の、魔法のたまご。
 そして色々と想像してみる今ももちろん、うきうき楽しみながら――そわそわ、わくわくのたまご探しへ。

十二宮・乙女

 春の季節が巡ってきて、冒険王国にも咲くのは華やかな彩り。
 それにこの王国は今、春の訪れを祝うお祭りで盛り上がっていて。
「イースター祭、楽しそうですね」
 ……折角ですしモルちゃんと一緒に参加してみましょう、って。
 十二宮・乙女(泡沫の娘・h00494)は、猫の……本物と見間違える程の猫型の機械のモルちゃんと、イースター色でいっぱいの街を歩いてみる。
 王国全体の祭りであるから、色々な美味しそうなものや楽しそうなことが、盛り沢山あるのだけれど。
 でも、乙女の一番のお目当ては、やはりこれ。
(「本命はやはり魔法のたまごです!」)
 不思議な生き物が生まれるかもしれないという噂の、魔法のたまご。
 でも、貰えるお店を探しがてら、魔法のたまごを貰う前に。
 勿論モルちゃんと一緒に、お祭りを目一杯楽しむつもり。
 だから、ぐるりと賑やかな祭り会場を巡ってみて。
 一通り見て回ったら休憩がてら、食べに行ってみるのは、春も美味も爛漫なイースターパフェ。
 パフェの大きさも、好みで選べるというから――超特大サイズに挑戦!
「……と行きたい所ですが、後の事を考えると普通サイズが無難ですね」
 というわけで、自分とモルちゃんでは超特大は食べるのも大変そうだから、手堅く美味しくいただける普通サイズを選んで。
 飲み物は、アニマルクリームソーダに。
 しゅわりと爽やかに弾けるソーダの上に浮かべるのは勿論、猫のアイス。
 でも、ひとつここで、悩みが生じてしまう。
「うーん、どちらも可愛らしくて食べるのが勿体ないです」
 可愛くて、なかなか食べられません……!
 でも、溶けちゃったりするその前に――ぱしゃり。
 記念にスマ―トフォンで写真を一枚撮れば、これでばっちり。
 乙女は、他の人達の邪魔にならないように、モルちゃんをちょこんと膝の上に乗せてから。
 まずははむりと、イースターパフェを一口。
 刹那、甘やかで美味しい味が口の中に咲いて。
「美味しいです」
 そうこくりと幸せそうに頷いて、スプーンでもうひと掬い。
(「なんだかパフェ対決した事を思い出しますね」)
 モルちゃんをなでなでしてあげつつ、そうふわりと懐かしく思いながらも。
 魔法のたまごを探すべく、甘い物の補充をと――パフェもクリームソーダも目一杯、存分に満喫します!

セレネ・デルフィ
椿紅・玲空
ララ・キルシュネーテ
鴛海・ラズリ

 くるり巡らせる花眸に重なっては咲く彩りは、淡く華やかな春のいろ。
 だって、今日の冒険王国は、春の訪れを祝う祭りの真っ最中。
「わぁ、イースター祭、大盛り上がりね」
 ……春の喜びが満開ね、って。
 赤き花一華を細めてみせるララ・キルシュネーテ(白虹・h00189)が咲かせた声に、セレネ・デルフィ(泡沫の空・h03434)もこくりと頷いて。
「イースター…とても盛大なおまつり、ですね」
「イースターの催しはこんなに華やかなのね。そこかしこ兎いっぱいで……」
 鴛海・ラズリ(✤lapis lazuli✤・h00299)が見つめるのは、王国をぴょこりと気ままに散歩している兎さんと。
 そんな兎さんたちをじいと見つめながらも、わふ、と。
「白玉も不思議そうな顔よ」
 首をちょこりと傾けている、白ポメラニアンの白玉の様子。
 それから、椿紅・玲空(白華海棠・h01316)も白い尻尾をゆるりと揺らして。
「すごい賑わい……イベントもスイーツも選取り見取りだ」
「どのお菓子もとっても美味しそう」
 ララは、満を持してこう続ける。
「イースターといえばハッピーイースターの掛け声とともにお菓子を交換する習慣よね」
「イースターってそんなだったか?」
 そう一瞬首を傾けたものの、直ぐに納得する玲空。
「今、ララが作ったわ」
 そう、ちょっぴりえっへん得意顔で紡がれたララの言葉に。
 そして、イースター色に染まった王国を折角歩くのならばと、玲空は皆にこう持ち掛けてみれば。
「何かイベント参加してみないか? エッグハントならグルメ巡りしながらでもできそうだし」
「いい提案ね、玲空。イースターの醍醐味、エッグハントよ」
「エッグハントはあまり馴染みがなく……どこにあるでしょうか……」
 ララとセレネは、早速きょろり。あちらこちらしあわせのタマゴを探してみることに。
 このイースター祭の期間中、街のいたるところにイースターエッグが隠されているという話で。
 見つければ、お持ち帰りできるという催しなのだが。
 そんな早々と簡単に見つかるなんてこと――。
「エッグハント! 玲空任せて、きっと直ぐに見つけるんだよ」
 そうラズリが告げたかと思えば――ばばーん! これかも! って。
 兎耳に挟んでぴょこりと抱えるのは、速攻で見つけた、瑠璃の星タマゴです!
 そのあまりにも素早い発見に、思わずぱちり。
「え? ラズリ、もうみつけたの?」
「ラズリ、見つけるの上手いな……何かコツでもあるのか?」
 ララや玲空は思わず瞳を瞬かせてしまうも、ラズリはたまごゲットの種明かしを。
「白玉がくわえてきたの、エッグハンターなの」
「白玉さん……! すごいです……!」
 セレネが上げた声に、白玉はわふっと尻尾をふりふり。
「白玉大活躍かしら」
 ララも、凄腕のエッグハンターにそう瞳を細めて。
 負けじとハントするのは、そう。
「ララは美味しいスイーツの店をみつけたわ。イースターパフェよ」
「ララはスイーツ見つけるの上手」
 ラズリはそんな、手練れスイーツハンターなララに微笑んで返して。
 玲空は、きょろりと視線を巡らせているセレネに訊ねてみる。
「セレネはスイーツは何が好み?」
「私はイースタープリンが気になります。ひよこさんとうさぎさん、どちらも美味しそうで」
「セレネはイースタープリンが気になるのね」
 ララも一緒に、ひよこさんとうさぎさんをふと見つめてから。
 刹那紡ぐのは、セレネのお悩み解決策。
「なら両方食べましょう」
「……今回は欲張ってみることにします」 
 そしてこくりと頷いて、ひよこさんもうさぎさんも手にするセレネに、ラズリも笑み向ければ。
「セレネのプリンどっちも美味しそうね」
「鴛海さんも何か気になるスイーツはありますか?」
「私はうさぎさんケーキが気になるかな」
 逆に訊かれてじいと見つめるその視線の先には、甘やかなうさぎさんケーキ。
 それから玲空が、お耳をぴこりとさせながらも見つけたのは。
「私はうさ耳つきクレープかな」
 そんなクリームとイチゴたっぷりの、美味しさも可愛さも抜群なウサ耳付きクレープを見れば。
「椿紅さん、ひとくち交換していただけませんか……?」
 セレネが持ち掛けるのは、うさぎさん仲間なプリンとクレープの交換こ。
 いや、お揃いや交換こは、何も玲空とだけではなくて。
「ララさんも、どうぞ」
 ララのイースターパフェのうさぎさんとも、お裾分けし合いっこすれば。
 聖女サマは当然所望する。
「勿論、玲空のクレープもよ」
「ララ、食べ過ぎてお腹壊さないようにな」
「甘いものは別腹なの。ララはまだまだ食べられるわ」
 そして、そんな食いしん坊さんなララのお腹のことを心配する玲空なのだけれど。
 ラズリはこう、そんな彼女に忠告を。
「白玉にハントされないよう気を付けて。ほら、もう玲空の背後に……」
「……え? ほんとだ」
 その言葉にふと振り返れば、ぱちりと合う視線。
「何か圧を感じると思ったら白玉か」
 虎視眈々、わふわふとクレープを見つめる、スイーツハンター白玉の眼差しが。
 そして、そんなふたりのやり取りを微笑まし気に眺めつつも。
「ララ、私のも味見してみる? 交換こ、するんでしょう?」
 うさぎさんケーキを差し出しながらも、ラズリが唱えるのは、イースターの合言葉。
 ……ふふ、ハッピーイースター! って。
 イースターといえば、ハッピーイースターの掛け声とともにお菓子を交換するもの、と。
 さっきララが作ったばかりの習慣に則って。
 それから、イースタースイーツもいっぱいゲットできたのだけれど。
「あ……こんなところにイースターエッグ、です」
 セレネが見つけて手に取ったのは、向ける瞳と同じ青空のいろのもの。
 それから、よくよく目を凝らせば、たまごはそこかしこに隠されていて。
「皆さんは、どんな柄でしたか?」
「ララは、桜色のアネモネなの」
「みんな無事に見つけられて良かった」
 ようやく自分のたまごをみつけてご満悦のララに、玲空も一層尻尾を揺らして続ける。
「それにしても色んな柄があって面白いな」
「どれも素敵、ですね……!」
 セレネの声に同意するように、手にしたラズベリー色に花咲くたまごと見比べ微笑みながら。
 でも――たまごはたまごでも、王国でも噂になっているというたまご。
 玲空は、聞いた話や事前にチェックした配信動画の内容を思い返しつつ、皆に再び訊いてみる。
「「魔法のたまご」すごく気になる……みんなも貰ってみないか」
「魔法のたまご……いいわね」
「魔法のたまごは……普通のたまごとは違うのですね? ぜひ貰ってみたいです」
 皆も噂のことは気になっていたから、勿論大賛成。
 早速スターエッグを連れて、一緒に向かうは、魔法のたまごが貰えるという店。
「魔法のたまご、何が孵るか楽しみ……!」
「ララさんはどんな子が良いですか?」
「ララは手触りのいい子がいいわ」
 数え切れないくらい沢山あるたまごの中から、気になった子をそれぞれ貰って。
「生まれてくる子……もふもふだといいなあ……」
「白玉のお友達になれるかも」
 噂話ということだから、本当に不思議な生き物が孵るかは、まだわからないのだけど。
 でもこうやって皆でわいわい自分だけの子を選んでみては、あれこれ想いを馳せたり紡いだりするのも楽しいし。
 それにきっと――自分ならではな子が生まれるって、そんな予感がとてもするから。
 玲空も、手にした魔法のたまごを見つめて紡ぐ。
 ……この卵から何が生まれるのか楽しみだな、って。

