シナリオ

⑪無限エキナカショッピング

#√妖怪百鬼夜行 #秋葉原荒覇吐戦 #秋葉原荒覇吐戦⑪

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⚔️王劍戦争:秋葉原荒覇吐戦

これは1章構成の戦争シナリオです。シナリオ毎の「プレイングボーナス」を満たすと、判定が有利になります!
現在の戦況はこちらのページをチェック!
(毎日16時更新)

 王劍戦争は加速し、簒奪者達は次の侵攻を仕掛けることとなった。
 此はその内の邪悪な古妖達が進めた一手。
 旧万世橋駅の遺構が『無限の駅舎迷宮』に変わってしまった。
 縦横無尽に広がる通路を、小さな黒猫が駆けていく――。

 ●

「嗚呼、皆さんお集まり頂きありがとうございます。」
 星詠みのリヒャルト・クロンクヴィストは訪れた貴方を笑顔で迎えた。
「秋葉原荒覇吐戦……戦線は進んでいるようですね。新たに簒奪者達が現れました。」
 リヒトは秋葉原のマップを広げ、新たな戦場を示す。
 その中でも彼が指し示したのは『旧万世橋駅の遺構』。
「連戦の方はお疲れではないでしょうか? ――そんな方に、是非リフレッシュしていただきたく、」
 話の風向きが変わってきた。
「いえ、その。旧万世橋駅の遺構が『無限の駅舎迷宮』に変わってしまったのですが……。」
 内部は無限に広がる迷宮、その中を支配しているのは古妖の迷い猫『朔』。
 しかし相手は『√能力者なら「この迷宮を難なく攻略する」と予想し罠を張っている』ので敢えて油断を見せて相手の隙を誘う、のが狙いなのだという。
「無限の駅舎……と云う事で、駅の施設だけでなく、エキナカのお店も無限に増えている状態です。」
 好きなブランドのショップ、可愛い雑貨屋さん、美味しいスイーツのお店、人気のカフェ……きっと貴方の求めるお店がある筈。
 妖力で古今東西の駅舎の特徴を取り込んだ影響か、今はもう無いお店や他の√にしかないお店も紛れ込んでいるかも知れない。
「と云う事で、戦争の合間ですが息抜きしてきてくださいね。」
 思い切り楽しんで、隙を突いてしまえば古妖を倒すのは簡単だろう、と。

 説明を終えたリヒトはにっこりと笑顔であなたを見送る。
「――どうぞ、楽しんできてくださいね。」

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第1章 ボス戦 『迷い猫『朔』』


サティー・リドナー

「さて、目当てのお店は何処でしょう……?」
 無限に広がり続けている駅舎迷宮で、申し訳程度に設置してある案内板を眺めながらサティー・リドナー(人間(√EDEN)の|【創成の錬成師】錬金騎士《ヒラメキマイスターアルケミスト》・h05056)は呟く。
「こっち、でしょうか。」
 何となく、で決めた方向に進むサティーの後ろを浮遊随伴型ぬいぐるみ・アストライアが人目を避けながらこっそり付いていく。小さな首謀者を見逃さない為だ。
「あっ可愛い秋服! え、試着しても良いんですか?」
 通りがかったブティックの店頭に飾られた、柔らかなブラウンチェックのセットアップに目を留めると笑顔の店員に捕まって試着室に押し込まれた。
「わぁ可愛い……って違う違う、」
 サティーは店員にお礼を云ってブティックを後にする。次に眼に入ったのはキラキラの雑貨屋さん。
「色々なオーナメントが……もうクリスマスの準備なんて、時間が流れるのは早いですね。」
 小さなツリーに飾られたオーロラ色に輝く星を突いて小さく笑った。
 ショッピングを堪能する女の子を演じながら、本当に道に迷いつつ何とか目当ての健康スムージーのお店で限定商品を購入する。
「後は、」
 勿論、肝心な可愛い首謀者の迷い猫退治も忘れずに。
 連結していたデパ地下のペットフードコーナーでこっそりマタタビを購入し、アストライアに振りかける。
 後は亦、エキナカを堪能しながら待つだけで。
『ふにゃぁ……?』
「迷い猫さん、ごめんなさいね。」
 誘い出された酔っ払い猫を、槍にした詠唱錬成剣でさくり。
 古妖の企みは阻止されたのだった。

霧島・恵

「相手の油断を誘う為にも演技しないとだけど俺、演技苦手だから少し心配かも。」
 無限に延びては枝分かれする通路を歩きながら霧島・恵(狐影蕭然・h08837)はのんびりと零した。
「それにしても、今どの辺りを歩いてるのかな? 大体こんな時って余計に迷っちゃうんだね。」
 特に宛てなく進んでいると、役に立ちそうもない案内板が現れる。
 一応それを眺めてみるが、矢張り大した情報は得られなかった。
 まあ良いか、と歩を進めた先に眼に留まったのは、周りの店舗に比べて実に渋い佇まいの煙草屋。
 吸い込まれるように近付いてみると、紙巻き煙草だけでなく煙管や海外製のアンティークパイプ迄並んでいた。
「……おや? コレは確か、昔欲しかったけどいざ買いに行ったら売り切れだった煙管ケースだね。」
 ショーケースの中に並べられた煙管ケースを見付けて恵の足が完全に止まる。
 奥の棚には今では見かけることも少なくなった刻み煙草の缶や箱が並んでいるのにも気が付いた。
「それにこっちはもう絶版になって二度と吸えないと思ってた刻み煙草じゃないか。」
 気持ち声の弾んだ恵の反応に、店主の老人が声を掛ける。
「え、試喫できるの? それじゃあ、お願いしようかな?」
 懐かしい味を堪能しながらぷかりと煙を遊ばせて、恵はしみじみ呟いた。
「それにしても、流石は秋葉原。何でもあるって言う言葉に偽りは無いなぁ。」
 普段の秋葉原にはきっと無いのだが、今此の時に限ってはその通りだろう。
「あれ……何か忘れてるような気はするけど。あ、この煙管ケース一つとそこの刻みタバコを折角だしあるだけ頂けるかな?」
 思いがけず良い買い物をしてほくほく顔で店を出た恵が、しょぼしょぼ顔の迷い猫『朔』と出会うまで後少し。

架間・透空

「本当ですか? 某有名カフェでお茶したり、某ファッション専門店でショッピングしたりしちゃってもいいんですか! やったー!!! とっても嬉しいです!」
 星詠みの依頼を聞いて架間・透空(|天駆翔姫《ハイぺリヨン》・h07138)は眼を輝かせて『無限の駅舎迷宮』にやってきた。
 通路に立ち並ぶお店を眺めてどれにしようかな、と迷う時間すら楽しい。
「じ、じゃあまずはファッション専門店で旬のトレンディな冬コーデを見て回って試着祭りと洒落込みましょう!」
 お目当てのファッション専門店を見付けて突撃する。
 店内は冬本番に備えて暖かそうなコートや、もふもふのファー素材、柔らかな厚手のニットなどが並んでいた。
「うわぁ……これも、これも! とっても素敵で迷ってしまいますね。」
 透空は気になる商品を選んでは試着室に持ち込んで、冬コーデファッションショーを繰り広げる。
「このスカート、カラータイツ合わせたら可愛いかも……。どれにしようかなぁ……。」
 鏡の前でくるりと回って見ては、また次の出会いを求めて店内を見て回る。
「あっ! この帽子! 友達がオススメしてたやつだ!」
 偶然見つけた友達のオススメ帽子に透空の心は此も縁だと即決。
「これにしちゃいましょう! すみませーん! 店員さーん!」
 元気よくお会計を済ませて、笑顔でショッパーを抱えて店を出てくる透空がみたのは、柱の陰から呆然と此方を覗いている迷い猫『朔』。
「……コホン。 夢中になりすぎましたね。」
 敵にはしゃいでいる一部始終を見られていた事に赤面しつつ、静かに決戦気象兵器を起動。
「忘れてくださいっ!」
 固まっている黒猫は|下降流突風《ダウンバースト》の餌食となったのだった。

