掌編:比較は無意味だから
https://tw8.t-walker.jp/html/library/omen/251112.htm『比較は無意味だな』
そんな台詞が記憶に残っている。
子供の頃好きだった漫画の台詞だ。違う時を生きる二人の絆を描いた幻想物語の短編で、話の最初の方と最後の方でそれぞれ主役の二人があべこべに相手に返す台詞。
そのシチュエーションの小気味よさもあって、当時はそうだなあと思ったものだ。
と言うか、今でもその通りだなあと思う。
だから、何時の頃からか、自分はその言葉を己の指針の一つにしている。
比較は無意味だ。
比較は無意味なんだ。だって人は其々で違うのだから。
だから、妬むのも憐れむのも無意味だ。よって比較に意味なんて無い。
だから。
その予兆を幻視した時も、別に動揺なんかしなかった。
『君の√能力は無差別自殺。君に近づく者は皆、自ら命を絶ってしまう』
比較は無意味だ。
あの子にはあの子の事情と心がある、だから比べる事に何か意味はない。
『私は君の能力が効かない特異体質だから、君は私が先導しよう』
比較は無意味だ。
と言うか、そう言う事を比べる事自体そもそも野暮だよね。
『(でも先輩、√能力が効かないのは先輩が特異体質なのではなくて、この能力は『私が好きな人には効かない』、それだけなんです……)』
比較は
無意味だ。
と言うか予兆ってこう言う内心の吐露迄見えちゃうの、中々ナチュラルにプライバシーの侵害でちょっと気まずいですね。乙女の恋心が全√能力者に大暴露ですよ。かわいそうに。
……まあ、でも。そっか。
好きな人には効かないのは。まあ、ええと。
「中々のラッキーガールでーすね!」
言葉に出して見たら、ちょっとだけシックリ着た気がした。
そうだ。そうだね。そこの点でだけは、間違いなく彼女はラッキーだ。ラッキーだと言って良いはずだ。
「リンゼイ・ガーランドさん! ボクに迫り得るラッキーハッピーガールに認定します! 勝手に!!」
遠い空の下……でも無いな秋葉原ダイビルって言ってるな割と近くだな。まあ兎も角。
こっちの事なんて認識もしてない相手に向かって勝手にそんな事を言ってのける自分は文句なくパッパラパーだろう。
比較は無意味だ。
「うふふ」
比較は無意味だ。
「……友達になりたいでーすねー」
比較は無意味だ。