桐生・綾音
桐生・彩綾
藤原・菫
海棠・昴

 足を踏み入れた冒険王国に満ちる彩りやその風景は、姉妹がはじめて目にするもの。
 けれど、桐生・綾音(真紅の疾風・h01388)と桐生・彩綾(青碧の薫風・h01453)は、事前にばっちりこう聞いてきたし。
(「イースターはある偉大な聖人にあやかる祭りだし、春の芽吹きを祝福する意味もあるって菫さんと昴さんに聞いた!!」)
(「イースターはある偉大な聖人にあやかる日とともに寒い外国の春の始まりをお祝いするお祭りだって聞きました」)
 それに教えて貰って、こう思ったから。
「とても素敵な記念日だね」
「すごくいい記念日でときめきました!!」
 だから、姉妹でお強請りして――4人でやって来たのはそう、イースター祭!
 この冒険王国のイースターは、宗教的側面よりも、春の訪れを祝うという意味合いのほうが強いようだが。
(「故郷以外の事を知らない綾音と彩綾に教えてあげたが、イースターはある偉大な聖人に関係し、長い冬から春の生命の芽吹きをお祝いする記念のお祭りでもある」)
 藤原・菫(気高き紫の花・h05002)は、綾音と彩綾に教えてあげたことを再び思い返しながらも。
 共にふたりにイースターのことを教えた海棠・昴(紫の明星・h06510)を見つつも思う。
(「昴もそう思うらしいが、こういう始まりを大事にするのは素敵だよね」)
 そしてそんな昴も、改めて思い出す。
「綾音と彩綾はクリスマスもバレンタインもしらなかったしな。良くも悪くも日本風が強く根付いた生まれ故郷だったんだろうな」
 ……イースターのこと教えたら驚いて目キラキラさせてた、と。
「おおまかにいえば復活のお祭りだしな。俺も大事だと思ってる」  
 やはりその心に抱くのは、菫と同じ気持ち。
 とはいえ、やはり綾音と彩綾がわくわく興味津々なことといえば。
「育ち盛りにはおいしいもの!」
 ……なので一杯食べちゃいます、なんて。
 綾音がやる気満々、早速ほくほく手に入れるのは、可愛くて美味しそうなイースターメニューの数々。
 デビルドエッグとスコッチエッグはもちろん、ホットクロスバンズもベイクドハムも食べちゃいます!
 彩綾も同じく、デビルドエッグもスコッチエッグももちろん、ホットクロスバンズも巣ごもりサラダも。
 春の芽吹きを祝福する大事なメニューときいてありがたくいただきます!!
 でもふと彩綾は、幸せそうに戦利品を頬ばる綾音を見遣って。
(「お姉ちゃんはローストも食べれるみたいだけど私はベイクドハムが限界だなあ」)
 そうベイクドハムの方を口にするのだけれど。
 それは何も、彩綾だけではなくて。
 スコッチエッグもデビルドエッグも生命の象徴であり、イースターにはかかせないから、美味しくいただきつつも。
(「年的に肉は辛いので昴にお願いしてキッシュを取ってもらおう」)
(「姉さんはさすがに肉は無理らしいな」)
 やはり肉は少々重くて無理そうな菫に、昴はキッシュをとってあげて。
「あ、栄養のバランスも考えて巣ごもりサラダも」
「ああ、巣ごもりサラダは食べれるよ」
 姉妹や菫と一緒に、巣ごもりサラダを食べる昴。
 さっぱりしたサラダ部分は女性陣に任せて、揚げ麺の巣を主に……男としては揚げ麺は見逃せない、と。
 というわけで、イースターごはんでおなかもいっぱいになったから、ご馳走様!
 ……をするには、当然まだ早くて。
「デザートはひよことうさぎのケーキにプリン!!」
 甘い物は別腹、デザートも目一杯満喫します、ええ。
 とはいえ……ああ、どの食べ物も可愛い!! と、あれもそれも沢山食べている綾音をまたもや見遣って。
 彩綾はケーキをぱくりと口にしながらも思う。肉も、おなかのキャパ的に、ローストだと重たいし。
(「それにケーキしか食べれない」)
 でも美味しいことには違いないから、ちまちまとケーキをゆっくりペースで食べながら。
 彩綾は今度は、昴へと視線を向ける。
(「昴さん甘いもの別腹なのかマカロンつけてるし」)
 そして菫も同じく、思わず苦笑してしまう。
 ケーキとプリンとマカロンを食べてしまう、隠れ甘党の昴に。
 それから、スイーツのお供に、飲み物も買うことにして。
「飲み物はスムージー!! 彩綾もそれにする?」
「うん、満足。飲み物はスムージーで!!」
 姉妹は仲良くお揃いの、うさ耳がぴょこりとついたスムージーを。
 そして昴と菫も同じ、スパイシーエッグノックにして。
 綾音は、彩綾とスムージーを飲みつつも、思う。
「菫さんと昴さんはアルコールかあ」
 ……早く大人になりたい、って。
 けれど、菫からこう言われれば。
「どうだい、綾音と彩綾」
 ついはしゃいじゃうくらい、楽しいって笑みも姉妹で開き咲いて。
 ふたりで新鮮なイースターをキャッキャ無邪気に楽しんでいるその姿を見れば、改めて菫は口にする。
「年相応にはしゃいでるのをみると守ってやりたいと思うよね」
 そして勿論、昴も大きくひとつ頷いて。
「そうだな、綾音と彩綾は美味しいもの大好きな年頃の女の子だ」
 それから姉妹を見遣りながらも、頷いて返すのだった――守ってやらなきゃな、と。