木早貴・来樂

「いつもなら『こんな面倒なもんよくも作ってくれたな』って苛つくとこだが、他√の店まで混ざってるご愉快建築になったなら話は変わるな。」
 色んな店で賑やかな通路を見回しながら、木早貴・来樂(月蝕・h06184)は楽しそうに進む。
「どぉれ、古妖退治は二の次にして見て回るとすっか。」
 来樂の目的は飲食店。特に案内板などは確認せずに、適当に歩いて気になった店に足を向ける。
「お、美味そう。」
 テイクアウトのたこ焼きを一船買い、近くの壁に移動し熱々の内に頬張った。
 店の近く、香ばしいソースの香りを漂わせながらイケメンが美味しそうにたこ焼きを食べている――そんな光景を見た何人かが吸い込まれる様にたこ焼き屋に流れていった。
 それを横目に宣伝になったかと来樂はゴミをゴミ箱に放り込んで次の店へ。
 途中の広場にイートインスペースがあるのを見付けたので、今度は遠慮なく買い込んでいく。
 甘いもの、しょっぱいもの、熱いもの、冷たいもの、見たことないもの、そして名物駅弁も忘れずに。
「さって、どんなもんかな。」
 山の様に積まれた食べ物を前に、いただきますと来樂の手が伸びる。
 揚げ立て焼き立て冷たいもの、と温度を楽しむものを優先にしながらの見事な食べっぷりで、見る間に机の上は綺麗に片されてしまった。
 包みを片付けながら、気に入った味を思い出す。
「んん……此処の団子が美味かったな。折角だから土産に買って帰ってやるか。」
 良い雇用主だなぁ、俺と軽口を叩きながら、また店を物色し始める。
「何かすげえ色の食べ物があったけど何だあれ……っと、猫?」
 柱の陰から此方を凝視している黒猫を見付けて、来樂は足を止めた。
「あ、御前が例の猫か。……よし、唐揚げをくれてやろう。」
『ニャッ!?』
 来樂は買ったばかりで熱々の唐揚げを迷い猫『朔』の口元に押し付ける。
「今日の俺は機嫌がいいんだ、ほら食えって。」
『にゃぁァ……、』
 明らかに困惑している朔に、来樂は笑顔でぐいぐいと唐揚げを押し付ける。
 その攻撃は朔が根負けするまで続いたのだった。

緇・カナト
トゥルエノ・トニトルス

「此れが噂の無限の駅舎迷宮ねぇ……。」
 緇・カナト(hellhound・h02325)が訝し気に呟く横で、トゥルエノ・トニトルス(coup de foudre・h06535)は眼を輝かせて辺りを見回した。
「此処がウワサの新宿ダンジョンというヤツだな……!」
「いや、新宿迷宮は……もっと日々進化してってる感じなんで此処ではないな。」
 トールならそっちも行ってみたいとか言いそうだな、とカナトは思ったが今は此の迷宮だ。
「……違う駅が迷宮になっているのか~。」
 期待が外れて少し残念そうな声を出したトールはしかし、エキナカのお店巡りを楽しもうと気を取り直す。
「エデン住まいの主の方が駅というものには詳しいのだろうが、我の好奇心旺盛具合もエキナカ巡りには負けないぞぅ。」
「エキナカ巡りって何があるのやら……。」
「お店も無限に増え続けているらしいからなぁ。」
 特に目当てがあるわけではない二人は、一先ず目の前の通りを歩き出す。
「適当に迷宮歩いてるだけでも色んな店があるモンだなぁ。」
 通路にはお菓子の焼ける甘い香りや、淹れ立て珈琲の芳ばしい香りが漂ったりしている。
「食べるのが好きな主の事だし、美味しいスイーツの店テイクアウトやら人気のカフェで珈琲巡りが良さそうか?」
 そんな香りの元になっているお店をあっちこっちと探しながらトールは色んなお店を楽しそうにカナトに示した。
 お店探しはトールの興味好奇心に任せて、カナトはその中で気になったものがあればテイクアウトして食べ歩く。
 ワッフルや小さなカップのパフェなどを順に平らげつつ、最後に買ったクレープの残り一口を飲み込んで、カナトはまだまだ止まりそうにないトールに声を掛けた。
「結構歩いたし、その辺のカフェに入ってそろそろ一息も吐こうぜ。」
 ちょうど前方に現れたハンドドリップが売りのカフェに入店し、歩き通しの足を休ませる。
 しかし通路に面した席に座ったので、トールの興味はまだまだ次の店探しから離れない。
「おお、あそこのパン屋も美味そうではないか? サンドイッチやハンバーガーも美味しそうで良いぞ。」
「飽きないのは構わないが次はパン屋巡りでも始めるつもりか……?」
 ガラス越しに外に夢中なトールに、カナトは珈琲を啜りながら提案してみる。
「偶にはハンバーガーのひとつ位はお前も食べて行ったら良いんじゃないの。」
 その言葉を聞いたトールはきょとんとした後、にっこり笑った。
「我が見つける係、主が沢山食べる係~。互いの好奇心も満たせてウィンウィンだな!」
 次はあの店のスイーツを確認しよ~とご機嫌なトールに、今日はまだまだ止まりそうにないなとカナトは諦めにも似た覚悟を決めたのだった。

矢神・霊菜
矢神・疾風

「無限の駅ナカ……! 夢の響きじゃないか!?」
 星詠みの説明を聞いてわくわくが抑えきれない様子の矢神・疾風(風駆ける者・h00095)は愛する妻に向き直る。
「駅ナカが無限に増えるのって楽しそうねぇ。古今東西、あらゆるお店が集まっているのかしら?」
 それはそれで目移りしそうよね、と楽しそうに零す矢神・霊菜(氷華・h00124)に疾風は力一杯頷いた。
「よし霊菜、今日は息抜きだ! いっぱい楽しもうか!!」
 そう云って今にも駆け出しそうな疾風に手を引かれ、矢神夫婦は無限のエキナカに突入したのだった。
「霊菜はどこ行きたい?」
 キラキラした眼で色々なお店を眺めながら疾風は霊菜に問い掛ける。
「うーん、私は疾風と一緒ならどのお店でも構わないわ。」
 楽しそうな疾風を微笑ましく思いながら霊菜が答えると、疾風は少し考えてからキリっと答えた。
「オレはそうだな、霊菜と一緒にパンケーキが食べたいぜ!」
 ほら、生クリームがうずたかく乗っててさ、パンケーキもふわふわぷるるんのヤツ――と具体的な希望を述べていると。
「……あっ噂をすればそんな店が目の前に!?」
「あら、パンケーキいいわね。それじゃそのお店にしましょうか。」
「よし入店だ!!」
 可愛らしく明るい店内はスイーツ好きで賑わっていた。
 席に通され広げられたメニュー表を前に、疾風は真剣な顔でページを行ったり来たりする。
「ふふ、疾風は甘いもの好きだものね。どれにするか悩んでる疾風、可愛くて好きだわ。」
「うっ、このスタンダードな生クリームたっぷりのやつも魅力的だが、こっちの季節限定モンブランパンケーキも捨て難く……、」
 悩む疾風をニッコニコの笑顔で見守っていた霊菜は素敵な提案をする。
「あら、決められないなら二つ頼めばいいじゃない?」
 疾風と私で一つずつ、半分こすれば両方楽しめるわ、と。
「半分こしたら良い?? いいのか霊菜!?」
 それを聞いた疾風はパッと目を輝かせて店員を呼んだ。
「じゃあこの二つ注文で!」
 ワクワクしながら待っていると、暫くして店員がたっぷりクリームの乗ったふわんふわんのパンケーキを二皿持ってくる。
 それぞれの前に提供されたのを見て二人は思わず声を上げた。
「おっ! 見事なパンケーキだ!!」
「どっちのパンケーキも美味しそうね。」
 疾風はそそくさとカトラリーに手を伸ばす。丁寧にパンケーキを切ってクリームもたっぷり乗せ、霊菜にそのフォークを差し出した。
「はい、霊菜?」
 あーん、と差し出されたフォークを霊菜は迷いなく口に入れ味わう。
「うん、見た目よし、味よしで文句なしに美味しいわ。それじゃ疾風も……はい、あーん。」
 お返しにクリーム部分たっぷりに切り分けたパンケーキを差し出せば、疾風も嬉しそうにそれを口にした。
「うん、美味いな!」
 美味しいパンケーキが、霊菜に食べさせて貰うことでもっと美味しく感じる。
 そんな疾風の満面の笑顔に、霊菜も嬉しそうに笑った。
 ラブラブ夫婦のエキナカデートはまだ始まったばかり。

