第八汎神資料室

人間災厄『リンゼイ・ガーランド』に関して

斎川・維月 8月17日00時

・前提としての過去情報

【秋葉原荒覇吐戦】
 比較は無意味だから
https://tw8.t-walker.jp/thread/club_thread?thread_id=26997
 比較の話
https://tw8.t-walker.jp/thread/club_thread?thread_id=27589

【ゾディアック継承戦争】
https://tw8.t-walker.jp/scenario/show?scenario_id=11873
https://tw8.t-walker.jp/scenario/show?scenario_id=11849
https://tw8.t-walker.jp/scenario/show?scenario_id=11888
https://tw8.t-walker.jp/scenario/show?scenario_id=12045
https://tw8.t-walker.jp/scenario/show?scenario_id=11879
https://tw8.t-walker.jp/scenario/show?scenario_id=11923

【現在、斎川・維月が向かっているリンゼイ・ガーランドの関連案件】
https://tw8.t-walker.jp/scenario/show?scenario_id=12583



●K博士の思案
「不気味だな」
 如何にも語弊のありそうな言葉を男は吐く。とは言えそれ自体は以外でも何でもない、この男……汎神解剖機関に所属する研究者の一人であり、人間災厄『クビレオニ』……斎川・維月の事例を担当しているこの男は、端的言って露悪的な言動が酷い。
 だから、今回のその言葉も何時もの憎まれ口なのだろうと、彼の人となりを知る者であればそう判断するのが妥当。なのだが……
「あのバカ娘がな。平静なんだよ」
 だが、その眉間に刻まれた深い皴が。そして声に付随する忌々し気で苦々しい響きが、どうもその表現が本気であるのかも知れないと、伝えて来る。
「あいつはリンゼイ・ガーランドに対して固執に近い感情を持っている。それ自体は分かっていた事だ。実際、笑える事にあいつが積極的に参加した簒奪者の案件はリンゼイ・ガーランドの関わるもののみなんだからな」
 バサリと卓上に広げられた資料は13件。うち6件が秋葉原荒覇吐戦に置けるリンゼイ・ガーランドの案件で、うち6件がゾディアック継承戦争に置けるリンゼイ・ガーランドの案件だ。そして残り1件は親しい√能力者と集まってのレクリエーションの記録である。それはそれで資料として必要だから編纂されただけで、簒奪者関連の案件ではない。
 なるほど100%リンゼイ・ガーランド。これ以上なく分かり易く執着している。
「その理由も明白だ」
 また別の資料を広げる。
 特に分かり易いのが目前の男、K博士による口述レポートだ。
 リンゼイ・ガーランドと言う人間災厄の持つ災厄の力。それからそれによる社会的立場。そして後の展望。
 それらの要素が斎川・維月のそれらと、一部が酷く似ており、一部が真逆に近く、そして一部がまるで皮肉の様に対比になっている。偶然としては中々の希少性を感じる程の類似と差異。
 己が人間災厄の力に……根本的な形で左右されている維月からすれば、それは気になる存在だろう。

「で、その存在の災厄としての力と、社会的立場に大きな変化があったってのに、あいつは平静なんだ」
 平静だから良かった。
 等と言う話ではないのだ。どう考えてもおかしいのだから。
 少なくともK博士はそう考えている。
「今な、あいつはリンゼイ・ガーランドに会いに行っている。|星詠みの情報を基《該当簒奪者の登場シナリオ》に、其処に行けば会える可能性が高いと言う所に向かっていやがるんだ。|実際に会えるかどうか《プレイングが受理されるか》は分からんがな」
 だが、どうなろうと会いに行こうとしている事だけは確かなのだ。
「で、向かう前に、あいつ何て言ったと思う? どんな態度だったと思う?」
 深いため息の後で男は言う。
 嬉しそうだったと。
『リンゼイさん、災厄の力が奪われた事で無差別性が無くなって、外に出れる様になったっぽいんですよね』
 ニコニコと笑っていたのだと。
『良かったでーすーね! お祝いしなきゃ! いや、それよりも折角なんですから一緒に遊びたいですね!』
 軽い調子でそれはもう明るく笑っていたのだと。
「……嫉妬するなら、まあ順当だろう」
 男の口はへの字を描いていて。
「…………自分事の様に狂喜乱舞するなら、ムカつくが理屈は分からんでもない」
 言葉の合間合間にギリと歯を軋ませる音を鳴らして。
「………………もっと真剣に考え込んでるなら、災厄の力を『喪う』実例に関して希望を感じてる可能性も感じれる」
 その目はいっそ憎々し気に顰められていて。
 けれど、多分、その憎悪の対象は維月でもリンゼイでも無いのだろう。
「だがそのどれでも無い。至って普通の、何でも無いちょっとした祝い事みたいな顔で、普通に喜んでやがる」
 それはまるで。
 そこ迄言って、K博士は口を噤んだ。

 そこからは、幾つもの可能性があるから。
 そして、そのどれであるかは、安易に判断するのは危険だと、そう感じたから。

「あいつは、災厄ってものをどう考えているんだろうな……」
 ただ、判断自体を留保のまま吟味する為に、率直で曖昧な疑問だけを零す。
 例えばバケツに満タンの液体を零さないままで調べようとする様に、慎重に。慎重に。