浮石・尾灯
五十鈴・珠沙

 つぶらな金の瞳をくるりと巡らせて、わくわくと冒険王国を歩くふたりは。
「イースター! あたし、初めてのお祭り!」
「僕も初めてだね、イースターは」
 これがはじめてのイースターのお祭り!
 うきうきな様子の五十鈴・珠沙(Bell the cat・h06436)と一緒に、浮石・尾灯(ウキヨエ・妖怪・ヒーロー・h06435)も周囲を見回してみて。
 見たことは一応あるし、少しは知ってはいるのだ。
 イースターといえば、カラフルなたまごだとか、ウサギやヒヨコがモチーフだとか。
「あれが本場のイースターエッグかな、ゲーム以外で初めて見るよ」
 ゲームの季節もののイベントとかで。
 珠沙も、色とりどりでキュートなイースターらしい風景に興味津々、目を向けながらも。
「うさぎと卵? かわいいね!」
 ふと見つけたものを貸して貰えば。
「はい、ビート先輩はうさ耳、あたしはボンネット!」
 自分の頭には春色のお花畑のようなボンネットを。そして隣の彼の頭にも、うさ耳カチューシャをぴょこり。 
「うーん、男にうさ耳似合うのかなぁ」
 そうは言いつつ首を傾ける尾灯だけれど、素直にうさ耳をつけて、今日はイースターウサギさんに変身。
 それから、ばっちりお祭り仕様の見目になった後、祭り会場を巡ってみれば。
「あそこで、卵に絵を描いてるよ? いーすたーえっぐぺいんと?」
「へー、卵に絵を描くのか」
 次に見つけたのは、イースターエッグペイントに挑戦できるスペース。
 そんなイベントを見れば、珠沙は隣を彼へと視線を向けて。
「これは美大のビート先輩の出番じゃない?」
「ハードル上げられたし頑張りますかぁ」
 彼女にそう言われれば、尾灯も張り切って挑戦です。
 勿論、尾灯と共にチャレンジしてみる珠沙であるけれど。
「あたしも描く、描く!」
 やる気は満々、だが数分後――たまごではなく、手が絵の具まみれに!?
 そんな彼女の隣で尾灯は、狭いキャンパスなら、と。
 逆に緻密に細かく、只管幾何学的な模様を敷き詰めていって。
「うんうん、タイトルは何にしよう」
「わあ、ビート先輩の絵、とっても綺麗……!」
 流石は美大、綺麗にたまごを彩った尾灯に、思わず声を上げる珠沙であるけれど。
「え、あ、あたしの絵は……あの……う、うさぎを描いたんだけど……」
 そう言いつつ、そっと自分作のイースターエッグを隠す珠沙。
 何せ珠沙は、実はある意味、画伯なのだから。
 たまごに描いたのは、うさぎ、のつもりだけれど……でも、うさぎとは少し違う生き物に見える気しかしない。
 いや、先輩である尾灯はこう言うものの。
「ん? まぁこういうのは楽しんだ勝ちだから、気にしない気にしない」
「卵は置いておいて、甘いもの食べに行こう、先輩!」
 自分の中では多分うさぎ柄なイースターエッグは、ちょっぴり封印しておくことにする珠沙。
 そしてそんな後輩の言葉に、尾灯は瞳を細め頷いて返しながらも、うさ耳をぴこり揺らして。
「はいはい、折角のお祭りだからね」
 春色いっぱいの冒険王国を再び、ふたりで並んで歩き出す……花より団子と行きましょうねっ、と。

御嶽・明星
エリカ・バールフリット

 つぶらな金の瞳をくるりと巡らせて、わくわくと冒険王国を歩くふたりは。
「イースター! あたし、初めてのお祭り!」
「僕も初めてだね、イースターは」
 これがはじめてのイースターのお祭り!
 うきうきな様子の五十鈴・珠沙(Bell the cat・h06436)と一緒に、浮石・尾灯(ウキヨエ・妖怪・ヒーロー・h06435)も周囲を見回してみて。
 見たことは一応あるし、少しは知ってはいるのだ。
 イースターといえば、カラフルなたまごだとか、ウサギやヒヨコがモチーフだとか。
「あれが本場のイースターエッグかな、ゲーム以外で初めて見るよ」
 ゲームの季節もののイベントとかで。
 珠沙も、色とりどりでキュートなイースターらしい風景に興味津々、目を向けながらも。
「うさぎと卵? かわいいね!」
 ふと見つけたものを貸して貰えば。
「はい、ビート先輩はうさ耳、あたしはボンネット!」
 自分の頭には春色のお花畑のようなボンネットを。そして隣の彼の頭にも、うさ耳カチューシャをぴょこり。 
「うーん、男にうさ耳似合うのかなぁ」
 そうは言いつつ首を傾ける尾灯だけれど、素直にうさ耳をつけて、今日はイースターウサギさんに変身。
 それから、ばっちりお祭り仕様の見目になった後、祭り会場を巡ってみれば。
「あそこで、卵に絵を描いてるよ? いーすたーえっぐぺいんと?」
「へー、卵に絵を描くのか」
 次に見つけたのは、イースターエッグペイントに挑戦できるスペース。
 そんなイベントを見れば、珠沙は隣を彼へと視線を向けて。
「これは美大のビート先輩の出番じゃない?」
「ハードル上げられたし頑張りますかぁ」
 彼女にそう言われれば、尾灯も張り切って挑戦です。
 勿論、尾灯と共にチャレンジしてみる珠沙であるけれど。
「あたしも描く、描く!」
 やる気は満々、だが数分後――たまごではなく、手が絵の具まみれに!?
 そんな彼女の隣で尾灯は、狭いキャンパスなら、と。
 逆に緻密に細かく、只管幾何学的な模様を敷き詰めていって。
「うんうん、タイトルは何にしよう」
「わあ、ビート先輩の絵、とっても綺麗……!」
 流石は美大、綺麗にたまごを彩った尾灯に、思わず声を上げる珠沙であるけれど。
「え、あ、あたしの絵は……あの……う、うさぎを描いたんだけど……」
 そう言いつつ、そっと自分作のイースターエッグを隠す珠沙。
 何せ珠沙は、実はある意味、画伯なのだから。
 たまごに描いたのは、うさぎ、のつもりだけれど……でも、うさぎとは少し違う生き物に見える気しかしない。
 いや、先輩である尾灯はこう言うものの。
「ん? まぁこういうのは楽しんだ勝ちだから、気にしない気にしない」
「卵は置いておいて、甘いもの食べに行こう、先輩!」
 自分の中では多分うさぎ柄なイースターエッグは、ちょっぴり封印しておくことにする珠沙。
 そしてそんな後輩の言葉に、尾灯は瞳を細め頷いて返しながらも、うさ耳をぴこり揺らして。
「はいはい、折角のお祭りだからね」
 春色いっぱいの冒険王国を再び、ふたりで並んで歩き出す……花より団子と行きましょうねっ、と。