坂堂・一

 きょろきょろと賑やかな通りを見回して、坂堂・一(一楽椿・h05100)は肩に乗る相棒に声を掛けた。
「無限のエキナカ、わくわくしちゃう、ね。」
『ぷーきゃ♪』
 チンチラに似た姿の精霊、ぷいぷいもつぶらな瞳を同じくきょろきょろさせてはふんふん匂いを嗅いでいる。
「どこから回ろう、かな……あ、雑貨屋さんももうクリスマス一色、なんだね。」
 迷いながら歩き出した先で見付けたのは、クリスマスへの期待でキラキラに光る雑貨屋さん。
 一は店頭にあったぬいぐるみサイズの小さなサンタ帽を手に取った。
「ふふ、このサンタ帽、ぷいぷいサイズだ♪」
『ぷい?』
 ぷいぷいは「似合う?」と渡された帽子を被って見せる。
 その可愛らしい姿に一の顔が綻んだ。
「かわいい。じゃあぼくも、お揃いの帽子にしよう、かな。」
 店内に入って自分サイズの帽子を選んだ後、眼に入った食器コーナーで立ち止まる。
「食器もお揃いの、何か探してみよう、よ。」
『ぷい!』
 お揃いのサンタ帽と、金銀の星が描かれた色違いの小皿を手にして、二人は雑貨屋さんを後にした。
「次のお店は……これ、なんだろ? しゅとー、れん?」
 焼き立ての良い香りが漂うベーカリーで、此の季節限定のポップが踊っている。
「少しずつ食べるん、だね……ぷいぷい食いしん坊だし、我慢できる、かなぁ?」
『ぷいっきゅ!』
 一の疑問にぷいぷいは「任せろ!」と元気に手を挙げた。
「うーん、あんまり信用できないけど、それじゃあ毎日のお楽しみにしてみよう、か。」
 さっき買った小皿に乗せてお茶にするのも楽しそうだねと笑って、此方もお買い上げ。
 袋を抱えてベーカリーを出て、一は店の前でキョロキョロ。
「あれ、どっちから来たっけ? ふふ、本当に迷っちゃった、や。」
 くすくす笑って、ぷいぷいに話し掛ける。
「ゆっくりいこう、ね。」
『ぷっきゅい♪』
 折角だからゆっくりと、迎える冬を素敵にする為の買い物を楽しもう。

三奈木・二藍
クラウス・イーザリー

 簒奪者の起こした事件と聞き、『無限の駅舎迷宮』に乗り込んだ兵士が二人。
「難なく攻略するはずって、高く見積もられたっすね。少なくともニア、迷子になるタイプなんすけど。」
「ああ、全くだ。√能力者だって道には迷うんだ、買い被りすぎだよ。」
 三奈木・二藍(Missing In action-1・h08865)とクラウス・イーザリー(太陽を想う月・h05015)はキリっとした顔で自らの弱点を曝け出した。
「ま、この際だから十分楽しませてもらうっすよ。」
「そうだな。迷えば迷う程相手が油断するだろうし、ここは思う存分楽しませてもらおう。」
 俺も迷子になりやすいタイプだからちょうどいいな、と謎の理屈で頷くクラウスに、二藍も頷き返す。
「迷うのは前提として、はぐれないように注意っすね?」
 それだけ確認すると兵士モードは一旦終了して、二藍は溢れる期待にわぁいと年相応に喜んだ。
「……普段出身√でも中々見ないお菓子! 雑貨! 楽しみっす!」
 早速気の向く侭に通路を進む二人だが、|√《世界》が違えば見るもの殆どが珍しくて、あっちこっちとつい足が止まる。
「全部の全部が珍しくてテンションあがるっす!」
「|俺達の√《√WZ》では見ることのできない物がたくさんあるな……、」
「ニア、お菓子が気になるっす。ショーケースやカフェスイーツ、素敵なものだらけっす。」
 良い匂いにつられて焼き立てのワッフルをテイクアウトして食べ歩きしながらウィンドウショッピングを楽しむ。
「あ、あのカフェ、ショーケースにケーキが並んでるっす……うわぁ、生のフルーツがこんなにキラキラして……、」
「結構歩いたし、此処でお茶にしようか。」
「いいっすね! ……おお、アップルパイとかあるんすか!」
 キラキラなケーキの中から何を選ぼうか、と吟味し始めた二藍は綺麗な焼き目のアップルパイに眼が留まる。
「アップルパイ、いいね。俺は季節ものや期間限定に弱いんだ。」
 隣でクラウスも、『秋限定!』のポップが踊るスイートポテト・モンブランと瞶め合っていた。
「限定もの、買っちゃうっすよね。超分かるっす。」
 うんうんと頷きながら二藍は店員に二人分のケーキとドリンクを注文した。

 カフェでの楽しいお茶を終えて、まだまだ連なるお店を堪能していると、横道から小さな黒猫が駆けて来る。
 黒猫はちらりと二人を見たが、気にせず通り過ぎて行った。
「……。」
 二藍とクラウスは無言で頷きあって、それぞれの武器を手にし静かにその後を尾ける。
 二藍の手にはツールガンの工具。クラウスの手には黎明の月で錬成した短剣が。
 黒猫が立ち止まった瞬間を見計らって両側からぽこん、こつんと。
『にゃっ……!?』
「一般人だと思って油断したね。√能力者でも容易く道に迷うってこと、覚えておくといいよ。」
「迷う人は迷うんす。勉強なったっすね。」
 薄れゆく意識の中そんな言葉を聞きながら、迷い猫『朔』は消えていった。

月夜見・洸惺

「わわ、これは迷子とは別の意味で迷っちゃうかもっ……!」
 見渡す限りにジャンルも√も時代もごちゃまぜなお店が並ぶ通路を眼の前にして月夜見・洸惺(|北極星《Navigatoria》・h00065)は思わず声を上げた。
「どこから見ようかな? えへへ、ワクワクしちゃうっ!」
 きょろきょろと賑やかな店頭を眺めたり、枝分かれする通路を選んで進んだり。
「通路やお店がいっぱいで迷っちゃうね。……でもでも、お陰で美味しそうなクリスマス期間限定のお店を見つけちゃった!」
 大きなツリーを看板にした、クリスマスを楽しむ事に全力なお店は、オーナメントでキラキラ光っている。
「√妖怪百鬼夜行では売ってなさそうな、映えるお菓子や雑貨がいっぱい……!」
 店内には所狭しと雑貨やお菓子が並べられて、お店自体がプレゼントボックスの中身みたいだった。
「サンタさんのスノードームに、ドワーフの人形と……わ、アドベントカレンダーもある! 回転木馬のオルゴール缶は、家族へのお土産にしちゃおっかなあ、」
 小さな|幸せ《キラキラ》が沢山並んでいるのを見て洸惺はあれもこれもと目移りしてしまい。
「……どうしても選びきれなくて、つい全部買っちゃった。」
 クリスマスの魔法は何でも魅力的にしてしまうものである。
 大きな袋を抱えた洸惺が店の外に出ると、通りの角できょろきょろしている黒猫を見付ける。
「……あれ? あの猫又さんは噂の?」
 迷い猫『朔』は此方に気付いていない様で、別の方向に進み始めた。
「気付いていないみたいだし、奇襲は|三頭犬《ケルベロス》にお願いして……、」
 と、洸惺が声を掛けると、怠惰な三頭犬は対価を要求してきた。
「ええと、対価はクリスマスケーキ? わあ、大きく出たね……、」
 でも放っておく訳にもいかないしと、仕方なく了承すると三頭犬はやっと重い腰を上げて黒猫の方に駆けて行った。
 三頭犬にかぷりとやられている朔を見ながら、洸惺は「ケーキを買いにまたお店に戻らなきゃ……、」と呟いた。