**
(正しいリプレイはこちらです)

 確かに、クリスマスとかバレンタインに比べれば、馴染みがないかもしれない。
 それに一応、たまごな印象もふんわりとあるのだけれど。
 実際に足を運んだイースター祭を見れば、御嶽・明星(推定・暁の明星・h00689)の口から漏れるのはこんな言葉。
「……イースターってタマゴ食べるイベントじゃなかったのか」
 そんな|叔父《アカリ》――御嶽・明星(推定・暁の明星・h00689)に訝しみをこめてツッコミながらも。
(「世の中にはいろんなイベントがあるなぁ」)
 ……なんて思っていれば、ぴょこり。
「お祭りだって思えばいいわ」
 ちょっぴりはしゃいだように、エリカ・バールフリット(海と星の花・h01068)が自分と明星につけるのは、お揃いのウサ耳カチューシャ!
 そして、お祭りを楽しむわっ! とぴょこぴょこ長いお耳を揺らす|姪《エリカ》に、うさ耳をつけられれば。
 されるがままうさぎになりつつ、明星はちょっぴり苦笑する……こういう時どんな顔したらいいんかわからんな。ってなる、なんて。
 それから、見目もイースターっぽくなれば、ふたりが足を向けてみるお目当ては――『密かに噂になっている、あの出店』。
 賑やかな王国を歩きながらも、聞いた噂話を明星は思い出してみる。
「たまごから生き物が生まれるのか……」
 魔法のたまごからは、不思議な生き物が孵るのだといわれていて。
 しかもどのような生き物が孵るかは、その人それぞれなのだという。
 それにあくまで、噂話ではあるものの。
「ここね、『不思議な魔法のたまごの店』!」 
 魔法のたまごの店を見つければ、エリカは早速わくわく、ずらりと並ぶたまごたちを見回してみて。
「可愛いたまごばっかりー。ねぇ、一個ずつお迎えしない?」
 そう明星に訊ねてみる。
 明星も、そんなお迎えしたいっていうエリカの言葉の後、店頭に並んだたまごたちを見下ろして。
「うちのアパート、一応ペットは飼っていいんだよなぁ」
 なんて思考をぐるぐる……させているつもりであったけれど。
「って、思考が口からダダ漏れてるわよアカリ」
 エリカはそう再びツッコミを入れつつ、ふとその手を伸ばしてみる。
 大小模様もさまざまな、たくさんのたまごの中から、直感で選ぶのは。
 ちょっとかかえるくらいの大きさの、夜空の絵が描かれたたまご。
 そして明星もエリカに引き続いて選んだのは、金色の星が一個描かれた鶏卵程度の大きさのたまご。
「どんな子が生まれるのかしら。楽しみね、アカリっ!」
「どんな子が孵っても、最後まで面倒見ろよ?」
 不思議な生き物が、普通のペットと同じ感覚で良いのかも定かではないのだけれど。
 わくわくしているエリカにそう言った後、明星は続ける。
「じゃぁ、ダンジョンとやらへ行きますか」
 たまごを孵す方法もわかるかもしれないから、いざ、ダンジョンへ!
 でも――タマゴを割っちゃったら本末転倒だから、って。
 エリカは落としたりしないよう大事にたまごを抱えつつ、明星と一緒に再び歩き出す……ちゃんと抱っこしてなくちゃね、って。
エオストレ・イースター
誘七・神喰桜

 いつだって、年中イースターな気がしないでもないけれど。
 とはいえ、エオストレ・イースター(|桜のソワレ《禍津神の仔》・h00475)がいつも以上にイースター全開なのは、当然である。
「ハッピーイーーースターーー! 今日こそが!! 桜時の復活祭ー!!!」
 そう!! 今日こそまさに、正真正銘のイースターなのだから……!
 そんな普段よりも増し増しイースターなエオストレを、誘七・神喰桜(神喰・h02104)は見遣って。
「イースター……本祭が! いつもの数倍桜吹雪もイースター化もすごい事になっている」
 けれどそんな激しく昂るイースター感を目の当たりにすると同時に、彼の顔を見れば思うのだ。
(「エオストレのあの嬉しそうな表情。今日ばかりは彼奴の厄災は祝祭になるのだろう」)
 ……いや、なってほしい、と切実に。
 そんな神喰桜がそう思っているのを知ってか知らずか、相変わらず絶好調なエオストレ。
 だってそう、今日はイースターの日なのだから!!
「桜花絢爛、イースターラビットたちはこの世の春ととびまわりイースターバードは祝福を歌う!!」
 なので、神喰桜はイースターに免じて許すことにする。
 私の頭上で祝福を歌っているらしい鳥も、やたらぴょこりと跳ねてはまとわりついてくる兎も。
「僕らにレモンひよこといちごうさぎのケーキを持ってきてくれたよ、神喰桜!」
「菓子をもってきてくれたのか?」
 愛らしい菓子は、何気に嬉しい。
 というわけで!
「今日こそが本祭、僕らの祝祭だ!」
 エオストレはいつだってイースターだし、それに今日は本祭ということでイースターのブーストもかかりまくりだから。
 冒険王国に足を踏み入れて以来、エオストレ曰く、イースターそのものだと讃えられていて。
 だからこそ、改めて声高らかに告げるのだ。
「この素晴らしい日を祝おうじゃないか!」
 そして神喰桜は、めっちゃ桜花絢爛なエオストレの後に続きながらも。
(「やたら派手なものだから少しばかり気恥しいが」)
 ……満開に喜ぶ姿を見るのは嬉しいものだ、と。
 頭にとまって祝福をうたうイースターバードもそのままに、桜吹雪が舞いまくる中、歩んでいれば。
 ふいに手を取られ、エオストレに導かれるまま、祭りへと駆け出す。
 ――咲き誇る春の花々が僕らの花道、と。
 笑うエオストレと一緒に春をゆき、イースター仕様のプリンにクレープにと楽しんで。
 神喰桜はふと見つけたそれに、興味を抱いてそわり。
 イースターエッグみたいにカラフルな、イースタードーナツに。
 それから勿論、イースターなドーナツだって、はむりと無事に堪能した後。
「エッグハントだ!」 
「ん? エッグハントか? いいぞ、受けて立つ」
 いざ、ふたりがはじめるのは、エッグハント対決!!
「いつも主を探し回る私にお前が勝てるかな?」
「僕の実力、みせてあげるよ!」
 というわけで、イースターの化身という名の災厄と探し物に慣れている苦労人の、勝負の結果は――。
「……なんて言ったのに神喰桜が先に見つけるんだもんなー」
 ……流石、僕の刀だけど、と。
 そう、楽しそうだけれど少し悔しそうに言ったエオストレに、神喰桜は見つけた桜色のイースターエッグをあげて。
 気を取り直してうきうき、エオストレが足を向けたのは。
「魔法のタマゴ? どんな子が生まれるか楽しみだね」
 不思議な生き物が孵るかもしれないとういう噂がある、魔法のたまご。
 いや、もうイースターの仲間はいるのだけれど。
「……また増えるのか。イースターの仲間が」
 神喰桜はそう、ぼそりと呟きながらも。
「これぞ、イースター!」
 この晴れの日にうきうき全開、桜花爛漫なエオストレの声に、改めて実感しては、色々薄目で許すことにする。
 桜吹雪が派手に舞い、頭の上で鳥がうたい、足元で兎が跳ねる今日に――噫……イースターだな、なんて。

ヴィルベルヴィント・ヘル

 賑やかな祭りの喧騒に浮足立つ人たちが多い中。
 颯爽といつもの執事然な所作で、イースター祭が開催されている冒険王国へとやってきたのは、ヴィルベルヴィント・ヘル(RED HOOD・h02496)。
 そして執事たるもの、事前の情報収集にも抜かりはなく。
 この祭りを攻略するための配信『ドラファングルメちゃんねる』で得た情報を片手に。
「デビルドエッグ、スコッチエッグ、ホットクロスバンズ。それからラムとハムも頂けますか?」
 目当ての品がある店を迷うことなく、無駄なく回っていく。
 それから、購入した戦利品を早速美味しくいただいてみるヴィルベルヴィント。
(「美味に舌鼓を打つのも執事の務めで御座いますから」)
 そう――主人に満足して頂く為には新たな美味の探究は不可欠、と。
 あくまで執事たりうる行動を取りつつも、やはり気になるのは。
 『ドラファン』でも取り上げられていた、噂の出店について。
 何やら、不思議な生き物が孵るかもしれないという、魔法のたまごらしいが。
 礼儀正しく聞き込みをし、教えて貰った店の場所に赴いてみれば。
 すらりと数え切れないほど並んでいる魔法のたまごを、しげしげと見つめては見繕ってみて。
「此方を頂きましょうか」 
 革手袋をした己の掌程のサイズのたまごをひとつ、手にすれば。
 スッと流れるような動作で、何処からともなく取り出したクロスで、くるり。
 ベビースリング代わりにたまごをすぽっと包み込む。
 それから、ぱちりと瞳を瞬かせる人達の様子に気づいて、こてりと首を傾けてみせるも。
「……何処から取り出したか、で御座いますか?」
 あくまで丁寧に、ヴィルベルヴィントは続けるのだった。
 ……申し訳御座いません。企業秘密ゆえ私の口からは、何とも、と。
 そう告げれば一礼して。そっと魔法のたまごをお供に、イースター祭を再び満喫するべく巡るため、歩き出す。

白水・縁珠

 季節もくるりと巡ってあたたかくなったし、それに今日は、お出かけ日和の良い天気。
 降る春の陽光は眩くも優しく、吹く春風も心地良い。
 そして、そんな春爛漫な中。
「春らんらん……皆が待ちわびたぽかぽかな季節ってやつだ」
 この冒険王国へと、白水・縁珠(デイドリーム・h00992)がやって来たのは――春の訪れを祝う『イースター祭』がちょうど開催されているというから。
 それに、園芸店店主である縁珠にとって、うきうきするのだ。
(「この√は緑も沢山で来るのが楽しいから」)
 ……ふふん、私も堪能するぞー、って。
 そしてお祭の賑わいも勿論、わくわくするのだけれど。
「パステルカラーな飾りやふわふわ可愛い……」
 特別な祭りで王国も気合いも入っているから、撮影はどこでもオッケーなことを確認しつつ。
 気になったもの、かわいいもの、きれいなもの――スマ―トフォンでぱしゃりと、色々撮らせてもらって。
 並ぶ出店を何気なく見ていれば、ハッと思い出して瞳をみひらく。
(「あと、配信でチェックしてた、エディブルフラワーのキッシュは絶対……!」)
 そんな絶対外せないお目当ての、キッシュやさんを探すことにして。
(「この√ならではのお花のあるかなぁ」)
 なんて、わくわくそわりと屋台を探しながら向かっていれば。
 ふと目についたのは、たくさんのたまごがずらりと並ぶ店。
 それから、やはり配信でみた話を思い出す縁珠。
「……魔法のたまご……?」
 そう――その店は、不思議な生き物が孵るかもしれないと噂の、魔法のたまご屋さん。
 それから何気なくくるりと見回して。
「……あ、空色の模様の可愛い」
 目に留まった、ひとつのたまご。
 その子を、縁珠は暫し熱い視線でじいとみていれば。
「食用にしては大きい……違うの?」
 食べたら駄目なたまごです、ええ!
 そして今度は改めて、配信などで聞いたことを頭に浮かべて。
(「……不思議生物……ウチにはもう、二足歩行で喋る兎さんが来店するからなぁ」)
 縁珠はそうも思うも、それはそれ。
 ……でも、うん、と。
 そっと手にした空色のたまごへと語りかけて。
「……卵のキミもキューティーだけど……折角ならお顔見せて欲しいな」
 魔法のたまごが孵るかもしれないという手がかりを探すべく、こくりとひとつ頷く。
 ――ダンジョンかぁ……よし、って。
 手の中にある、空色の子も一緒に。

ネルネ・ルネルネ

 今日の冒険王国も、イースターな彩りやモチーフでいっぱい飾られているけれど。
 ネルネ・ルネルネ(ねっておいしい・h04443)のいつもの帽子にも、今日はふわりぴょこり。
 ウサギのお耳とお花を咲かせて。
 穂からひょこり、ぴよぴよと。ひよこ飾りが覗くヴィヴィアンも勿論一緒。
 そんなネルネがわくわくしているのは、気になる噂話を耳にしたから。
「僕だけの魔法のたまご……たのしみ〜!!」
 それは、不思議な生き物が孵るかもしれないという、魔法のたまご。
 それが本当なのかあわからないが、生まれる子も、その人それぞれなのだという。
 そんな魔法のたまごを入手することは勿論なのだけれど。
 賑やかで華やかなイースター祭の会場を改めて見て回れば。
「他にもたくさんイベントがあるんだね。おっ、エッグハントやってるんだ」
 王国中に、イースターエッグが隠されているのだというから。
 折角だからと……じゃあ移動しながら探しちゃおっと! と。
 エッグハントに、いざ挑戦!
 それから、じっ……と周りに目を凝らしてみるのは、探っているから。
「こうね、ピン! と来る所を……フィーリングを鍛えるのも魔法使いには大事だから……!」
 というわけで、魔法使いの感覚を研ぎ澄ませば――。
「ハッ! あれは……巣ごもりサラダ!」
 見つけたのは、揚げた麺の上にサラダやたまごが盛られた、巣ごもりサラダ……?
「わー! 鳥の巣みたい! ……おいしい〜!!」
 早速いただけば、パリパリの揚げ麺としゃきしゃきのサラダ、たまごの組み合わせが絶妙で美味。
 いや、そんな巣ごもりサラダも美味しいけれど、探しているのは魔法のたまご。
 それから改めて、集中して探してみればーー。
「ハッ! あれは……ホットエッグノッグ!」
 ほっこりとろりとして美味な飲み物、ホットエッグノッグ発見……!
 しかも、これは配信でもプッシュしていたもの。
「ドグファン注目のやつだ! シナモンたくさん入れちゃおっと! ……おいしい〜!!」
 シナモンの風味とたまごを使った味が、ほっこりと癒されるような心地で、これまた美味です!
 いやいや、そろそろ魔法のたまごも見つけないとと、再々度、目を凝らしてみれば――。
「ハッ! あれは……イースターパフェ!」
 目に飛び込んできたのは、キュートなモチーフいっぱいなイースターパフェ!
 さらに注目するのは、目に留まるもの頷いてしまうほどのその大きさ。
「超特大サイズ……挑むしかあるまい! ……おいしい〜!!」
 めちゃめちゃでかいし、やはりすごく美味しいです!
 ということで、今度こそ魔法のたまごを――。
「ハッ! あれは……」
 ネルネが見つけられるまで、どうやらまだまだ時間がかかりそうな予感……?