天鳴・荒
漆魔・棘

「ねえねえ、荒。今ゲームショップの店員に『にゃぁん』て鳴いたら、ゲームで使える特別なニャオンが貰えるんだって。いこう。俺ニャオンほしい。」
 古今東西の店が集まっているのなら、キャンペーンをやっているあの店もあるだろうと漆魔・棘(🎧・h04351)は親友の天鳴・荒(⚡️・h04348)に声を掛けた。
「へー、そんなのやってんだ! 行く行く。」
 二つ返事をした荒の内心は「ニャオンはどっちでもいいけど鳴いてる棘見たいし。」である。
「今すぐ行こ! ゴーゴー!」
 そんな楽しい光景を早く見たくて、荒は棘の背を押して『無限の駅舎迷宮』に飛び込んだ。
「えースイーツショップめっちゃあんじゃん天国かも! クレープ食べながら行こーよ。」
 立ち並ぶ甘いお店に眼を輝かせた荒は、一先ずクレープ屋さんに眼を付けた。
「うん。俺アイス乗ってるやつにする。」
 それぞれ好みのクレープを手に、ゲームショップ目指して通路を進む。
「そういえば、ボス猫がどこかで見てるんだってね。」
「ボス猫に見せつけながら歩こ。」
 古妖もクレープ片手にキャッキャとゲームショップを目指す男子高校生が√能力者だとは思うまい。
 分かれ道にある案内板を見上げて不図、棘が思い出した様に零す。
「駅迷いあるあるって俺迷ったことないからわかんないんだけど。だってさ、案内の矢印追ってたら、だいたい着けるし──あれ、下向きの矢印ってどこ指してるの?」
「オレも迷ったことなーい。方向音痴って困っちゃうね? 下向きは……後ろ? 地下? あれ? オレら迷いそうになってる? ウケんね。」
 云いながら混乱しかけて荒はケラケラと笑った。
 感覚で理解していても言語化しようとすると混乱することもあるものだ。
 あーだこーだとクレープを食べ終わる頃には無事目当てのゲームショップに到着し。
「あ、グッズもいっぱい。ぬいぐるみとかほしい。」
 棚一杯に並べられているぬいぐるみを見て棘の足が止まった。
「ぬい買うの? オレも買お! モモンガクリーチャーのにしよかな。」
 荒が沢山並んでいる種類の中から目当てのぬいぐるみを抱え上げる。
「荒、そのクリーチャー好きだよね。」
「可愛いんだよねコイツ。耳がウサギっぽいから棘に似てるし、フォルム。」
 そう云いながら荒は棘の横にぬいぐるみを並べて頷いた。
「いっぱい持ってなかった?」
「これでグッズ30個目くらい! 棘はどれする?」
「俺はこの綿菓子みたいなクリーチャーにする。」
「あー、可愛い! オレそれも買う!」
 盛り上がって両手にぬいぐるみを抱えた荒が、店員さんを見付けてキャンペーンのことを思い出す。
「店員さんいるべ、言いに行く?」
 そう棘に促すと、棘も頷いて店員さんに向かって行った。その後を荒も付いていく。
「あのー店員さん……〝アレ〟いい?」
 恥ずかしくてモタモタしている棘を店員さんは笑顔で待っている。
「……にゃぁん。」
「にゃぁん! あはは! 棘かわい~!」
 希望通りのものが見られて荒はご機嫌だ。
「荒、うるさいよ。」
 僅かに顔を赤らめた棘がぶっきらぼうに文句を云うが、二人は見事キャンペーンコードを手に入れたのだった。

シンシア・ウォーカー
天王寺・ミサキ

「ミサキさん、ショッピングしましょう!」
 楽しそうに誘ってくるシンシア・ウォーカー(放浪淑女・h01919)を見て、天王寺・ミサキ(我思う故に・h05991)は訝し気な顔をした。
「シンシアがお酒とギャンブルが絡まない事に誘ってくるなんて珍しい、明日は大雪かも。」
 なかなか辛口の意見だが、シンシアは気にした様子もなく真面目な顔で返す。
「駅ナカ好きですよ、お買い物からいい感じの酒場まで沢山あって。シームレスな飲酒環境、万歳。」
「前言撤回、通常営業だ。まあ行こうか、」
 ミサキは彼女の印象に間違いがないことを再確認して、『無限の駅舎迷宮』でのショッピングに付き合うのだった。
「そういえば、欲しいものある?」
 色んな店が立ち並ぶ通路に入り、目的はあるのかとミサキはシンシアに問い掛ける。
「新しいマニキュア欲しいです! 冬っぽくマットなのを。」
 その問いにシンシアはハイ!と元気に答えた。
「手袋で見えないと言われればそうですが、自分の気分が上がるものっていいですよね。」
 他人に見えなくても、極論、塗っている事を自分が知ってるだけでも良い。ふと眼に入った指先が綺麗だと嬉しくなるものだ。
「ミサキさんもどうです?」
「マニキュア? オレは自分の拳で殴る系の格闘者だから……。」
 そんな気持ちを分かち合いたくて薦めてみるが、まっとうな理由で渋られてしまう。
 むむ残念、と唸ったシンシアは代替案を出した。
「ならばお洋服選びましょう一緒に。」
「……同じような服着がちだし、一緒に選ぶのもいいか。」
 まあ服なら何があっても着るものだし、と了承したミサキを連れて、シンシアは目当てのブランドショップに突入する。
 並べられている服を吟味して、これぞと云う一着を選び出した。
「このフリル多めのとか!」
「い、いやこのフリフリのワンピースは流石に派手だって!」
 自分では選ばないテイストの服を出されて戸惑うミサキに、シンシアは服を当ててみて頷いた。
「似合ってます。」
「に、似合う?」
 肯定されて更に戸惑うミサキと、スイッチが入ったのか次々服を選んでいくシンシア。
「次はこれです!」
「えっ、」
「ちょっと試着してみませんか?」
「待って、」
 そうして半ば着せ替え人形の様にあれこれと服を見繕われるミサキは、ショップの移動中に見付けたベンチと自動販売機が並ぶ空間で足を止めた。
「そろそろ疲れてきたし、この待合室的なところで一旦休憩しようよ。……あ、これあのアイスの自販機じゃん。ほら、新幹線の車内販売で有名なやつ!」
「硬いと有名なバニラアイスですね、スプーンで表面に傷をつけて、っと。」
 早速バニラアイスを購入したシンシアが鞄から何かを取り出す。
「オレもバニラにしよ。うわ、ほんとに硬いスプーン折れそう……何してるの、それ。」
「何って、自分のウイスキーを注いだだけですが。こうすると溶けやすくなりますし美味しいですよ。」
「知ってはいたけど当たり前のように酒を出すな酒を。」
 とぷんと揺れるウイスキーの瓶を見てミサキは思わず突っ込んだ――向こうに黒い影を見付ける。
「……あれ敵?」
 ゆら、と二股の尻尾を揺らす黒猫は間違いなく迷い猫『朔』だ。
「気持ちよく食べているところを邪魔しないで頂きたいのですが!」
『にゃにゃにゃにゃ!?』
 二人に気付く前に速攻を掛けられた黒猫は|一国一城の破滅《デストロイ・ディグニティ》で揺らされながら|細やかな魔法《ピンキーマジック》の一撃を受けて儚く散っていったのだった。

アルティア・パンドルフィーニ
ツェツィーリエ・モーリ

「無限にお買い物が出来ちゃうなんて素敵! 回廊は無限でもお財布が無限じゃないのが悔やまれるわ。」
 アルティア・パンドルフィーニ(Signora-Dragonea・h00291)は延々と続くショッピングストリートを眺めて溜息を吐いた。
「つまり、無限にお店巡りが楽しめてしまいますのね。なんて素敵な……ですが、仰る通りお財布は有限。慎重に吟味しなければ……。」
 ツェツィーリエ・モーリ(視えぬ淵の者・h00680)もティアの言葉に頷いて真剣な表情をする。
 さてどうするか、と考えた時にティアは立ち並ぶマネキンに眼を留めた。
「ねえツィーリ。いつもみたいに食べ歩きも良いけど、今日はお互いの服を選んでみない?」
 その提案を聞いて、ツィーリは胸に手を当て一礼する。
「成程、とても良いお考えでございます。まだまだファッションは勉強中でございますが、頑張って選んでみますわ。」
「ふふ、決まりね。早速行きましょう!」
 ティアはツィーリの手を引いて、自身が描いているイメージに合うショップを探し出した。
「ツィーリには格好良いメイドさんの印象が強いけど、ドロップショルダーのボレロとかどうかしら。」
 イメージを形にする様に一着一着上下のバランスを見ながら選んでいく。
「フリルがついててもショートパンツなら動きやすいわ。インナーと足許はぴったりしてる方が良いわね。」
「ふふ、実は色々な服装を試してみたかったのです。」
 ティアの選んでくれたセットアップを試着しながらツィーリは口元を綻ばせた。
「……私の好みで選ぶと可愛くなっちゃうわ。」
 選んで渡してみたものの少し可愛らし過ぎただろうか、と迷っているティアの前に試着室からツィーリが出てくる。
「こういったレースなども可愛らしく……似合っていますか?」
「ええ、勿論、似合ってるわ! 何でも着こなせちゃうメイドさんなのね。」
 心配は杞憂で、良く似合っているツィーリの姿にティアは流石だわと感嘆の声を漏らす。
「ティア様のお眼鏡に適うなら自信が持てますわ。」
 ティアの心からの賞賛にツィーリは嬉しそうにお辞儀をした。
「では次はわたくしの番ですね。」
 ショップを変えて、今度はツィーリがティアの為のセットアップを選んでいく。
「ティア様には高いヒールが似合われると思っておりましたの。」
 足元からメインを決めて、それが引き立つ組み合わせを考える。
「タイトな印象のパンツに、秋冬ですからゆったりしたニットを合わせて……どうでございましょう?」
 選んでもらった一式を持ってティアは試着室に入った。
「パンツスタイルって初めてかも。こういうのも良いわね!」
 鏡の前でくるりと全身を見てから、最初に選んで貰ったヒールを履いてツィーリにお披露目する。
「ありがとうツィーリ、レパートリーが増えたわ!」
「お気に召していただけたならよかったです。」
 見立て通り、ティアによく似合っているのと本人も気に入っている様子を見てツィーリは満足そうに頷いた。