リズ・ダブルエックス

 足を運んだ冒険王国は、イースター祭でとても賑やかで。
 パステルカラーの彩りや、うさぎやひよこなどのモチーフもいっぱい。
 とはいえ、来てみたものの、リズ・ダブルエックス(ReFake・h00646)には正直イースターとやらがよくわかっていないのだけれど。
 でも――これは、はっきりとわかるから。
「美味しそうなものが沢山あります……!」
 というわけで、イースターというものを知る機会でもあるから。
 まずは、ここは知的好奇心を満たし――もぐもぐ。
 有意義な学習を行う為に――むぐむぐ。
 イースター祭の文化や歴史を学びながら――ごっくん。
 「ううん、デリシャス!」
 しっかりちゃっかり、はむはむ美味しく散策します!
 いや、これは、リズ本人も首を傾けてしまう状況なのだ。
「……気づくと、手元に食べ物があって、それを食べていました」
 だから彼女は理解し、その流儀に則る。
「これがイースター祭のシステムなのですね! おかわりお願いします!」
 引き続きイースターへの理解を深めるために……もぐもぐ、おかわりします!
 いえ、はむりと食べながらも、通りすがりや店の人に聞いたりだとか、看板を読んだりして。
 その結果、ようやくイースター祭とは復活祭であると理解したリズ。
 それに実際に自分が身を置いてみて、イースターが復活祭であることにも大きく頷けるのだ。
 だって、そう!
「こんなに美味しいものが有れば復活するのも納得です」
 ということで、イースターの祭を全うするべく――さぁ次は何を食べましょうか、と。
 張り切って屋台を巡っていれば、たまごがいっぱいの穴場感ある店を発見!
「あ、この卵も美味しそうです!」
 そう近寄ってみれば、何だかとても、どれもカラフル……?
 そしてリズは、店員や周囲の人達の話を聞けば、思わずきょとり。
「え、これは食べられない? 魔法の卵?」
 その店は、王国で噂になっている、魔法のたまごのお店……なのだけれど。
 やはりよくは分かっていないまま、食べられないことは理解しつつも――とりあえず気になったたまごをひとつ、貰ってみるのだった。食べられませんけれど!

廻里・りり

 春の季節が巡って来れば、それだけでもわくわくそわりと心も躍っちゃうけれど。
 廻里・りり(綴・h01760)が向けた青の瞳を彩るのは、淡くて華やかでとりどりのパステルカラー。
「どこを見てもカラフルでとってもかわいい!」
 そううきうきと弾む心のまま、足取りも軽やかに。
 春の訪れを祝う祭り、イースター祭で賑わう冒険王国を歩いていれば。
 そんなカラフルな風景の中、とてとてお散歩しているのを見つける。
 目に飛び込んできたのは、春色いっぱいの彩りと。
「それに……うさぎさんとひよこさん!」
 イースターモチーフにもなっている、うさぎさんとひよこさんたち。
 りりは、そんなふわもこさんたちの目線を合わせるべく、ひょこりとしゃがんで。
(「きっとふわっふわなんだろうな……っ!」)
 そう、そわりとしてしまったから。
「ちょこっと触ってもいいかな?」
 訊ねてみれば、とことこぴよぴよ、むしろ嬉しそうに寄って来てくれて。
 人懐っこい子たちを、そうっと優しくなでなでぎゅー。
 お散歩しておひさまに照らされた子たちは、ふわふわぽかぽか。
 思った以上にふわふわな撫で心地です!
 それから、そんなうさぎさんやひよこさん、お花もいっぱい咲いているような。
(「せっかくだしイースターパフェを食べてみようかな?」)
 甘やか美味しいイースターを今度は味わってみようと、スイーツの店へとやって来たりりだが。
 パフェの大きさを選べると知って、くるりと周囲を見回してみた後。
「大きさは……中くらいのサイズで」
 ちょっと他の人達が食べている超特大サイズは、完食する自信がないから。
 手堅く普通サイズにして……いざ、いただきます! と、したいところなのだけれど。
 りりは刹那、ハッと気づくのだった。
「……でもこれ、かわいすぎて食べられませんね……?」
 じいと見つめるうさぎさんやひよこさんのデコレーションをはむりと食べられるのか。
 綺麗にお花畑みたいに咲いている甘いお菓子の花を崩すことができるのか……?
 そうスプーン片手に、頭を悩ませていたりりは、再び大きく瞳を見開く。
「くずすのもったいな、ああっ溶けちゃう」
 というわけで、ちょっぴり葛藤などしながらも、でもそれはそれとして。
 いろんな味を楽しめるパフェを、おいしくはむはむいただきながらも。
「あの、魔法のたまごがもらえるお店の噂を聞いたのですけれど、ご存知ですか?」
 この王国の住民っぽい、同じ年くらいの女の子と相席になったから、そう訊ねてみれば。
「魔法のたまご? あ、人気のちゃんねるのドラグルの配信でも言ってたから、有名になっちゃったかな?」
「ここにありそうだよって場所があったら、教えていただきたいのですが……」
「祭り会場の端にそっと店が出ているってきいたわ」
 それから魔法のたまごについて、色々と情報も集められれば。
 りりはもうひとつ、地元民の彼女に訊いてみるのだった。
 ……あ! あと他におすすめの食べ物があったらそちらも! って。
 お腹が減っては、たまご探索もできないですから、ええ!

フルール・ペタル

 ふわふわカラフルなパステルカラーの風景に、真白の小さな花がひらり。
「まぁまぁっ、とってもにぎやかなのね!」
 フルール・ペタル(花揺籠・h05932)がきょろりと視線を巡らせるのは、春の訪れを祝うお祭りの景色。
 そんな楽し気な空気に、わくわくな気持ちが心にいっぱい咲くのだけれど。
 でも、足取り軽やかに歩きながらも、ふと首をこてり。
「おまつりってはじめてだから、どこを見たらいいか迷ってしまうわ?」
 お祭りというものがどういうものかは、よく知らなくて……何をすればいいか、ちょっぴり迷ってしまうのだけれど。
 ずらりと並ぶ屋台や楽しそうなイベントをきょろきょろ見て回れば、こくりとひとつ頷く。
「ここは笑顔がいっぱいで、すてきな場所ね」
 だからフルール自身も、その心が赴くままに、歩いて見てみて。
 ひかれるものが多いのだけれど……その中でも特に、気になった催しに参加してみることに。
(「チャーム作りにお邪魔してみましょ」)
 うさぎやひよこにたまご、イースターモチーフなものは勿論。
 好きなチャームを色々と組み和わせて、オリジナルチャームが作れるのだという。
 ということで早速、フルールは可愛いモチーフたちに手を伸ばしてみて。
 イースターには欠かせないたまごは、淡い緑に白いお花が咲いたものを。
 それに、まんまるぴよぴよ、ひよこを組み合わせてみて。
 優しい春色に寄り添う、キュートな子が揺れるチャームの出来上がり。
 でも、フルールはこう店の人に訊ねてみる。
「これは私の分で……もうひとつ作ってもいいかしら?」
 そして、勿論どうぞ! と快い返事を聞けば、もうひとつ。
「ふふっ、かわいくできたんじゃないかしら!」
 淡い紫色に白いお花が咲いたたまごに、うさぎの組合せの子。
 この子もお土産にと、ふたつ仲良く並べてゆらりと眺めていれば。
 ふと聞こえたのは、周囲のひとたちの楽しそうなお喋り。
 そう――不思議な生き物が孵るかもしれないという、魔法のたまごの噂話。
 この祭りのどこかに、そんな魔法のたまごをもらえるお店があるのだという。
 それを聞けば、そわりと、そのお店がすこぅしきになっちゃったから。
 春色のチャームたちを連れて、フルールは探してみることにする。
 おまつりで笑顔なひとたちを見ながら、新しい出会いの物語の予感を辿って。

香柄・鳰
エメ・ムジカ

 晴れた空から降る陽光はぽかぽかで、様々の花たちが咲き誇る季節。
 ただでさえ、春はたくさんの彩りで溢れているというのに。
「わぁっ、この国のイースターはとっても賑やかだね」
 ぴょこり、エメ・ムジカ(L-Record.・h00583)が黒兎のお耳を揺らして言うように、やって来た冒険王国で開かれているのはイースター祭。
 ムジカと共に歩む香柄・鳰(玉緒御前・h00313)も、淡くも華やかなパステルカラーに染まる街へとくるり視線を巡らせて。
「街中が色あざやかで……これがイースター祭、ですか」
 ……どの√でも春の訪れは喜ばしいものなのね、と。
 ふっと細めた輪郭を結ばぬ朧ないろにも、爛漫の春を移す。
 そんな鳰の言葉に、ムジカは再びお耳をぴこり。
「鳰ちゃん、イースター祭ははじめて?」
「実はそうなの。ムジカさんはお詳しそうですね?」
 彼のお耳を見つめながら、鳰もおもむりにすちゃり。
 ぴこり、黒兎耳のカチューシャ付けて揺らして見せれば。
「ふふ、イースターらしい格好になれてます?」
「うん! ばっちりだよ♪ これで鳰ちゃんもうさぎさんの仲間いり!」
「これでムジカさんとお揃いです!」
 鳰も今日は、ムジカとお揃いのイースター黒兎さん!
 そしてふたり早速、イースター祭で賑やかな街を歩いてみれば。
 鳰は、よちよちお散歩中の子たちと出会って。その姿を見れば、思わずそわりとその手を伸ばして。
「愛らしい……ムジカさんのお耳に迫るふわふわでは!?」
 ちょこんと手に乗せたひよこのもふもふ感触に、声を上げちゃう。
 そして道の途中、仔うさぎさんをぎゅうと優しく抱っこして、ご挨拶していたムジカは。
「み? ぼくのお耳のふわふわにひってき……」
 その声に赤の宝石眼を瞬かせてから、じいと視線向ければ、ぱちりと目が合って。
 鳰の手の上で、ぴぃ、と鳴くふわもこと見つめ合いながら、こくりとひとつ頷く。
「さすがはひよこさんっ……綿毛のようにふんわりが侮れないっ」
 鳰も、ちょこりとムジカに抱っこされている子へと向けた瞳を細め、告げる。
「仔兎さんのふわふわも大変素晴らしくて」
 ――私、イースター大好きになりました! と。
 ムジカはその声に……にふふ、ほんと? と笑み咲かせてから。
「イースターは春告げと喜びを分かち合うハッピーなお祭り! 鳰ちゃんに大好きになってもらえて、ぼくも嬉しいっ」
 ムジカも鳰と一緒に目一杯、春の訪れをいっぱいお祝いするつもり。
 それから、賑やかな声で溢れる風景の中、イースター色に染まった店々をわくわく巡っていれば。
「あら、此方のお店は何でしょう」
 祭り会場の端にそっと開かれているのに、人の姿が沢山ある店を見つけて。
 何の店なのかと目を向けて見れば、こてりと小さく首を傾げる鳰。
 ……はて、魔法のたまご? と。
 その声に、ムジカのお耳がぴんっ。
「このお店! 街で噂になってたよ。ぼく、気になってたの! 入ってみよ♪」
「噂にまでなっているのなら行くしかありませんね」
 ふたり、店へと足を向けてみれば。
「ほわぁ……いろんなたまご!」
「……もしかしてこれ、全てタマゴかしら」
「おっきいたまご、ちいさいたまご……模様もたくさん~!」
 店の中は、くるりと見渡す限りのたまごだらけ。
 それからムジカは、耳にした噂のことを思い返しつつも、改めて、並ぶたまごたちを見つめてみて。
「持ち主さんごとの生き物が孵るんだって……ぼくらにはどんな子が生まれてくるんだろう」
「そうね……選んだたったひとつのタマゴから、本当に唯一のいきものが生まれてくるならば正にご縁。楽しみですね」
 鳰も頷いて返しながら、自分と縁結ばれるたまごを探してみる。
 そして、まずはムジカが見つけて、その手を伸ばす。
「ぼくはねぇ……あ! この子にしようかな?」
 手に取って、大事に抱えて撫でてみるのは、優しい翡翠色に白の雫模様をしたたまご。
 鳰はそんなムジカと彼のたまごを微笑まし気に見つけた後。
「ムジカさんは早速見つけていらっしゃる。ふふ……綺麗な色のタマゴ」
 私も探さなくては、と改めてたまごたちへと視線を戻した、その時。
 指先にふれるざらりとした感触に指が止まって。
 目を遣ればそこには、小さな藤色のタマゴが。
 そして鳰は、その子を手の中に迎え入れる……では、此方に、って。
 そんなふたりそれぞれ、選んだたまごを貰ったのだけれど。
「噂では、ダンジョンにたまごの秘密があるみたい?」
 じいと見つめてみる子はまだ、生まれる気配はなさそうだから。
「孵すには条件もあるっていうし、この子達と冒険をしてみよう♪」
 ……ふしぎを解き明かすのも冒険の醍醐味ってね! って。
 これからはじまる冒険の予感と不思議なたまごに、わくわく心躍らせて。
 冒険も楽しみに変えてしまう、そんな旅人らしい言葉に、ふ、と鳰は笑んで。
「ええ、そうしましょう。折角選んだタマゴ達のお顔も見たいですし」
 ふたり顔を見合わせて、頷き合えば。
「うん! この子達に出会うためにも、攻略がんばろ~!」
 各々のたまごを連れて、気合も十分――いざダンジョンへ! と。