 それぞれが選んだ服の入ったショッパーを手に、二人は楽しくも名残惜し気にストリートを歩いてゆく。
「今度はこれで一緒に遊びに行きましょうね。」
「ええ、是非遊びに行きましょうね。約束ですよ。」
 次の約束に、軽く小指を絡ませて。

和紋・蜚廉
不忍・ちるは

「今日はちるはが案内してくれるのか。」
 和紋・蜚廉(現世の遺骸・h07277)は柔らかい眼差しで、頷く不忍・ちるは(ちるあうと・h01839)を見た。
「駅舎迷宮とは言うが、道が紛らわしくなれば、有事のためだ。こうして手を繋げば、足並みは整うな。」
 そう云って蜚廉はちるはの手を優しく捕まえる。
 繋いだ手にちるはは蜚廉さんとおててつないでおかいもの、と嬉しそうに歩き出した。
 今日はちるはが案内する、と云うのも彼女に目的があるからで。
 『先日蜚廉さんから色々お品物頂きましたし、丁度私がよく寄るアパレル別店舗があったのでお返し探そうの会』を絶賛開催しているのだ。
 目的の店舗に着いて、早速ちるはは売り場を見て回る。
(そういえば冬は寒いとおっしゃっていたので、んー……、無難に……マフラーとか……?)
 そう考えながら、蜚廉の首元とマフラーを見比べたり。
(ブラックウォッチのお色も良いですね。でもチェック柄だと私とお揃いっぽく?)
 時計の色味に惹かれてみるが、既に自分の持っている品を思い出して立ち止まる。
(後から合わせるのはさすがに……あからさまな感じに……そもそもお揃いなら一緒に買ったほうがいいですよね……、)
「んんー……?」
 ちるはが色んな品と自分を見比べながら真剣に悩んでいる様子を、蜚廉は微笑ましく見守る。
 彼としては先日渡した品々の礼は不要だけども、ちるはが此の悩みすら楽しんでいるのなら何も云う事はない。
(そんなに我に似合うか気になるのか? その眼で選ぶなら、それで十分だが。)
 ちるは自身が|蜚廉《自分》を思って選んだものならそれだけで喜ばしい。
 そんなことを考えていると、ちるはも心を決めたのかシンプルなグレーのマフラーを持ってレジに向かって行った。
 蜚廉が待っていると、ちるははプレゼント用にラッピングされた包みを持って戻ってくる。
「お待たせしました。……少し歩きませんか?」
 お店の前ですぐ渡すのも気が引けて、ちるははまた蜚廉の手を取って歩き出す。
 進んだ先、複数の通路が合流する場所が噴水のある広場になっているのを見付けて、此処ならとちるはは蜚廉を振り返った。
「先日のお礼に、寒い日にどうぞ」
 そう云ってにっこりと包みを手渡した。蜚廉はそれを受け取って丁寧に包みを開ける。
「ああ、……グレーのマフラーか。」
 触れれば柔らかく、癖も無い。きっと着け心地も良いだろう。
「有難う、ちるは。これで次の準備は万端だ。」
 笑顔で伝えてくれる蜚廉の言葉に、ちるはも嬉しくなって微笑み返す。
 そんな中、二人同時に何かに気付いた。
「……朔の気配か。」
「行きますね、」
 ちるはがやる気なら我は横で見ていよう、と蜚廉は頷く。
「ああ、ちるは。走るなら手は離すなよ。」
 駆け出して行きそうなちるはを指で軽く引き止め、一緒に迷い猫『朔』へ近付いた。
 二人に気付いていなかった朔が振り返った処で、ちるははおでこをぺしっと叩く。
「また今度遊びましょうね。」
 悪さをしない猫ちゃんならば、たくさん遊んであげますからね、と消えていく朔を見送って。
「……さあ、続きへ行こう。」
「はい。」
 蜚廉の声掛けにちるはは笑顔で返事をした。
 まだまだ一緒におかいもの、とちるはのご機嫌な歩みに合わせて二人は進む。
 繋いだ手。
 迷宮だろうと……共に歩くなら迷わぬさ、と蜚廉は微笑んだ。

シーネ・クガハラ

「これはありがたいねー。ただでさえ大きな駅って迷いやすいのに迷宮になるから、歩き疲れそうだったのよ。」
 果てが見えず無限に続く通路の中で、雰囲気の良いカフェを見付けてシーネ・クガハラ(魑魅魍魎自在の夢幻泡影・h01340)ほっとした。
「此処は一息ついて、迷い猫さんを待つとしよっか?」
 時間はたくさんあるからね、とカフェの中に入って休憩させて貰う事にする。
「最近は戦い続きで、疲れもたまっているからねー。こういう機会はホント貴重だよ。」
 席に着いて美味しそうな紅茶とケーキを注文し、カフェの風景をスケッチブックに描き出す。
 カフェの中には落ち着いたジャズが満ちていてゆっくりとした時間が流れている。
 ふと気配を感じて、シーネが窓の向こうを見ると揺れている二股の尻尾。
 それを確認するとシーネは|夢に溢れた素晴らしき幻想世界《タダソコニヒトハオラズ》を発動させた。
「ほらおいで? 一緒に一息つかない?」
『にゃ……、』
 シーネの作った理想と幸せに満ちた空間。
 それに誘われる様に迷い猫『朔』はカフェに足を踏み入れた。
「……最後は本を閉じるように、何も感じない様に終わらせるから、その間は一緒に楽しもうじゃないの。」
 物語が終わる迄は、此処で幸せに過ごすと良い。
 ――めでたしめでたし。

シリウス・ローゼンハイム
プロキオン・ローゼンハイム

 戦争の影響で旧万世橋駅の遺構が『無限の駅舎迷宮』と化したと聞き調査に来たシリウス・ローゼンハイム(吸血鬼の|警視庁異能捜査官《カミガリ》・h03123)は、現地で愛しい弟の声を聴いて驚いた。
「兄さん!」
「ロキ? 何故お前がここに?」
 プロキオン・ローゼンハイム(シリウス・ローゼンハイムのAnkerの弟・h03159)は兄の姿を見付けて駆け寄ってくる。
「僕? 絶対防衛領域における救助活動の応援にきてるんだけど、休憩時間中だよ。」
 民間人も多く巻き込まれている戦争だ。医療従事者を目指すロキとしても助けられる人がいるなら手伝いたい。
「まぁ……絶対防衛領域で仕事ならまぁ大丈夫か……、」
 シリウスも√能力者ではない弟が戦場にいるのは不安だが、絶対防衛領域ならまだ安心できる。でも此処は違う筈、と続けようとしたのをロキが遮った。
「ここの迷宮って今はなかったり他の√のお店とかもあるんだって。」
 ロキの瞳に、期待と真剣さが滲んでいる。
「じゃあ昔でていた猫のぬいぐるみのクレーンゲームもあるかな? 当時取れなかったから今度こそ……。」
 実際に目的のものが迷宮に紛れているのかわからないけど、もしかすると……と通路の奥を見遣った。
「しかし、この迷宮には古妖がいるんだぞ。いつ襲われるか……、」
「迷宮は危険? 一般人も紛れ込んでいたほうがよりそれっぽいでしょ? ……それに、いざってときは僕のことは守ってくれるよね?」
 渋るシリウスに、ロキは畳み掛ける様に説得を試みる。しかも最後の言葉には「もちろん!」と答えざるを得ない。
「ロキがここまで情熱的になるのは珍しいな……、」
 よほど悔しかったのだろう、と理解してシリウスは折れた。
「可愛い弟の頼みだ、護衛として付き合うし、一緒にそのクレーンゲームの景品を探そう。」
「やった、ありがとう兄さん!」
 二人で無限の通路を行きながら、ゲームセンターを探す。二件目でロキお目当てのぬいぐるみが入っているのを見付けて、二人は喜んだ。
 真剣な表情でぬいぐるみを狙うロキを微笑ましく思いながらシリウスが見守る。
「……取れた!」
 何度目かの挑戦で見事リベンジを果たしたロキが、落としたぬいぐるみを笑顔で取り出した。
「折角だからついでに、俺も……、」
「兄さんもやりなよ。」
 ぬいぐるみを抱えてご機嫌なロキに薦められて、シリウスはチョコレートやクッキーが積まれている筐体に向かう。
 さてどうやって箱を崩すか、と眺めているとロキに腕を引かれた。
「兄さん、あの猫もしかして……、」
「敵が出てきた? ちょっと邪魔しないでくれ……じゃなかった、お前がこの迷宮のボスだな!」
 シリウスは一瞬目的を見失いかけていたが、即座に片手銃で|黒雷射撃《ダークライトニングシューター》を撃ち出す。
『にゃ!?』
 不意を突かれた迷い猫『朔』はバチバチと雷に打たれて消えていった。
「なんだ……あっけなかったな。」
「それじゃあせっかくだからもうちょっと遊んでいこうよ。」
「……そうだな。」
 ロキの誘いに乗って、二人はまたクレーンゲームに向かって行ったのだった。

八手・真人
オメガ・毒島
フォー・フルード
兎玉・天
ヨシマサ・リヴィングストン

 広くて、入り組んでいて、何でもある『無限のエキナカ』。
 自由なひと達が集まればこんなことにもなる訳で。

●タコと苦労人
「ウワーーーッ、迷った……はぐれた……!」
 八手・真人(当代・蛸神の依代・h00758)は一緒に来た筈の友人たちを見失った事に気付いて叫んだ。
「こんな空間で迷子になったら二度と会えないカモ、エェン……。」
 何処までも続く通路と、色んなお店。道行く人は知らない人。
 真人は不安になりながら、何とか手掛かりがないか同行者の好みを思い出す。
「みんなの行きそうなところ……うさてんちゃんさんは――なんか、なんでも好きそう……!」
 何処にでもいそうで絞れない。
「フォーさんは食べ物以外だと思うケド……ヨシマサさんも何気に予想できない……!」
 絞れても範囲が広すぎる。
「とりあえずメガくんは、絶対食べ物コーナーにいるハズ……アッ、和菓子屋さん。兄ちゃんに大福買って帰ろう。」
 眼に入った和菓子屋さんで美味しそうな大福をお土産に買っていると、遠くから聞き慣れたブレードの滑走音が響いて来た。
「……アッ、メガくん!! メガくーーーん!! え、うわッ!?」
 探していた友人の登場に手を振ってアピールするが、猛スピードの相手は止まる気配がない。
 案の定正面衝突だが、相手のスピードとパワーに真人はそのまま身体ごと持っていかれたのだった。

●食いしん坊サイボーグ
 右手にパン屋の袋、左手におにぎり屋の袋を抱えて、オメガ・毒島(サイボーグメガちゃん・h06434)は叫んだ。
「――ここはどこですか!?」
 サイボーグながら食欲旺盛、美味しいものが大好きなオメガはあれも、これもと駅ナカグルメに夢中になった結果、一緒に来た友人たちとはぐれていた。
 こうしてはいられない、とオメガは自慢のオメガ・ブレードで皆を探す為駅構内を猛スピードで滑走し始める。
 勿論皆は真似してはいけない。オメガは特別なサイボーグなのである。
「……――ぅーーん! え、うわッ!?」
 そうしていると前方に人影、しかしオメガは急には止まれない。
「おや、真人。ちょうど良かった。」
 案の定正面衝突し、勢いのまま相手を道連れにしてしまったが、それが探していた友人なのでそのまま抱えて回収する。オメガ・アームは力持ちなのである。
 何とかスピードを落として停止したが、行方不明の同行者は後三人。
「慌てても仕方がありません、駅そばでも食べて落ち着きましょう。」
「えっ?」
 オメガは冷静さを演出しながらも立喰い蕎麦屋の出汁の香りに敗北し、流れる様に入店する。
 そしてスピード提供されたコロッケ蕎麦を啜っていると何かに気付いた。
「……ん? あれは!? 行きますよ真人!」

●知識とスリルを好む飄々人
「駅ナカ周遊謎解きという題名の冊子の魔力に惹かれて一冊購入してしまいました。」
 ヨシマサ・リヴィングストン(朝焼けと珈琲と、修理工・h01057)は手にした冊子をパラパラと捲る。
「所要時間5~7時間ですか……どうやら駅から駅を跨いでいろんな駅ナカの要素を使って謎を解いていく仕掛けみたいです。」
 一日掛けて路線の色んな駅を巡り、時には周辺の観光やグルメを楽しむアクティビティの様だ。
「他の駅のことは一旦置いておいてここの謎だけでも解いてしまいましょう!」
 もしかしたら此の迷宮は他の駅の要素も取り込んでいるかも知れないが、確実な処から解いていくのが一番だ。
「謎を解くには冊子付属のシールや台紙を使う必要があるみたいですね……これはひとまず筆記用具と落ち着けるところを見つける必要がありますね!」
 近くにそんなスペースがないか見回していたヨシマサは、人並みの中で頭一つ飛び出ている背の高い同行者を見付けた。
「あ、フォーさんがいる。やっほーフォーさん、面白いもの見つけたんですよ~。」

●学習する真面目なマシン
 リサイクルショップ繋がりの友人達と『無限のエキナカ』に訪れたフォー・フルード(理由なき友好者・h01293)は、到着後それぞれが己の目的に一直線で、バラバラに行動し始めるのを見て、一度『同行』の意味を検索する。
 その後、少し考えて「なるほど、効率的。」と納得し、自分の買い物へと向かうのだった。
 彼が向かったのは文房具屋。
 筆記用具のコーナー、特にボールペンが並べられている一面を眺めて、気になったものを一つ一つ手に取る。

 ――ボールペンの選択肢は多彩。単色か多機能か。デザイン性も考慮する点の一つ。しかし忘れてはいけないのはインクの内容。書き心地は勿論の事発色の仕方と言うのは書いた物を見直す際には多大な影響があります。

 誰にも邪魔をされず、自由に、独りで、静かに、豊かにボールペンを吟味する。
 リサイクルショップで得た給料を無駄遣いにはしない様にと諸々考えてはみるが、結局フォーが選んだのは普段買っている太めの黒ボールペンの替え芯だった。それをごそっと取って会計に。
 買い物を終え、そう云えば再集合などは決めていなかったと思い至った時に丁度、ヨシマサから声を掛けられる。
「リヴィングストンさん。」
 ヨシマサは謎解きの冊子を買ったらしい。
「あとは台紙とシールを広げていい場所……そうだ、駅そば屋に一緒にいきません~?」

●マイペースなニンゲンちゃんの隣人
 ご機嫌な様子で骨董屋の不思議道具を漁っているのは兎玉・天(うさてん堂・h04493)。
 面白そうな品を見付けては買い、次の店へ……としている内に此方も一人になっていた。
「さっき滑走してるオメガちゃんが真人ちゃん抱えてったのを見たけど、会計してる間に見失っちゃったヨ☆」
 山ほど買った不思議道具を抱えて、二人が過ぎ去っていった通路をきょろきょろするがもう見当たらない。
 抱えた道具からは禍々しいオーラが出ているがうさてんは気にせず、それを振り撒きながらリサイクルショップの面々を探し回る。
 禍々しいオーラで人波を割りながら進んでいると、背の高いフォーと一緒にいたヨシマサを見付ける。
「フォーちゃんヨシマサちゃんミッケ☆」
 とてとてと近付いて、ヨシマサが手に持つ冊子に興味を示した。
「ナニナニ謎解き? 面白ソー☆ どこまで進んだノ?」
 まだ此から、丁度駅そば屋に行って解こうとしていると聞いて、残りの二人を思い出す。
「ア★ オメガちゃんと真人ちゃんどこいるんだろーネ? みんなで回れたらもっと楽しいよネ☆」

●全員集合
 駅そば屋に向かってくるヨシマサ、フォー、うさてんの姿を見たオメガは啜っていたコロッケそばを爆速完飲して店を飛び出した。
「皆さん!」
 その後ろから「俺まだ何も食べてないんですけど……、」と真人が付いてくる。
「オメガちゃんと真人ちゃんダ☆」
 みんな揃ったからおすそ分けあげるネ☆とうさてんはそれぞれに小瓶を渡す。
「かけるたびに味が変わる七〝色〟味調味料だヨ☆ みんなは何買ったノー?」
「七〝色〟味調味料ですって……!? くっ、さっきの蕎麦にそれがあれば……!」
 それを聞いたオメガは悔しそうに駅そば屋を振り返った。
「自分はボールペンの替え芯を買いました。」
「ボクは駅ナカ謎解きの冊子ですね。」
 フォーとヨシマサの戦利品に、食べ物以外もあったのですねという顔で眺めるオメガ。
「謎解きイベントまで……無限エキナカってすごいなあ。」
「そうだ、みんなで回れたらもっと楽しいよネ☆ って話してたノ☆」
「皆さん集まれましたし、一緒に解きましょうか~。」
「全員で取り掛かればすぐ解けそうですね。」
 開いた冊子を囲んで眺めて、そう云えば机が欲しいんだったと思い出す。
「もう一度駅そば屋に入りますか!?」
 七色味調味料の小瓶を握るオメガの顔が輝いた。