リオル・プラーテ

 カラフルな彩りに満ちたお祭りは、春の訪れを祝うもので。
 住人達が盛り上げ、沢山の客も訪れている冒険王国は今、とても賑やかで活気に満ちている。
 そんな楽しそうな人たちの声を聞きながら。
(「イースター祭、か」)
 ……別に興味はなかったんだけど、なんて。
 ふらりと祭り会場を歩いていた、リオル・プラーテ(空うつろの夢・h01411)なのだけれど。
「……すみません、それ、いただけますか?」
 ふと、屋台へと立ち寄って注文をしてみる。
 ……いや、ひよこミルクセーキだけ楽しむか、と。
 それから、差し出されたものを受け取れば、人当たり良い笑顔だけ向けて。
 甘くてキュートなミルクセーキのひよこさんを連れて、さっさと立ち去るリオル。
 イースター祭を楽しもうとかは、思っていなかったのだけれど。
 でもいざ、この賑やかさや華やかさに身を置けば――思い出したのだ。
 昔、可愛いものや甘いものが好きな|友人《リルディ》がいたことだとか。
(「自分が甘いものが好きだとかじゃ……」)
 そこまで思って、じいと買ったひよこミルクセーキへと視線を落とせば。
 ひとくち飲んでみて、リオルは思い直す。
 ……否定したいけれど。
(「甘い物は好きだ。単純に美味しいし」)
 たまには、ほんの少しくらい密かに楽しんでも、きっと問題ないだろうし。
 それにリオルが話を聞いて、何気に気になっているのは。
「魔法のたまご、ですか」
 そう、持ち主それぞれで違った、不思議な生き物が孵るかもしれないという、魔法のたまごの噂。
 そしてそれを聞けば、リオルは思い出すのだ――数ヶ月前に手に入れていた|καρδιά《カルディア》のことを。
 カルディアは、今は赤い卵の形をした、魔力結晶だ。ただ、時折生きているみたいに脈を打ったり動くことがある。
 だから……そうだ、なんてちょっぴり笑ってみせて。
「魔法のたまごがあれば……いっそたまごの餌にでも出来るかも?」
 そう言った刹那、手の中で震えるような感触を覚えれば。
「ははっ、怖がってます?」
 ぷるぷるしているカルディアに、ちょっと可笑しくなる。
 けれど……なんて、思っていたら。
 ぴょんっと不意に手を離れたかと思えば、カルディアが何処かへと目指し飛んでいって。
 飛んで動くとか全くもって想定外だ、とその後を追えば――そこは、魔法のたまごの店。
 そして、沢山並ぶたまごたちの中にちゃっかり違和感なく紛れている、柘榴色をした卵型の結晶をリオルは見つけるのだけれど。
 魔法のたまごの店に飛んでいったことも想定外であるのに、さらにそれに加えて。
(「しかもこいつ、たまごに妙にくっついて離れない……」)
 ぴとりとたまごにくっついて、離れそうにないから。
 リオルが伸ばしたその手で取ったのは――カルディアとたまごをふたつ、一緒に。
 別に少しだけ気にはなっていたが興味はなかったんだけど、と……再び心の中で思いながらも。
(「……仕方ない、貰っていこう」)
 何となくほわりと嬉しそうに脈打っている気がするカルディアと、たまごを連れて。
 再び賑やかな冒険王国を歩き出すリオルであった。

久瀬・千影
見上・游

 春の訪れを祝う祭りは、淡く優しく華やかな彩りが沢山咲いていて。
 イースターといえば、ウサギやひよこ、そしてなんといっても。
「卵料理が山ほど食べられるなんて天国だよね」
 くるりと巡らせる見上・游(|D.E.P.A.S.《デパス》の護霊「佐保姫」・h01537)の瞳がわくわくと映すのは、イースターならではな卵料理の数々。
 久瀬・千影(退魔士・h04810)はそんな彼女が心躍らせるだろうことも知っていた。
 何せ、一介の料理人である游の得意料理は卵料理で。
 そして多くの料理人の枠に漏れず、彼女は食べる事も好きだということを。
 それから、嬉々と歩むその表情を見つつも千影は思うのだった。
(「俺と行動する時は”食べてばかりだ”なんて言っていたが……」)
 ……料理人としての知見を得るという意味ではある意味、それは才能ではないかと、なんて。
 そして、彼がそんなことを考えているなど、勿論きっと知らずに。
「千影さんこれとかどうかな?」
 しゅしゅっと、スマートフォンを高速スワイプして、千影にも事前にチェックして気になったものを見せてみせる游。
「デビルドエッグとホットクロスバンズ食べたことないから食べたいし、ノンアルホットエッグノッグも飲んでみたいなぁ」
 そんなスワイプで現れる画像は、どれもこれも珠玉の一品で。
「――時間はあるさ。片端から興味ある品、全部食おうぜ」
 一人の時より若干ゆるりと歩みながらも、千影はくるりと賑やかな冒険王国を見回してみて。
 游も、そんな優しい歩幅の隣を歩く。でも、ちょっぴりだけ歩む速度が上がったのは、目当ての店が、すぐそこだから。
 それから、気になる卵料理をいくつか注文して、早速実食。
「旨いな、コレ。次の賄いの研究メニューにしようぜ」
「いいね、春キッシュとか案外短時間で作れそうだし」
「ああ、春キッシュは旬の野菜を入れて挑戦、デビルドエッグはもうちょいスパイス類を減らした方が一般人受けするかも知れないな」
 真剣にひとつひとつ味わっては、互いに思ったことやアイディアを出し合って。
「デビルドエッグの黄身の味付け色々変えたら豪華な前菜になりそう」
 そう提案しながらも、游は千影にこうお願いを。
「千影さんぜひ作って? お店のみんなにも食べてもらいたいよ」
 堂々とお願いするのは、彼の料理の腕前を信じているからで。
「分かった。今度の賄いは俺が作ってみよう」
 デビルドエッグをもうひとくち、はむりと口にしてみながらも、頷いて返す千影。
「いつも食わせて貰ってばかりだから。この辺で一回、借りを返しとかないとな?」
 そう快諾してくれた彼の賄いを楽しみににしながらも。
「ホットクロスバンズもスパイスが効いてるけど、ほんのり甘くて美味しい」
 游は新しい味に感激しながらも、もりもり食べては幸せそうに笑みを咲かせる。
 作るのも食べるのも、どっちもとても好きだから。
 それから沢山美味しい物を堪能して、楽しくいっぱい意見や感想を交わし合って、おなかも満たされれば。
 優しく柔い陽光が降る春のぽかぽか陽気の中、暫くふたり並んで祭りの風景を歩いてみて。
「ここ長閑だね。この国の空気を吸うと地元を思い出すよ」
 游はくるりと巡らせた青をふと移して、彼へとこう訊ねてみれば。
「千影さんのお家はどんなとこ?」
「俺の家?……歴史だけが古いクソ馬鹿デケェ家さ。道場が併設されてる。怪異や妖怪退治で一財産を築き上げてる」
「あ、もともと怪異とかを相手にしていた血筋なんだ」
 返る声を聞けば、そっと納得する。
 ……彼の肩にいつもある”相棒”も、そういうお家ならと。
 そして思いを馳せてみる――彼を育ててくれた人はどんな人たちなんだろう、と。
 それからゆったりお喋りして歩いていれば、街のはずれに、その店をふたりは見つける。
「魔法の卵気になる、せっかくだからひとつもらってみよ」
 噂話で聞いた、魔法のたまごが貰える店を。
 聞いた話では、持ち主によってそれぞれ違う、不思議な生き物が生まれるかもしれないのだという。
 けれどどうやったらたまごが孵るか、そもそも本当のことがどうかもわからないのだけれど。
 それでも千影は思うから――魔法の卵は勿論、欲しい、って。
 そして千影は、ひとつずつ――触れて。
 触れた瞬間、どくんと熱く脈を打ちはじめた気がした、一際生命力の鼓動の強いモノを見つけたから。
 そっと手に取ってみれば、刹那掌に伝わるのは、生命の熱。
 そして勿論、游も。
「私は空色の卵がいいなぁ」
 手に取ってみたのは、淡い波が描かれた魔法のたまご。自分の感覚を信じて。
 それから大切に優しく手のひらで選んだ子を包んで上げながらも、その心に愛おしさを咲かせる。
 ……ここから命が生まれてくれたら嬉しいなぁ、って。