 そして五人は駅そば屋から謎解きを始めるのだった。

野原・アザミ

「無限のお店が……ってすごいですね。これはわざとではなく本気で迷いこみそうです。」
 果てが見えない程続く通りを歩きながら、野原・アザミ(人間(√妖怪百鬼夜行)の|載霊禍祓士《さいれいまがばらいし》・h04010)は両サイドに立ち並ぶ店を眺めた。
「骨董店なんかもありそうですね。」
 現代的なブティックやカフェの合間に、年季の入った商店が混じったりしているのを見てアザミは店先を覗き込む。
 落ち着いた店内に、所狭しと商品が並べられ積まれているのを見て興味が湧いた。
「着物やアクセサリーもいいですが、豆皿や和硝子の器などについつい惹かれてしまいますね。」
 アザミは衣類や装飾品のコーナーを越えて、食器が纏めてある棚で立ち止まる。
「これは清水かしら、……こっちは古伊万里かしら。」
 鮮やかな彩色で繊細な図柄の描かれた豆皿を手に取って見比べる。
 隣の区画には照明の光を受けてきらきらと光る硝子の器が並んでいた。
「切子硝子の小鉢もいいですね、あら、こっちは琉球硝子?」
 気になる色味の小鉢を手に取って、アザミは小さく笑う。
「……道だけじゃなく品物にも迷ってしまいますね。」
 時間はあるので存分に吟味を重ねていると、店の外を小さな影が横切ったのに気付いた。
「あら、」
 一旦器を置いて通路に出ると、視線の先には二股の尻尾を揺らす黒猫。
 あれが迷い猫『朔』であると確信して、アザミは卒塔婆を手にする。
「顔を見る前に……!」
 朔の見た目はほぼ猫なので、かわいい見た目に惑わされないように、後ろから思いっきり卒塔婆を振り抜いた。
『ニャッ……!』
 クリーンヒットした卒塔婆を受けて朔は儚く消えていく。
「良かったです、長引かなくて。……さて、」
 アザミはほっと胸を撫で下ろして、くるりと踵を返す。
 中断した掘り出し物探しへと、店に戻っていくのだった。

斯波・紫遠

『前方、直進です。』
 手持ちのタブレットから響くアシスタントAI・Irisのナビゲーションを聞きながら斯波・紫遠(くゆる・h03007)は『無限の駅舎迷宮』を散策する。
「いやーまだ大きい駅は未だに迷子になるんだよねぇ……。」
 大きい処か、無限と銘打たれた此の駅舎なんてナビがなければ満足に歩けないだろう、と思っていたら。
「標識矢印に従ってたはずなのに何で矢印が違う方向向いてるんだろ……はて?」
 地図に表示された矢印が正面を向いていないのに気付いて紫遠はアリスに問い掛ける。
「あれ、さっきの道は真っ直ぐだったよねアリスさん。」
『直進です。しかし先程の道は緩やかにカーブしていたので違う道に入ってしまった様ですね。気付きませんでしたか? マスターの眼は節穴ですか?』
「うっ……気付かなかったのはそうだけど、もうちょっと手心を……、」
 正論ながら辛辣なアリスの回答に少し傷付きながら、修正ルートを教えて貰う。
 改めてナビの通りに進んでいると広場でご当地物産展が開催されているのを見付けた。
「あ、覗いていこうかな。」
 東京ではなかなか見掛けない、地元の店ならではの商品が色々並んでいる。
「生物は傷んじゃうかもしれないから今回はパスで。珍しいオツマミ系あればちょっと買っていこう。」
 海鮮美味しそうだから残念だけどと、代わりに乾物やスナック系で眼を引く物を見繕って購入する。
「お?」
 紫遠がおまけに貰った試食を食べていると広場の端から海鮮の店を眺めている黒猫に気付いた。
 ちらりと見えた尾が二股なのを見て、あれが件の迷い猫『朔』かと察する。
「動物を痛めつけるのには心が痛むけど。」
 お仕事はちゃんとしますとも、と相手に気付かれる前に√能力を使い、無銘【香煙】で斬り伏せた。
『……ニャッ、』
「一件落着、と。」
 消えていく朔を確認して刀をしまう。
「それじゃあ帰ろうか、アリスさん。」
『はい、承知しました。ナビ通りに進んでくださいね。』
「はぁい……。」
 優秀なアシスタントに釘を刺されながら、紫遠は迷宮を後にしたのだった。

ノア・キャナリィ

「そんな……お店が無限にだなんて……選びきれるわけなくないですか、」
 きらきらと魅力的なお店が立ち並ぶ中でノア・キャナリィ(自由な金糸雀・h01029)は悲しみに嘆く。
「時間さえ……時間さえあれば……!」
 時間も無限ならば、此のパラダイスを存分に楽しめるのに……と。
 しかし嘆いている時間も勿体ない。ノアは気を取り直して楽しむ為の計画を練る。
「とりあえずスイーツはマストでしょう。一日でやった事は無いけどカフェ巡りも楽しいし、折角だから見映えも意識された特別なケーキを探してみようかな……。」
 カフェやケーキ屋さんを見付けては覗き、綺麗なデコレーションをされているケーキを見付けたらイートイン。
「動物の形したものとか可愛いよね。」
 クリームでふわふわのテディベアの形を模したケーキと、香りの良い紅茶を注文してにこにこといただく。
「普通の食事を諦めれば……小さなケーキなら少食な僕でも数種類食べられますかね。あ、日持ちするようなスイーツを土産用に買いましょう。」
 色んなケーキを楽しんだ後はクッキーやマドレーヌなどの焼き菓子を包んで貰い、ノアはご機嫌でケーキ屋さんを出た。
「あとは、折角なら雑貨も見たいな。髪飾りなら何個あっても困らないし。」
 アクセサリーを扱っている雑貨屋さんを探して、色々な髪飾りを吟味する。
「髪ゴムだけじゃなく、リボンやバレッタなんかも良いのがあれば欲しいかな。……義姉さんが目覚めた時のお土産分も。」
 普段使い出来そうな髪ゴムやリボンと、眠りに就いている義姉を想って選んだバレッタを購入して雑貨屋さんを後にすると、通りの向こうに黒い猫股を見付けた。
「あ、猫さん……、」
 可愛いけども放置はできない。ノアはそっと|夢蛍《ユメホタル》で迷い猫『朔』を攻撃する。
「ごめんね。」
 そうして消えていく朔を見送った後も、ノアは時間いっぱいまでお店巡りを楽しんだのだった。

雨夜・氷月
夜縹・雨菟

「駅舎迷宮ねえ。まぁ、ここは楽しんだもん勝ちか。」
 夜縹・雨菟(仮初・h04441)は果ての見えない通路を歩きながら、不図眼に入った店の前で立ち止まる。
「レトロで良さげな喫茶あんじゃん、そこそこいい値もすっけど。」
 店先に置いてあるメニューを眺めていると、反対側から来て同じタイミングで立ち止まった銀色に声を掛けられる。
「ねえアンタ、この店気になるの? ……俺と入らない?」
 白に声を掛けたのは雨夜・氷月(壊月・h00493)。
 彼の手には先程手に入れたペア割引のチラシが握られていて、それを指し示して笑う。
 声を掛けられた雨菟は不思議そうに氷月を見た後、チラシを認めてにやりと笑い返した。
「……へえ、いいもん持ってんのな。野郎が同伴でいいなら。」
「うんうん、そうこなくっちゃ!」
 氷月はにこにこと雨菟の背を押して入店する。そして席に着いた処で思い出した様に名乗った。
「あ、そういえばアンタ名前は? 俺は|あまや・ひづき《雨夜・氷月》、好きに呼んでよ。」
「|よはなだ・あまと《夜縹・雨菟》、こっちも呼び方は好きにどーぞ。……音の響き被ってんだが、字も被ってそうだな。」
「……確かに似てるかも、後で字も教えてよ。」
 〝雨〟に共通点を見出して、俄かに打ち解ける二人。
 折角だからとお茶と軽食を楽しんだ後も二人で迷宮を散策することにした。
「にしてもなんでもありだなこの駅……。」
「駅の機能としてはさておきこれだけ色んなモノがあるのは面白いね。」
 乱雑に、店ばかりかと思えば切符の券売機が突然並んでいたりもする。
 此の駅から何処かに線路がつながっているのかはわからないが。
「日暮里のねこみくじまであるし……、」
 見覚えのある可愛らしい煎餅を見付けて雨菟の足が止まる。
「氷月だっけか運試ししてみねぇ? これ、煎餅の裏に大、中、小の吉書いてんの。同時に裏見てどっちが強運か。」
「運試し? へえいいね、面白そう!」
 雨菟の提案に氷月も煎餅を覗き込んで、にんまりと笑う。
「でもただ競うだけじゃツマンナイと思わない? 負けた方がこの後何か奢るとかどう?」
「初対面だから省いたこと提案されっとはな。乗ってやろうじゃん。」
 自分もその考えはあったので、誘われた雨菟は勿論乗った。
 そして購入した煎餅からそれぞれ一枚選び、突き合わせる。
『せーの!』
 同時に裏返した結果は雨菟が『中』、氷月が『大』。
「やった!」
「くそっ、惜しい……、」
 悔しがる雨菟に、何を奢って貰おうかなと考えていた氷月は柱の陰に迷い猫『朔』を見付ける。
「あ、ネコチャンだ。」
「まんまと誘き出されてやんの。運試しに来たのかボス猫。」
 氷月の視線の先を追った雨菟も朔を見付けて攻撃態勢に入る。
『ニャ……?』
「んっふふ、ゴメンね今は白猫と遊ぶのに忙しいんだ。帰ってくれる?」
「悪ィが、お前の運はねぇんだわ。」
 速攻で白銀の雨にぺしんぺしんと攻撃されて、朔はあっけなく消えていった。
「さて、じゃあ何を奢って貰おうかな。」
 さくっと気を取り直した氷月に、雨菟も付いていく。
「はいはい、何でもどうぞ。」
 妙に気の合う二人の散歩はもう少し続きそうだ。

火神・焔
水鏡・氷月

「駅の中って、あんましっかり見た事無かったけど、結構色んな店あんだな……。」
 火神・焔(灼炎の闘神・h06949)は優しく水鏡・氷月(月下に踊る氷の蝶・h06950)の手を引きながら、連なる店を眺める。
「焔……何処に行くの……?」
 氷月は焔に手を引かれる侭、問い掛けはするが素直に付いて歩く。
「まずは腹ごなしも兼ねてカフェでも入ってみるか。」
「ん……よく、わからない。任せる……。」
 焔の提案に氷月はぼんやりとした答えを返し、焔の思う侭に任せる。
 その答えに焔は優しく頷いて、落ち着いた雰囲気のカフェを選んだ。
「俺はカフェラテとサンドイッチでも食うかな。氷月は……どうする?」
 メニューを広げて氷月に見せる。
「とりあえず紅茶と……食いもん、気になるのあるか?」
 感情を無くした氷月には、自分で何かを選ぶ程の衝動が起こらない。
 お互いにそれは理解しているけども、やはり焔は何処かにはある筈の氷月の気持ちを大事にしたくて根気よく問い掛ける。
 ゆっくりとメニューの頁を捲りながら二人で写真を眺めた。
 美味しいも好き嫌いもわからない氷月だけれど、焔が沢山問い掛けてくるのでゆっくり手を伸ばす。
 ケーキの頁で指先を少し彷徨わせてから、そっとミルフィーユを示した。
「これだな、わかった。」
 氷月は本当に食べたいと云う感覚もわからないまま選んだものを、嬉しそうに注文する焔を唯眺めた。
 言葉少なながらゆっくりと食事を終えた二人は、また手を繋いで散策を再開する。
「次は……雑貨屋巡りでもしてみるか。」
 焔は氷月の手を引き、彼女に合いそうな雰囲気の店を見付けると中を覗いた。
 氷月に合いそうな小物は全部買ってやりたいな、などと考えながら、一つ一つ選んでいく。
「この髪留めとか……飴入れておくのにこの小瓶もいいな……。」
 焔が色々買い込む姿をじっと瞶めていた氷月は、店を出てから袋を渡されて首を傾げた。
 それを見て焔が袋を開けて中身を渡す。シンプルな蝶柄の小瓶。
 氷月はその小瓶に持ち歩いている飴を少し入れてみた。
「……飴……キラキラ……。」
 照明の光が、瓶の模様と飴に反射してキラキラと光る。
 その光景を金色の瞳に映した氷月は、ぱちりと瞬きした後小瓶を大事に仕舞った。
 ――こういう時、なんて伝えればいいのかまだわからないから。
 その一連を柔らかい眼差しで見守っていた焔はまた氷月の手を取った。
「もうちょっと歩いていこうぜ。」
 それに頷くでもなく、引かれる侭氷月は付いていく。
 途中で遭遇した迷い猫『朔』はきっちり退治して、二人はゆっくりとした時間を共に過ごした。

メイド・メイド

 『無限の駅舎迷宮』に電脳メイドが降り立った。
「敵は知らなかったようでございますね。たしかに|EDEN《わたしたち》はダンジョンを踏破する力に秀でているかもしれません。」
 メイド・メイド(学名:霊長目ヒト科メイド属メイド・h00007)は無限に広がる駅構内を|探索《サーチ》しながら目的地を探し出す。
「ですがそれよりも、『なんか楽しそうなことがあったら作戦中であっても全力楽しむ』のが我々の性分にございます。」
 完璧なメイドは計画実行もスマートに。
「そして|当機《わたし》も例には漏れず、楽しませていただきましょう。」
 クールな表情はその侭に、全身からわくわくと期待の空気を醸し出しながらメイドは目的地へと進んだ。
「ここは少し離れているとはいえアキハバラ。きっと家電といったものも取り扱っている店があるのではないかと期待します。」
 彼女が今求めているのは新しいデジタルカメラ。
 メイドは欠落により視覚情報を認識出来ないので、写真を撮って楽しむという趣味は持っていない。
 その為、現場写真の保管という観点でのみ運用しており、現在手持ちのカメラは旧時代の製品だ。
 しかし旧時代のカメラというものはいかんせん画素が荒い。文字通り桁が違うのだ。
「人によってはこれはこれで乙なものだと申されるでしょうが、1つくらいいいものを持っておきたいというのが心情でございます。」
 大きく鮮明に写し取れれば、得られる情報も増える。
 そんなカメラを求めて、メイドは目的地に向かった。
 そして期待通り迷宮は『駅直結』の家電量販店も飲み込んでいる。判定が広くて助かる。
 メイドは量販店のフロアに立ち寄り、目当ての品を探して探索する。
 するとワイシャツにネクタイと法被姿、のいかにもな店員が話し掛けて来た。
「何かお探しですか~?」
「デジタルカメラを拝見したく……ああ、カタログを見せていただければ説明などは結構ですので。」
 コーナーへの案内だけしてもらって、メイドは並べられているカメラを手に取った。
 まず大きさ、重さ、操作ボタンの配置などを手触りで確認し、カタログ情報を|文字認識《OCR》しつつスペックを読み解く。
「ふむ、最近はGPSでタグをつけてくれたりするのですか……なんの写真か分かるのはいいですね。」
「非圧縮で保存? こんなに小さいのに大容量なのですね。」
「デジカメのなかで動画編集ができるのですか、これではパソコンいらずですぐにSNS投稿できるではありませんか……。」
 カメラ機体とカタログスペックを一つ一つ照らし合わせながら吟味して、展示されている製品を一通り確認し尽くす。
「こほん、写真の良さより機能性の方に目移りしてしまうのはハイテクを生業にしているものの性でございますね。」
 終わってから写真自体の検証はあまり行ってなかったことに気付いて、少しばかり決まりが悪い心地に咳ばらいを一つ。矢張り抗えない性はあるものだ。
「ですが今回は丈夫で軽いものを1ついただくこととしましょう。」
 戦場で持ち歩くのなら必須の項目を重点に置き、製品を選ぶ。
 会計を終えて手に入れたカメラを早速起動し、装備に加えた。
「これでまた、次の戦いへの準備に励めますね。」
 まだ戦争は続いているし、きっと次の戦争が起こった際も役立ってくれるだろう。
「では、目的は果たしましたし、一般人の方が迷ってもいけませんので敵を斬りはらいましょう。」
 メイドは家電量販店のフロアを出て、果てのない通路に戻った。
 今度は迷宮の主となる古妖の反応を探索する。
「――見付けました。」
 距離は此処から遠くない。
『pushd me; start xr.world』
 メイドは√能力【|召喚術式・ぼうけんのせかい《エクステンデッド・リアリティ》】を発動させると、勇者アバターを纏った状態で迷い猫『朔』の元へと駆け抜ける。
『ニャ……!?』
 対象を発見、捕捉すると駆けるスピードもその侭に|勇者の剣《オブジェクトキル・コマンド》でその小さな体を一閃。
 相手が攻撃を認識する前に葬ってしまった。
「一件落着でございますね。」
 アバターを解除し、普段の姿に戻ったメイドはお仕事完了とばかりに一礼する。
 完璧なメイドは戦闘もスマートなのである。

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